2019年11月30日土曜日

【行政書士試験・商法・会社法】3. 持分会社

3. 持分会社




今回は、商法・会社法の分野「持分会社」を勉強していきましょう。


会社とは?


会社は、対外活動によって得た利益を構成員に分配すること(営利)を目的とした団体(社団)です。そして、会社は、法人とされ、権利義務の主体になれます。

会社法3条 
会社は、法人とする。

会社は、営利社団法人となります。会社法では、株式会社と持分会社という2つの会社を認めています。


持分会社とは何か?


持分会社は、出資者である社員(社団の構成員)が持分を持つ会社です。各社員が持分を一つずつ持ちます。そして、持分の大きさは、社員ごとに決められています。
持分会社は、会社の債務についての社員の責任のあり方によって、合名会社、合資会社、合同会社という3つの種類の会社に分類されます。


1. 合名会社ってなに?


合名会社は、出資義務に加えて
会社の財産で会社の債務を弁済できない場合に、連帯して直接債務を完済する責任を負う社員だけで作られる(この社員を直接無限責任社員といいます)会社です。直接無限責任社員には、金銭などの財産だけでなく、労務や信用による出資が認められています。


2. 合資会社とは?


合資会社とは、直接無限責任社員と出資義務に加えて、定款で定めた出資の価額からすでに利用した額を除いた額を限度として、会社の再建を弁済する責任を負う社員(直接有限責任社員という)から作られる会社です。


3. 合同会社とは?


合同会社は、入社時に出資義務を負うだけで、会社の債務を弁済する責任を負わない社員だけ(間接有限責任社員という)から作られるの持分会社です。
間接有限責任社員の出資は、直接有限責任社員と同じく、金銭などの財産に限定されています。


持分会社の社員


法人も持分会社の社員になれます。そして、合名会社や合同会社の社員は一人だけでも成立します。しかし、合資会社の社員は、少なくとも2人は必要です。合資会社には、無限責任社員と有限責任社員の両方が必要だからです。無限責任者社員だけになれば、合名会社になったとみなされます。有限責任社員だけになれば、合同会社になったとみなされます。
そして、社員が誰もいなくなると、持分会社は解散します。

会社法641条 
持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。 
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第824条第1項又は第833条第2項の規定による解散を命ずる裁判

持分会社の設立と管理


持分会社の設立


1. 定款の作成


持分会社を設立するには、社員になろうとするものが定款を作成し、それに全員が記名押印をしなければなりません。
会社法575条

2. 設立登記


本店所在地で設立の登記をすると、法人格を取得し、持分会社は成立します。

3. 違法な設立


設立過程に違法な点があっても、設立が当然に無効になるわけではありません。
設立を無効にするには、会社の設立の日から2年以内に設立無効の訴えを提起しなければなりません。また、設立には参加した社員の意思表示による取り消し原因があった場合、その社員は、会社設立の日から2年以内に設立の取り消しの訴えを提起することができます。
設立無効の訴え、設立の取消しの訴えを認容する確定判決は、第三者にも効力が及びます。しかし、遡及効はなく、設立は将来に向かって効力を失います。
会社法839条


持分会社の管理


1. 定款自治


持分会社の内部関係(会社と社員の関係、社員と社員の関係)は原則として定款自治が認められています。定款で会社独自のルールを定めることができます。持分会社の定款を変更するには、原則として総社員の同意が必要です
会社法637条


2. 業務執行権


持分会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、各社員が業務を執行します。無限責任社員であろうと、有限責任社員であろうと、業務を執行することができます。出資者であり、会社の所有者である社員が、自ら経営に当たるのです。業務執行社員を定款で定めた場合、業務執行権のない社員にも、業務および財産状況の調査県が認められています。
会社法592条1項


3. 代表権


業務執行社員は、代表権を持つのが原則です。

会社法599条 
業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。


代表権のある社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上の裁判校以外の権限があります。この権限に制限を加えても、善意の第三者には対抗できません。
会社法599条5項


持分の譲渡と退社


持分の譲渡


持分会社の社員が持分を譲渡することは、他の社員全員の承諾が必要です。ただし、業務執行をしない有限責任社員については、業務執行をする社員全員の承諾があれば、持分を譲渡することができます。

会社法585条 
1項 
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。 
2項 
前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。


持分を全て譲渡としても、それを投棄する前に発生した持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。

会社法586条 
1項 
持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。 
2項 
前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。


退社と持分の払い戻しについて


1. 退社


持分会社の社員は、所定の事由(定款に存続期間が定められていない)により、退社することができます。また、持分会社の社員は、やむを得ない事由があれば、いつでも退社することができます。

会社法606条 
1項 
持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。 
2項 
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。 
3項 
前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。

2. 退社に伴う持分の払い戻し


退社した社員は、出資の種類を問わず、持分の払い戻しを受けることができます。ただし、退社しても、それを登記する前に発生した持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。


次は、商法・会社法の株式会社の設立について説明しています。


【行政書士試験】商人(商法・会社法)の分野のトレーニング問題

【行政書士試験】商人(商法・会社法)の分野のトレーニング問題

最終更新日:2020年1月5日

テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。


★商人とは何か

(1)商法において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

〇…問題文の通り。商行為を業としない者でも、店舗での物品販売を業とする者や鉱業者なども商人とみなされる。
商法4条1項

★商事に関する法

(2)商事に関して、商法に定めがない事項については民法の定めるところに従い、民法にも定めがないときには、商慣習に従う。

×…商事に関して、商法に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習に定めがないときは、民法の定めるところによる。

