2019年6月29日土曜日

第一次家永教科書事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】第一次家永教科書事件/最判平5.3.16



どうもTakaです。
今回は教科書検定制度は、憲法21条2項で禁止される
検閲に当たるかが争点となった第一次家永教科書事件について
紹介したいと思います。

第一次家永教科書事件の内容


大学教授のAさんは、
高校用日本史教科書「新日本史(5訂版)」を
執筆しましたが、検定申請で不合格となり、
修正後の再申請で条件付合格の処分を受けました。

そこで、Aさんは文部大臣(現文部科学大臣)の措置を
違憲・違法として、国家賠償を請求した事件です。

第一次家永教科書事件の争点


教科書検定制度は、教育を受ける権利を保障する憲法26条1項に違反するか?

第26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、
その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

教科書検定制度は、憲法21条2項で禁止される検閲に当たるか。また、表現の自由を保障する憲法21条1項に違反しないか。

第21条 
1項 
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、
これを保障する。
 
2項 
検閲は、これをしてはならない。
通信の秘密は、これを侵してはならない。

判決のポイント


教科書検定制度は、憲法26条1項に違反しない。

教科書検定は、一般図書としての発行を妨げるものではないし、
発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲にあたらない
また、検定による表現の自由の制限は、憲法21条1項にも違反しない。

検閲とは、
①行政権が主体となって、
②思想内容等の表現物を対象とし、
③表現物の一部または全部の発表を禁止する目的で、
④対象とされる表現物を網羅的一般的に、
⑤発表前に審査した上、
⑥不適当と認めるものの発表を禁止すること


➡【リンク】最高裁裁判所HP・・

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堀木訴訟って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】堀木訴訟/最大判昭57.7.7



どうもTakaです。今回は児童扶養手当法の併給禁止規定は、憲法25条に違反するかが争点となった堀木訴訟について紹介したいと思います。

堀木訴訟の内容


Aさんは視力障害者であり、国民年金法に基づく障害福祉年金を受給していましたが、離婚した後、自らの子供を養育していたことから生別母子世帯として児童扶養手当も受給できるものと思い県知事に対して児童扶養手当法に基づく児童扶養手当の受給資格の認定を請求したが、児童扶養手当法には他の公的年金を受給している者については児童扶養手当を支給しないと定める規定があり、この併給禁止事項があることを理由に却下されました。そのため、Aさんは、当該事項は憲法25条に違反するとして、却下処分の取り消しを求める訴えを提起した。

堀木訴訟の争点


児童扶養手当の併給禁止規定は、憲法25条に違反するか?

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

判決のポイント


憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえない場合を除き、裁判所の審査対象とならない

本件併給禁止規定も立法裁量の範囲内であり、憲法25条に違反しない

立法裁量(行政裁量)と裁判所の司法審査

原則➡審査対象とならない
例外➡逸脱・濫用の場合は、審査対象となる

➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和51(行ツ)30

新潟県公安条例事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】新潟県公安条例事件/最大判昭29.11.24


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どうもTakaです。今回は、県の公安条例による行列行進や集団示威運動(デモ活動)の許可制は、集団行動の自由を保障した憲法21条に違反し、許されないかが争点となった新潟県公安条例事件について紹介したいと思います。

新潟県公安条例事件の内容


公安委員会の許可を得ることなく集団示威運動を行った行為が、
新潟県公安条例に違反するとされた。

新潟県公安条例事件の争点


県の公安条例による行列行進や集団示威運動(デモ活動)の許可制は、
集団行動の自由を保障した憲法21条に違反し、許されないか?

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

判決のポイント


集団行動を一般的な許可制で事前に抑制することは、憲法の趣旨に反し許されない。
しかし、①特定の場所または方法につき合理的かつ明確な基準のもとで許可制を取ることは許される
さらに、②公共の安全に対し明らかな差し迫った危険を及ぼすことが予見されるときは、許可せずまたは禁止できる旨の規定を設けることも許される


➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和26(あ)3188

薬局距離制限事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】薬局距離制限事件/最大判昭50.4.30


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薬局距離制限事件の内容


広島県で薬局を開設することを決めたAさんは、薬事法に基づいて薬局の営業許可を県知事に申請したが、配置基準の規定に適合しないという理由で不許可処分となった。そのため、Aさんは、薬局開設の距離制限を定めた薬事法の規定は憲法22条1項に違反するとして、不許可処分の取消しを求める訴えを提起した。

※この事件の判決は日本国憲法下で最高裁判所が言い渡した史上2例目の法令違憲判決です。

薬局距離制限事件の争点


薬局開設の許可基準として距離制限を定めた規定は、憲法22条1項に違反するか。

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

判決のポイント


薬局の距離制限は、国民の生命・健康に対する危険の防止、具体的には不良医薬品の供給防止、という消極目的の規制であるので、規制の必要性・合理性の審査、より緩やかな規制手段で目的が達成できるかの検討が必要だと考えられました。

消極目的規制
国民の健康を守るための規制。
難しく言うと、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が、社会公共の安全と秩序の見地から看過することができない場合に、必要かつ合理的な規制である限り許される規制。

検討すると、
薬局の距離制限規定は、規制の必要性と合理性の存在は認められない。
また、立法目的である不良医薬品の供給防止は、より緩やかな規制手段(行政法上の取り締まりの強化)によって十分に達成できるので違憲である。と考えられました。

・距離制限規定が合憲だった例
【重要判例】公衆浴場距離制限事件
【重要判例】小売市場距離制限事件




2019年6月27日木曜日

TBSビデオテープ押収事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例・・捜査機関の差押処分は憲法に違反しない?

【重要判例】TBSビデオテープ押収事件/最決平2.7.9


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どうもTakaです。今回は、捜査機関によるマスメディアの取材内容に対する差押処分は、憲法21条に違反しないかが争点となったTBSビデオテープ押収事件について紹介したいと思います。

TBSビデオテープ押収事件の内容


TBSは、暴力団に関するドキュメント番組の中で、暴力団員による債権取り立ての模様を放送したが、この番組の放送により、その取立てを行った組員が逮捕・起訴された。この事件の捜査にあたって、警視庁は、差押許可状により、取立場面を取材した未編集テープを証拠として押収した。これに対してTBSが不服申し立てをした事件です。

TBSビデオテープ押収事件の争点


捜査機関による報道機関の取材テープに対する差押処分は、憲法21条に違反しないか?

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

判決のポイント


捜査機関による報道機関の取材ビデオテープに対する差押処分は、一定の要件の下では、憲法21条に違反しない。
合憲である

要件とは
①悪質な被疑事件の全容を解明する上で重要な証拠価値を持ち
②被疑者らの協力によりその犯行現場等を撮影収録したもの
③編集したものが放送済みで、被疑者らによってその放映を了承した
と、判例ではいっています。




チャタレー事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例・・刑法で定めるわいせつ文書とは何か

【重要判例】チャタレー事件/最大判昭32.3.13



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どうもTakaです。今回は刑法175条のいわゆる「わいせつ文書」とは何なのか?また、刑法175条の規定は憲法21条に違反しないかが問題となったチャタレー事件について紹介したいと思います。

チャタレー事件の内容


性的描写のある外国小説「チャタレイ夫人の恋人」の翻訳本を出版した出版者・翻訳者らが、刑法175条(わいせつ物頒布罪)で起訴された。

第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。


チャタレー事件の争点


1. 刑法175条のいわゆる「わいせつ文書」とは何か?
2. 刑法175条の規定は憲法21条に違反しないか?


判決のポイント


「わいせつ文書」とは
①もっぱらに性欲を興奮又は刺激せしめ、
②普通人の正常な性的羞恥心を害し、
③善良な性的道義観念に反する文書
のことをいう。

刑法175条は、憲法21条に違反しない
合憲である

➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和28(あ)1713

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北海タイムス事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】北海タイムス事件/最大判昭33.2.17



どうもTakaです。今回は法廷内の写真撮影を、裁判所の裁量に委ねている刑事訴訟規則215条は、報道取材の自由を侵害するかが争点となった北海タイムス事件について紹介したいと思います。

第二百十五条 公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。

北海タイムス事件の内容


新聞社のカメラマンAさんが、法廷内で被告人が証言台に立ったときに、裁判官の制止を無視して被告人の写真を撮影した為、法廷等の秩序維持に関する法律に該当するものとして、過料(国または地方公共団体が行政上の軽い禁令を犯した者に対して科する金銭罰)に処せられた事件です。

北海タイムス事件の争点


法廷内の写真撮影を、裁判所の裁量に委ねている刑事訴訟規則215条は、憲法21条の報道取材の自由を侵害するか?

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

北海タイムス事件のポイント


法廷内での写真撮影の許可制を裁判長の裁量とし、撮影を制限している刑事訴訟規則は、合憲。
写真撮影の許可制は合憲


➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和29(秩ち)1


謝罪広告事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例・・

【重要判例】謝罪広告事件/最大判昭31.7.4


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どうもTakaです。今回は謝罪広告の掲載を命じる判決は、思想及び良心の自由を侵害するかが争点となった、謝罪広告事件について紹介したいと思います。

謝罪広告事件の内容


衆議院議員総選挙に立候補したAさんは、選挙運動中、対立候補であるBさんが汚職をした旨の公表をした。そのためAさんは、虚偽の事実の公表により名誉を毀損されたとして、名誉回復の為の謝罪文の掲載を求める訴えを提起した。一審、二審でBさんに対して謝罪広告の掲載を命じる判決が出されたので、Bさんは謝罪広告の強制は良心の自由を侵害するものであるとして争った。

謝罪広告事件の争点


謝罪広告の掲載を命じる判決は、思想及び良心の自由を侵害するか?

