2019年7月8日月曜日

8. 内閣と財政・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント!「内閣と財政」についてわかりやすく説明

8. 内閣と財政


内閣

出典:首相官邸ホームページ

どうも、Takaです。
今回は行政書士試験の憲法の分野の「内閣と財政」について紹介したいと思います。




内閣

行政権


1. 内閣って何?


内閣は、国の行政権を担当する最高の合議機関(複数の構成員の意見を取りまとめて決定を行う機関)であり、内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織される合議制の機関です。
そして、内閣は行政作用を処理する中枢の機関であり、最高の統括機関でもあります。

※閣議
内閣では、閣議という会議で意思決定が行います。
閣議は慣例上、非公開とされ、その意思決定は全員一致によるとされています・

2. 行政権って何?


行政権の仕事


内閣の行う行政権は、国家権力から立法権と司法権を除いた残りの部分と考えられています。(控除説)


3. 独立行政委員会


特定の行政分野について内閣から独立して職権を行使することが認められている合議制の機関を独立行政委員会といいます。例としては人事院や公正取引委員会が挙げられます。

内閣の責任


1.内閣の連帯責任


内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います。

第六十六条 
一項 
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。 
二項 
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。 
三項 
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

国会は、各大臣の責任を追及することができます。

2. 議院内閣制


立法府と行政府が一応分離し、行政府が立法府に対して責任を負うことを議院内閣制といいます。

内閣の権能


1. 国事行為の助言と承認


内閣は天皇の国事行為に対して、助言と承認を行います。


第三条 
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。


2. 国会の召集の決定


内閣は国会の召集を決定します。
常会、臨時会、特別会のいずれかについても、内閣に召集決定権があります。また、参議院の緊急招集を求めることができるのも、内閣です。

第五十四条 
衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

3. 裁判官の指名・任命


裁判官

内閣には、最高裁判所の長たる裁判官の指名権があります。

第六条 
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。


そして、他の裁判官については、内閣に任命権があります。

第七十九条 
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。


第八十条 
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。


ただし、下級裁判所の裁判官の任命は、
最高裁が指名した者の名簿から行わなければなりません。
→司法権の独立を確保するため。

4. 法律の執行と国務の総理

憲法73条は、法律を誠実に執行し、
国務を総理することを内閣の事務としています。
内閣には、法律を誠実に執行する義務があり、
内閣は、憲法に違反する疑いがある法律だと思っても、
誠実に執行しなければならないのです。

第七十三条 
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。

5. 外交関係の処理と条約の締結


外交関係を処理し、条約を締結することも、内閣の重要な権限です。

第七十三条 
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 
法律を誠実に執行し、国務を総理すること。 
二 
外交関係を処理すること。 
三 
条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。

条約を締結するための相手国との交渉には、
専門的知識とそれに基づく柔軟かつ迅速な対応が求められます。
この要請に応じられるのは内閣であるため、内閣に条約の締結権があるのです。

6. 官吏に関する事務の掌理


官吏(国家公務員)に関する事務を掌理することも、内閣の権限です。
官吏は国家公務員のみを指し、地方公務員は含まれません。


7. 予算


予算を作成し、国会に提出することは、内閣の専権とされており、
他の機関が行うことはできません。
→予算の作成には、専門的な知識が必要だから

予算には、不測の出費に対応するために、
予備費を設け、内閣の責任で支出することができます。

第八十七条 
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

事後に国会の承諾を得なければなりませんが、
承諾を得られなくても、内閣に政治的責任が発生するだけです。
支出が無効になるわけではありません。

8. 政令の制定


法律の制定を実施するために、内閣は政令を制定することができます。

第七十三条  
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。 
六 
この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。


政令で、法律を実施するための細則(実施命令)や
法律によって個別具体的に委任された事項(委任命令)を
定めることができるのです。
また、特に法律の委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできます。

9. 恩赦の決定


大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除・復権という恩赦の決定権も内閣にあります。

第七十三条 
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。 
七 
大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

内閣が恩赦を決定すると、
天皇が、内閣の助言と承認に基づき、国事行為としてそれを承認します。

第七条 
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。 
六 
大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。

内閣の不信任


1. 内閣不信任決議


衆議院が不信任決議を可決または信任決議案を否決し、
内閣を信任しないという意思を明確に表示した場合、
内閣は、解散総選挙が総辞職の二者択一に追い込まれます。
10日以内に衆議院の解散という対抗手段に出るか、
総辞職するかのいずれかを選択しなければならないのです。