商法

商慣習

民法
の順

★擬制商人

(3)店舗などでの物品販売を業とする者や鉱業を営む者は、経営の形態・企業的接尾に着目して、商行為を行わなくても、商人とみなされる。

〇…問題文の通り。
民法4条2項


★商業登記

(4)商業登記は、商人の取引に必要な事項を公示するもので、すでに出来上がっている事実を広く一般に明らかにして、第三者が思わぬ損害を被らないようにするものである。

〇…問題文の通り。

★商号

(5)個人商人が複数の営業を営む場合には、その営業ごとに複数の商号を使用することができるが、会社は1個の商号しか使用することができない。

〇…問題文の通り。会社は複数の営業を営む場合でも、商号は1個に限定される。


(6)商人の商号は、営業と共にする場合または営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。

〇…問題文の通り。商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


★商業使用人

★支配人

(7)支配人は、商人に代わって、裁判上の行為を除いて、その営業に関する一切の行為をする権限を有する。

×…支配人は、商人に代わって、その営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する。
商法21条1項


(8)商人が支配人を選任したとき、その登記をするか、しないかは任意である。

×…商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。


(9)支配人は、商人の許可なく、自ら営業を行うことができない。

〇…支配人の競業禁止規定の一つ。なお、商人の許可を得れば、自ら営業を行うこともできる。


(10)商行為の代理人が、本人のためにすることを示さないでした商行為は、本人に対して効力を生じない。

×…商行為の代理人が、本人のためにすることを示さないでした商行為であっても、本人に対して効力を生じる。
商法504条


★代理商

(12)代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でない者のことである。

○…問題文の通り
商法27条


(13)代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業に属する取引を自己または第三者のために行うことはできません。

〇…問題文の通り。また、代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役などになることはできない。


【行政書士試験・商法・会社法】2. 商行為

2. 商行為




今回は商行為に関して説明していきます。配点自体は低い分野ですが、余力があればカバーしておきたい分野でもあります。頑張っていきましょう!


商行為とは何か?


基本的な商行為


自己の名をもって商行為をすること業とする者が商人です。
基本的商行為とされるのは、商法56条に列挙された行為と、502条に列挙された行為です。

商法56条 
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

商法502条 
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。 
一  賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為 
二  他人のためにする製造又は加工に関する行為 
三  電気又はガスの供給に関する行為 
四  運送に関する行為 
五  作業又は労務の請負 
六  出版、印刷又は撮影に関する行為 
七  客の来集を目的とする場屋における取引 
八  両替その他の銀行取引 
九  保険 
十  寄託の引受け 
十一  仲立ち又は取次ぎに関する行為 
十二  商行為の代理の引受け


絶対的商行為


商法501条に列挙された次の行為は、その性質から商行為となるもので、絶対的商行為と呼ばれています。安く仕入れて、高く売ることが例です。

商法501条 
次に掲げる行為は、商行為とする。 
一  利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 
二  他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 
三  取引所においてする取引 
四  w:手形その他の商業証券に関する行為

営業的商行為


商法で列挙された行為は、営業的商行為と呼ばれ、営業として行われて初めて商行為となります。電気やガスの供給・作業や労務の請負などがこれに該当します。


付属的商行為


商人が営業のためにする行為も、商行為とされています。これを附属的商行為といいます。営業のためにする行為にも、商法を適用するため、これを商行為としています。


双方的商行為と一方的商行為


当事者双方にとって商行為である行為を双方的商行為と言います。これに対して、当事者の一方にとってのみ商行為である行為を一方的商行為といいます。双方的商行為であれば、当然、双方に商法が適用されます。そして、一方的商行為についても、双方に商法が適用されます。


商行為の特則


商行為の代理


代理人が行う意思表示は本人のためにすること(代理意思)を示して行う必要があるというのが、民法の原則です。これを顕名主義と言います。
しかし、商行為の代理には顕名が要求されません。速さが求められ、相手が誰かよりも、内容が重んじられる商取引では、代理人が本人のためにすることを示さなくても、原則として代理行為の効果は本人に帰属するのです。


諾否の通知義務


民法では、申し込みを受けても、これに対して許否を通知する義務はありません。しかし、商人がふだん取引をする人からその営業の部類の契約の申し込みを受けた場合は、遅滞なく、諾否の通知を発しなければなりません。これを怠ると、申し込みを承諾したとみなされます。


物品の保管義務


商人がその営業の部類に属する契約の申し込みを受けるとともに、物品を受け取ったときは、その申し込みを拒絶した場合であっても、申込者の費用でその物品を保管しなければならないのが原則です。


多数当事者の債務の連帯


複数の債権者がいる場合、債権者は、それぞれ複数で分割した給付だけを行えばよいというのが、民放の原則です。これを分割債務の原則といいます。
複数の人が一人または全員にとって商行為に当たる行為によって債務を負った場合には、その債務は連帯債務です。そのため、債務者はそれぞれ独立して債権全額を弁済しなければなりません。


報酬請求権


民法では、他人のために行為をしても、無償が原則です。これに対して、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をした場合には、相当な報酬を請求することができます。


商人間の金銭消費貸借


お金の貸し借りなどの消費賃借契約は、民法では無利息が原則ですが、商人間で、金銭の消費賃借を行った場合、貸した人は借りた人に対して法定利息を請求できます。商人間の金銭消費賃借は、その営利性から、当然利息がつくとされています。


商事法定利率


利息について、民法の法定利率により、年3%(3分)とし、3年ごとに見直しを行う変動利率を採用しています。以前は、商法514条により、商行為によって発生した債務の法定利率は、年6分でしたが、こちらは削除されました。


商人間の留置権


商人間において双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にある場合、債権者は、債権の弁済を受けるまで、債権者が占有する債権者所有の物または有価証券を留置できます。
➡【リンク】5. 物権総論・・・物権の意味と全体像を勉強しましょう!