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

判決のポイント


単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものである謝罪広告を強制する判決は、憲法19条に違反しない。
→謝罪広告は合憲


➡【リンク】最高裁裁判所HP・・  昭和28(オ)1241

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砂川政教分離訴訟(空知太神社)訴訟って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】砂川政教分離訴訟(空知太神社)

/最判平22.1.20



どうもTakaです。今回は市が、町内会に対して市の所有する土地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為は、憲法89条、20条1項後段にあたるか?が争点となり判例に目的効果基準が用いられなかったことが注目された砂川神社訴訟について紹介したいと思います、

砂川政教分離訴訟の内容


北海道砂川市は、町内会に対して無償で、市の所有する土地を神社施設の敷地としての利用に供していた。本件神社は、宗教法人法所定の宗教法人ではなく、神社付近の住民らで構成される氏子集団(域社会の守護神あるいは氏神を,氏子である村人が共同で維持するために構成した組織)によって管理・運営されていた。

砂川政教分離訴訟の争点

町内会に対して市の所有する土地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為は、憲法89条、20条1項後段にあたるか?

判決のポイント


国・公共団体等の行為の目的やその効果ではなく、宗教的施設の性格、土地が無償で当該施設の敷地としてのように供されるに至った経緯、無償提供の態様、これらに対する意パン人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断して、国・地方公共団体と宗教団体のかかわりあいが違憲。

判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


1 市が連合町内会に対し市有地を無償で建物(地域の集会場等であるが,その内部に祠が設置され,外壁に神社の表示が設けられている。),鳥居及び地神宮の敷地としての利用に供している行為は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記行為がもともとは小学校敷地の拡張に協力した地元住民に報いるという世俗的,公共的な目的から始まったものであるとしても,一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものであって,憲法89条,20条1項後段に違反する。

(1) 鳥居,地神宮,神社と表示された建物入口から祠に至る上記各物件は,一体として神道の神社施設に当たるもので,そこで行われている諸行事も,このような施設の性格に沿って宗教的行事として行われている。

(2) 上記各物件を管理し,祭事を行っている氏子集団は,祭事に伴う建物使用の対価を連合町内会に支払うほかは,上記各物件の設置に通常必要とされる対価を支払うことなく,その設置に伴う便益を長期間にわたり継続的に享受しており,前記行為は,その直接の効果として,宗教団体である氏子集団が神社を利用した宗教的活動を行うことを容易にするものである。

2 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法の定める政教分離原則に違反し,市長において同施設の撤去及び土地明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるとして,市の住民が怠る事実の違法確認を求めている住民訴訟において,上記行為が違憲と判断される場合に,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,その違憲性を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて審理判断せず,当事者に対し釈明権を行使しないまま,上記怠る事実を違法とした原審の判断には,違法がある。

(1) 上記神社施設を直ちに撤去させるべきものとすることは,氏子集団の同施設を利用した宗教的活動を著しく困難なものにし,その構成員の信教の自由に重大な不利益を及ぼすものとなる。

(2) 神社施設の撤去及び土地明渡請求以外に,例えば土地の譲与,有償譲渡又は適正な対価による貸付け等,上記行為の違憲性を解消するための他の手段があり得ることは,当事者の主張の有無にかかわらず明らかである。

(3) 原審は,当事者がほぼ共通する他の住民訴訟の審理を通じて,上記行為の違憲性を解消するための他の手段が存在する可能性があり,市長がこうした手段を講ずる場合があることを職務上知っていた。
(1,2につき補足意見,意見及び反対意見がある。)


➡【リンク】最高裁裁判所HP・・ 平成19(行ツ)260

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箕面忠魂碑訴訟って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】箕面忠魂碑訴訟/最判平5.2.16



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どうもTakaです。今回は市の忠魂碑移設のため敷地の無償貸与は、政教分離原則に違反するかが争点となった箕面(みのう)忠魂碑訴訟について紹介したいと思います、

箕面忠魂碑訴訟の内容


箕面市は、小学校の増改築工事に伴い、校庭にあった遺族会が管理する忠魂碑を移転する必要が生じたため、移転先の敷地を遺族会に無償貸与し、本件忠魂碑における神式、仏式の慰霊祭に市の教育長を参列させた。市の住民であるAさんが、これら市の慰霊祭への関与は憲法20条3項および憲法89条に違反するとして、住民訴訟を提起した。

箕面忠魂碑訴訟の争点


1. 市の忠魂碑移設のための敷地の無償貸与は、政教分離原則に違反するか?
2. 市の教育長が忠魂碑の慰霊祭に参列する行為は、政教分離原則に違反するか?

判決のポイント


1. 忠魂碑は戦没者の慰霊のための記念碑で宗教的施設ではなく、遺族会も憲法20条3項の「宗教団体」、89条の「宗教上の組織若しくは団体」ではないから、市の行為は政教分離に違反しない。合憲である。

※目的効果基準・・・目的と効果の2点から判断する
憲法20条3項が禁止する「宗教的活動」とは
行為の目的が宗教的意義を持ち、
その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉
になるような行為を言う。

2. 慰霊祭に公務員である教育長が参列したことは、戦没者遺族に対する社会的儀礼を尽くすという専ら世俗的な目的であり、その効果も特定の宗教を援助、助長、促進しまたはほかの宗教を圧迫、干渉を加えるものではないから、政教分離原則に違反しない。合憲である。

➡【リンク】最高裁裁判所HP・・昭和62(行ツ)148

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帆足計事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】帆足計事件/最大判昭33.9.10



どうもTakaです。今回は国民に海外旅行の自由は保障されているのかが争点となった、帆足事件について紹介したいと思います。

帆足事件の内容


元参議院議員であったAさん達は、ロシア(当時はソ連)のモスクワ市で開催される国際経済会議への出席を招請されたため、外務大臣に、会議出席を目的とするソ連行きの一般旅券の発給を申請した。ところが、外務大臣は、旅券法旧13条1項5号(現7号)の「外務大臣において、著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がると認めるに足りる相当の理由がある者」には一般旅券の発給をしないことができる旨の規定などを理由として、旅券発給の拒否処分を行い、その旨の通知をした。そのため、Aさん達は会議に出席できなかった。そこで、Aさんは海外渡航の権利を侵害されたとして、国に対して損害賠償を請求した。




※当時の状況



当時は、冷戦という国際情勢であったため、資本主義国である日本から社会主義国の中心国であるソ連へ渡航するということは、「日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」として旅券の発給を拒否した。

帆足事件の争点


国民に海外旅行の自由は保障されているか?
憲法22条2項の海外に移住する自由には、外国へ一時旅行する自由も含まれるか?
外務大臣が旅券の発給を拒否をすることができることは憲法22条2項に違反するか?

帆足事件の判決のポイント


憲法22条2項の海外に移住する自由には、外国へ一時旅行する自由も含まれる。
海外旅行の自由は、外国移住の事由によって保障される。

第22条 2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

しかし、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、
公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解するべきであるといっています。

判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


一 旅券法第一三条第一項第五号は、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のため合理的な制限を定めたもので、憲法第二二条第二項に違反しない。

二 原審認定の事実関係(原判決参照)、特に占領治下我国の当面する国際情勢の下において、外務大臣が上告人らのモスコー国際経済会議への参加を旅券法第一三条第一項第五号にあたると判断してなした旅券発給拒否の処分は、違法とはいえない。




北方ジャーナル事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】北方ジャーナル事件/最大判昭61.6.11



どうもTakaです。
今回は裁判所の仮処分による事前差し止めは、
憲法21条2項で禁止される検閲に当たるか?が
争点となった北方ジャーナル事件について紹介したいと思います。

第二十一条 
一項 
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 
二項 
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

北方ジャーナル事件の内容


北海道知事選挙に立候補を予定していたAさんは、
雑誌「北方ジャーナル」に自分の名誉を毀損する記事が
掲載される予定であることを知り、
裁判所に対して、印刷・出版を差し止める仮処分を申請し、
裁判所はこれを認めました。

このため、「北方ジャーナル」の代表取締役Bさんは、
本件仮処分およびその申請を不法行為であるとして、
Aさんと国に対して、損害賠償を求める訴えを提起した。

北方ジャーナル事件の争点


裁判所の仮処分による事前差し止めは、
憲法21条2項で禁止される検閲に当たるか?

裁判所の仮処分による事前差し止めが
検閲にあたらないとしても、
事前抑制に当たって表現の自由を侵害し、許されないのではないか?

事前差し止めが例外的に許されるためには、どのような要件が必要か?

判決のポイント


裁判所による事前差止めは検閲にあたらない

裁判所の仮処分による事前差し止めは、事前抑制に該当するので、
その対象が公務員・公職選挙の候補者に対する評価、批判等である場合は、
原則として許されない。

しかし、表現内容が真実ではなく、またはそれが公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、
例外的に事前差し止めが許される。事前差し止めを命じる仮処分命令を発することについては、口頭弁論または債務者の審尋(書面または口頭で当事者その他の利害関係人に個々的に自由な方式で陳述の機会を与えること)を行い、表現内容の主張立証の機会を与えることを原則とするべきと解するのが相当であるといっています。

事前差止めが例外的に許される要件は、
①表現内容が真実でないこと、専ら公益を図る目的でないことが明白であること
②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあること
③原則として、表現者に表現内容が真実であることの主張・立証の機会を与えること。


➡【リンク】最高裁判所HPへ

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酒類販売業の免許制事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】酒類販売業の免許制事件/最判平4.12.15



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どうもTakaです。今回は酒類販売業の免許制を定めた酒税法の規定は、憲法22条1項に違反するかが争点となった酒類販売業の免許制事件について紹介したいと思います。

酒類販売業の免許制事件の内容


Aさんが酒類販売業の開設免許の申請を所轄税務署長Bさんにしたところ、酒税法の免許拒否事由にあたるとして拒否処分を受けた。そのため、Aさんはこの処分の取り消しを求める訴訟を提起した。

酒類販売業の免許制事件の争点


酒類販売業の免許制を定めた酒税法の規定は、憲法22条1項に違反するか?

