2019年10月31日木曜日

【行政書士試験】契約以外での債権の発生原因のトレーニング問題


【行政書士試験】契約以外での債権の発生原因のトレーニング問題

●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★事務管理


(1)事務管理とは、義務がある為他人に事務を処理することをいう。

✕…義務がないのに他人の事務を処理すること。


(2)事務管理が成立すると事務管理者は、本人に対して報酬請求権を得る。

✕…事務管理者に報酬請求権はない。

★不当利得


(3)不当利得にあたる場合、悪意の受益者は、利益に利息を付けて付けて変換する必要があり、また、損害賠償責任も負う。

〇…問題文の通り。


★不法行為


(4)不法行為とは、他人の権利を侵害して損害を発生させる行為である。

〇…問題文の通り。


(5)過失責任の原因から、不法行為が成立するために、加害者に故意または過失があることを被害者が立証する必要がない。

✕…立証する必要がある。


(6)不法行為が成立するためには、故意または過失により、他人の権利または法律上保障される権利または法律上保障される権利を侵害し、それによって損害が発生していなければならない。

◯…問題文の通り。


(7)不法行為の損害賠償は、原則として損害を金銭に換算して行う。

◯…問題文の通り。


(8)使用者が損害を賠償した場合、使用者は、信義則上相当な限度で、被用者に求償できる。

◯…問題文の通り。


(9)土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり、これによって他人に損害が発生した場合、工作物の占有者が第一次的に賠償責任を負う。

◯…問題文の通り。


(10)複数のものによる共同の不法行為によって損害が生じた場合、各人が全損害について連帯して損害賠償を負う。

◯…問題文の通り。


(11)被用者と第三者が共同不法行為を行い、使用者が賠償した場合には、使用者は、第三者の負担部分について、第三者に求償できる。

◯…問題文の通り。





【行政書士試験・民法】15. 契約以外での債権の発生原因・・・押さえておきたいポイントまとめ

15. 契約以外での債権の発生原因


15. 契約以外での債権の発生原因



今回は、民法の分野の「契約以外での債権の発生原因」について、紹介したいと思います。




事務管理


事務管理とは何か?


事務管理とは、義務がないのに他人の事務を処理することをいいます。例えば、家族全員が旅行中で誰もいない家の窓が、台風などで壊れ、放置すれば、空き巣が忍び込んだりするため、見かねた隣人が応急修理をしたりしたようなケースが事務管理の例です。


事務管理の成立要件



事務管理が成立するためには、次の要件を満たす必要があります。


①本人との関係で、法律上の義務がないこと

②自分以外のもののためにする意思(事務管理意思)があること。

③明かに本人の利益と本人の違法な意思に反する管理ではないこと。

④明らかに本人の利益と本人の適法な意見に反する管理ではないこと



事務管理の効果


事務管理が成立すると、管理行為は、相互扶助の精神から行われた利他的行為であると正当化され、違法性がなくなります。そして、事務管理者は、事務管理を始めたことを本人に通知し、本人側が管理できるようになるまで、管理を継続しなければなりません。

民法699条 
管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

民法700条 
管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。

また、事務管理者は、善管注意義務を負います。

事務管理者は、本人のために支出した有益な費用の償還を請求することができます。

民法702条 
1項 
管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。 
2項 
第650条2項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。 
3項 
管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。

しかし、管理者に報酬請求権はありません。



不当利得


不当利得とは何か?


不当利得とは、法律上の根拠がないのに利益を得たために、本来利益を得るべき人がその分だけ損失を被っていることをいいます。

民法703条 
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。



この状態は公平ではないので、法律上の根拠の無い利益の移転・帰属を本来あるべき状態に移そうというのが、不当利得制度です。


不当利得の要件


不当利得とされるためには、次の要件を満たす必要があります。

①受益と損失の存在

②受益と損失との因果関係

③法律上の原因がないこと



不当利得の効果


不当利得の要件を満たすと、損失を被ったものは受益者に対して利得の返還を請求できます。返還義務の範囲は受益者が法律上の原因のないことを知っているかによって異なります。

知らない(善意)の場合は、現存利益を返還すれば良いとされています。

民法703条 
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。


これに対して知っている(悪意)場合は、受けた利益に利率をつけて返却する必要があり、また損害賠償責任も負います。

民法704条 
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。




非償弁済


債務の存在しないことを知りながら、債務を弁済することは、事実上贈与と解されるため、あとで債務がなかったと主張しても、債務の弁済として給付した物の返済を請求することはできません。


民法705条 
債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。



ただし、返済を請求できないのは、任意に弁済された場合だけであり、強制執行を免れるためなど、経済的・社会的圧力からやむを得ず弁済した場合には、返還を請求することができます。



不法原因給付


不法な原因(公序良俗を違反する)のために給付を受けた者は、不当利益返還請求権を行使することができません。

民法708条 
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


ただし、返還を請求できないのは、受益者に終局的に利益を与えてしまった場合に限定されています。例えば、判例では未登記の建物であれば、登記を移転した場合に返還請求ができなくなるといっています。
【重要判例】建物所有権移転登記手続等請求事件・・・最判昭46・10・28

また、不法な原因が受益者だけにある場合には、返還請求権を行使できます。

例えば、犯罪資金を提供するように脅され、やむを得ず支払ったような場合には、返還請求ができるということです。



不法行為


不法行為制度


不法行為とは、他人の権利や利益を違法に侵害して損害を発生させる行為です。不法行為制度は、不法行為によって損害を受けた被害者に損害賠償請求権を認め、その損害を填補(穴埋め)するとともに、将来の不法行為を阻止しようとする制度です。

公平の観点から、損害を加害者に責任転嫁して、被害者を救済しようとする趣旨です。



不法行為の成立


1. 不法行為の成立要件


不法行為が成立するためには、次の要件を満たす必要があります。

民法709条 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


①故意または過失

②権利または法律上保護される利益の侵害

③損害の発生

④行為と損害との因果関係

⑤責任能力


2. 故意または過失


過失責任の原則から、不法行為が成立するためには、加害者に故意または過失があること被害者が立証しなければなりません。


3. 責任能力


責任能力とは、事故の行為の責任を弁識できる知能のことです。責任能力のない未成年や心神喪失者は、不法行為責任を負いません。

民法712条 
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。


民法713条 
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。


責任能力がなかったことを立証すれば、不法行為責任を免れます。ただし、責任能力のないものが行なった不法行為については、法定の監督義務者などが損害賠償責任を負います。

民法714条 
1項 
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 
2項 
監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

4. 不法行為の成立阻却事由:せいりつそきゃくじゆう


不法行為の成立要件を満たしても、行為を正当化し、不法行為の成立を阻却する事由があれば、責任を追及することはできません。正当化事由の代表例は、正当防衛と緊急避難です。

民法720条 

正当防衛とは、他人の客観的に違法な行為に対して自分または第三者の権利を防衛する為に、やむを得ず行なった加害行為のことをいいます。

これに対して、緊急避難とは、他人のものから生じた急迫の危機を避けるために、その物を毀損することをいいます。


不法行為の効果


1. 損害賠償請求


不法行為が成立すると、被害者は加害者に対して損害賠償請求ができます。

民法709条 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


損害賠償とは、他人に与えた損害を穴埋めすることです。賠償の対象は、財産的な損害だけではありません。不法行為を行なったものは、財産的損害だけでなく、精神的損害などの非財産的損害についても賠償しなければなりません。

民法710条 
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。


精神的損害を賠償するのが、慰謝料です。
よくテレビのドラマや漫画などで出てくる「慰謝料よこせ!」は精神的損害に対する賠償を指すのですね。


2. 金銭賠償の規則


不法行為の損害賠償は、原則として損害を金銭に換算して行います。

民法712条 
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。


民法417条 
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。


ただし、人の社会的評価(名誉)を低下させたものに対しては、謝罪広告などを命じることができます。

民法723条 
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。


3. 損害賠償の範囲


損害賠償の範囲について、判例・通説では、民法416条を類推適用して、通常損害と予見可能な特別損害に限定しています。


4. 過失相殺


損害の公平な分担という観点から、損害の発生または拡大について、被害者にも落ち度がある場合には、損害賠償額を考慮しようという制度があります。これを過失相殺といいます。民法では、被害者にも損害発生について過失があった時には、裁判所はそのことを考慮して、損害賠償額を定めることができるとしています。この損害賠償額を定めることができるというのは、被害者の過失を”考慮しても”、”考慮しなくても”よいという点がポイントです。

民法722条2項 
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。



5. 近親者の損害賠償請求


不法行為は被害者本人だけでなく、被害者の近親者にも、大きな影響を与えます。そこで、生命を奪われた者の父母・配偶者・子には、精神的損害が発生したこと等の立証を要求せずに当然に、固有の慰謝料請求権が認められています。

民法711条 
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。


また、判決では、即死した被害者の逸失利益の賠償請求権や慰謝料請求権の相続を認めています。


6. 履行遅滞


判例では、不法行為による損害賠償債務は、損害の発生と同時に履行地帯に陥るとしています。
最判昭37.9.4

この債務も、債務不履行による損害賠償債務と同じように、期限の定めのない債務ですが、被害者保護のため催告の必要はなく、損害が発生すると直ちに履行遅滞になるとされています。


7. 時効消滅


不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、損害および加害者(賠償義務者)を知った時から3年で消滅時効にかかります。また、不法行為の時より20年を経過したときも消滅します。

民法724条 
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。


長い時間が経過すると、立証が困難になるため、早く決着をつけさせようとする趣旨のものです。


使用者責任


1. 使用者責任とは何か?