商事時効


債権は、10年間放置しておくと時効によって消滅するというのが、民法の原則でしたね。しかし、商行為によって発生した債権は、5年間行使しないと消滅時効にかかります。商取引は速さが求められるため、時効期間も短縮されています。


商人間の売買


商人間の売買とは何か?


商人間の売買とは、売主・買主がともに商人であって、その売買が、売主・買主のいずれかにとっても商行為に当たることをいいます。


受領拒絶・不能


個人間の売買において、買主が目的物の受領を拒んだ場合、または、受領できない場合には、売主は、その物を供託することができます。また、売主は相当の期間を定めて催告した後に競売に付すこともできます。損傷などにより価格の低落の恐れのある物については催告をしないで競売に付すことができます。ただし、供託または競売に付した場合には、遅滞なく、売主に通知しなけれなりません。


目的物の検査・通知義務


商人間の売買では、買主は、受領した目的物を遅滞なく検査しなければなりません
そして、検査によって瑕疵または数量不足を発見した場合には、売主が悪意でない限り、買主は直ちにそれを売主に通知しなければなりません。そうしないと、契約の解除・代金減額請求・損害賠償請求ができなくなります。ただし、瑕疵が直ちに発見できないものであれば、6ヶ月以内に発見し、直ちに通知すればよいとされています。


目的物の保管・供託義務


商人間の売買では、買主が目的物を受領した場合は、たとえ契約を解除したときであっても、売主の費用で目的物を保管または供託しなければなりません。
ただし、売主と買主の営業所が同一市町村の区域内にある場合は別で、営業所が同一市町村内にあれば、買主に保管する義務はありません。
商法527条1項


注文と異なる物品の保管・供託義務


注文した物品と異なる物品が引き渡された場合や、注文数よりも多くの物品が引き渡された場合も、同一市町村区域内に売主と買主の営業所がない限り、買主はたとえ、契約を解除したときであっても、売主の費用で目的物を保管または供託しなければなりません。


匿名組合



匿名組合とは何か?


匿名組合契約とは、匿名組合員が営業者の営業のために出資を行い、その営業から生じる利益を分配することを約束する契約のことです。

商法535条 
匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。


匿名組合員の出資


匿名組合の出資は、金銭その他の財産に限定されています。信用や労務での出資は許されません。匿名組合員の出資は、営業する人の財産に属するとされています。出資は、営業者のものになるのです。


業務の執行


業務を行うのは、営業者です。匿名組合員が、営業者の業務を執行したり、営業者を代表したりすることはできません。また、匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利および義務を持つことはありません。ただし、匿名組合員が自己の商号などを営業者の商号として使用することを許諾したときには、そのしよう以後に生じた債務について、営業車と連帯して弁済する責任を負います。


匿名組合契約の終了


匿名組合契約が終了すると、出資は、匿名組合員に返還されます。ただし、出資が損失によって減少した場合には、匿名組合員が損失を負担し、営業者は残額を返還すればよいことになっています。

商法542条 
匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りる。


運送営業




物品運送契約


荷送人の依頼により、運送人が物品を保管して運送することを引き受ける契約を物品運送契約といいます。運送人は、物品または旅客の運送を業とする者であり、荷送人は、物品運送の委託者です。荷送人は、運送人が請求した場合には、、運送品の種類、重量などを記載した運送状を交付しなければなりません。


貨物引換証


運送人は、荷送人が請求した場合には、運送賃などを記載した貨物引換証を交付しなければなりません。貨物引換証を作成すると、運送に関する事項は、そこに記載された通りの内容になります。そして貨物引換証の引き渡しは、運送品の上に行使する権利の取得について、運送品の引き渡しと同一の効力があります。また、貨物引換証と引き換えでないと、運送品の引渡しを請求できなくなります。


運送人の責任


1. 運送品の滅失


運送品の全部または一部が滅失した場合、その原因がその性質、瑕疵または送る人の過失であれば、運送人は、運送費を全額請求するとこができます。しかし、不可抗力によって滅失した場合には、運送人は、運送費を請求することができません。すでに受け取っている運送費は、返還しなければなりません。


2. 損害賠償責任


運送人は、自己または運送に使用した者が、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明しない限り、運送品の滅失、毀損または遅れて着くことについて損害賠償責任を負います。ただし、貨幣、有価証券などの高価品については、送る人が高価品の種類および価格を明示しなければ、損害賠償責任を負いません。


寄託




寄託とは何か?