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

酒類販売業の免許制事件のポイント


酒類販売業の免許制を定めた酒税法の規定は、憲法22条1項に違反せず、合憲である。



公衆浴場距離制限事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】公衆浴場距離制限事件/最大判昭30.1.26


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どうもTakaです。今回は公衆浴場の営業許可に対する距離制限規定は、憲法22条1項に違反するかが争点となった公衆浴場距離制限事件について紹介したいと思います。

公衆浴場距離制限事件の内容


Aさんは。許可を受けずに公衆浴場を経営していました。しかし、公衆浴場法2条は公衆浴場の営業免許を知事の許可制としていたため、起訴された事件です。

第二条 業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。2 都道府県知事は、公衆浴場の設置の場所若しくはその構造設備が、公衆衛生上不適当であると認めるとき又はその設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは、前項の許可を与えないことができる。但し、この場合においては、都道府県知事は、理由を附した書面をもつて、その旨を通知しなければならない。

公衆浴場距離制限事件の争点


公衆浴場の営業許可に対する距離制限規定は、憲法22条1項に違反するか?

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

判決のポイント


①積極目的(経済的弱者を守るための規制)から考えると
→設立が乱立すると、競争が激しくなり、浴場経営が悪化する恐れがある

②消極目的(国民の生命・健康を守るための規制)から考えると
→①を踏まえて、浴場経営が悪化すると、浴場の衛生設備や備品等が悪化したりする恐れがある。

公衆浴場の距離制限規定は、憲法22条1項に違反せず、合憲である。


➡最高裁判所HP( 昭和28(あ)4782)

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小売市場距離制限事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】小売市場距離制限事件/最大判昭47.11.22


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どうもTakaです。今回は営業の自由に対する小売市場開設の許可制は、営業の自由を侵害し、憲法22条1項に違反するかが問題となった小売市場距離制限事件を紹介したいと思います。

小売市場距離制限事件の内容


無許可で小売市場を開設したため、小売市場の許可制を定めている小売商業調整特別措置法に違反したとして起訴されたAさんが、同胞の許可制および許可条件としての距離制限規定は、営業の自由を侵害するとして争った。

小売市場距離制限事件の争点


小売市場開設の許可制は、営業の自由を侵害し、憲法22条1項に違反するか?

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

判決のポイント


営業の自由に対する規制は、消極目的規制と積極目的規制に区別できます。

①消極目的規制
国民の健康を守るための規制。
難しく言うと、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が、社会公共の安全と秩序の見地から看過することができない場合に、必要かつ合理的な規制である限り許される規制。

積極目的規制
社会的経済的弱者を守るための規制。
難しく言うと、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請する規制。

小売市場に対する規制は、②の積極目的規制であり、
小売市場の濫設による過当競争によって生じる共倒れを防止することや中小企業の保護という目的の為、立法目的に合理性があり、規制の手段・容態が著しく不合理とは認められないので、憲法22条1項に違反しない。すなわち、積極目的規制の法律については、「当該規制手段が著しく不合理であることが明白である場合に限って違憲である」とする、明白性の原理(国が国民を規制するのに、明らかに合理性を欠く場合は違憲となり許されないという判断基準を採用すること。裏を返せば、この基準で判断する場合は、合理性がある場合は規制することができること)を採用し、合憲と判示しました。

小売市場開設の許可制(距離制限)は憲法22条1項に違反しない。


➡️【リンク】最高裁判所HP

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2019年6月26日水曜日

尊属殺重罰規定事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】尊属殺重罰規定事件/最大判昭48.4.4


どうもTakaです。今回は尊属(父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃん)を殺害する行為の刑を普通殺人罪より加重し、無期懲役と死刑に限っている刑法旧200条(この法律は平成7年に削除された)は法の下で平等を定めた憲法14条に違反しないかが争点となった尊属殺重罰規定事件を紹介したいと思います。

刑法旧200条
自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

尊属殺重罰規定事件の内容


女性Aさんは、実の父親Bさんから長年夫婦同様の生活を強いられ、性的虐待を受けていました。このページでは細かい内容は伏せますが、悲惨な生活の結果、AさんはBさんを殺害し、刑法旧200条の尊属殺人罪で起訴されました。

尊属殺重罰規定事件の争点


尊属を殺害する行為の刑を普通殺人罪より加重し、無期懲役と死刑に限っている刑法旧200条(この法律は平成7年に削除された)は法の下で平等を定めた憲法14条に違反しないか?

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

判決のポイント


尊属殺人罪(刑法旧200条)について、最高裁判所が下した判断は
刑を重くすること自体➡合憲
刑を死刑・無期懲役に限定すること違憲
…普通殺人罪の199条の刑に比べて著しく不合理な差別的取扱いをしていると認めた。


待命処分無効確認事件って何?行政書士試験の重要判例・・憲法14条1項後段の列挙事項

【重要判例】待命処分無効確認事件(憲法14条1項後段の列挙事項)/最大判昭39.5.27


どうもTakaです。今回は「憲法14条1項の列挙事項は、限定列挙か例示列挙」や
「憲法14条は、合理的理由に基づく差別的取り扱いを許容するのか」や「年齢による差別的扱いをした処分は、憲法14条に違反するのか」が争点となった憲法14条1項後段の列挙事項事件を紹介したいと思います。

待命処分無効確認事件(憲法14条1項後段の列挙事項)の内容


町長Aさんが、過員整理のために、町の条例に基づいて年齢が55歳以上の職員であるBさんを待命処分(公務員がその地位を保持しながら、一時的に職務を担当しないことを命じる処分)した。そこでBさんは、この処分に無効確認などの訴えを提起しました。

待命処分無効確認事件の争点



  1. 憲法14条1項の列挙事項は、限定列挙か例示列挙か?
  2. 憲法14条は、合理的理由に基づく差別的取り扱いを許容するのか?
  3. 年齢による差別的扱いをした処分は、憲法14条に違反するのか?


判決のポイント



  1. 憲法14条1項の列挙事項は、例示列挙
  2. 憲法14条は、合理的理由に基づく差別的取り扱いを許容する
    →合理的な理由に基づく差別的取り扱いは憲法14条に違反しない
  3. 年齢を一応の基準とした本件処分は、任命権者の裁量の範囲内である。


判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


 町長が町条例に基づき、過員整理の目的で行なつた町職員に対する待命処分は、五五歳以上の高齢者であることを一応の基準としたうえ、その該当者につきさらに勤務成績等を考慮してなされたものであるときは、憲法第一四条第一項および地方公務員法第一三条に違反しない。


➡【リンク】最高裁判・・ 昭和37(オ)1472

神戸高専剣道実技拒否事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】神戸高専剣道実技拒否事件/最判平8.3.8


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どうもTakaです。今回は信仰上の理由により剣道の授業を拒否する生徒に対して、代替措置を採ることなく退学処分にした事が問題となった剣道実習拒否事件を紹介したいと思います。

神戸高専剣道実技拒否事件の内容


市立工業高等専門学校の生徒Aさん達5人は、その信仰する宗教(エホバの証人)の絶対平和主義の教義に基づき、体育の必修科目である剣道実技に参加しなかった。このため学校長Bさんは学生Aさん達の体育の単位を認定しなかった。5名のうち3名は剣道授業に参加したため第2学年に進級出来たが、1名は自主退学、その中でAさんは同様に履修を拒否した為に原級留置(進級できないことの公式名称)の処分を受け、次年度も同じ理由で同じ処分を繰り返した。その結果、Aさんは2年連続の原級留置を根拠とする退学処分となった。
そこでAさんはこの各処分は当人の信教の自由等を侵害するものであるとして、処分の帳消しを求める訴訟を提起した。

神戸高専剣道実技拒否事件の争点


1. 信仰上の理由により剣道の授業を拒否する生徒に対し、代替措置を採ることは、政教分離原則に違反するか?

2. 学校長による本件退学処分は、その裁量権を逸脱するか?