ある事業のために他人を使用するものは、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。
民法715条1項

ただし、被用者の専任やその事業の執行につき相当の注意を行なったことを使用者が立証すると、使用者は免責させます。また、使用者の選任・監督上の過失と損害との間に因果関係のないことを立証した場合にも、使用者は免責されます。


2. 使用関係


使用者責任が成立するためには、事業のために他人を使用するという使用関係が必要です。これは、雇用関係である必要はなく、実質的な指揮監督の関係があればよいとされています。


3. 事業の執行について


使用者責任が成立するためには、被用者の不法行為が事業の執行について行われたものでなければなりません。事業の執行について、判例では、外形理論(がいけいりろん)を採用し、行為の外形から観察して、被用者の職務の範囲内に属する行為と認められれば良いとされています。
最判昭和40.1.30


4. 被用者の行為


使用者責任が成立するためには、被用者の行為が民法709条の要件を満たしている必要があります。そのため、使用者責任が成立する場合には、使用者が被害を賠償する債務を負うだけでなく、被用者も常に民法709条に基づく賠償債務を負います。両者の債務は、不真正連帯債務であり、使用者と被用者は、いずれも被害者に対して金銭の賠償義務を負いますが、いずれか一方が賠償金を払えば双方ともに免責されるというのが、判例です。


5. 求償権


使用者が損害を賠償した場合、使用者は、被用者に対して求償することができます。
民法715条

ただし、判例では、損害の公平な分担という見地から、使用者の被用者に対する求償は、信義則上相当と認められる限度に制限されるといっています。


土地工作物責任


1. 土地工作物とは?


土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり、これによって他人に被害が発生した場合、工作物の占有者が賠償責任を負います。そして、占有者が損害の発生防止に必要な注意をしていたことを立証すると、占有者は免責され、所有者が責任を負います。占有者と異なり、所有者には、無過失による免責が認められていません。

ただし、損害の原因について責任のある者がいる場合には、賠償を行なった占有者または所有者は、その者に対して、求償権を行使できます。

民法717条 
1項 
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。 
2項 
前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。 
3項 
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。


2. 土地の工作物と瑕疵


土地の工作物とは、土地に接着して人工的に築造した設備のことです。例えば、自動販売機やプール、井戸などが、土地の工作物です。

瑕疵とは、通常すべき安全性を欠いていることですから、判例では、鉄道の踏切に保安設備の無いことを設置の瑕疵としています。


共同不法行為


1. 共同不法行為とは何か?


複数のものによる共同の不法行為によって損害が生じた場合、各人が全損害について連帯して賠償義務を負います。

民法719条 
1項 
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 
2項 
行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

他の共同不法行為者の行為によって生じた損害であって、自分の行為とは事実的因果関係のない損害を含めて、全損害について責任を負うのです。

判例では、共同とは、複数の違法行為が関連共同して損害の原因になること(客観的関連共同)であり、共同不法行為が成立するためには、各行為者が民法709条の要件を満たす必要があるといっています。


2. 他の共同不法行為者に対する求償権


共同不法行為者の1人が損害を賠償すると、他の共同不法行為者に対して求償できます。共同不法行為の加害者の間では、過失の割合あるいは損害の寄与の割合に応じた求償が認められます。

建物の賃借人と地代の弁済/最判昭和63.7.1

2019年10月27日日曜日

【行政書士試験】雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)のトレーニング問題

【行政書士試験】雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)のトレーニング問題


【行政書士試験】雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)のトレーニング問題

●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★寄託


(1)寄託は、専ら寄託者の利益のために締結される契約であり、そのため、寄託物の返還時期が定められていても、寄託者は、いつでも寄託物の返還を請求できる。

○…問題文の通り。


★請負契約


(2)請負契約において、仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は請負人に対して、原則として瑕疵の修補請求とともに損害賠償請求も行うことができる。

〇…問題文の通り。建築の請負契約で、完成した建物に瑕疵があった場合、注文者は請負人に対して、修補請求か、損害賠償請求か、またはその両方を、選択することができる。


(3)請負人は、仕事を完成しない限り、報酬は後払いである。

○…問題文の通り


(4)請負契約において、仕事の目的物にたとえ瑕疵があっても、その瑕疵が重要ではなく、修補に過分の費用を要するときは、注文者は修補の請求することができない。

〇…問題文の通り。修補に過分の費用を要する場合、請負人の担保責任の適用除外が民法634条に規定されている。

民法634条 
1項 
仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。 
2項 
注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。


(5)請負は、その過程は問わないため、下請負が認められるのが原則である。

○…問題文の通り


(6)仕事の目的物に瑕疵があった場合、注文者は、修補に代えて損害賠償を請求することもできるし、修補と共に損害賠償を請求することもできる。

○…問題文の通り


(7)目的物が建物などの土地工作物の場合を除いて、仕事の目的物に瑕疵があるために、契約の目的を達成できなければ、注文者は契約を解除できる。

○…問題文の通り



★委任契約


(8)委任とは、Aが法律行為以外の行為をすることをBに委託することである。

✕…委任とは、Aが法律行為をすることをBに委託することである。

民法643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。



(9)委任契約は、原則として無償契約であり、報酬を支払うべき場合でも、後払いが原則である。

○…問題文の通り


(10)委任された事務を処理するために、受任者が過失無く損害を受けた場合、委任者は、故意・過失の有無を問わず、損害賠償をしなければならない。

○…問題文の通り


(11)委任者も、受任者も、いつでも自由に契約を解除できる。

○…問題文の通り




2019年10月19日土曜日

【行政書士試験・民法】14. 雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)・・・押さえておきたいポイントまとめ

14. 雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)

最終更新日:2019年11月18日
【行政書士試験】14. 雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)

今回は民法の分野の「雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)」について紹介していきます。





他人の労務を利用する契約


他人の労務を利用する契約として、民法では、雇用・委任・請負・寄託について定めています。



1. 寄託について

寄託の特徴


寄託の特徴


寄託は物を預かって保管する契約のことです。物の保管という限定された労務だけを対象としています。これに対して、他の契約は、対象となる労務に限定はありません。
寄託は、もっぱら寄託者の利益のために締結される契約です。そのため、寄託物の返還時期が定められていても、寄託者はいつでも寄託物の返還を請求できます。

例としては・・

1. 銀行でお金を預かること
2. ロッカーなどで荷物を預かること
3. 知人に荷物を預かってもらうこと

などが挙げられます。

2. 雇用について

雇用の特徴


請負の目的は、仕事の完成であるのに対して、雇用・委任の目的は、労務の提供です。そして、委任は、労働を提供する側に裁量が認められているのに対して、雇用は指示どおりに労務を提供するだけです。労務を提供する側に裁量権はありません。雇用では、使用者の指示通りに働きさえすれば、債務を履行したことになり、成果の如何を問わず報酬がもらえます。



請負契約


請負契約とは何か?


1. 請負契約の性質


請負契約とは、当事者の一方がある仕事の完成を約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束する契約です。

請負契約は、当事者の合意のみで契約の効力が生じる契約(諾成契約;だくせいけいやく)であり、注文者と請負人が合意すれば、それだけで請負契約は成立します。そして請負契約が成立すると、請負人は仕事を完成させる義務を負い、注文者は報酬支払い義務を負います。仕事の完成と報酬の支払いは、対価関係にあるので、請負契約は、双務・有償契約です。


2. 請負の目的


うけおいのもくてきは、仕事の完成にあります。そのため、請負人は、いくら労務を提供しても、仕事を完成しない限り、債務を履行したとはいえず、報酬をもらえません。
仕事とは、労務の提供によって生じる成果のことであり、建物の建築などの有形のものだけでなく、講演・演奏等の無形のものも含まれます。


3. 報酬の支払い時期


請負契約は仕事の完成が目的ですから、特約がない限り、支払いは後払いです。仕事が有形のものであれば、完成した目的物の引き渡し時に報酬を支払い、仕事が無形のものであれば、仕事の完成時に報酬を支払います。


4. 下請負


請負契約は、仕事さえ完成すれば、目的を達成するため、そのプロセスは問わないのが普通です。そのため、請負人自身が仕事を完成させる必要はなく、下請負が認められるのが原則です。


完成した建物の所有者


請負によって完成した建物の所有者は、誰に帰属するかについては、判例では次のような考え方を採用しています。

①注文者が材料の全部または主要部分を提供した場合
竣工時から注文者の所有物である。(大判昭7.5.9)

②請負人が材料の全部または主要部分を提供した場合
請負人が所有権を取得し、引き渡しによって注文者に移転する。(大判大3.12.26)

③材料の提供者が請負人であっても、特約があれば最初から注文者のものである。
(大判大5.12.13)
注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、この特約の存在が推認される。(大判昭18.7.20)


請負人の担保責任


1. 瑕疵修補と損害賠償


請負人が完成させた仕事の目的物に瑕疵(傷や欠陥)があった場合、それが重要でなく、かつ修補費用がかかりすぎるものでない限り、注文者は請負人に対して瑕疵の修補を請求できます。損害賠償請求は修補に代えて行うこともできるし
修補をさせると共に、なお不完全な点や履行が遅れた点について賠償を請求することもできます。

2. 契約の解除


また、仕事の目的物に瑕疵があるために、契約の目的を達成できない場合には、注文者は契約を解除できるのが原則です。しかし、目的物が建物などの土地の工作物の場合は別となります。土地の工作物について解除を認めると、解除後の原状回復に多額の費用がかかり、請負人に大きく不利な結果になるからです。


3. 請負人の担保責任の特徴


請負人の担保責任は次の点で売主の瑕疵担保責任と異なります。

①瑕疵が隠れた瑕疵に限定されない。

②瑕疵修補請求権がある

③瑕疵が注文者の供給した材料の性質または注文者の指図に由来する場合には、原則として担保責任を負わない。


4. 注文者の解除権


請負人が仕事を完成させる前であれば、注文者は、いつでも損害を賠償して請負契約を解除できます。無用になった仕事を続けさせて、注文者のコストを大きくする必要はないからです。ただし、注文者は、請負人が支出した費用だけでなく、仕事を完成すれば請負人が支出した費用だけでなく、仕事を完成すれば請負人が得たであろう利益についても賠償をしなければならないとされています。


委任契約


委任契約とは何か?