寄託とはものを他人に預け、その処理を頼むことを意味します。

寄託を受けた商人の責任


商人がその営業の範囲内で寄託を受けた場合は、無報酬であっても、善良な管理者の注意で保管しなければなりません。


旅館、飲食店、浴場など(場屋)の主人の責任


1. 客の物品の滅失・毀損


旅館、飲食店、浴場など、客の来場を目的とする場屋の主人は、客から寄託を受けた物品が滅失または毀損した場合、それが不可抗力によることを証明しない限り、損害賠償責任を負います。客が寄託しないで携帯している物品であっても、場屋の主人またはその使用人の不注意によって滅失または毀損した場合には、場屋の主人は、損害賠償責任を負います。客の携帯品に付いては、責任を負わない旨を告示しても、場屋の主人が責任を免れることはできません。


2. 高価品の滅失・毀損


貨幣・有価証券などの高価品については、客がその種類および価格を明示して寄託しない限り、その滅失または毀損について、場屋の主人は損害賠償責任を負いません。


次は、商法・会社法の持分会社について説明しています。




【行政書士試験・商法・会社法】1. 商人

1. 商人

商法・会社法

どうもTakaです。今回は、商法・会社法の分野の紹介をしたいと思います。
このページでは、商人とは何か?から始まり商業登記、商号、商業使用人、代理商に関して取り扱います。


商人とは何か?


固有の商人


商法における権利の主体は、商人です。商人というのは、自己の名を持って商行為をすることを業とする者をいいます。

商法4条 
1項 
この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

営利目的で継続的に反復して、自己名義で商行為を行うものは、全て商人です。これが本来の意味での商人であり、固有の商人と呼ばれています。


擬制商人


次の項目に該当する人は、経営の形態や企業の設備の点から、たとえ商行為を行わなくても、商人とみなされます。
商法4条2項


商業登記


商業登記とは何か?


商業登記とは、商人の取引に必要な事項を公示するものです。すでに出来上がっている


商業登記の公示力


登記すべき事項は、それが成立または存在していても、商業登記簿に登記しなければ、善意の第三者には対抗できません。
登記後は、その事項を善意の第三者にも対抗できるのが原則で、登記をすれば第三者もその事項を知ったものと擬制し、法律関係の画一化。安定化を図るのです。
ただし、登記をしても、正当な事由により、登記があることを知らなかった第三者には対抗できません。


不実の登記


故意または過失により不実の登記をしたものは、不実であることを善意の第三者に対抗できないとされています。

商号

商号とは何か?


商号とは、商人の営業上の名称です。商号は図形や模様などの呼称できないものではだめで、呼称できるものでなければなりません。


商号の選定


1. 商号の個数


1個の営業については、1個の称号しか許されません。これを「商号単一の原則」といいます。複数の営業を営む場合については、個人商人であれば、営業ごとに違った称号を用いることができます。しかし、会社は、複数の営業を営む場合でも、商号は1個に限定されています。

2. 商号自由主義


商号は、原則として自由に選定することができます。会社以外の商人であれば、自分の名前を商号とすることもできます。しかし、会社の場合は、その名称がそのまま商号になります。

会社法6条 
1項 
会社は、その名称を商号とする。

3. 商号の規制


不正の目的で、他の商人と誤認させる恐れのある商号を使用してはなりません。
これに違反する商号の使用よって営業上の利益を侵害され、または侵害される恐れのある商人は、侵害の停止または予防を請求することができます。


商号の譲渡

1. 商号の譲渡の方法


商号は、財産権的性質を持つので、譲渡することができます。しかし、営業と切り離して商号だけを譲渡すると、営業の主体が誰かについて誤認を生じます。
そのため、商号を譲渡するには、営業とともに行うか、または営業を廃止する必要があります。商号の譲渡は、登記をしないと、第三者に対抗することができません。

2. 営業の譲受人による商号の続用


営業が譲渡され、譲受人の商号を引き続き使用する場合、譲受人は、遅滞なく、譲受人の営業上の債務について責任を負わない登記をするか、通知をしないと
その債務について、譲受人と連帯して弁済をしなければなりません。また、譲受人の営業によって生じた債権について、善意無重過失で譲受人にした弁済は、有効とされています。


名板貸の責任


自己の称号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人は、事故を営業主と誤認した取引によって発生した債務について、その他人と連帯して弁済しなければなりません。外観を信頼した取引の相手方を保護しようとするわけです。



商業使用人

商業使用人とは何か?

商業使用人は、雇用契約によって商人に従属し、対外的な商業上の業務に従事する者です。例として、支配人が代表例です。商業使用人になれるのは、自然人だけです。

支配人

1. 支配人とは何か?


支配人とは、選任された営業所において、営業主に変わって営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為を行う権限のある商業使用人です。
商法21条1項

商人は、支配人を選任して、営業所の営業を行わせることができます。

商法20条 
商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。


支配人・支店長・マネージャーなど、名称は問いません。営業所の企業活動に関し、一切の代理権を与えられている使用人であれば、支配人に当たります。

2. 支配人の代理権

支配人は、全体的な代理権を持っています。そのため、支配人の代理権に制限を加えても、善意の第三者に対抗することはできません。
代理権が消滅すると、支配人の地位は消滅します。

3. 支配人の競業の禁止

支配人は商人の許可がなければ、次の行為をしてはなりません。支配人がその地位を利用して商人の利益を害することがないようにするためです。
①自ら営業を行うこと
②自己または第三者のために、その商人の営業の部類に属する取引をすること
③他の商人・会社・外国会社の使用人になること
④会社の取締役・執行役または業務を執行する社員となること。


4. 表見支配人

営業所の営業の主任者であることを表す名称をつけられた使用人(表見支配人)は、その営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限があるものとみなされます。



その他の商業使用人


1. ある種類・特定の事項の委任


商人の営業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人には、その事項に関して一切の裁判外の行為をする権限があります
その使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できません。

2. 物品の販売等を目的とする店舗


物品の販売等を目的とする店舗の使用人には、その店舗にある物品の販売等に関する権限があるとみなされます。ただし、相手方が悪意であった場合は、権限があるとはみなされません。



代理商

代理商とは何か?