判決のポイント

1. 信仰上の理由により剣道の授業を拒否する生徒に対し、
 代替措置を採ることは、目的効果基準に照らして、政教分離原則に違反しない。

2. 信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置について検討しないで、退学処分を下した学校長の措置は、妥当性を欠いて、裁量権の範囲を超える違法なものである。

➡【リンク】最高裁判所HP( 平成7(行ツ)74)

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【行政書士試験】精神的自由のトレーニング問題

【行政書士試験】精神的自由のトレーニング問題


テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★思想及び良心の自由


(1)企業者は、経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、いかなるものを雇い入れるか、いかなる条件で雇うかについて、原則として自由に決定できるのであって、特定の思想、信条を有することの故をもって雇入れを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。

〇…問題文通り。
【重要判例】三菱樹脂事件


★大学の自治


(2)大学における学生の集会は、大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによって、特別な自由と自治を享有するものではない。

〇…大学における学生の集会であっても、真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合、特別な学問の自由と自治を享有しないと判例はいう。
【重要判例】東大ポポロ事件


★政教分離原則


(3)憲法20条3項は、国が宗教教育のように自ら特定宗教を宣伝する活動を行うことを禁止する趣旨であるため、宗教団体の行う宗教上の祭祀に際して、国が公金を支出することが同行に違反することはない。

×…憲法20条3項は、国及びその機関が、次のような目的を持つ宗教活動を禁止しています。

※禁止される宗教的活動
行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進・干渉等になるような行為。
【重要判例】愛媛玉串料訴訟
【重要判例】砂川政教分離訴訟(空知太神社)

★表現の自由に対する規制


(4)憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めるが、最高裁判例は、「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。

〇…表現の自由も、公共の福祉による制約を受け、他社の利益(生命・健康・人間としての尊厳、正当な人権行使)を守るための内的制約に服す。


(5)税関で、関税法における輸入してはならない貨物の検査の結果、わいせつ表現を含む書物の輸入を禁止することは、検閲に当たる。

×…税関検査は、検閲に当たらないというのが判例。
【重要判例】札幌税関検査事件

★教科書検定


(6)高校の政治経済の教科書を執筆し、その出版をしようとしているものに対して、国が予めその内容を審査し、記述の変更を求めるのは違憲である。

×…教科書検定は、例えると、教室への入場制限にすぎず、一般図書としての発行まで禁じたわけではないから、教科書検定は検閲には当たらないというのが判例。
【重要判例】第一次家永教科書事件

★出版物の事前差し止め


(7)裁判所の仮処分による出版物の事前差し止めは、憲法で禁止する検閲に該当しない。

〇…裁判所の仮処分による出版物の事前差し止めは、検閲には当たらない。
【重要判例】北方ジャーナル事件

★取材の自由


(8)捜査機関による報道機関の取材ビデオテープに対する差押処分は、一定の要件の下では、憲法21条に違反しない。

〇…一定の要件の下では、憲法21条に違反しない。
【重要判例】TBSビデオテープ押収事件


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【行政書士試験・憲法】5. 精神的自由権・・・憲法の分野で重要なポイントを確認

5. 精神的自由権



今回は憲法の分野の「精神的自由」に関する分野を攻略していきます。





自由権


自由権とは何か?


自由権とは、国家の権力的介入を排除し、個人の自由・独立を目指す権利のことです。

二重の基準論とは何か?


二重の基準論とは、精神的自由か経済的自由かによって、人権制約が憲法上許されるか否かの審査基準を使い分ける考え方です。
より具体的に言うと、
精神的自由を規制する立法➡厳格な基準
経済的自由を規制する立法➡緩やかな基準
を用いることです。


思想及び良心の自由

思想及び良心の自由とは何か?


憲法19条は、思想及び良心の自由を保障しています。
これは、人の内面的精神活動(内心)の自由を保障したものです。

第十九条  
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

思想及び良心の自由を侵してはならない意味

1. 個人が特定の思想を持つことを強要されたり禁止されたりしないこと。
2. 特定の思想の持ち主であることを理由に不利益な扱いをされないこと。
3. 思想の内容を明らかにするように強制されないこと。(沈黙の自由)

※ここで2は注意です。例えば、企業が思想・信条を理由に雇入れを拒んでも違法ではありません。また、採用や不採用を決めるために労働者の思想・信条を調査しても違法ではないというのが判例です。企業には雇用の自由があるからです。

この問題が争点となったのが謝罪広告事件と三菱樹脂事件です。
➡【重要判例】謝罪広告事件
➡【重要判例】三菱樹脂事件



信教の自由と政教分離原則


信教の自由



1. まず、信教の自由とは何か?


信教の自由とは、宗教の自由のことです。これには、信仰の自由・宗教的行為の自由・宗教的結社の自由が含まれています。

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2. 信仰の自由


信仰の自由とは、宗教を信仰し、または信仰しないことを自らの意思で決定できる自由のこと。そして、特定の宗教を選択したり変更したりする自由も含まれます。

3. 宗教的行為の自由


宗教行為の自由とは、宗教行為を行ったり、行わなかったりする自由のことです。
【重要判例】エホバの証人剣道実技拒否事件

この宗教的行為には、参加や不参加を強制されない自由も含まれます。

しかし、宗教的行為として行われたものでも、他人の生命・身体等に危害を及ぼすことはもちろん許されません。そのような行為を罰しても、憲法20条には違反しないと判例はいっています。
【重要判例】加持祈祷事件

政教分離原則



1. 政教分離って何?



政教分離原則とは、国家と宗教を分離し、国家の宗教的中立性を求める原則です。
憲法20条1項後段・3項、89条は、政教分離原則について定めています。

憲法20条1項
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

憲法20条3項
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

憲法89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

2. 目的効果基準論


国家の宗教的中立性を求めるといっても、社会経済政策を実施するうえで、国家と宗教は完全に切り離すことはできません。
例えば、現在日本にある文化財である寺院・神社などの建築物などを維持するのに国は補助金を出していますし、もし、国家と宗教を完全に分離することを考えた場合、上の例で挙げた文化財の保護以外にもさまざまな弊害が発生してしまいます。
そこで、判例では、行為の目的と効果に鑑み、相当とされる限度を超える宗教的活動のみを禁じています。


3. 宗教的活動

憲法20条3項は、国及びその機関が宗教的活動をすることを禁止しています。
ここでいう宗教的活動とは、行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進または圧迫・干渉等になるような行為をいうと判例では示しています。
【重要判例】津地鎮祭事件
【重要判例】愛媛玉串訴訟
【重要判例】砂川政教分離訴訟(空知太神社)

学問の自由と大学の自治

学問の自由


憲法23条では学問の自由を保障しています。学問の自由はが意味するのは、学問研究の自由・研究成果発表の自由・教授の自由です。
【重要判例】東大ポポロ事件

第23条 学問の自由は、これを保障する。

教授の自由


大学等の高等教育機関で教えることに関して教授の自由が認められていますが、
小・中・高校のような普通教育の場においては、一定の範囲で教授の自由が保障されますが、完全な自由を認めることができないというのが判例です。
【重要判例】旭川学力テスト事件

大学の自由

大学

大学は、学問研究の中心機関です。そのため、憲法23条は、大学での学問を自由なものにするために、大学の自治を制度として保障しています。
しかし、判例は、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学のもつ特別な学問の自由と自治を享有しないといっています。
【重要判例】東大ポポロ事件

表現の自由

表現の自由とは何か


1. まず初めに表現とは何か


表現とは、人の内心における精神作用(思想・主張・意思・感情等)を外部に表明する活動とされています。
憲法21条1項は、集会・結社の自由とともに、表現の自由を保障しています。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2. 表現の自由の優越性


表現の自由は、他の自由よりも一層慎重に行うべきである(優越的地位)といわれています。なぜなら、表現の自由が大事であるからといって何でもかんでもゆるされるなら、困ったことになってしまいます。人間は、表現活動を通じて、事故の人格を形成し発展させ、また政治に参加する為です。


3. 知る権利


公権力の干渉を受けることなく、情報を受領・収集したり、国家に対して情報の公開を請求したりする権利です。

4. 報道の自由


事実を報道する自由は、思想を表明する自由と並んで憲法21条の保障の下にあると言うのが判例です。なぜなら、報道機関の報道は、国民が国政に関与するうえで、情報を提供し国民の知る権利に尽くしているからです。
【重要判例】博多駅テレビフィルム提出命令事件

5. 取材の自由


判例では、憲法21条から考え、取材の自由は、十分尊重するに値するといわれています。
しかし、これは一つランクの低い権利と見なされています。
また、判例では、公正な裁判の実現のために、取材の自由がある程度制約を受けることになってもやむを得ないとされています。
【重要判例】北海タイムス事件

また、憲法21条は裁判において新聞記者が取材源について証言を拒絶する権利まで保障しているわけではないと判例はいっています。
【重要判例】石井記者事件

また、判例では捜査機関による報道機関の取材ビデオテープに対する差押処分は、一定の要件の下では、憲法21条に違反しない。といっています。
【重要判例】TBSビデオテープ押収事件

6. 法廷でメモを取る自由


傍聴人が法廷でメモを取ることは、見聞する裁判を認識・記憶する為に行われる限り、尊重に値し、故なく妨げてはならないと判例ではいっています。情報に接し、摂取する自由を補助する為の筆記行為は、憲法21条1項の精神に照らして尊重されるべきだからです。


表現の自由に対する規制


1. 内在的制約


表現の自由も、公共の福祉による制約を受け、他人の利益(生命、健康、人間としての尊厳、正当な人権行使)を守るための内在的制約に服します。

2. 表現の自由に対する法規制


表現の自由に対する法規制は、必要最小限のものに限定され、法規制の合憲性は厳格な機銃にによって判断されるべきとされています。

3. 性表現の規制


刑法175条はわいせつな表現を禁止しています。これについて、判例は、性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持するために、わいせつな表現を禁止できるといい、刑法175条は、憲法に違反しないといっています。

判例では、わいせつについて、次のように定義しています。

「わいせつ」の定義
①いたずらに性欲を興奮または刺激させ
②普通人の正常な性的羞恥心を害し、
③善良な性的道義観念に反するもの

刑法175条  
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

この問題が争点となった事件が以下のものです。
【重要判例】チャタレー事件/最大判昭32.3.13


表現の事前抑制



1. 表現の事前抑制の原則禁止



表現の事前抑制の禁止とは、表現行為がなされるのに先立って公権力が何らかの方法で抑制を行う事を言います。表現の事前抑制は、原則として許されないと解されています。
事前抑制は、思想の自由市場論とは相対する手段であり、過度に広範な規制になりやすく、また、濫用の危険が大きいからです。

2. デモ行進の事前抑制

デモ行進

デモ行進などの集団行動の自由は、動く集会、あるいは、その他の表現として、憲法21条1項で保障されています。そのため、公安条例によって、一般的な許可制を定め、集団行動を事前に抑制することは、憲法の趣旨に反し許されないといのが、判例です。ただし、特定の場所または方法について、合理的かつ明確な基準の下で、事前規制は出来ると判例は行っています。
このことが問題となった事件が以下のものです。
【重要判例】東京都公安条例事件
【重要判例】新潟県公安条例事件