1. 委任とは何か?


委任とは、広く事務を委託することです。信頼関係に基づき、委託を受ける人に一定の事務処理を任せる諾成契約が委任です。


2. 委任と報酬


委任契約は、原則として無償契約であり、特約がない限り、受任者は報酬を請求することができません。報酬を支払うべき場合であっても、報酬は後払いが原則です。ただし、委任が受任者の帰責事由によらずに途中で終了した場合、受任者は履行の割合に応じた報酬を請求できます。
民法648条

仕事が完成しない限り、報酬を得られない請負との大きな違いがこれです。


受任者の事務処理


1. 善管注意義務


受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意を持って事務を処理しなければなりません。これを善管注意義務といいます。
そして、委任は、当事者相互の高度な信頼関係を基礎としているため、受任者自身が、事務処理を行わなければならないのが原則です。もちろん単純な補助者を使うことはできますが、副委任は原則として禁止されています。広く下請負の認められている請負との大きな違いです。


2. 報告義務


受任者には独立性があり、事故の裁量で事務を処理することができます。しかし、委任者から請求があれば、受任者は、事務処理状況を報告しなければなりません。そして、委任が終了した場合には、その顛末を報告する義務があります。
民法645条


3. 受け取った物等の移転義務


受任者には、受け取った物や取得した権利を委任者に移転する義務があります。

民法646条 
1項 
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。 
2項 
受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

そして、委任者が委任者に引き渡すべき金銭などを自分のために消費するという背信行為を行なった場合には、委任者は、受任者に対して故意・過失や損害の証明なしで利息の支払いを請求できます。

民法647条 
受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。


4. 事務処理費用


委任事務を処理するために必要な経費は、事務処理によって利益を受ける委任者が負担すべきです。そのため、受任者に費用の前払請求権が認められています。

民法649条 
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。


そして、受任者が事務処理に必要な費用を支出した場合には、委任者に対してその費用や利息の償還を請求できます。

民法650条 
1項 
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2項 
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。 
3項 
受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

5. 損害賠償請求


委任された事務を処理するために、受任者が過失なく損害を受けた場合は、委任者に対して損害賠償を請求できます。これは委任者の一種の無過失責任とされ、委任者は、故意・過失の有無を問わず、賠償をしなければなりません。


委任の任意解除権


委任契約の各当事者は、いつでも任意に契約を解除できます。受任者の利益のために委任がなされた場合であっても、やむを得ない事由があるとき、または委任者が委任契約の解除権自体を放棄したといえない事情がある時は、解除を認めるのが、判例です。委任契約は、当事者相互の信頼関係を基礎とするため、嫌になったものを無理につなぎとめておく意味はなく、委任者も受任者も、いつでも事由に契約を解除できるのです。ただし、解除の時期が相手方に不利な時期であれば、やむを得ない事由のある場合を除いて、相手方に損害賠償をしなければなりません。

委任契約の解除には、遡及効がありません。解除によって委任契約は、将来に向かって消滅するだけです。


次は、民法の「契約以外の債権発生原因」について説明しています。
➡【リンク】15. 契約以外の債権発生原因


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2019年10月16日水曜日

【行政書士試験】物の貸し借りのトレーニング問題

【行政書士試験】物の貸し借りのトレーニング問題




●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★消費賃借


(1)消費賃借の借主は、返還時期が到来しなくても、いつでも返還できる。

○…問題文の通り。


(2)返還時期が定まっていない場合、消費賃借の貸主は、相当の期間を定めて催促することができる。そして、相当の時間が経過すると、借主に返還義務が生じる。

○問題文の通り


★使用貸借


(3)使用貸借は双務契約である。

✕…使用貸借は「片務契約」である。


(4)使用貸借は、賃料を取って物を使用収益させる契約である。賃料は、後払いが原則である。

○・・・問題文の通り


(5)使用貸借権は、借主の死亡によって、相続することができる。

✕…使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。相続はできない。
民法599条


★賃貸権


(6)賃貸借契約とは、AのものをBが使用し、その代わりに、Bは、Aに賃料を支払うという契約である。

〇…例えば、家を建てるために土地を借りたり、賃貸アパートを借りたりすることである。
民法601条

(7)建物の賃貸借については、建物の引渡しが対抗要件である。また、借地権については、建物の存在とその登記が対抗要件である。

○…問題文の通り。


(8)賃借権の譲渡や転貸には、賃貸人の承諾が必要である。

○・・・問題文の通り。


(9)賃貸人に無断で賃借権の譲渡・転貸をし、第三者に賃借物を使用収益させると、賃貸人は契約を解除できる。

〇…問題文の通り。


(10)不動産賃借権の無断譲渡・無断転貸がなされても、それが賃貸人に対する背信行為に当たらない特段の事情がある場合には、解除権は発生しない。

○…問題文の通り。


(11)違法な転貸が行われると、転借人は、賃借人に対して直接賃料支払義務などを負う。

○…問題文の通り。


(12)賃借人に債務不履行があった場合、賃借人に催告すれば、賃貸借を解除できる。

○…問題文の通り。



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2019年10月15日火曜日

【行政書士試験・民法】13. 物の貸し借り・・・賃貸借契約とはどんなものかをイメージしましょう!

13. 物の貸し借り


【行政書士試験】13. 物の貸し借り・・・賃貸借契約とはどんなものかをイメージしましょう!

今回は民法の分野の「物の貸し借り」について紹介していきます。





消費賃借




消費賃借契約とは何か


消費賃借契約とは、借主が貸主から金銭その他の代替を受け取り、それを消費し、受け取ったものと同時・同等・同意の物を返すという契約です。消費賃借では、借りた物の所有権は、借主に移ります。そのため、借主はそのものを自由に使ったり、処分したりすることができ、後日、同じ物を同じ量だけ別途調達し、貸主に返せばよいのです。

わかりやすい例でいうと、お金の貸し借りのがわかりやすいと思います。

消費賃借契約の性質


消費賃借契約は、目的物を受け取ることによって成立します。

民法587条 
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。


消費賃借契約は、目的物の授受があって初めて成立する要物契約です。

消費賃借契約は、要物契約であり、貸主は、既に目的物を引き渡し済みですから、契約成立によって発生する債務は、借主の返済債務だけです。消費賃借契約は、借主だけが、引き渡しを受けた物と同種・同等・同量の物の返済債務を負う片務契約なのです。

なお、利息を付けることに合意していた場合には、借主は、借りた金額に利息を加えて返還する必要があります。(利息付の消費賃借契約)。


返還時期


返還時期について定めがあれば、当然それに従います。しかし、借主は、返還時期が到達しなくても、返還することができます。期限の利益は借主にあり、借主はそれを放棄できますから、いつでも返還することができるのです。

返還時期が定まっていない場合には、貸主は、相当の期間を定めて催告することができます。そして、相当の期間が経過すると、借主に返済義務が生じ、これを怠ると、履行遅滞の責任を負うことになります。


使用貸借




使用貸借契約とは何か?


使用貸借契約とは、目的物を無償で、使用収益させる契約です。使用貸借契約は、目的物の授受によって成立し、効力が発生する要物契約です。

つまりは、わかりやすく言うと、タダで物を貸す契約ということです。

民法593条 
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。


そのため、契約成立後には、借主が返済債務を負うだけで、借主は債務を負いません(片務契約)。


目的物の使用収益


使用貸借契約が成立すると、借主は目的物の使用収益権を取得しますが、その使用収益は、契約または目的物の性質によって決まる用法どおりのものでなければなりません。また、無断で目的物を第三者に使用収益させてはなりません。

民法594条 
1項 
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。 
2項 
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。 
3項 
借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。


借主がこれらの義務に違反すると、貸主は、契約を解除して、目的物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償請求をすることもできます。

民法600条 
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。


使用貸借の終了


契約に返還時期の定めがある場合、その時期の到来によって使用貸借契約は終了し、借主は借りた物そのものを返還しなければなりません。

返還時期の定めはないが、使用収益の目的について定めがある場合には、その目的に従った使用収益が終了した時に、借主は目的物を返還しなければなりません。現実には契約の目的を達成できていなくても、その目的達成に必要な期間が経過した場合には、貸主は目的物の返還を請求できます。

そして、返還時期も、使用収益の目的も定めていない場合には、貸主は、いつでも返還を請求することができます。

民法597条 
1項 
借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。 
2項 
当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。 
3項 
当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

また、使用貸借契約は、借主の死亡によって終了します。使用貸借契約は、貸主と借主の特殊な思いやりを持った人間関係に基づくただ貸しであって、人的特定性の強い契約だからです。


賃貸借:ちんたいしゃく


賃貸借契約とは何か?


賃貸借契約とは何か?