代理商というのは、一定の商人のため、継続的にその営業の部類に属する取引の代理または媒介をする独立した商人です。代理商は、自然人だけでなく、法人もなれます。



締約代理商と媒介代理商


代理商はその性質で、締約代理商と媒介代理商の二つに分類されます。

1. 締約代理商


締約代理商とは、一定の商人から代理権を与えられ、その商人の取引行為の代理を行う代理商です。締約代理商が、与えられた代理権の範囲内で行なった代理行為の効果は、本人たる商人に帰属します。締約代理商の例は、損害保険の代理店などが挙げられます。

2. 媒介代理商


媒介代理商とは、一定の商人のために、取引行為の媒介(手助け)を行うだけの代理商でです。例えば、一定の商人のために、たくさんの買い手を媒介することを自身の企業内容とする代理商です。媒介代理商には代理権がありません。


代理商の競業の禁止


代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業に属する取引を自己または第三者のために行うことはできません。また、代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役などになることはできません。
会社法28条1項


次は、商行為に関して紹介しています。
➡【リンク】商行為

2019年11月26日火曜日

【行政書士試験】地方自治法(行政法)の分野のトレーニング問題

【行政書士試験】地方自治法(行政法)の分野のトレーニング問題

最終更新日:2020年8月2日

テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★地方自治の本旨


(1)地方自治の本旨とは住民自治と団体自治である。

〇・・・問題文の通り


地方公共団体の種類


(2)市町村が普通地方公共団体であるのに対して、都道府県は広域連合である。

✖️・・・市町村も都道府県も普通地方公共団体である。

地方自治法1条の3 
2項 
普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。


(3)特別地方公共団体とは、特別な目的のために作られる団体であり、現在、特別区、財政区、広域連合、役場事務組合の4つがある。

✖️・・特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財政区、地方開発事業団の4つである。広域連合と役場事務組合は地方公共団体の組合の1つである。


(4)広域連合とは、隣り合った複数の市町村が同一の事務を持ち合って公立的に処理するための制度である。

✖️・・・広域連合は、市町村に限らず都道府県でもよく、また同一の事情に限らず異なる。


(4)地方開発事業団とは、複数の地方公共団体が、共同で開発事業を行うための組織である。

◯・・・道路、港湾、水道、下水道、公園などの造成や建設などの事業で設置される。

地方自治法298条


(5)都道府県は、その市町村を包括する広域的な組織であり、広域にわたる事務や市町村間の連絡調整などを行う。

◯・・・都道府県は、広域にわたる事務や市町村間の連絡調整などを行う。

地方自治法2条 
5項 
都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。

★地方自治体の事務


(6)国外に渡航する際に必要なパスポートの交付は、現在、第二号法定受託事務である。

✖️・・・国外に渡航する際に必要なパスポートの交付は、現在、第一号法定受託事務である。


(7)都道府県知事選挙は、現在、第一号法定受託事務である。

✖️・・・第二号法定受託事務である。


★地方行政に対する国の関与


(8)国地方係争処理委員会の委員は総務大臣が任命する。

◯・・・問題文の通り。

地方自治法250条の9 
委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。


(9)普通地方公共団体は、当該地方公共団体の議会の議決を得ることによって、国地方係争処理委員会に審査を申し出ることができる。


✖️・・・普通地方公共団体が国地方係争処理委員会に審査を申し出るために、当該普通地方公共団体の議会の議決を得ることは義務付けられていない。




【行政書士試験・行政法】11. 地方自治法

11. 地方自治法





今回は、行政書士試験の行政法の分野「地方自治法」について勉強していきましょう。


地方自治法って何?


地方自治法は、憲法92条が定める地方自治体を具体的に定めた法律です。


憲法92条 
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。


地方公共団体の組織と運営については法律で定めるとして、具体的な定めを法律に委任しています。これに基づいて制定された法律が地方自治法です


地方自治の本旨


地方自治体の本旨とは、次のことに基づいて政治を行うと考えられています。


①住民自治
・・住民が自らの意思および責任に基づいて地方の政治を行うこと。

②団体自治
・・地方が国から独立して、自らの意思および責任に基づいて政治を行うこと。



地方公共団体の種類


地方公共団体とは、一定の地域を基礎として、その地域に住む住民を構成員としつつ、その地域における事務をその住民の自治によって処理する権能を認められた団体のことです。

この地方公共団体は、大きく分けて、普通地方公共団体と特別地方公共団体に分かれます。

普通地方公共団体
→都道府県
→市町村
・・・指定都市 人工50万人以上
・・・市町村


特別地方公共団体
→特別区(東京23区)
→地方公共団体の組合
→財政区


地方公共団体が行う事務の種類


地方公共団体が行う事務には、法定受託事務と自治事務があります。

1法定受託事務

法定受託事務とは、国または他の地方公共団体の事務のうち、法令によりその処理を委託された事務をいいます。

地方自治法2条 
9項 
この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。 
一 
法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。) 
二 
法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)