3. 検閲の禁止


憲法21条2項前段は、検閲を禁止しています。
検閲を禁止しています。検閲について、判例は、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部または、一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき、網羅的一般的に、発表を禁止することをその特質として備えるもの」であるといっています。そして、判例は、検閲を絶対的に禁止し、例外を許さないといっています。

・検閲の特徴
1.行政権が主体である事
2.表現物の発表前の禁止を目的とすること
3.発表前に網羅的一般的に審査すること。

第21条2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

4. 税関検査


税関検査は、検閲に当たらないというのが、判例です。税関検査の対象である表現物は、国外ではすでに発表済みであり、また、税関検査は、関税徴収手続きに付随しておこなわれているにすぎず、思想内容自体を網羅的に審査し規制するものではないからです。
【重要判例】札幌税関検査事件

5. 教科書検定


教科書検定とは、学校用教科書として出版しようとする書物を国家が審査し、不適格と認めた場合、教科書としての資格を与えないという制度です。この制度は教室への入場制限にすぎず、一般図書としての発行まで禁じるものではありません。そのため、教科書検定は、検閲には当たらないというのが判例です。


6. 裁判所による表現の事前差し止め


裁判所による表現の事前差し止めは、主体が裁判所であって、行政権ではないので、検閲には当たりません。しかし、これは、表現の事前抑制ですから、原則として許されません。
このことが問題となったのが、以下の北方ジャーナル事件でした。
【重要判例】北方ジャーナル事件


次は経済的自由・人身の自由と社会権について取り上げています。
➡6. 経済的自由・人身の自由と社会権


2019年6月24日月曜日

石井記者事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】石井記者事件/最大判昭27.8.6



どうもTakaです。今回は憲法21条により、
新聞記者に取材源を秘匿するための証言を拒否する権利が
認められるかが争点となった「石井記者事件」について紹介したいと思います。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

石井記者事件の内容


ある国家公務員法違反事件の捜査中に証人として新聞記者のAさんが召喚されました。しかし、Aさんは証人の宣誓と証言を拒絶した為、証言拒絶材(刑事訴訟法161条)で起訴された事件です。

刑事訴訟法第161条
1項 正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだ者は、10万円以下の罰金又は拘留に処する。
2項 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。

石井記者事件の争点


憲法21条により、新聞記者に取材源を秘匿するための証言を拒否する権利が認められるか?

判決のポイント


憲法21条は、新聞記者に証言拒否を認めていない。取材源を秘匿する権利はない。
➡裁判において、新聞記者が取材源について証言を拒絶する権利まで保障しているわけではなく、医師などに証言拒絶権を認めた刑事訴訟の規定を新聞記者に類推適用(ある法規が想定した場面によく似ているものがあるケースのときに、法規の趣旨に従いつつ、その守備範囲を少し広げて解決を図ろうという方法)することもできない。


➡️【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和25(あ)2505


悪徳の栄え事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】悪徳の栄え事件/最判昭44.10.15



どうもTakaです。今回はわいせつ性を有する文書が、同時に芸術性・思想性を有する場合であっても、刑法175条の処罰対象とするべきかが問題となった悪徳の栄え事件を紹介したいと思います。

第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

悪徳の栄え事件の内容


性描写のある外国小説「悪徳の栄え」の翻訳本を出版した出版社・翻訳者らが、刑法175条(わいせつ物頒布罪)で起訴された。

悪徳の栄え事件の争点


わいせつ性を有する文書が、同時に芸術性・思想性を有する場合であっても、刑法175条の処罰対象とするべきか?

判決のポイント


芸術性・思想性のある文書でも、わいせつ性が解消されない限り、処罰の対象となりうる。


➡【リンク】最高裁判所HP( 昭和39(あ)305)

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自衛隊合祀拒否訴訟って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】自衛隊合祀拒否訴訟/最大判昭和63.6.1



碑文

どうもTakaです。今回は自衛隊職員の合祀申請に対する協力は、憲法20条3項で禁止されている宗教的活動にあたるかが争点となった自衛隊合祀拒否訴訟について紹介したいと思います、

自衛隊合祀拒否訴訟の内容


自衛隊員であるAさんは公務中の事故で亡くなり、山口県隊友会(私人)が自衛隊職員の協力を得て、Aさんの合祀(骨壺からご遺骨を取り出し、他人の遺骨とまとめて埋葬すること)を県の護国神社に申請し、合祀されることとなりました。しかし、その行為の後に、キリスト教信者であるAさんの妻であるBさんが反対し、隊友会と国を相手として、人格権の侵害を理由に、精神的損害の賠償と合祀の取消しを求めました。

自衛隊合祀拒否訴訟の争点


1. 自衛隊職員の合祀申請に対する協力は、憲法20条3項で禁止されている宗教的活動にあたるか?

2. 静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送る利益(宗教的人格権)は法的利益として認められるか?

判決のポイント


1. 自衛隊職員の合祀申請に対する協力行為は、目的効果基準に照らして憲法20条3項で禁止される宗教的活動にあたらない。

※目的効果基準・・・目的と効果の2点から判断する

憲法20条3項が禁止する「宗教的活動」とは
行為の目的が宗教的意義を持ち、
その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉
になるような行為を言う。

2. 静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益は、直ちに法的利益とは認められない。

※なお、現在の自衛隊は、殉職隊員の慰霊のため神社への合祀に関し部隊の長等が公人として奉斉申請者となること、部隊等が国家機関でない自衛隊遺族会、隊友会等の団体に合祀を推進するよう働きかけること及び宗教団体とこれら団体との連絡や合祀に必要な事務代行は行っていないそうです。

➡【リンク】最高裁裁判所HP・・ 昭和57(オ)902

サンケイ新聞事件って何?行政書士試験頻出の重要判例・・・反論文掲載請求権は憲法で保障される?

【重要判例】サンケイ新聞事件/最判昭62.4.24



どうもTakaです。今回は、反論文掲載請求権は、表現の自由を保障する憲法21条1項により直接保障されるのかが争点となったサンケイ新聞事件を紹介します。

サンケイ新聞事件の内容


自由民主党が日本共産党に関する意見広告をサンケイ新聞紙上に掲載した。これに対して、日本共産党は、当該意見広告は中傷にあたるとして、サンケイ新聞に対して、無料での反論文の掲載を請求した。

サンケイ新聞事件の争点


反論文掲載請求権は、表現の自由を保障する憲法21条1項により直接保障されるか。

第二十一条 
一項
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
二項
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

判例のポイント


私人間において、憲法21条の規定から直接に、反論文掲載請求権を認めることはできない。


➡【リンク】最高裁判所HP・・昭和55(オ)1188

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2019年6月23日日曜日

津地鎮祭事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例・・・市の行う地鎮祭は政教分離の原則に違反する?

【重要判例】津地鎮祭事件/最大判昭和52.7.13


政教分離-地鎮祭

どうもTakaです。今回は政教分離の原則はどのような法的性格のものか?
憲法20条3項が禁止する「宗教的活動」とはどのような行為かという点が
争点となった津地鎮祭事件について紹介したいと思います、

津地鎮祭事件の内容


津市は、市の体育館の工事を始めるにあたり、
神道式の地鎮祭を行い、その費用を市の公金から支出しました。
当時市会議員であったAさんは、
当該支出行為は憲法20条3項および89条に反する違法なものであるとして、
地方自治法242条の2(住民訴訟)に基づき、
市長Yに対し、本件支出によって市が被った損害の填補(埋め合わせすること)を
請求した事件です。

津地鎮祭事件の争点


1. 政教分離原則とはどのような法的性格のものか?
2. 憲法20条3項が禁止する「宗教的活動」とはどんな行為に当たるのか?
3. 本件神道式の地鎮祭は「宗教的活動」にあたるか?

判決のポイント


政教分離規則は、
制度的保障(特定の人権の保障を一層確実なものにするために,国家の運営上の仕組みや決りを憲法上保障したもの)であり、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものです。

国家が宗教とのかかわり合いをもつことをまったく許されないとするものではなく、
そのかかわり合いが相当される限度を超える場合に、
その行為を許さないとするもの。つまり、非完全な分離でもよい。

憲法20条3項が禁止する「宗教的活動」とは、
行為の目的が宗教的意義を持ち、
その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉になるような
行為をいう。
このように、目的と効果の2点から判断するという目的効果基準を採用している。

神道式地鎮祭の目的は、もっぱら世俗的なものであり、
その効果は、神道を援助、助長、促進しまたはほかの宗教に圧迫、干渉を加えるものではないから、憲法20条3項で禁止する「宗教的活動」にはあたらない。つまり地鎮祭は合憲である。

➡【リンク】最高裁裁判所HP・・ 昭和46(行ツ)69

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愛媛玉串料訴訟って何?行政書士試験で頻出の重要判例・・・県の玉串料の支出は憲法違反?

【重要判例】愛媛玉串料訴訟/最大判平9.4.2

yasukuni-shrine

どうもTakaです。今回は公金による玉串料の支出は憲法20条3項および憲法89条に違反しないかが問題となった愛媛玉串料訴訟を紹介したいと思います。

愛媛玉串料訴訟の内容


愛媛県は、靖国神社・県の護国神社に対して、玉串料その他の名目で、公金より金品を支出していた。これに対して、県の住民であるAさん達が、当該支出行為は憲法20条3項および89条に違反する違法な物であるとして、県知事Bさん達に対し、本件支出によって県が被った損害の賠償を請求した。

愛媛玉串料訴訟の争点


県の公金による玉串料の支出は、憲法20条3項、憲法89条に違反するのか?