第六十九条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

2. 衆議院の解散

衆議院の解散は、天皇の国事行為とされています。

第七条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。 
三項 
衆議院を解散すること。


しかし、天皇には国政に関する権能がないため、
衆議院の解散権の実質的主体は、内閣であると解されています。

3. 衆議院議員総選挙

衆議院が解散された場合、
解散の日から40日以内に衆議院議院の総選挙が行われます。
そして、総選挙の日から30日以内に、国会(特別会)が召集されます。

第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

内閣の総辞職


総辞職とは、内閣を構成するすべての大臣が辞職することです。
次の場合には、内閣は総辞職しなければなりません。

①衆議院の内閣不信任決議案可決または信任決議案否決に対抗して衆議院を解散しないとき。
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。


②衆議院議員総選挙の後に初めて国会が召集されたとき。

第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。


ただし、
総辞職したからといって、
直ちに仕事が切り替わる訳ではありません。
新しい内閣総理大臣が任命されるまで、
内閣は、引き続きその職務を行います。

第七十一条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

内閣総理大臣と国務大臣



内閣の組織


内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織します。

第六十六条 一項 内閣は、法律の定めるところにより、
         その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
      二項 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
      三項 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

内閣総理大臣と国務大臣は、
行政機関の長として行政事務を分担管理するのが通常ですが、
行政事務を分担管理しない無任所(特定の仕事を分担しない)の大臣を
置くこともできます。

内閣総理大臣


内閣総理大臣

1. 内閣総理大臣の地位


内閣総理大臣は首長です。
内閣総理大臣には首長たる地位が認められています。

第六十六条 
一項 
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。 
二項 
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
三項
 
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。


内閣の連帯責任の原則を貫きつつ、
積極行政を推進するためには、内閣の一体性を確保する必要があります。
そのために、内閣総理大臣を首長としたのです。

2. 内閣総理大臣の指名・任命


内閣総理大臣は、国会の指名に基づいて、天皇が任命します。

第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

内閣総理大臣は、文民でなければなりません。

第六十六条 
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

また、内閣総理大臣は、国会議員でなければなりません。
衆議院議員でも構いませんが、国会議員でなければならないのです。

第六十七条 
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。


3. 内閣総理大臣の権能


内閣総理大臣には、国務大臣の任免権が認められています。
国務大臣の任免は、内閣総理大臣の専権であり、閣議にかける必要はありません。
内閣総理大臣は、自らの判断で国務大臣を任命したり、罷免したりすることができます
また、内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、
一般国務や外交関係について国会に報告する権限があります。

第七十二条
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

さらに、内閣総理大臣には、
議案について発言するために衆参両議院に出席する権限や法律や
政令に連署したりする権限もあります。

第六十三条 
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第七十四条 
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。


国務大臣

1. 国務大臣の資格要件


国務大臣も文民でなければなりません。
そして、国務大臣の過半数は国会議員でなければなりません。
衆議院議員でも構いませんが、過半数は、国会議員でなければなりません。

2. 国務大臣の特権


国務大臣には、在任中は、内閣総理大臣の同意がないと、
訴追されないという特権が与えられています。
ただし、これは訴追できなくなる訳ではありません。
内閣総理大臣の同意が得られず、在任中は訴追できなくても、
退任すれば、訴追ができます。

第七十五条 
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

財政



財政民主主義


憲法83条は、財政民主主義の原則を明示しています。
財政民主主義とは、国の財政作用の一切が国会の決議に基づくことを求める原則です。
財政国会中心主義ともいいます。
また、憲法85条は国費の支出について、国会の議決を要求しています。
支出面でも、財政民主主義を貫く訳です。


租税法律主義


憲法84条は、83条の財政民主主義の原則を受けて、
租税法律主義を定めています。
租税法律主義とは、租税の新設や税制の内容の変更は法律に基づいて行わなければならないことを言います。
租税というのは、課税権に基づき、
公の経費に当てる目的で強制的に賦課徴収される財貨をいいます。
国民健康保険料のような、特別の給付に対する反対給付として徴収される金銭は、
租税ではありません。
ただし、租税以外の公課であっても、
租税に類似する性質のものには、憲法84条の趣旨が及ぶと、判例はいっています。
憲法84条は、租税の賦課徴収の具体的内容を全て法律で明確に定めることを求めています。そのため課税物件や税率についても、法律で明確に定める必要があります。
【重要判例】旭川市国民健康保険条例事件/最大判平成18.3.1


次は憲法の分野の司法について紹介しています。
➡【リンク】9. 司法


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