2019年7月2日火曜日

6. 経済的自由・人身の自由と社会権・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント!経済的・人身の自由についてわかりやすく説明

6. 経済的自由・人身の自由と社会権




どうもTakaです。今回は行政書士試験の憲法分野の経済的自由・人身の自由と社会権についてまとめてみました。




経済的自由

職業の自由


labor


1. 職業選択の自由と営業の自由



憲法22条1項で職業選択の自由や広く営業の自由(職業活動の自由)を保障しています。職業選択の自由には、職業の選択だけでなく、選択した職業を遂行する自由も含まれています。

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


2. 経済活動に対する規制


個人の経済活動に対しては、
その活動がもたらす弊害を除去・緩和する規制だけではなく、
社会経済全体の調和的発展を図るための規制も許されると、判例はいっています。
経済活動の自由は、他者の利益を守るための内在的制約(消極規制ともいう)だけえなく、社会経済政策を実現するための政策的制約(積極規制ともいう)にも服するものです。

【重要判例】小売市場許可制事件

3. 経済活動の規制の合憲性判断


経済活動の合憲性を考えるために、
判断基準として、内在的制約(消極規制)政策的制約(積極規制)
使い分けています。

①内在的制約(消極規制
厳格な合理性の基準を用いる
国民の生命・健康を守るための規制のこと
同じ目的を達成できる、より緩やかな規制手段があれば違憲。

②政策的制約(積極規制
明白性の原則を用いる
社会的経済的弱者を守るための規制のこと
規制手段が著しく不合理であることが明白である場合に限り違憲。

4. 小売市場の許可制


小売商業調整特別措置法は、特定の都市でのマーケットの開設を許可制としています。
この小売市場の許可制について、
判例は、社会経済を調和的に発展させるための中小企業保護政策の一つとして採った積極規制です。
判例では著しく不合理であことが明白とはいえないとして合憲といっています。
【重要判例】小売市場許可制事件

5. 薬局の適正配置規制


薬事法が薬局の配置を規制していたことについて、
判例では、主として国民の生命および健康に対する危険を防止するための消極的・警察的規制であり、その必要性と合理性を認めることができないので、違憲であるといっています。
【重要判例】薬事法距離制限事件

6. 公衆浴場の配置規制


公衆浴場法による公衆浴場の配置規制については、
健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉を維持するという積極目的によるものとする判例と、国民の保健福祉の確保と自分の家に風呂を持たない国民の必要不可欠な厚生施設の確保という積極・消極目的の併有とする判例があります。
しかし、いずれの判例も合憲であるといっています。
【重要判例】公衆浴場距離制限事件/最大判昭30.1.26

7. 酒類販売業の免許制


酒税法が酒類の販売業について免許制を採用しているのは、
憲法22条1項に違反しないというのが判例です。
【重要判例】酒類販売業の免許制事件

居住・移転の自由






1. 居住・移転の自由とは何か


憲法22条1項は、国内の居住・移転の自由も保障しています。
居住・移転の自由を保障しています。居住・移転の自由というのは、
居所をどこに定めるかを自由に決定できることにして、広く人の移動の自由を保障しようというものですね。
居住・移住の自由も、経済的自由の一つとされています。
人が自由に働くことができ、労働力が商品化することが、資本主義の大前提だからです。

2. 海外渡航の自由

憲法22条2項は、海外に移住する自由には、外国への一時旅行する自由も含まれるというのが判例です。

憲法22条2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

憲法22条1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

この問題が争点となったのが、次の帆足事件でした。
【重要判例】帆足事件

財産権






1. 個人の財産権・私有財産制

財産権


憲法29条1項では、個人が持っている具体的な財産上の権利を人権として保障するとともに、私有財産制を保障しています。

第二十九条 一項 財産権は、これを侵してはならない。二項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。三項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


2. 財産権の規制


財産権は、経済活動の自由と同様に、他者の権利を守るという消極目的のための内在的制約だけでなく、社会経済政策を実施するという政策的制約にも服します。
【重要判例】森林法共有林事件
【重要判例】奈良県ため池条例事件

3. 損失補償


公共のために、特定人の財産を強制的に取得したり、
利用方法について制限方法について制限を加えたりすることができます。
ただし、その結果、特定人が損失を被った場合には、正当な保障をしなければなりません。