第20条 3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

判決のポイント


1. 公金による玉串料の奉納は、その目的が宗教的な意義を持つことから、その行為も特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであるから、憲法20条3項に違反する。

2. 靖国神社・護国神社は憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」にあたり、目的効果基準に照らして、本件支出は憲法89条で禁止する公金の支出に当たり、憲法89条に違反する。

➡【リンク】最高裁判所HP・・ 平成4(行ツ)156

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外務省秘密漏洩事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】外務省秘密漏洩事件/最決昭53.5.31



どうもTakaです。今回は取材の手段が相当なもしくは不当かによって、報道が合法なものか違法なものかに分かれるかが問題となった外務省秘密漏洩事件を紹介したいと思います。

外務省秘密漏洩事件の内容


A記者は、1971年に調印された沖縄返還交渉に関する情報を入手するため、外務省の女性事務官Bさんと肉体関係を持ち、Bさんから国家機密に関する情報(沖縄返還協定に際し、アメリカ政府が沖縄の地権者に支払う土地現状復旧費用を日本国政府がアメリカ政府に秘密裏に支払う密約が存在するとの情報)を入手しました。その後、その情報をA記者が当時の日本社会党員に伝え、国会でその内容が暴露され大きな問題となりました。その為、A記者が国家公務員法の秘密漏示と、そそのかし罪で起訴された事件です。別名西山事件と呼ばれています。

外務省秘密漏洩事件の争点


国家機密に対する取材につき、正当な取材活動として認められるのはどの範囲か?

判決のポイント


取材が、報道の目的から行われたもので、手段や方法が法秩序から考えて適切なものであり社会観念上認められるものであれば、正当な取材活動であり違法ではない。
しかし、手段や方法が適切ではなく社会観念上認められないものである場合には、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法である


➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和51(あ)1581

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2019年6月22日土曜日

サラリーマン税金訴訟って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】サラリーマン税金訴訟/最大判昭60.3.27


【重要判例】サラリーマン税金訴訟/最大判昭60.3.27

どうもTakaです。今回は租税の分野における性質の違いなどを理由とする取扱いの区分が憲法14条1項に違反するかどうかが問題となったサラリーマン税金訴訟を紹介したいと思います。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

サラリーマン税金訴訟の内容


Aさんは、私立大学の教授であるが、所得税について雑所得があるのに確定申告をしなかったため、税務署長により、それを加算した決定及び無申告加算税の賦課決定がなされた。Aさんは、不服申し立てを経て、本件課税処分の取り消しを求めて出訴しました。

サラリーマン税金訴訟の争点


租税の分野における所得の性質の違いなどを理由とする取扱いの区別について、憲法14条1項に違反するかどうかの判断基準はどの様なものか。

事業所得等に関わる必要経費については、事業所得者等に実際に要した金額による実額控除を認めているのに対して、給与所得については、必要経費の実額控除を認めず、代わりに同法所定額による概算控除を認める旧所得税法の規定は、憲法14条1項に違反しないか。

判決のポイント


租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別はその立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が当該目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法14条1項に違反しない


【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和55(行ツ)15

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東京都公安事件って何?行政書士試験頻出の重要判例・・・東京での集会やデモ行進に許可が必要な条例は憲法違反?

【重要判例】東京都公安条例事件/最判昭35.7.20


横断幕をもってデモに参加する人たちの絵

どうもTakaです。
今回は集会や集団行進の際に東京都公安委員会の許可を
必要とした東京都条例は、憲法21条に違反するかという
問題が裁判となった東京都公安条例事件を紹介したいと思います。

第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の
表現の自由は、これを保障する。

東京都公安条例事件の内容


公安委員会の許可を得ないで
集会およびデモ行進を主催・指導し、
また許可条件に違反するデモ行進を指導したとして、
Aさんらが東京都公安条例に違反するとして起訴された事件です。

東京都公安条例事件の争点


集会や集団行進の際に東京都公安委員会の許可を
必要とした東京都公安条例は憲法21条に違反するか?

判決のポイント


東京都公安条例は憲法21条に違反しない。


➡【リンク】最高裁裁判所HP( 昭和35(あ)112)

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オウム真理教解散命令事件って何?行政書士試験の重要判例・・・宗教法人の解散命令は、憲法20条1項(信教の自由)に違反するか?

【重要判例】オウム真理教解散命令事件/最決平8.1.30



どうもTakaです。
今回は、宗教法人オウム真理教の解散命令は、憲法20条1項(信教の自由)に違反するか?が争点となった、 オウム真理教解散命令事件について紹介したいと思います。


当時のオウム真理教事件に関連する動画リンクを張っておきました。
当時は、以下のような大変な事件が立て続けに起こっていました。





オウム真理教解散命令事件の内容


宗教法人オウム真理教Aの代表役員のおよびその指示を受けた多数の幹部は、組織的に、不特定多数の者を殺害する目的で、毒ガスの一種であるサリンの生成を企てた。そこで、検察および東京都知事は、かかる行為は殺人予備行為に相当し、宗教法人法81条1項1号などに該当するとして、Aの解散命令を東京地裁に請求した。

宗教法人法第81条 
1項 
裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。 
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。

オウム真理教解散命令事件の争点


宗教法人オウム真理教の解散命令は、憲法20条1項(信教の自由)に違反するか?

判決のポイント


宗教法人法に基づく宗教法人の解散命令は、憲法20条1項に違反しない、合憲である。


①81条の解散命令制度は、もっぱら宗教法人の世俗的(世の中の風俗・習慣)側面を対象とし、かつ、もっぱら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする(横から口出しをする)意図によるものではなく、制度の目的は合理的である。


➁そして、Yは、大量殺人を目的として、サリンを生成したのであり、Yは法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らかである。


判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


大量殺人を目的として計画的、組織的にサリンを生成した宗教法人について、宗教法人法八一条一項一号及び二号前段に規定する事由があるとしてされた解散命令は、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、右宗教法人の行為に対処するには、その法人格を失わせることが必要かつ適切であり、他方、解散命令によって宗教団体やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまるなど判示の事情の下においては、必要でやむを得ない法的規制であり、憲法二〇条一項に違反しない。

➡【リンク】最高裁判所HP・・ 平成8(ク)8

加持祈祷事件って何?行政書士試験頻出の重要判例・・・憲法により保障されない宗教的行為

【重要判例】加持祈祷事件/最大判昭38.5.15



どうもTakaです。今回は宗教的行為として精神障害の治療のために加持祈祷を行い、患者を死亡するに至らしめるような場合でも、憲法20条1項により宗教的行為として保障されるのかが問題となった加持祈祷事件を紹介したいと思います。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

加持祈祷事件の内容


僧侶Aさんは、精神障害の治療のために、Bさんに対して加持祈祷を行ったが、その結果Bさんは急性心臓麻痺により死亡し、Aさんは傷害致死罪(刑法205条)の有罪判決を受けた、その為、Aさんは信教の自由を理由に上告した。

※この際に行った加持祈祷とは以下のような内容でした。
僧侶AさんはBさんを取り押さえ、手足を縛り、無理に燃えさかる護摩壇の近くに引き据えて線香の火に当らせた。さらに、Aさんは怒号を発しながらBさんの喉を線香の火でけむらせ、背中を殴りつけたりしたそうです。

加持祈祷事件の争点


精神障害の治療のために加持祈祷を行い、患者を死亡するに至らしめるような場合でも、憲法20条1項により保障される宗教的行為といえるのか?

判決のポイント


他人の生命、身体に危害を及ぼす違法な行為は、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱している。つまりこの際の加持祈祷は、憲法により保障されないということです。

【リンク】最高裁判所HP( 昭和36(あ)485)

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札幌税関検査事件って何?行政書士試験頻出の重要判例・・税関でのわいせつ物の輸入規制は検閲に当たる?憲法に違反する?

【重要判例】札幌税関検査事件/最大判昭59.12.12

税関検査事件を税関と書かれた絵にて表す


どうもTakaです。今回は検閲の意義やわいせつ表現物の輸入規制は、憲法21条に違反するのかが争点となった札幌税関検査事件を紹介したいと思います。

税関検査事件の内容


外国から性行為を撮影した映画・書籍等を郵便で輸入しようとしたAさんは、函館税関札幌税関支署長から関税定率法の定める輸入禁制品に該当する旨の通知を受けた。そこでAさんは、函館税関長に異議申し出をしたが、棄却されたため、当該通知及び棄却決定の取り消しを求めて提訴した。

税関検査事件の争点


1. 憲法21条2項で禁止される検閲の意義とは何か?
2. 輸入手続において税関職員が行う検査は検閲に当たるのか?
3. 税関検査によるわいせつ表現物の輸入規制は、憲法21条1項に違反するのか?
4. 合憲限定解釈の可否

判決のポイント


検閲は以下の通りに解釈されます。

①行政権が
②思想内容等の表現物を
③発表の禁止を目的に
④発表前に行われるものである。

検閲は憲法21条2項により、絶対的に禁止されています。

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

しかしながら・・

1. 輸入書籍等は外国ですでに発表済みのものであるから、税関検査は検閲の定義を満たさず、検閲に当たらない。

2. わいせつ表現物の輸入を規制することは、公共の福祉に合致するから憲法21条1項に反しない。

3. 一定の要件の下で、合憲限定解釈(条文の文言の意味を限定することによって、違憲判断を避ける方法)が許容される。

規制された表現物は国外ですでに発表済みであり発表の機会が全面的に奪われるものではないこと、税関検査は思想を規制するものではないこと、税関長の通知には司法審査の機会が与えられており行政権が最終ではないことから、憲法第21条2項にいう検閲にはあたらないとされました。


【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和57(行ツ)156

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東大ポポロ事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】東大ポポロ事件/最大判昭38.5.22


どうもTakaです。今回は大学の有する学問の自と自治の内容が問題となった東大ポポロ事件を紹介したいと思います。

東大ポポロ事件の内容


東京大学の公認学生団体である「ポポロ劇団」が、大学内で松川事件(昭和24年に福島県の東北線松川駅付近で起こった列車転覆事件であり、労働組合員や共産党員が逮捕・起訴された事件)を題材とした演劇を上映していました。その際に、学生のAさんが演劇会場に潜伏していた私服警官を発見し、身柄を拘束するとともに暴行を加えたため、「暴力行為等処分に関する法律」に違反したとして起訴されました。

東大ポポロ事件の争点


1. 大学の有する学問の自由と自治の内容は何か?
2. 大学の有する学問の自由と自治の保障は学生にも及ぶか?