自治事務とは、地方公共団体が処理すべき事務のうち、法定受託事務以外の事務のことをいいます。

地方自治法2条 
8項 
この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。




地方公共団体の権能


地方公共団体は、以下のそれぞれの機能を有しています。

①自治立法権
②自治組織権
③自治行政権
④自治財政権

それぞれの権能を細かく見てみましょう。

1. 自治立法権


自治立法権とは、地方公共団体が、その事務に関して自主法を定める権能をいいます。この地方公共団体の自主法のことを条例といいます。

地方自治法14条 
1項 
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。 
3項 
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。


2. 自治組織権


自治組織権とは、地方公共団体が、その自治権に基づいてその そしき・運営等を定め、組織を構成する公務員を任命する権能をいいます。


3. 自治行政権


自治行政権とは、地方公共団体が事務を処理する権能のこといいます。

地方自治法1条の2 
1項 
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。

地方自治法2条 
2項 
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。


4. 自治財政権


自治財政権とは、地方公共団体が、その事務に要する経費に充てるため、自ら必要な資金を調達し、および管理する権能のことをいいます。

必要な資金を調達するには、地方税で税金を徴収して、必要な資金を調達することになりますが、その地方税の徴収の根拠については、以下のように定められています。

地方自治法223条 
普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる。




➦【リンク】地方自治法のトレーニング問題まとめ



2019年11月25日月曜日

【行政書士試験・行政法】10. 国家賠償法って何?公務員の不法行為の損害を受けた国民を救済する法

10. 国家賠償法




今回は行政法の分野「国家賠償法」について勉強していきましょう。

国家賠償法とは?


公務員の不法行為によって国民が損害を受けた場合に、国や地方公共団体がその損害をお金で補填することで権利利益の侵害を受けた国民を救済する法のことです。

国家賠償法は、救済3法と呼ばれる法律のグループの1つです。


他の救済3法について、以前のページでも学びましたが、もう一度おさらいです。


①行政不服審査法
行政活動に不服がある場合に、行政機関に対して処理を求めることに関する法律。

②行政事件訴訟法
行政活動に関する不満について、裁判所に訴えることに関する法律



行政事件訴訟法の取消訴訟とは、求める判決が処分の取り消しなのかお金による賠償なのかというように救済目的が違うので、取消訴訟の出訴期間が経過して取消訴訟を提起できなくなった後でも、国家賠償請求訴訟を提起することができるとした判例があります。


国家賠償法の責任


国家賠償法は全部で6条しかありません。

国家賠償法は

①国または地方公共団体の公権力の行使にあたる公務員が
②職務を行うについて
③故意または過失によって、
④違法に他人に損害を与えたとき


「公権力の行使」の意味


判例では、「公権力の行使」という言葉の意味について、裁判官の裁判過程における行為、国会議員の立法過程における行為、公立学校における教員の教育活動や公共施設の管理が「公権力の行使」にあたると判断しています。


「職務を行う」についての解釈


「職務を行う」についてはかなり緩やかに解釈されており、客観的にみて職務執行の外形を整える行為であればよいとされている。この考え方を外形主義という。

例えば、非番の警察官でも、制服を着用して行った行為であれば「職務を行う」に該当する。


公務員の過失


公務員の過失は、公務員が職務上要求される標準的な注意義務に違反していると認められる場合には過失を認定する。


違法行為


違法行為には、作為だけでなく不作為も含まれる。


不法行為を行なった公務員も、損害賠償責任を負うのか?


代位責任について


民法の使用者責任では、不法行為者自身も責任を負うことが前提でしたが、国家賠償法1条に基づく国や地方公共団体の責任は公務員の責任を肩代わりするもので(これを代位責任という)、不法行為を行なった公務員自身は、被害者に対して、直接責任を負うものではないとした判例があります。



国または地方公共団体の道路、河川その他の公の営造物の管理の瑕疵


国または地方公共団体は、道路、河川その他の公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために、他人に損害を生じたときは、国または地方公共団体が賠償する責任を負うと定めています。

国家賠償法2条 
1項 
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。


ここでいう「公の営造物」とは、国や地方公共団体が所有または管理する有体物で、公のように供されているもののことを意味します。これには不動産だけでなく、動産(車や道具等)も含まれるとしています。

また、道路などの人工公物だけでなく、河川などの自然公物なども、国や地方公共団体が管理しているかぎり、「公の営造物」に含まれます。


公務員に対する求償権


公務員の不法行為や「公の営造物」の設置または管理に瑕疵があって、国民が被害を受けた場合は、国などが損害賠償責任を負うこととされています。

不法行為を行なった公務員に故意または重大な過失があったとき、また、損害の原因にほかに責任を負うものがあるときは、国または地方公共団体は、そのものに対して求償権を行使することができると定めています。

2019年11月24日日曜日

【行政書士試験】行政事件訴訟法のトレーニング問題

【行政書士試験】行政事件訴訟法のトレーニング問題


テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。



(1)行政事件訴訟法には、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4つの制度が規定されている。

〇…問題文の通り。


(2)抗告訴訟の要件には、処分性があること、訴えの利益があること、出訴期間内であること等がある。

〇…問題文の通り。


(3)行政指導には処分性は認められない。

〇…問題文の通り。


(4)土地区画指導には処分性が認められない

〇…問題文の通り。


(5)訴えの利益の要件は、原告適格と狭義の訴えの利益の2つの要件に細分される。

〇…問題文の通り。


(6)原告適格とは、「法律上の利益を有する者」をいう。

〇…問題文の通り。


(7)狭義の訴えの利益とは、取消しにより現実的に救済できる利益のことであり、取消し判決が下されたとしても、もはや原告の救済ができないのであれば訴えの利益は認められない。