賃貸借契約とは、当事者の一方(賃貸人)が相手方(賃借人)に目的物の使用収益権を与え、その対価として賃料を取るという契約です。賃料を取ってものを使わせるという契約が、賃貸借契約です。

わかりやすい例でいれば、賃貸マンションを借りるときのような契約のことです。

賃貸借契約は、賃貸人と賃借人の合意だけで成立する諾成契約です。

民法601条 
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。


賃貸借契約が成立すると、賃貸人は目的物を使用収益させる債務を負い、賃借人は賃料を支払う義務を負います。両債務は対価関係にあるから、賃貸借契約は、双務契約であり、有償契約でもあります。


賃借権の存続期間


賃借権の存続期間について、民法は上限を20年と定めています。当事者間で20年を超える存続期間を定めても、20年に短縮されます。

民法604条 
1項 
賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。 
2項 
賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。

しかし、建物の賃貸借については、20年以上の存続期間を定めることができます。

借地借家法29条 
1項 
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。 
2項 
民法第604条 の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。


また、普通の借地権の存続期間は、借地上の建物の種類を問わず、30年です。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間が存続期間となります。

借地借家法3条 
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。


賃貸人の義務


賃貸借契約が成立すると、賃貸人は、賃借人に目的物を使用収益させる義務を負います。そのため、第三者が目的物の使用収益を妨害している場合には、賃貸人は、それを排除しなければなりません。

また、賃貸人の目的物を使用収益させる義務には、目的物を使用収益可能の状態に維持する義務も含まれいてます。そのため、賃貸人は、必要な修繕や必要な費用の負担をしなければなりません。

民法606条 
1項 
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 
2項 
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。


民法608条 
1項 
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。 
2項 
賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。


賃借人の義務


賃借人は、目的物の使用収益の対価として賃料を支払わなければなりません。賃料は、後払いが原則であり、動産、建物および宅地については毎月末に支払わなければならないとされています。

民法614条 
賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。


また、賃借人は、契約または目的物の性質によって決まる用法を遵守して、目的物を使用収益しなければなりません。

民法616条 
第594条第1項、第597条第1項及び第598条の規定は、賃貸借について準用する。

民法594条 
1項 
主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。 
2項 
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。 
3項 
借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。


第三者に対する対抗力


1. 不動産賃借権の対抗要件


不動産賃借権は、登記をすれば、対抗力を取得し、賃借権を第三者にも主張できます。

民法605条 
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。


しかし、判例では、賃借権が債権であることを理由に、登記請求権を否定したため、賃借人自ら対抗要件を備えることは出来なくなり、民法605条は事実上機能しなくなっています。


2. 建物の賃貸借の対抗要件


借地借家法は、建物の賃貸借について、建物の引渡しを対抗要件としています。建物の引渡しがあれば、その後に建物が売却されても、従来の賃貸借関係がそのまま買主(新しい建物の所有者)との間で存続します。

借地借家法31条 
1項 
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。 
2項 
民法第566条第1項 及び第3項 の規定は、前項の規定により効力を有する賃貸借の目的である建物が売買の目的物である場合に準用する。 
3項 
民法第533条 の規定は、前項の場合に準用する。

3. 借地権の対抗要件


そして、借地権については、建物の存在とその登記を対抗要件としています。借地権者が土地条に登記された建物を持っていれば、借地権を第三者にも対抗することができます。


賃借権の譲渡・転貸


1. 賃借権の譲渡・転貸とは何か?


賃借権の譲渡とは、契約によって賃借人の地位を移転することです。これによって、従来の賃借人は、賃貸借関係から離脱し、賃借権の譲受人が、新たな賃借人となります。

これに対して、転貸とは、賃借人が賃貸借の目的物を第三者に賃貸することです。転貸の場合には、賃借人は依然として賃借人の地位にあります。

借地上に建てた自分の建物を譲渡することは、特約がない限り、借地権の譲渡に当たります。通常、譲渡人は借地関係から離脱する意思を有しており、借地利用権は建物の従たる権利にあたるからです。


2. 賃借権の譲渡転貸の要件


賃借権の譲渡や転貸には、賃貸人の承諾が必要です。

民法612条 
1項 
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 
2項 
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる

賃貸借は賃借人に対する個人的信頼を基礎とする契約なので、賃借人がどのような人で、どのように利用をするかが、契約関係に大きな影響を与えるからです。


3. 無断譲渡・無断転貸


賃貸人に無断で賃借権を譲渡したり、転貸したりして、第三者に賃借物を使用収益させると、賃貸人は、賃貸借契約を解除できます。

民法612条 
1項 
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 
2項 
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる

ただし、判例では、不動産賃借権について、信頼関係破壊理論を用いて、解除権の発生を制限しています。不動産賃借権の無断譲渡・無断転貸が賃貸人に対する背信行為に当たらない特段の事情がない場合には、解除権は発生しないということです。


転借人の地位


違法な転貸が行われると、本来何の関係もないはずの賃貸人・転借人の間に直接の関係が生じ、転借人は賃貸人に対して直接義務を負うようになります。

民法613条 
1項 
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。 
2項 
前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

転借人が賃貸人に対して直接に負う義務として、賃料支払義務・目的物保管義務などがあります。転借人が賃貸人に対して支払わなければならない賃料は、原賃料と転借料のうち、少くない額の方です。
転借人が賃貸人から賃料の支払い請求を受けた場合、転借人は、賃料の前払いを主張することができません。そのため、転貸人に前払いをしていた場合には、二重に弁済しなければならないことになります。


賃貸借の終了


1. 存続期間の満了


貸借権の存続期間が満了すると、当然賃貸借は終了します。もちろん、契約を更新することもできます。特に、借地借家法は、契約の継続性を尊重しており、例えば、建物の賃貸借の場合、期間満了の1年前から6ヶ月までの間に正当事由のある更新拒絶がないと、従前の契約と同一条件で更新したものとみまされます

借地借家法26条 
1項 
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 
2項 
前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。 
3項 
建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

2. 解約の申入れ


期間の定めのない賃貸借の場合、各当事者はいつでも解約の申し入れを行うことができ、その後、所定の期間が経過すれば、賃貸借は終了します。例えば、建築物賃貸借の場合、賃借人の解約であれば、解約申し入れ後3ヶ月で賃貸借は終了します。ところが、賃貸人が解約する場合には、賃借人を保護するために、終了までの期間が6ヶ月に延長されます。

借地借家法27条 
1項 
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。 
2項 
前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

しかも、解約申し入れに正当事由が要求されます。

なお、建物の賃貸借が期間満了または解約の申し入れによって終了する場合、建物の賃貸人は、その旨を建物の転借人に通知しないと、賃貸借の終了を転借人に対抗できません。

借地借家法34条 
1項 
建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。 
2項 
建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。


3. 解除


賃借人が賃料不払い・用法違反・賃借権の無断譲渡などをすると、賃貸人は契約を解除することができます。ただし、賃貸借の解除には、遡及効がありません。賃貸借契約を解除しても、その効力は将来に向かって発生し、賃貸借は、将来に向かって消滅するにすぎません。


4. 賃借物の返還


賃貸借が終了すると、賃借人は、賃借物を返還しなければなりません。その際、賃借人は、賃借物の原状回復をし、賃借物に付属させたものを収去する必要があります。

民法616条 
第594条第1項、第597条第1項及び第598条の規定は、賃貸借について準用する。

民法598条 
借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。


5. 建物買取請求権と造作買取請求権


借地権の存続期間が満了し、契約が更新されない場合には、借地人は、地主に対して建物を直で買い取れるように請求できます。これを建物買取請求権といいます。
また、建物の賃貸借が期間の満了または賃貸人から買い受けた造作を時価で買い取るように請求できます。
借地借家法33条

これを造作買取請求権といいます。



次は、民法の分野の「他人の労務を利用する契約」について紹介していきます。
➡【リンク】14. 雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)

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2019年10月14日月曜日

【行政書士試験】手付を解除できない場合がある?手付解除の可否の分かれ目を判例を交えて解説

【重要判例】所有権移転登記等請求事件(手付解除)/最大判昭40.11.24


【重要判例】所有権移転登記等請求事件(手付解除)/最大判昭40.11.24


どうもTakaです。今回は、履行に着手した者から着手していない者に対して解除権を行使できるのか?が争われた「 所有権移転登記等請求事件(手付解除)」について紹介したいと思います。

所有権移転登記等請求事件(手付解除)の内容


AさんとBさんは、不動産を200万円で売り渡す契約を締結し、買主Bが売主Aに対して手付金として40万円が交付され、残金160万円は所有権移転と引き換えに支払われることとなった。その後、その不動産の価格が急騰したので、Aは解除の意思表示をなしBさんに手付金の倍額の80万円を提供した。これに対して、Bさんは、すでに当事者の一方が契約の履行に着手しているから、もはやAは手付金の倍額を償還して契約を解除することはできないと主張し、Aに対して不動産の所有権移転登記を求めて訴えを提起した。

所有権移転登記等請求事件(手付解除)の争点


①「履行に着手」(民法557条1項)とは、どのような行為を指すのか?

②履行に着手した者から着手していない者に対して解除権を行使できるのか?

判決のポイント


手付解除の可否の結論

①履行に着手した当事者に対する解除は・・・✕ できない

②履行に着手していない当事者に対する解除は・・・〇 できる


民法557条 
1項 
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。 
2項 
第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない。


民法545条 
1項 
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。 
2項 
前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。 
3項 
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。


民法557条1項の履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなくし、または履行の提供をするために欠けることのできない前提行為をした場合を指す。

履行に着手した当事者が不測の損害を被ることを防止するのが557条1項の趣旨だから、同条項は、履行に着手した当事者に対して解除権を行使することを禁止するものであり、未だ履行に着手していない当事者に対しては事由に解除権を行使できる。

よって、履行に着手しているので解除できない。


➡【リンク】最高裁判HP・・・昭和37(オ)760

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【行政書士試験】売買と贈与のトレーニング問題

【行政書士試験】売買と贈与のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★所有権の移転を目的とする契約


(1)所有権を取得する対価として、金銭を支払うのが売買であり、金銭以外のものを引き渡すのが交換である。

〇…問題文の通り。


(2)売買の目的である権利の一部が他人に属し、売主がこれを買主に移転することができないときは、善意の買主は代金減額請求権と損害賠償請求権の両方を行使することができる。

○…問題文の通り。残存する部分のみであれば買主が買わなかった場合は、善意の買主には契約解除請求権もある。この場合でも、契約解除請求権とともに損害賠償請求権も行使できる。