判決のポイント


大学の学問の自由と自治は、直接には、教授その他の研究者の研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自由を意味する。

学生は、教授の有する学問の自由と自治の効果として、学問の自由と大学の自治の保障を受けるにすぎない。よって、学生の集会が学問的な研究またはその結果の発表のためのものではなく、実社会の政治的または社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する自由と自治は共有しないといわなければならない。


【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和31(あ)2973

2019年6月21日金曜日

禁煙処分事件って何?行政書士試験頻出の重要判例・・拘置所等における喫煙を禁止する規則は憲法に違反する?

【重要判例】禁煙処分事件/最大判昭45.9.16


禁煙処分事件

どうもTakaです。今回は、受刑者、刑事被告人や被疑者等で拘置所等に拘禁中の者の喫煙を禁止する規則は憲法13条に違反しないかが争われた禁煙処分事件について紹介したいと思います。

禁煙処分事件の内容


未決勾留中であったAは、旧監獄法施行規則96条に基づき喫煙を禁止されたため、国を相手に、禁煙処分によって精神的苦痛を被ったとして国家賠償請求の訴えを提起した。

禁煙処分事件の争点


在監者に対して喫煙を禁止する旧監獄法施行規則96条は、憲法13条に違反するか?

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

判例のポイント


喫煙の自由はあらゆるとき、所において保障されなければならないものではないので、未決勾留者の喫煙を禁止する規定は、憲法13条に違反しない

【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和40(オ)1425

2019年6月19日水曜日

ノンフィクション「逆転」事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】ノンフィクション「逆転」事件/最判平6.2.8




どうもTakaです。今回はノンフィクション作品において前科等をみだりに公表されない権利は法律上の保護に値するのかという問題が裁判となったノンフィクション「逆転」事件を照会したいと思います。

ノンフィクション「逆転」事件の内容


Aさんは、傷害罪の実刑判決を受けた後、就職・結婚を経て平穏な暮らしを過ごしていましたが、後にBさんが執筆したノンフィクション小説「逆転」によって、その実名を掲載され、前科に関わる事実を公表されました。そのため、AさんはBさんに対して、プライバシー侵害を理由に損害賠償請求訴訟を提起しました。

ノンフィクション「逆転」事件の争点


ノンフィクション作品において前科等を公表されないという利益は、法律上の保護に値するのか?

判決のポイント


1. 前科等を公表されない利益は、法的保護に値する。前科は、だれでも最も隠しておきたい個人情報のひとつであること。

2. 前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越する場合には損害賠償を求めることが認められる



なお、追記ですが、
現在刊行されている『逆転』(岩波現代文庫)ではAさんの名前は仮名表記になっているそうです。

2019年6月18日火曜日

前科照会事件って何?行政書士試験頻出の重要判例

【重要判例】前科照会事件/最判昭56.4.14


どうもTakaです。今回は前科等をみだりに公表されない権利は法律上の保護に値するのかという問題が裁判となった前科照会事件を紹介したいと思います。

前科照会事件の内容


Aさんは、自動車教習所で職員として働いていましたが解雇されたました。Aさんは教習所を相手取って地位保全(労働者が使用者に対して雇用契約上の地位を有することを仮に定めるとの裁判所の判断を求める手続)の仮処分を申請しました。これを受けて教習所側の弁護士が弁護士会を通じて区役所にAさんの前科・犯罪経歴の照会を行った。そして、区長さんが、弁護士会からの前科等の照会に応じたことにより、前科を公表されてしまいました。そこで、Aさんは、区長の行為を過失による公権力の行使であるとして国家賠償請求訴訟を提起した。

前科照会事件の争点


みだりに前科等を公表されないという権利は、法律上の保護に値するのか?

判決のポイント


前科等は人の名誉や信用に直接かかわるので、前科等あるものもこれをみだりに公開されない法律上の保護に値する権利を有する

【行政書士試験】一般的基本権と参政権・受益権・・トレーニング問題

【行政書士試験】一般的基本権と参政権・受益権のトレーニング問題


テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★幸福追求権


(1)すべて国民は個人として尊重される、と憲法に明記されている。

○…憲法13条。国民が個人として尊重されることは、国家が基本的人権を尊重するための大前提である。


(2)国民の生命、自由、幸福追求に対する権利は、絶対的な保障が憲法の条文でうたわれている。

×…「公共の福祉に反しない限り」という留保つきで,立法や国政で最大の尊重を必要とするとされている(憲法13条後段)。

第十三条 
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


★プライバシーの権利


(3)プライバシー権は、憲法に明記されていないので、憲法上の権利としては主張できないと考えられている。

X…憲法に明記されていない権利でも,憲法13条の幸福追求権を根拠として主張されている。


★法の下の平等


(4)すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、年齢、国籍、社会的身分または門地によって、政治的・経済的・社会的関係において差別されない、と憲法に明記されている。

x…憲法14条の平等原則だが、14条に「年齢」と「国籍」は明記されていない。実際に未成年者の法律行為は成人より制限されるなど年齢による差別があり、外国人の入国は日本人より制限されるなど国籍による差別もある。

第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


(5) 何人も承諾なしに写真撮影をされない自由があり、警察官が正当な理由もなしに個人を撮影することは、憲法13条の趣旨に反する。条例違反の学生デモを警察官が撮影することは許されないか?

 x…(条例違反という)犯罪が行われた場合で、その証拠保全の必要
性や緊急性があり、撮影が一般的に許容される方法で行われたときは、 憲法13条に違反しない


(6)日本人の父と外国人の母との間に生まれた子は、父と母が結婚していない場合、父に認知されたとしても、日本国籍を取得することができない。

x…日本人の父に認知をされれば、父母が結婚をしていなくても、子は日本国籍を取得できる。
【重要判例】国籍確認請求事件


(7)市区町村など行政の区割りを基本として選挙区をきめるため、1人の国会議員を選ぶ選挙人数に相当な差がでるとしても、 仕方のないことであり、最大 4.4 倍の差があったとしても憲法違反ではなく、選挙自体も無効とはならない。

×…国会議員1人当たりの有権者数に最大 4.4 倍の差があることは、憲法14条に違反し、違憲である。ただし、選挙自体は無効とはしない。
【重要判例】議員定数の不均衡訴訟
議員定数の不均衡訴訟最高裁は、選挙自体は無効とはしないが、違憲と判断した。


(8)刑務所(刑事施設)において、喫煙を希望して喫煙を禁止することは憲法13条の希望する受刑者に対する幸福追求権に違反する。

×…喫煙による火災発生・逃亡の恐れや、タバコは時好品にすぎないことなどから、禁煙程度の制限は合理的な制限であり、憲法13条に違反しない

(9)犯行当時に実名報道された犯罪事件に関して、相当の年月が経ってからまた実名報道をしてもプライバシーの侵害には当たらない。

×…犯行当時に実名報道された事件でも,相当の年月が経った後にまた実名報道をすることは特別な理由がない限りプライバシーの侵害に当たる。
【重要判例】ノンフィクション「逆転」事件


(10)スピード違反をした自動車に同乗していただけで、スピード違反を教唆したわけでもない同乗者を、自動速度監視装置 (オービス)が運転手とともに写真撮影をしてしまった場合、プライバシーの侵害に当たる。

×…自動速度監視装置(オービス)の写真撮影は,スピード違反という犯罪の証拠を保全した行為であり,運転手の近くにいるために除外で きない同乗者をいっしょに写真撮影したとしても憲法13条に違反しない。
【重要判例】自動速度監視装置事件


(11)民法 900条で非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と規定しているが、これは憲法に違反しない。

〇…「法律婚の尊重」と「非嫡出子の保護」の調整をはかったもので 憲法に違反しない。


(12) 女性にのみ前婚の解消の日から6か月間の再婚禁止期間が設けられていることは、法の下の平等を保障する憲法に違反する。

× …民法733 条の規定であるが,懐胎した子の父を明確にして、父子関係をめぐる紛争を未然に防ぐためであり、違憲ではない。


(13)男性より女性のほうが年齢の低い男女別の定年制を定めた会社や団体などがあるとしても、体力や社会的な要請の違いなどからかんがみて、定年の差が5歳程度なら不合理な差別とはいえない。

×…女性ということで、通常の職務であれば,企業経営上要求される職務遂行能力に欠けるところはない。女性の定年年齢を男性より低く定めることは、女性であることのみを理由とする不合理な差別である。
【重要判例】日産自動車事件


(14) 社会保障上の施策で、福祉的給付を行う場合、日本国民を在留外国人より優先的にあつかうことは、憲法14条1項、憲法 25条に抵触し許されない。

×…社会保障上の福祉的給付を行う場合、日本国民を在留外国人より優先的にあつかうことは許される。憲法14条1項・25条に違反しない。
【重要判例】塩見訴訟


(15)在外邦人の選挙権が制限されることは物理的に仕方のないことであり、在外邦人が、選挙区での投票をすることはできず、選挙権が比例のみに限られていることは違憲とまでは言えない。