人身の自由

奴隷的拘束・苦役からの自由




憲法18条前段は、奴隷的拘束を禁じています。
奴隷的拘束は、人間の尊厳に反するものなので、絶対に禁止されています。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

法定手続きの保障


1. 適正な手続きの法定


憲法31条は、刑罰を科すには、法定の定めた手続きによらなければならないことを定めています。また、憲法31条は、犯罪や刑罰の要件という刑事実体面の法定・適性をも要求する趣旨です。そのため、刑法の大原則である罪刑法定主義(法律なくば刑罰なく、法律なくば犯罪なしという原則)の根拠になると解されています。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

2. 告知・聴聞の権利


憲法31条の要請する適正手続きの実質的な内容とは、告知と聴聞の権利であると解されています。告知と聴聞の権利というのは、公権力が国民に対して不利益を課す場合には、予めその内容を当事者に告知して、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならないことを言います。

3. 行政手続の適正


憲法31条は、刑事手続きに関するものです。
法律上の手続きによらなければ、
公権力によって捕まったり、監獄に入れられたりしないということです。
【重要判例】成田新法事件

不当な抑留・拘禁からの自由

憲法34条では、権力による不当な逮捕・身体の拘束などをすべて禁止しています。

抑留とは
一時的な身体の拘束、刑事訴訟法上の逮捕や勾引にともなう留置

拘禁とは
継続的な身体の拘束、勾留・鑑定留置

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。


社会権

社会権とは何か


社会権とは、国家に対して積極的な配慮を要求する権利です。
資本主義によって生じた社会経済的弱者が国家に対して人間に値する生活を営むことを要求する現代的な人権が社会権です。国家による自由とも呼ばれています。

生存権

1. 生存権とは何か


生存権とは、人間に値する生活を営む権利です。
憲法25条1項の「健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利」のことです。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2. 生存権は具体的権利か?


憲法25条1項は、国の責務を宣言したにとどまり、
直接国民に具体的権利を付与したものではないというのが判例です。


3. 生存権の具体的立法

憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」は極めて抽象的・相対的な概念です。
これを具体的にするには、専門的な考えに基づいた判断が必要です。
そのため、具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、
立法府の広い裁量に委ねられると判例ではいっています。

また、立法措置が著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見えざるを得ない場合にのみ、裁判所は審査できると言っています。
【重要判例】堀木訴訟
【重要判例】塩見訴訟

教育を受ける権利

1. 教育を受ける権利と受けさせる権利


憲法26条1項は、教育を受ける権利を保障しています。
ここでいう教育は学校教育だけでなく、社会教育を受ける権利も保障しています。
また、26条2項では、義務教育について定めています。
すべての国民に対して、保護する子供に普通教育を受けさせる義務を課すとともに、
国に対して義務教育を無償とするように求めています。
ここでいう義務教育は授業料のことです。

第二十六条 一項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

第二十六条 二項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

2. 教育権


子供の教育は、子供の学習をする権利に対応し、
その充足を図り得る立場にある者の責務です。
そのため、判例では、国にも必要かつ相当と認められる範囲で、
教育内容を決定する権能があると言っています。


3. 教科書検定

教科書の検定とは、民間で著作・編集された図書について、
文部科学大臣が教科書として適切か否かを審査し、
これに合格したものを教科書として使用することを認めることです。
判例では、教科書検定は、教育を受ける権利を害するものではないと結論付けています。

ただし、判例は、審査が与えられた裁量権の範囲を逸脱すれば、
当然違法であるといっています。


労働基本権

労働基本権


1. 労働基本権とは何か



労働基本権とは、団結権・団体交渉権・団体行動権のことを指します。
憲法28条は、労働基本権を保障しています。使用者に対して劣位にある
労働者の自由と平等を実質的に確保するためです。労使間において
労働者を保護することが目的なので、憲法28条は、私人間にも直接適用されます。

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

2. 団結権


団結権とは、労働者が団体を組織する権利です(労働組合結成権)。
労働組合には、一定の範囲で、組合の統制を乱した組合員に対して
制裁を行う権利が認められています。これを統制権といいます。

3. 団体交渉権・団体行動権


団体交渉権とは、
労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利のことです。

団体行動権というのは、
労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利のことです。
判例は、政治的目的を達成するためのストライキには、
憲法28条の保障は及ばないといっています。
【重要判例】全農林警職法事件

次は、憲法の分野の国会について紹介しています。
➡7. 国会

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