★贈与


(3)贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与えることである。

○…贈与は、当事者の一方が財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方が受諾すると効力が生ずる。


(4)書面によらない贈与は、撤回できる。ただし、履行の終わった部分は、撤回できない。

〇…問題文の通り。


(5)負担付贈与の受贈者が負担である疑問を怠ると、贈与者は、契約を解除できる。

〇…問題文の通り。


(6)贈与者は、贈与したものに瑕疵があっても、無料で提供したものなので責任を負うことは一切ない。


✕…贈与者が瑕疵の存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、責任を負うこともある。
民法551条 
1項 
贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。 
2項 
負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。


★売買


(6)売買の目的物の引渡しに期限がある場合、代金の支払いにも同じ期限があると推定される。

〇…問題文の通り。


(7)自己に属さない他人の権利を売買の目的とすることはできない。

✕…他人の権利を売買の目的とすることもできる。ただし売主は、その他人の権利を取得して買主に移転する義務を負う。

民法560条 
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。


(8)売買の目的物が他人の者であっても、売買契約は、当事者間では有効であり、売主は、目的物を買主に移転する義務を負う。

〇…問題文の通り。



(9)売買の目的物に隠れた瑕疵がある為、目的を達成できない場合には、善意無過失の買主は、契約を解除することもできる。

〇…問題文の通り。


(10)目的物を買主に引き渡す前に生じた果実は、売主の者である。

〇…問題文の通り。




【行政書士試験・民法】12. 売買と贈与・・・条文とともに基本を確認しておきましょう

12. 売買と贈与


【行政書士試験・民法】12. 売買と贈与・・・条文とともに基本を確認しておきましょう


今回は民法の分野の「売買と贈与」について紹介していきます。




所有権と移転と目的とする契約


所有権の移転を目的とする典型契約


民法は、所有権の移転を目的とする契約として、贈与・売買・交換について定めています。これら3種類の契約は、所有権を取得するのに、対価が必要か否かで分類することができます。対価が不要なのが贈与であり、対価が必要なのが、売買と交換です。


交換とは?


交換は、物と物を交換する契約であり、売買との違いは、対価が金銭ではないという点だけです。所有権を取得する対価として、金銭を支払うのが売買であり、金銭以外のものを引き渡すのが交換です。


贈与


贈与とは?


贈与とは、当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える契約であり、両者の合意により成立します。

民法549条 
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。


贈与は、ただで財産を与える契約ですから、無償契約です。そして、贈与契約は、片務契約です。贈与者に目的物を引き渡す債務が発生するだけで、受贈者には、何らか債務を引き渡す債務が発生するだけで、受贈者には、何らか債務が発生しないからです。

書面によらない贈与の撤回


軽率な贈与を防止し、贈与者が不当な不利益を受けないようにするために、書面に寄らない贈与について、撤回が認められており、贈与の効力を将来に向かってなくすことができます。

民法550条 
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。


ただし、書面に寄らない贈与であっても、履行の終わった部分については、撤回することはできません。「履行の終わった」とは、動産については、引渡し(簡易の引渡しや占有改定でよい)が行われることであり、不動産については、登記・引渡しのいずれかがなされることです。動産の引渡しや不動産の登記・引渡しがあると、もはや撤回できないのです。

負担付贈与


贈与の中には、受贈者になんらかの義務を負担させるものもあります、これを負担付贈与といいます。

負担付贈与には、双務契約に関する規定も適用されます。そのため、負担を怠ると、債務不履行として、契約を解除されます。また、贈与者は、その負担の限度において、売主と同様の担保責任を負います。


売買




売買契約


1. 売買契約とは何か


売買契約とは、売主がある財産を買主に移転することを約束して、これに対して買主がその代金を支払うことを約束する契約のことをいいます。つまり、財産権を与え、その対価として金銭を取得する契約です。

民法555条 
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。


財貨と金銭とを交換する契約が、売買契約であり、売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担します。


2. 売買契約の成立


売買契約は、諾成契約であり、両当事者の合意だけで成立します。書面を作る必要は特になく、口約束だけで契約は成立します。

一方的な意思表示によって売買契約を成立させる権限(予約完結権)を当事者の一方にだけ与えるという合意を売買の一方の予約といいます。予約完結権を与えられた当事者がそれを行使すると、相手方の承諾なしに、当然に売買契約が成立します。


3. 目的物の引渡債務と代金支払債務


売買契約が成立すると、売主に目的物の引き渡し債務が発生し、買主に代金支払い債務が発生します。目的物の引渡債務と代金支払債務は、相互に対価的な関係になりますから、売買契約は、双務契約です。

売買の目的物の引渡しについて期限があれば、代金の支払いについても同一の期限が付かれていると推定されます。そして、目的物の引渡しと同時に代金を支払う場合には、代金は、目的物の引渡し場所で支払わなければなりません。

ただし、売買の目的物について、権利を主張するものがいるため、買主が目的物の権利を失うおそれがあるときは、買主は、売主が相当の担保を提供した場合を除き、その危険の限度に応じて、代金の全部または一部の支払いを拒むことができます。


手付


1. 手付とは何か?


手付
手付のイメージ


手付とは、売買契約の締結の際に、当事者の一方から他方に対して支払われる金銭等のことをいいます。例えば、上の図で説明すると、自転車が欲しい人が、自転車を持っている人を見つけたけど、手持ちのお金が足りないとき、持っている人に「少し払っておくから、誰にも売らないでとっておいて」とお願いする場面をイメージするとわかりやすいと思います。

手付の交付によって、手付の所有権は、買主から売主に移転します。
手付には、証約手付・解約手付・違約手付があります。証約手付とは、証拠としての機能を持つ手付です。解約手付とは、手付を犠牲にすれば、どんな理由であっても契約を解除できるというものです。そして、違約手付とは、一方が債務を履行しない場合に、相手方に無条件で没収されるものです。

2. 解約手付による解除


解約手付を交付した場合には、手付流し、手付倍返しによる無理由解除ができます。手付流しによる無理由解除とは、解約手付を交付した買主は、その手付を放棄しさえすれば、どのような理由であろうと、契約を解除できることをいいます。これに対して手付倍返しによる無理由解除とは、売主も、手つきを倍額にして返せばどんな理由も解除できることをいいます。

解約手付による解除は、当事者の一方が契約の履行に着手するまでに行わなければなりません。「当事者の一方」とは、解除の相手方であって、解除する側は含まれないというのが、判例です。


売主の担保責任


1. 売主の担保責任とは何か


売主の担保責任とは、売主が、目的物を十分な状態で買主に引き渡すことを保証することです。目的物が他人の物であったり、数量が不足していたりするなど、契約成立前から目的物に何らかの瑕疵(欠陥・きず)があるため、代金に見合った価値がなく、対価的不均衡を生じる場合には、公平の理念から、売主に帰責事由がなくても一定の責任を課し、買主の利益を保護しようというわけです。


2. 他人物売買


他人物売買(たにんぶつばいばい)とは、他人の所有するものを売ってしまう場合です。例えば、まだ自分のものになっていないけど、購入予定があって、転売できると考える場面も考えられます。

売買の目的物が売主の所有物でなく、他人の物であった場合(他人物売買)でも、売買契約は、当事者間では有効であり、売主は、売買の目的物を買主に移転する義務を負うということです。

目的物の所有権を移転できない場合には、売買の目的を達成できないため、買主は、契約当時に目的物が他人の物であることを知っていても(悪意)、知らなくても(善意)、契約を解除できます。そして、善意の買主は、損害賠償を請求することもできます。これらについては、1年以内という制限はありません。


3. 一部他人物


売買の目的物の一部に他人のものが含まれており、その部分の所有権を移転んできないという場合、買主はその部分の割合に応じて代金の減額を請求できます。そして、残存部分だけなら、買わなかったという場合には、契約成立時に善意の買主は、契約を解除できます。また、善意の買主は、損害賠償を求めることもできます。
代金減額請求は、買主の善意・悪意を問いませんが、契約の解除と損害賠償請求は、善意の買主に限定されています。


4. 数量指示売買


数量を基礎にして価格が決定された売買を数量指示売買といいます。例えば、1㎡当たりの価格が30万円の土地で、総面積が5000㎡あるから、その代金は15億円であると言った場合がこれに当たります。
数量指示売買において、目的物の数量が不足した場合、善意の買主は、数量不足を知ったときから1年以内に代金減額請求・損害賠償請求ができ、残存部分だけでは買わなかったであろうという場合には、1年以内に契約の解除もできます。


5. 瑕疵担保責任


売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合、善意無過失の買主は、売主に対して損害賠償を請求できます。そして、目的を達成できない場合には、善意無過失の買主は、契約を解除することもできます。

「隠れた」とは、取引上要求される一般的な注意では発見できないことをいいます。つまり、買主が、瑕疵のあることについて善意無過失であることを意味します。

そして、「瑕疵」とは、目的物に欠陥・キズがあり、備えるべき品質・性能を備えていないことをいいます。備えるべき品質・性能は、目的物の使用目的など契約の趣旨を考慮して判断すべきであると解されています。

損害賠償請求や契約の解除は、瑕疵を知った時から1年以内に行わなければなりません。


売買の目的物から生じた果実


売買契約成立と同時に、売買の目的物は買主のものになるのが原則する。

しかし、目的物を買主に引渡す前に生じた果実は、売主のものであり、目的物の引渡し後に生じた果実だけが、買主のものになります。その代わりに、代金の利息は、目的物の引渡日から支払えばよいとされています。

民法575条 
1項 
まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。 
2項 
買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。