×…比例での在外選挙が実現しているように、選挙区の投票も困難とはいえず、在外邦人の選挙権が比例のみに限られていることは違憲である。


(16)憲法13条以下で保障される諸権利のなかで、「国民」を主語としている権利については、日本に在留する外国人に対して保証が及ばないとするのが判例である。

×…憲法第13条の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを
その対象としているものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。
【重要判例】マクリーン事件


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4. 一般的基本権と参政権・受益権のまとめ

4. 一般的基本権と参政権・受益権のまとめ


どうもTakaです。このページでは憲法の一般的基本権と参政権・受益権について紹介しています。

全額返金保証制度あり!高い合格率を誇る行政書士通信講座の秘密とは?
< おしながき ― まとめ >
・幸福追求権
憲法13条の幸福追求権には、新しい人権を根拠づける機能がある。
前科や犯罪経歴をみだりに公表することは許されない。
警察官が、正当な理由もなく、孤児の容貌を撮影することは許されない。
氏名・住所などを、本人の意思に基づかずに、みだりに開示することは許されない。

・法の下の平等
法の下の平等の原則は、法の内容自体が平等であることを求めている。
法の下の平等とは、合理的な差異を許容する相対的平等です。
華族その他の貴族の制度は、禁止されている。

・参政権
憲法は選挙権を保障しており、やむを得ない事由がない限り、選挙権の行使を制限できない。
謙虚資格の平等だけではなく、投票価値の平等も、憲法上の要請である。
議員定数の格差による投票価値の不平等が合理的でない場合、選挙権の平等の要請に反し、合理的期間内に是正されない場合には違憲となる。

・受益権
公務員の不法行為による損害について、国家賠償請求権が認められている。
抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けた場合、補償を請求できる。
請願を受けた機関は、その内容を審理判定する義務を負うわけではない。



幸福追求権



幸福追求権って何?


幸福追求権とは、個人の尊厳の原理に基づく一般的・包括的な権利です。
通説としては、個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体をいいます。
(人格的利益説)
憲法13条では、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」をうたっています。
そのため、時代の変遷と共に生まれてきた新しい人権を根拠づける機能があるとされています。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

プライバシーの権利



1.プライバシーの権利って何?


プライバシーの権利とは私生活をみだりに公開されない権利であるというのが判例や伝統的な学説です。しかし、プライバシーの権利は自己についての情報をコントロールする権利であるとする説が有力になっています。

2.前科・犯罪経歴


前科や犯罪歴は、人の名誉・信用に直接関わる事項であり、これらをみだりに公開されない利益は、法律上の保護に値すると言うのが判例です。そして判例では、市町村長が漫然と弁護士会の照会に応じて、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使に当たると言っています。
しかし、判例では、その事実を公表することに歴史的または社会的意義が認められる場合、その者の社会活動の評価の資料として必要な場合、そして、社会一般の正当な関心の対象となる公的立場の人物であって、そのものが適任者か否か等の判断の資料とする場合には、前科等に関する事実を公表することも許されるといっています。

3.容貌・姿態(肖像権)


何人にも、承諾なしに、みだりに容貌・姿態を撮影されない自由があります。
そのため、判例は、警察官が正当な理由もなく個人の容貌等を撮影することは、
憲法13条の趣旨に反し、許されないと言っています。
ただし、現行犯であって、緊急の必要性があり、撮影の方法が正当な場合には、
近くにいた第三者の要望を含むことになっても、例外的に許されるというのが判例です。

この問題が有名な判例となったのが京都府学連違法デモ写真撮影事件です。
【重要判例】京都府学連違法デモ写真撮影事件/最大判昭44.12.24

※オービス(自動速度監視装置)は肖像権に違反しないか?
オービス(自動速度監視装置)によって、速度違反車両の運転手の容貌を写真撮影することについて、判例は、現に犯罪が行われている場合であり、その犯罪の性質・様態から緊急に証拠を保全する必要があり、加えて、その方法は一般的に許容される限度を超えない相当なものだから、仮に同乗者の容貌を撮影することになっても、憲法に違反しないといっています。

この問題の判例となったのが自動速度監視装置事件です。
【重要判例】自動速度監視装置事件/最判昭61.2.14

4.指紋


憲法13条により、みだりに指紋の押捺(おうなつ)を強制されない自由が保障されています、判例では、在留外国人にも、みだりに指紋の押捺を強制されない自由の保障が等しく及ぶといっています。しかし、外国人登録法のかつての指紋押捺制度は、在留外国人の公正な管理という正当な目的に基づき、一般に許容される限度を超えない相当な法律によるものだから、憲法13条に違反しないといっています。

この問題が有名な判例となったのが、外国人指紋押なつ拒否事件です。
【重要判例】外国人指紋押なつ拒否事件/最判平7.12.15

5. 氏名・住所・電話番号


氏名・住所・電話番号・学籍番号についても、プライバシーに係る情報として法的保護の対象になるといのが判例です。

自己決定権


自己決定権とは、一定の指摘事項について、権力の干渉を受けることなく、自ら決定することのできる権利をいいます。こちらも憲法13条によって保障される権利である


法の下の平等



法の下の平等って何?


憲法14条1項は、「すべての国民は、法の下に平等」と定めています。「法の下に平等」という原則は、だれであっても法律には拘束され、法律上あくまで平等に取り扱われるという考え方です。これには、立法者をも拘束し、法の内容自体が平等であることを求めているというのが多くの学者の考え方です。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

形式的平等


多数説は、憲法14条1項が求めているのは、実質的平等ではなく、形式的平等であると言っています。結果を平等にする必要まではなく、一律同等に扱えばよいというのです。

相対的平等


憲法14条1項が要請する平等は、例外を許さない絶対的平等ではなく、合理的な差異を許容する相対的平等であると解されています。相対的平等は、同一の事情と条件の下では均等に取り扱うことを意味しています。

【重要判例】サラリーマン税金訴訟

憲法14条1項後段の列挙


憲法14条1項後段の列挙は、例示的列挙にすぎず、列挙以外の自由による差別も、原則として許されないというのが判例です。
憲法14条1項後段の「人種」とは、人間の人類学的種類であり、国籍は含まれません。そして、「社会的身分」とは、社会において継続的に占める地位を意味し、高齢であることは、これに当たらないというのが、判例です。また、「門地」とは、家柄のことです。

第14条 1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


貴族制度・栄典授与


憲法14条2項は、貴族の制度を禁止しています。また、憲法14条3項は、栄典(栄誉をあらわすために授与される位階や勲章など)の贈与にはいかなる特権も伴わないと定めています。

第14条 2項 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
第14条 3項
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。


参政権





選挙権



参政権と言うのは、国民が主権者として政治に参加する権利の事です。
憲法15条1項は、国民に選挙権を保障し、公務員の選定・罷免が究極的に国民の意思に基づくことを求めています。

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

選挙の基本原則


1.普通選挙


憲法15条3項は、成年者による普通選挙(財力等を選挙資格に必要なものとして求めない選挙制度)を保障しています。

第15条 3項
公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する

2.平等選挙


憲法14条1項・44条は、平等選挙を求めています。
平等選挙とは、複数投票制などの不平等選挙を否定し、投票を1人1票とするとともに、1票の重みの平等をも要請する制度です。これはまた与えた選挙権の内容(投票の価値)をも平等であることを求めるものです。

第14条 すべて国民は、の下に平等であつて、種、信、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。


3.秘密選挙


憲法15条4項では、秘密選挙(誰に対して投票したのかを知られないこと)を保障しています。判例では、議員の当選の効力を定める手続きにおいても、誰に投票したかを調べてはならないともいっています。

第15条 4項
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

議員定数の不均衡


議員定数の配分については、国会の裁量に委ねざるを得ません。
しかし、国会において通常考慮できる諸般の要素を斟酌しても、その投票価値の不平等に合理性がるとは考えられない場合には、憲法に違反すると、判例では言っています。ただし、定数格差が選挙権の平等の要請に反すれば、直ちに憲法違反というわけではありません。判例は、合理的期間内に是正されない場合に初めて意見になると言っています。

受益権



受益権とは何か?


受益権とは、人権を確保するために、国家に対して作為(何かしらの行動)を求める権利です。国務請求権ともいいます。裁判を受ける権利・国家賠償請求権・刑事補償請求権および請願権(国または地方公共団体の機関に対して、国務に関する希望を述べる権利)がこれに当たります。

裁判を受ける権利


憲法32条は、裁判を受ける権利を保障しています。ここで言う裁判は民事事件、刑事事件や行政事件の裁判も含まれます。

第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

国会賠償請求権


憲法17条は、公務員の不法行為による損害について国または公共団体の賠償責任を認め、被害者の救済を確実なものにしようとしています。ただし、憲法17条を直接の根拠として、国家賠償を認めることはできません。国家賠償請求権の行使には、法律の制定が必要です。

第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。


刑事補償請求権


刑事補償請求権とは、本来必要でないのに、抑留や拘禁という人権制限を受けたものに対して、相応の保証を行い、公平を図ろうとするものです。憲法40条では、抑留または拘禁された後に、無罪の裁判を受けた場合には補償請求を認めています。

第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。


請願権


請願権とは、国務に関して希望を述べる権利のことです。請願の対象は範囲が広く、憲法改正の請願を行うこともできます。ただし、請願を受けた期間は、それを誠実に処理すればよく、その内容を審理判定する義務を負うわけではありません。

第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

次は、憲法の精神的自由について紹介しています。
➡【リンク】5. 精神的自由