〇…問題文の通り。


(8)出訴期間は処分があったことを知った日から6か月以内、もしくは処分のあった日から1年以内と法定されている。

〇…問題文の通り。


(9)処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行または手続きの続行を妨げない

〇…問題文の通り。


(10)処分の取り消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行または手続の続行を妨げない。これを執行不停止の原則という。

〇…問題文の通り。


(11)抗告訴訟には、処分の取消しの訴えのほか、裁決の取り消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止の訴えがある。

〇…問題文の通り。


➡トレーニング問題まとめへ戻る

➡サイトトップへ戻る

【行政書士試験・行政法】9. 行政事件訴訟法

9. 行政事件訴訟法

最終更新日:2020年1月5日

【行政書士試験・行政法】9. 行政事件訴訟法

今回は行政法の分野「行政事件訴訟法」について勉強していきましょう。

行政事件訴訟法の種類




行政事件処分に不満がある場合に、裁判所に訴訟を提起するためのルールが規定されています。

そして、

①抗告訴訟、
②当事者訴訟、
③民衆訴訟、
④機関訴訟

の4つが行政事件訴訟とされています。

行政事件訴訟法2条 
この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。



①抗告訴訟


抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して、不服を申し立てる訴訟のことです。


行政事件訴訟法3条 
1項 
この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。



この抗告訴訟の具体的な内容は、行政事件訴訟法3条2項以降に規定されています。


①処分の取消訴え
・・行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。


②裁決の取消訴え
・・裁決の取消しの訴えとは、審査請求、異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。


③無効等確認の訴え
・・行政処分の存否またはその効力の有無の各員を求める訴えのこと。これには出訴期間の制限はありません。

④不作為の違法確認の訴え
・・行政庁が法令に基づく申請に対して、相当の期間内になんらかの処分または裁決をすべきだったのにもかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴えのことです。これも出訴期間の義務はありません。


⑤義務付けの訴え
・・行政庁に対して特定の行政処分を行うことを義務付ける訴えのことです。緊急の場合、一定の要件で、仮の義務付けが認められています。

⑥差し止めの訴え
・・公権力の発動をあらかじめ防止する訴え。公権力の発動前なので、

一定の処分・裁決がされることにより重大な損害を生じる恐れがあり、その損害を避けるために他に適当な方法がない時に限って、認められるものです。緊急の場合、一定の要件で、仮の差し止めが認められています。


というように上の6つが定められています。



②当事者訴訟


当事者訴訟とは、つぎの訴訟のことを指す言葉です。
①当事者間の法律関係を確認し、または形成(つくりだす)する行政処分に関する訴訟
例:土地収用法の損失補償額に関する訴訟

②公法上の法律関係が形成された場合にこれの確認等を求める形成のことです。
例:公務員の身分確認の訴え、給料の支払い請求の訴え


取消訴訟の要件


取消訴訟の要件を大きくいうと、次のことが挙げられます


①訴訟の対象が「処分」あるいは「不服申し立てに対する行政庁の裁決(決定)」であること。

・・・「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為のこと。ここでいう「処分」は行政計画、通達、行政指導は当てはまらない。


②出訴期間内であること



処分に対する不服申し立ての方法


原則として審査請求による。行政庁の処分に不服がある場合、審査請求によります。審査請求をすることができる場合でも、取消訴訟を直ちに提起することができるとされています。

行政事件訴訟法8条 
1項 
処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

審査請求と取消訴訟のどちらの方によればいいのか?


原則として、審査請求と取消訴訟の提起を不服がある者が選んで良いこととなっています。に対する裁決を経た後でなければ、取消訴訟を提起できないという定めがあるときは、審査請求の方法を採らねばならない(審査請求前置)という例外があります。


処分に対する不服申立て、または、取消訴訟の関係

不服申し立ては審査請求から行う

審査請求と取消訴訟の関係

原則、自由に選択できる(自由選択主義)

ただし、法律に定める場合は審査請求による。(審査請求前置)



②当事者訴訟


当事者訴訟とは、
①当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの。

②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟。

をいいます。


③民衆訴訟


民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他事故の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます。

行政事件訴訟法5条 
この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。

自分の法律上の利益に関わらない資格で提起するため、客観訴訟と呼ばれています。

民衆訴訟:
地方自治法に基づく住民訴訟、公職選挙法に基づく選挙の効力に関する訴訟


④機関訴訟


機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟をいいます、

例:
地方公共団体の長と議会が議会の議決または選挙に瑕疵があるかどうかを争う訴訟


次は、行政書士試験の行政法の分野「国家賠償法」について勉強していきましょう。

➡【リンク】10. 国家賠償法



行政手続法って何?処分と行政指導および届出に関する手続について定める法

【行政書士試験・行政法】行政手続法



 行政手続法って何?処分と行政指導および届出に関する手続について定める法

今回は、行政法の分野「行政手続法」について勉強していきましょう。

行政手続法の目的


行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利・利益の保護に資することを目的としています。

行政手続法1条 
1項 
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。


行政手続法は何に対して適用されるのか?