果実を取得する利益と代金の利息を同価格とみなして、引き渡しまでの生産を簡略化しているのです。

また、判例では、売主が目的物の引渡し期限を徒過している場合でも、買主が代金を支払わなければ、果実の収取権は、売主にあるといっています。


買戻し


不動産の売買契約に解除できるという特約を付けておき、その特約に基づいて、売主が売買契約を解除し、売った不動産を取り戻すことを買戻しといいます。

買い戻しの際に、売主が買主に返還すべきものは、代金と契約費用だけです。売主は、代金と契約費用の返還だけで不動産を取り戻すことができるのです。

民法579条 
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。


ただし、買い戻しの期間は、10年以内に限定されており、10年より長い期間を定めても、10年に短縮されます。また、買戻特約を第三者に対抗するには、売買契約と同時に特約を登記する必要があります。

民法581条 
1項 
売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対しても、その効力を生ずる。 
2項 
登記をした賃借人の権利は、その残存期間中一年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない。


次は、民法の分野の「物の貸し借り」について紹介していきます。
➡【リンク】13.物の貸し借り


2019年10月9日水曜日

【行政書士試験】契約総論のトレーニング問題

【行政書士試験】契約総論のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★契約の成立


(1)契約とは、相対する両当事者の意思表示によって成立する法律行為である。

〇…問題文の通り。


(2)申し込みに承諾機関が定められていれば、その期間内に承諾を到達させる必要がある。

〇…問題文の通り。


(3)契約とは、民法上、契約書など書面によって締結するものに限られる。

✕…例えば、コンビニでジュースを買うのも契約(売買契約)である。


(4)承諾機関を定めた申し込みが既に相手方に到達していた場合は、その期間が経過するまで、申し込みを撤回することはできない。

〇…問題文の通り。


(5)両当事者間の合意だけで成立する契約を、諾成契約という。また、両当事者間の合意だけで契約が成立し、目的物が引き渡されて初めて契約が成立する契約を要物契約という。

✕…
諾成契約
・・・両当事者間の合意だけで成立する契約

要物契約
・・・両当事者間の合意だけでは契約が成立せず、目的物が引き渡されて初めて契約が成立する契約


★契約存続中の関係


(6)同時履行の抗弁権は、当事者間の公平を図り、不必要な争いを未然に防ぐためのものであり、相手方の履行を確実にする機能もある。

〇…問題文の通り。


(7)双務契約とは、契約が成立すると、当事者双方が相互に対価的な関係にある責務を負うことになる契約のことである。

〇…問題文の通り。


★契約の解除


(8)契約の解除とは、契約の一方の当事者の意志により契約がなされなかったのとほぼ同じ状態に戻すことである。

〇…問題文の通り。


(9)契約の解除前に出現した第三者は、登記などの権利保護要件を備えれば、善意・悪意を問わず保護される。

〇…問題文の通り。



2019年10月8日火曜日

11. 契約総論・・・契約とは何かという基本から勉強していきましょう。

11. 契約総論



今回は、民法の分野の「契約総論」について説明していきます。




契約の成立


契約とは何か?


契約とは、相対する両当事者の意思表示(申し込みと承諾)の合致(合意)によって成立する法律行為です。契約は、法律行為の1つであり、その成立によって債権・債務という私法上の効果が発生するものです。

契約は、向かい合った関係にある2つの意思表示によって成り立っています。2つの意思表示のうち、先になされた意思表示を申し込みといい、これを受けて後からなされた意思表示を承諾といいます。



契約の成立要件


1. 諾成契約と要物契約


契約は、原則として両当事者の意思表示が合致すれば成立します。このように両当事者の合意だけで成立する契約を諾成契約といいます。

これに対して、両当事者の合意だけでは契約が成立せず、目的物が引き渡されて初めて契約が成立するものもあります。これを要物契約といいます。


2. 契約方法の自由


両当事者の合意は、口契約だけでよく、書面を作成する必要はないのが原則です。これを契約方式の自由といいます。


申し込みと承諾


1. 申込みの効力


契約が成立するためには、まず一方が申し込みをしなければなりません。隔地者間の申込みは、相手型が知ることのできる状態になった時(到達時)に効力を生じ、相手型が承諾をして、契約を成立させることのできる状態(承諾適格のある状態)になります。
申込者が承諾期間を定めていた場合には、その期間の経過により、申し込みは効力を失い、承諾適格を失います。また、申し込みが承諾期間を定めずになされた場合も、取引慣行等に従った相当な期間の経過によって、申込みの承諾適格は消滅します。


2. 申込みの撤回


申 し込みをしたものの、途中で気が変わった場合、申込みが相手方に到達する前であれば、申込みの効力が発生していませんから、当然撤回することができます。
申し込みが、既に相手方に到達しており、しかも、承諾期間を定めていた場合には、その期間が経過するまで、申込みを撤回することができません。これを申し込みの拘束力といいます。
そして、承諾期間を定めていない場合も、承諾通知を受けるのに相当な期間は、申込みの拘束力があり、その期間は、申込みを撤回できないことになっています。

民法524条 
承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。


3. 承諾


承諾は、申込みに対応する内容でなければなりません。条件をつけるなど、申込みに変更を加えて承諾をした場合には、その申込みを拒絶するとともに、新たな申し込みをしたものとみなされます。

民法528条 
承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

承諾は、申込みに承諾適格がある間にしなければなりません。申し込みに承諾期間が定められていた場合には、その期間の経過により、申し込みの承諾適格がなくなりますから、承諾期間内に承諾を到達させる必要があります。ただし、承諾が遅れ、承諾期間経過後に到達した場合には、申込者は、遅延した承諾を新たな申し込みとみなすことができます。

民法523条 
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。


そのため、申込者が、遅延した承諾を新たな申込みとみなし、承諾すると、契約が成立します。


契約の成立時期


1. 発信主義


契約の成立時期については、発信主義がとられており、隔地者間の契約も、承諾の発信時に成立します。

民法526条 
1項 
隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。 
2項 
申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

2. 意思実現による契約の成立


申込者が返事は要らないと言った場合や、取引慣行上特に承諾の通知が必要でなかった場合には、承諾の意思表示と認められるような行為があれば、その時に契約が成立します。これを意思実現による契約の成立といいます。

3. 交叉申込み


両当事者がほぼ同時に申込みを行う(先になされた申込みが到達する前に、後の申し込みがなされる)という場合もあります。これを交叉申し込みといいます。

交叉申込みによっても、契約は成立します。ただし、いずれも申込みであり、承諾がないため、民法526条1校は適用されず、後の申し込みが到達した時に契約が成立します。


契約存続中の関係


双務契約の牽連性


1. 双務契約と片務契約


契約が成立すると、当事者双方か相互に対価的な関係にある債務を負うことになる契約を双務契約といいます。代表例は、売買契約です。
これに対して、双方の債務が対価的な関係にない契約や一方の当事者だけが債務を負うことになる契約を片務契約といいます。

例:贈与契約



2. 牽連性



双務契約によって生じる2つの債務は、相互に対価的関係にあります。


双務契約によって生じる2つの債務は、双方ともに有効に成立する場合にのみ成立し、一方の債務が何らかの理由で有効に成立しない場合には、他方も有効に成立しません(成立上の牽連性)。

そして、両債務は、一方が履行されない間は、他方も履行しなくて良いという関係にあります(履行上の牽連性)。

また、両債務は、一方が履行されずに消滅した場合には、他方も消滅するのが原則です(存続上の牽連性)。


同時履行の抗弁権


1. 同時履行の抗弁権とは何か?


同時履行の抗弁権とは、相手方が、自分の債務も弁済期にあるのに何もせず、こちらの債務の履行ばかり要求する場合に、同時に履行しろと言い返すことができることです。

民法533条 
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。


同時履行の抗弁権は、当事者間の公平を図り、不必要な争いを未然に防ぐためのものであり、相手方の履行を確実なものにするという機能もあります、

2. 同時履行の抗弁権の成立要件


同時履行の抗弁権は、同一の双務契約から発生した対価的関係にある2つの債務について認められるのが原則である。しかし、この要件は緩和されており、2つの債務が同一の契約から発生したものでなくても、両債務の履行を関連して行わせるのが公平である場合に、同時履行の抗弁権が認められることがあります。例えば、契約が解除され、双方が原状回復義務を負う場合、その義務は、同時履行の関係にあります。
民法546条

3. 同時履行の抗弁権の効果


同時履行の抗弁権があれば、弁済期がやってきても、債務を履行する必要はありません。相手方が履行の提供をするまでは、履行を拒むことができ、履行を拒んでも、債務不履行責任は発生しません。そのため、売買の目的物の引き渡しを求める訴えが提起され、それが認められたとしても、目的物の引き渡しと代金の支払いが、同時履行の関係にある場合には、代金の支払いと引き換えに、目的物を引き渡せという判決(引換給付判決)がなされるにすぎないです。

危険負担


1. 危険負担とは何か?


双務契約の成立後、いずれの債務も完全には履行されていないときに、一方の債務がその債務者の帰責事由によらずに履行不能になった場合、他方の債務はどうなるかという問題を危険負担の問題といいます。一方の債務の消滅という危険(リスク)をいずれかの当事者が負担するかという問題です。

2. 債務者主義


当事者に落ち度がないのに、一方の債務が履行不能になった場合、双務契約の存続条の牽連性により、他方の債務も消滅するのが原則です。これは、履行不能になった債務の債務者から見れば、自分の権利が消滅してしまうことを意味します。そのため、一方の債務の履行不能による危険を負担するのは、原則として債務者であり、債権者は権利も失います。これを債務者主義といいます。


3. 特定物売買の危険負担


これに対して、特定物売買など、特定物に所有権などの物権を設定または移転する双務契約については、債権者主義が採用されています。
民法534条1項

特定物が、売主(債権者)の帰責事由によらずに滅失または損傷した場合には、買主(債権者)がそのリスクを負い、飼い主の代金支払い債務は残るということです。そのため、飼い主は、目的物を、受け取ることができないのに、代金を支払わなければならないことになります。


契約の解除


契約の解除とは何か?


