2019年7月15日月曜日

【行政書士試験・憲法】10. 地方自治・・・条例制定権をチェックしておきましょう

10. 地方自治


【行政書士試験】憲法ー地方自治

今回は、行政書士試験の憲法の分野の「地方自治」に関して紹介していきます。



地方自治の本来の目的


地方自治とは何か?


地方自治は民主主義の源泉であり、
学校、自由を人民の手の届くところに置くものとか言われています。
国よりも規模の小さい地方公共団体の方が、民意に基づく政治を実現しやすく、
また、中央権力の巨大化を抑え、権力を分散させて、
それぞれの地域の実情に応じた処理を行うことが、人権保障に資するからです。

地方自治の本来の目的とは何か?


1. 住民自治と団体自治


地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、
地方自治の本旨に基づいて法律で定めることになっています。

第九十二条
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

地方自治の本旨というのは、
民主主義と人権保障の実現にあります。
民主主義と人権保障を実現するためには、
その地域の住民の意思に基づいた政治が行われなければなりません。
これを住民自治と言います。
そして、地方の政治が国から不当な干渉を受けることなく
自律的に行われる必要があります。これを団体自治と言います。
そのため、地方自治の本旨は、住民自治と団体自治からなると一般に説明されています。

2. 住民自治の実現


住民自治を実現するために、憲法93条は、地方公共団体の議事機関として、
議会を開催することを求めています。議会は、地方公共団体の必須の機関なのです。
ただし、地方自治法は、町村には議会を置かず、町村総会(有権者の総会)を
設置することを求めています。
町村総会は、住民自治を高度に実現するものですから、
憲法93条に違反するものではありません。

第九十三条 
地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

3. 団体自治の実現


団地自治を実現するために、憲法94条は地方公共団体に、
財産を管理し、事務を処理し、行政を執行する権能を、条例の制定権を認めています。

第九十四条 
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。


地方公共団体


地方公共団体とは何か?


1. 都道府県と市町村


憲法92条は、地方自治の単位を地方公共団体とし、
その組織・運営を法律に委ねています。地方自治法は、これを受け、
都道府県と市町村を普通地方公共団体として。

第九十二条 
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

2. 東京都の特別区


東京都の特別区について、判例は、沿革や共同体意識を基準に判断し、
いまだ憲法93条の地方公共団体といける条件を満たしていないといっています。
ただし、現在では、特別区の長や議会の公選制が採用され、
また基本的に市に関する規定が特別区に適用されています。

地方自治特別法


1. 地方自治特別法とは何か?


憲法95条が定める
「一の地方公共団体のみに適用される特別法」というのは、

特定の地方公共団体に対して、

その組織運営上の本質に関わる不平等・不利益を
強いる法律をいうと解されています。

「一の」とは、「特定の」という意味であり、
その法律が適用される地方公共団体は、
一つである必要はないということです。

2. 住民投票


その特別法を制定するには、それが適用される地方公共団体の住民の投票において、過半数の同意を得なければなりません。

第95条 
一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

国会の可決後に住民投票が行われ、
そこで過半数の同意を得れば、国会の議決が確定し、
法として成立します。


条例



条例制定権


1. 条例とは何か


憲法94条は、地方公共団体に条例制定権を認めています。
条例とは、地方公共団体が自治県に基づいて制定する
自主法( 地方公共団体が自治権に基づいて制定する条例・規則など)のことです。
条例は、憲法に直接の根拠を持ち、法律を媒介せずに制定できる自主立法です。

地方公共団体は、必要と判断すれば、
いつでも自由に条例を制定することができます。

2. 条例による人権規制


地方議会が制定する条例は、
その民主的性格から、法律に準じられ、
自由や権利を規制することができると考えられています。
判例も、地方公共団体の議会が制定する条例によって
財産権を規制することを認めています。

3. 条例と平等原則

各地方公共団体の自主立法である条例によって
地域間に格差を生じても、憲法14条に反しないと言うのが、
判例です。憲法は条例の内容次第で地域的格差が
生じる可能性のあることを予期しつつ、
地方公共団体に条例制定権を付与しているのだから、
憲法は条例による地域的格差を容認しているというのです。

条例制定権の限界


1. 条例の対象


条例の対象は、地方公共団体の事務に限定されます。
条例を制定できるのは、地方公共団体の事務だけであって、
国の事務や国法によって統一的に処理すべき事項について、
条例を急いているすることはできません。

2. 法律の関係


条例の制定は、法律の範囲内でなければならず、
法律に反するものであってはなりません。
条例が法令に反するかどうかは、
それぞれの趣旨、目的、内容および効果を比較し、
両者の間に矛盾、抵触があるか否かにより決するというのが、判例です。
ですから、既存の法令が全国一律の規制をする趣旨ではなく、
最小限の規制を定めたに過ぎない場合には、地域特性を考慮し、
条例で法令よりも厳しい規制をしたり(上乗せ規制)、
条例で法令よりも規制対象を広くしたりする(横出し規制)もできます。
【重要判例】徳島市公安条例事件

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