契約の解除とは、契約の一方当事者の意思により契約がなされなかったのとほぼ同じ状態に戻すことをいいます。契約を一方的に破棄し、白紙に戻すことを解除と言います。

解除は、相手方に大きな影響を与えるため、解除は両当事者が合意した要件を満たす場合(約定解除)と、法が定めた要件を満たす場合(法定解除)に限定されています。

債務不履行を理由とする解除


1. 解除の要件


債務不履行があり、それを正当化する事由(同時履行の抗弁権など)がなく、かつ、それが債務者の帰責事由に基づく場合、債権者は、一方的にその債権の発生原因である契約を解除することができます。

2. 催告


履行遅滞や追感可能な不完全履行を理由に、契約を解除する場合には、原則として最後通知たる催告を行い、相手肩に解除を免れる最後のチャンスを与えなければなりません。

民法541条 
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。



相手方が催告に応じない場合に初めて、解除権が発生します。

履行の催告には、相当の期間を定める必要があります。具体的状況のもとで、客観的に見て履行に必要と判断される期間を定めて、履行を催告しなければなりません。

これに対して、履行不能になった場合には、催告なしで解除することができます。

民法543条 
履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


債務の本旨に従った履行ができない状態になっている場合には、催告をしても無意味だからです。


解除の効果


契約が解除されると、各当事者は、原状回復ぎむを負います。各当事者は、法律関係を契約前の状態に戻さなければならないのです。そのため、契約が解除されると、未履行の債務を履行する必要はなくなりますが、すでに履行した債務を元に戻さなければなりません。
しかし、解除の前に利害関係を持つようになった第3者は、善意・悪意を問わず、保護されるためには、目的物が不動産なら登記を備え、それが動産なら引渡しを受け、自分の権利を他の人にも主張できるようにしておく必要があるといってます。



次は、民法の分野の「売買と贈与」に関して紹介していきます。
➡【リンク】12. 売買と贈与

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2019年10月7日月曜日

物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)って何?行政書士試験の重要判例

【重要判例】 物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)/最大判昭40.6.30


今回は、契約を解除した場合の 原状回復義務についても、保証人は責任を負うかが争われた「 物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)」について紹介したいと思います。

物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)の内容


物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)って何?行政書士試験の重要判例


AさんはBさんから、畳を買い、CさんはBさんの連帯保証人となりました。Aさんは代金を支払いましたが、Bさんがその畳や建具を引渡さないため、Aさんは、催告の後、契約を解除した。Aさんは、BさんとCさんに対して代金の返還請求をした事件です。


物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)の争点


契約を解除した場合の 原状回復義務についても、保証人は責任を負うか?

判決のポイント



保証人は原則として、売主の債務不履行による契約が解除された場合における現状回復義務についても責任を負う。


➡最高裁判HP・・・ 昭和38(オ)1294

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【行政書士試験】債務の履行確保のトレーニング問題

【行政書士試験】債務の履行確保のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★債務者の責任財産保全


(1)遺留分減殺請求権は行使上の一身専属権であり、権利行使の確定的意思を外部に表明したと認められる特段の事情がない限り、代位行使できない。 

○…問題文の通り。


(2)金銭の支払い請求権または物の引き渡し請求権を代位行使する場合、債権者は、直接自分に支払え、または引き渡すことを請求できる。

〇…問題文の通り。


(3)不動産の売却は、相当な対価であっても、債権者を害する可能性がある。

〇…問題文の通り。


★連帯債務


(4)連帯債務者の1人に対して履行を請求すると、他の連帯債務者にも請求したことになる。

〇…問題文の通り。


(5)連帯債務者の誰か一人が弁済をすれば、債務は全て消滅する。

〇…問題文の通り。


(6)連帯債務者の1人が事故の反対債権で相殺すると、他の連帯債務者の債権も消滅する。

〇…問題文の通り。


★保証債務


(7)保証債務は、債権者と保証人との書面での保証契約によって成立する。

〇…問題文の通り。


(8)保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権がある。だが、連帯保証人にはない。 

〇…問題文の通り。


(9)主たる債務者に対して債務者に対して時効中断の措置をとれば、保証人にも時効中断の効力が生じる。 

〇…問題文の通り。




【行政書士試験・民法】10. 債権の履行確保・・・ややこしい分野ですがそれぞれの債務のイメージを整理しよう!

10. 債権の履行確保

最終更新日:2020年1月9日



今回は民法の分野の「債権の履行確保」について紹介していきます。




債務者の責任財産保全


責任財産の保全


抵当権などの担保の目的となっておらず、債権回収の最後の拠り所となる財産を責任財産といいます。責任財産を国家権力が差し押さえ、売却した金銭から配当を受けるというのが、債権回収の最後の手段です。そのため、債務者の責任財産が減少しないようにしなければなりません。


債権者代位権


1. 債権者代位権とは何か?


債権者代位権
債権者代位権の例



債務者代位権とは、ある債権の債務者がその有する財産権を行使しない場合、債権者が自分の債権を保全するために、債務者に代わってその権利を行使できる権利を言います。

民法423条 
1項 
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。 
2項 
債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。



上の図を例にすると、
Aさんから借金しているBさんが、Cさんに対して金銭債権を持っているとして、BがCkaraその債権の弁済を受ければ、Aは自分の債権を弁済してもらえるのにBがその債権をそのままにしている場合、AがBに代わって、BのCに対する権利を行使してしまうという権利です。


2. 債券代位権の行使の要件


債権者代位行使の要件は以下の通りです。

①債権者の資力が十分でなく、代位権を行使しないと、債券を回収できなくなるおそれのあること(無資力要件)

②原則として債権者の債権(被保全債権)の履行期が到来しているとのこと。

③債務者の権利が、権利の性質上、債務者自身に行使させるべき権利(行使上の一身専属権)でないこと。

④債務者が権利を行使しないこと。


3. 行使上の一身専属権


債務者に属する権利であって、その行使が債権者の債券の実現に役立つものは、原則として債権者代位権の客体となります。しかし、権利の性質上、権利者自身に行使させるべき権利を代位行使させるわけにはいきません。このような権利を行使上の一身専属権といいます。

例としては、夫婦間の契約取消権や親族間の扶養請求権がこれに当たります。


4. 債権者代位権の行使方法


債権者代位権を行使する場合、債権者は自分の名で、債務者の権利を行使します。債務者の代理人として行使するものではありません。また、債権者代位権は、原則として裁判外でも自由に行使できます。

債権者代位権の行使は、被保全債権を保全するのに必要な範囲内に限定されています。例えば、債務者が1000万円の債権を持っていても、被保全債権が800万円であれば、債権者は、800万円しか請求できません。

債権者は、債務者の権利を代位行使しているにすぎません。そのため、例えば、債務者の権利が不動産の移転登記請求権であれば、債権者は、直接自分に登記を移転するように請求することはできず、債務者に登記を移転するように請求できるだけです。

しかし、債務者の権利が金銭の支払請求権や物の引き渡し請求権の場合には、債権者は、直接自分に支払え、あるいは引き渡せと請求できます。本来の権利者である債務者が金銭や物を受け取らないと、代位行使の目的を達成できなくなってしまうからです。


5. 債権者代位権の転用


債権者代位権は、金銭債権を保全するために、債権者が債務者の権利を代位行使するものです。しかし、債権者代位権を、金銭債権の保全とは全く異なる場面で用いることが認められています。これを債権者代位権の転用といいます。


債権者取消権


1. 債権者取消権とは何か


債権者取消権(詐害行為取消権)とは、債務者がその責任財産を減少させるような財産的処分行為(詐害行為)を行った場合に、債権者がその行為を取り消して流失した財産を取り戻すことを認め、債務者の責任財産を維持しようという制度です。


2. 債権者取消権の成立要件


次の3つの要件を満たすと債権者取消権が成立します。

①詐害行為時に保全すべき債権(被保全債権)が存在すること。

②債務者が債権者を害することを知りながら財産権を目的とする法律行為(詐害行為)を行うこと。

③詐害行為によって利益を受けた物(受益者)・転得者が債権者を害することを知っていること。


債権者取消権が成立するためには、被保全債権が詐害行為の前に成立し、詐害行為時にそれが存在していなければなりません。しかし、被保全債権は、成立していればよく、履行期が到来している必要はありません。


3. 詐害行為


債務者が債権者を害することを知りながら行う財産権を目的とする法律行為を詐害行為と呼んでいます。「債権者を害する」とは、債務超過という意味での無資力を意味します。債権者取消権を行使するためには、詐害行為時だけではなく、取消権行使時にも債務者が無資力でなければなりません。

弁済は、債務者の義務であり、原則として詐害行為に当たりませんが、債務者が、特定の債権者と共謀して他の債権者を害する意思で、その特定の債権者にのみ弁済した場合には、取消権が成立します。

詐害行為は、財産権を目的とする行為に限定されています。そのため、婚姻・養子縁組・相続の放棄などの家族法上の行為は、債権者取消権の対象にならないのが原則です。


4. 債権者取消権の行使方法


債権者取消権は、債権者代位権と異なり、裁判以外で行使することはできません。債権者取消権を行使しようと思えば、裁判所に取消訴訟を提起しなければなりません。債権者取消権の行使は、被保全債権の範囲に限定されています。そのため、詐害行為の目的物が金銭などの可分なものであれば、被保全債権の債権額に相当する部分だけを取り消すことができます。

債権者取消権の行使は、総債権者の利益のためであり、目的物が債務者に戻れば目的を達成することができます。しかし、目的物が金銭や物の場合には、債権者代位権の場合と同様に、債権者が直接自分に引き渡すように請求できます。そして、金銭については、受領した金銭を債務者に変換する債務と本来の債権とを相殺することによって、事実上優先弁済を受けることができます。



5. 債務者取消権の行使期間


債務者取消権は、債権者が取り消しの原因を知った時から、2年間行使しないと、時効によって消滅します。また、詐害行為の時から20年を経過すると、債権者取消権は消滅します。

民法426条 
第424条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。


法律関係を早期に確定させるためです。



連帯債務


多数当事者の債権債務関係


1. 分割債務の原則


一方の当事者が複数人いる場合の債権債務関係を多数当事者の債権債務関係といいます。金銭債務のように分割して実現できる可分給付について複数の債務者がいる場合、原則として、債務者は、それぞれ頭数で分割した給付だけを行えばよいことになっています。

民法427条 
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。


このような債務を分割債務といいます。


2. 不可分債務


複数人が1個の不可分な給付を目的とする債務を負う場合もあります。これを不可分債務といいます。例えば、共同賃借人の賃料支払債務を性質上不可分の債務であるというのが判例です。

不可分債務の債権者は、債務者の1人に生じた事由は、弁済や代償弁済などの債権者を満足させるものを除いて、他の債務者に影響しません。そのため、不可分債務は、消滅しにくく、債権の回収が容易であると解されています。

連帯債務


1. 連帯債務とは何か


連帯債務とは、複数の債務者がそれぞれ独立して可分な同一内容の給付を全て行う義務を負うが、債務者の誰かが給付をすれば、他の債務者も債務を免れるというものです。連帯債務は、複数の債務者を一体的なものとして債権の回収を簡単にしようという制度です。例えば、A・B・Cさんの3人が、Dさんに対して6億円の連帯債務を負っていたとします。A・B・Cさん達は、いずれもDさんに対してを6億円を支払う義務を負っていますが、そのうちの誰かが6億円全額を支払うと、3人の債務は全て消滅します。

2. 連帯債務の性質


連帯債務は、1つの債務ではなく、債務者ごとに別途独立の債務が存在します。債務者の数だけ別途独立の債務があります。そのため、1つの債務について無効・取消原因があり、その債務が無効となったり、取り消されたりして存在しなくなっても、他の債務は、何ら影響を受けることなく、存続します。

3. 連帯債務の履行請求


連帯債務が成立した場合、債権者は、自己の債権の範囲内である限り、どのようにでも請求できます。1人にのみ全額の支払いを請求することもできるし、全員に対して同時に全額の支払いを請求することもできます。また、適当に振り分けて請求することもできます。連帯債務者は、それぞれ独立して債権全額を弁済する 義務があるからです。


連帯債務者の1人に生じた事由


1. 履行請求の絶対的効力


連帯債務を構成する複数の債務は、それぞれ別途独立の債務ですから、連帯債務者の1人に生じた事由は、他の債務者に影響しないのが原則です。

民法440条 
第434条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。


しかし、債権者が連帯債務者の1人に対して履行を請求した場合、その効力は、他の連帯債務者にも及び、他の連帯債務者にも請求したことになります。

民法434条 
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。


このように債務者の1人に生じた事由が他の債務者にも影響を与えることを絶対的効力といいます。



2. 弁済等の絶対的効力


弁済にも、絶対的効力があります。連帯債務者は、それぞれ別個独立の債務を負っていますが、それらは同一内容の債務です。そのため、連帯債務者の誰か1人が弁済をすれば、債務の内容は実現されたこととなり、債務は全て消滅します。
また、代物弁済・弁済供託・弁済の提供・混同・更改にも絶対的効力が認められています。


3. 相殺の絶対効力


例えば、Aさん・Bさん・Cさんの3人がいたとし、連帯債務を負っているとします。Aさんが相殺した場合、絶対効力が認められ、Bさん・Cさんの債務も消滅します。そして、Aさんが相殺をしない場合には、Aの負担部分について、B・Cが相殺を援用できます。
民法436条

B・CはAに相殺可能な債権があることを主張して、Aの負担部分だけを弁済額を減額することができるのです。


4. 免除の絶対的効力


債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合もその連帯債務者の負担部分について絶対的効力が認められています。

民法437条 
連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。


その連帯債務者の負担部分だけ他の連帯債務者の債務も減少するのです。

債務の一部についてのみ免除がなされた場合には、全額の免除を受けた場合に比例した割合で、他の債務者も債務をの免れるというのが判例です。


5. 消滅時効の絶対的効力


通教債務者の1人について、債権の消滅時効が完成した場合も、その連帯債務者の負担部分について絶対的効力が生じ、その負担部分だけ、他の債務者の債務は減少します。

民法439条 
連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。


保証債務


保証債務とは何か?


保証人と債権者との間で、債務者が債務を弁済できない場合に、保証人が代わって弁済するという合意(保証契約)をすることを保証といいます。そして、この合意によって、保証人が債権者に対して負うことになる債務を保証債務といいます。

保証債務は、債務者が債権者に対して支払う債務(主たる債務)とは、別個の独立した債務です。しかし、保証が担保としての機能を果たすことから、保証債務は、債務者の債務(主たる債務)に従属する従たる債務とされています。そのため、保証人が、債権者の請求に応じて弁済などをした場合、保証人は最終的な債務の負担者である主たる債務者に対して求償できます。


保証債務の成立


1. 保証契約


保証債務は、債権者と保証人との保証契約によって成立します。保証契約は、書面でしないと効力を生じません。

民法446条 
1項 
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 
2項 
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 
3項 
保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。


2. 保証人の資格


一般的には、保証人になるために、特に資格は必要ありません。しかし、主たる債務者が法律上の規定または債権者との保証人を立てる義務を負う場合には、行為能力と弁済の資力のある者を保証人としなければなりません。
民法450条


保証債務の性質


1. 付従性


従たる債務である保証債務は、次のように、存在・内容面において主たる債務に付き従い、主たる債務と運命を共にします。これを付従性といいます。

①保証債務は、主たる債務がなければ成立しない

②保証債務の内容は、主たる債務より重くなることはない

③主たる債務が消滅すれば、保証債務も消滅する。

付従性により、主たる債務者に生じた事由は、原則として保証人にも効力が生じます。例えば、主たる債務者に対して時効中断の措置を取っておけば、保証人にも時効中段の効力が生じます。これに対して、保証人に生じた事由は、主たる債務者に影響しません。


2. 補充性


保証債務は、債権が譲渡されて、主たる債務者が履行しない場合に初めて履行する責任が生じる二次的な債務です。これを補充性といいます。
保証債務の補充性から、保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権という2つの抗弁権が認められています。

民法452条 
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない


民法453条 
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない


催告の抗弁権とは、債権者が保証人に履行を請求した場合に、先に主たる債務者に請求してくれと言える権利です。そして、検索の抗弁権とは、保証人が主たる債務者に弁済の資力があり、その執行が容易であることを証明して、主たる債務者の財産にまず執行するように求める権利です。


保証債務の内容


保証債務は、債務の目的または態様において主たる債務より軽いものであっても良いが、重くすることはできません。

民法448条 
保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。


例えば、主たる債務が1000万円であれば、保証債務は1000万円以内でなければならず、たとえ、1500万円と定めたとして、1000万円に減額されます。
しかし、保証債務は、あくまで主たる債務とは別個独立の債務であり、付従性に反しない限り、保証契約によって独自の内容を持たせることもできます。例えば、保証債務についてだけ、主たる債務にない違約金や損害賠償の額を約束することができます。



保証債務の範囲


保証債務は、主たる債務の利息、違約金、損害賠償などの主たる債務の全ての従属物に及びます。また、判例では、特定物売買の売主のためにする保証について、売主の債務不履行による損害賠償義務はもちろん、特に反対の意思表示のない限り、売主の債務不履行における原状回復義務についても、保証が及ぶといっています。


連帯保証


1. 連帯保証とは何か?


連帯保証とは、保証人が、主たる債務者と連帯して債務を負担することに合意した保証のことです。連帯保証債権は、主たる債務者が弁済しない場合にだけ責任を負う二次的な債務ではなく、補充性がありません。そのため、連帯保証人には、催告の抗弁権や検索の抗弁権がなく、債権者は、主たる債務の弁済期が到来しさえすれば、直ちに連帯保証人に対して債務全額の弁済を請求することができます。


2. 一方に生じた事由


連帯保証にも、付従性がありますから、主たる債務者に生じた事由は、連帯保証人にも効力が及びます。ただし、それが保証債務の内容を加重させるものは別であり、例えば、主たる債務者が事項の利益を放棄しても、その効果は、連帯保証人には及びません。
そして、通常の保証と異なり、連帯保証人について生じた事由が、主たる債務者に影響することもあります。

民法458条 
第434条から第440条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。


例えば、連帯保証人に対する請求の効力は、主たる債務者にも及び、連帯債務者に対して裁判上の請求を行えば、主たる債務の消滅時効も中断します。


共同保証


1. 共同保証とは何か?


複数の人が同一の主たる債務について保証債務を負うことを共同保証といいます。共同保証人は、原則として平等な割合で分割された額についてのみ保証債務を負います。

民法456条 
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。


これを分別の利益といいます。例えば、1000万円の主たる債務について、共同保証人が2人いた場合、分別の利益によって、各保証人には500万円の保証債務を負えばよいことになります。

しかし、次の場合は分別の利益がなく、共同保証人は債権者に対して全額の共済義務を負うと解されています。

①連帯保証人の場合

②債権者との間で、全額弁済するという特約のある場合(保証連帯)および主たる債務が不可分の場合


2. 共同保証人の求償権


共同保証人の1人が弁済した場合、共同保証人も、保証人であることに変わりありませんから、最終的な負担者である主たる債務者に求償することができます。それに加えて、共同保証人は、他の共同保証人に対しても求償することができます。

民法465条 
1項 
442条から第444条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。 
2項 
第462条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

次は、民法の分野の「契約総論」について紹介していきます。
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