行政手続法は、処分(申請に対する処分及び不利益処分)と行政指導および届出に関する手続について、共通する事項を定めています。


申請に対する処分について


処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為をいいます。

行政手続法2条

処分には、申請に対する処分・不利益処分がありますが、「申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可・免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいいます。


行政庁は、申請が到着した時は、遅滞なく申請の審査を開始しなくてはなりません。ただし、申請書に不備等があるときには、すみやかに補正(直すこと)を求めるか、許認可を拒否しなければなりません。

行政手続法7条 
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。


ちなみに申請に対する処分について、行政手続法では、他にも次のような規定があります。


①行政庁は、申請にかかる許認可の判断基準を(審査基準)を定め、事務所などに公示しなければならない。


②行政庁は、申請の標準的な処理期間を定めるように努め、定めた時は公表しなければなりません。

行政手続法6条 
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。



③行政庁は、審査に関わる情報の提供に努めなければなりません。

行政手続法9条 
1項 
行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。 
2項 
行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。




④申請を拒否する場合には、申請者に対して理由を示さなければなりません。

行政手続法8条 
1項 
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。



行政指導とは、行政機関が、その任務または所掌事務(法令で特定機関の事務に属すると定められている事務)の範囲内において、一定の行政目的を実現するために、特定の人や事業者に一定の行為を行うように(または行わないように)、具体的に求める行為(指導、勧告、助言などで、処分を除く)をいいます。

行政手続法2条6号

この、行政指導が複数の者を対象とするときは、行政機関はあらかじめ、行政指導指針を定め、原則として、公表しなければなりません。

行政手続法36条 
同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。



行政指導は、指導を受けた人の自主的な努力によって実現されるものなので、従わなければならないものではありません。また、従わなかったとしても、その後に許認可を受けられないなどといった不利益な取り扱いを受けることもありません。

行政手続法32条 
2項 
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。



書面の請求


行政指導について、書面を要求すれば、原則として、書面にしてもらうことができます。

行政手続法35条 
3項 
前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの


また、行政指導を行うものは、その行政指導の趣旨、内容、責任者を明確に示さなければなりません。

行政手続法35条 
1項 
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。




行政庁への届け出について


届出とは


行政庁に対して、一定の事項の通知をする行為(申請を除く)であって、(国民に対して)法令によって、通知が義務付けられているものをいいます。

行政手続法2条 
7項 
届出  
行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。



記載事項に漏れがなく、必要な書類が添えられているなど、法令に定められた形式上の要件に適合しているときには、役所は、裁量(自分の権限内の判断)で受け取らないとすることはできません。


もし受け取らなかった場合でも、その届出が、提出先とされる期間の事務所に到達した時に、届出の行為が完了したとされています。

行政手続法37条 
届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。




【行政書士試験・行政法】5. 行政指導

5. 行政指導

最終更新日:2020年1月5日

今回は、行政書士試験の行政法の分野「行政指導」について勉強したいと思います。

行政指導とは?


行政指導とは禁止する法律・条例がなくても指導する対象に積極的に働きかけて、やめてもらうよう協力を依頼することをいいます。

例としては、
公園で鳩にエサをやる人に対してや、家の外の公道にゴミ等を山積する等などの迷惑行為が挙げられます。

行政活動は、権力的な行為だけで成り立っているわけではありません。毎日さまざまな新しい事態が発生し、法律による適切な制度がないからといって手をこまねいているわけにはいきません。そのため、行政指導が必要となります。


行政指導の意味


行政指導とは、行政機関がその行政目的を実現するため、指導、勧告、助言といった非権力的な手段で国民に働きかけて、協力を求め、目的を達成しようとする活動です。行政指導の内容は多種多様です。

例えば、
消費者を守るために広告のあり方などをめぐる規制的行政指導。
農作物を米から野菜等に転換しようという農家に対して技術的もしくは農業経営的な助言をするような助成的行政指導。私人間の紛争の解決のための手法として用いられるもので、マンション建築の建築主と付近住民の建築紛争の調整など調整的行政指導。この調整的行政指導は、建築主に対しては規制的行政指導という側面を持つ場合もあります。


行政指導の問題点


法律の根拠がない部分を埋めて柔軟な工夫で対応するのが、行政指導です。すなわち、法律の根拠なく、臨機応変に柔軟な対応が可能である点が行政指導の一番のメリットであるといえます。しかし、その反面では、法律の根拠が不要であるため手続きが不透明になり、恣意的な指導がされる危険性もあります。あくまで任意的なものであるといいながら、行政指導を受ける人の側からすると、半ば強制的になってしまうような事態もすくなからずあるわけです。
そこで、行政手続法によって行政指導についてのルールがあります。


行政手続法の規定



行政手続法 32条 
1項 
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。 
2項 
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

①行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。

②行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

とされております。これはあくまで任意であり、従わざるを得ないような状況においこんではいけません。


行政手続法33条 
申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。



建築紛争などに対処するため、行政側が行政指導をした内容を事業主が聞き入れるまで、行政指導をしていることを理由に建築確認処分を留保し続けることは許されません。

行政手続法34条 
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。



別の許認可に関わることをチラつかせることで国民が従わざるを得ない状況にしてはいけません。



行政手続法 35条 
1項 
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。 
2項 
行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。 
3項 
前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。 
一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの 
二 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの


行政指導の存在、内容及び責任の所在を明確にさせるための趣旨です。


行政手続法36条

行政指導の明確性に資するのみならず、一定の条件に該当する複数のものに対し、公平に行政指導がなされることを担保しています。また、行政指導方針が公表されることにより、行政指導の相手方以外の第三者も、当該指針を知りうることとなるので、第三者との関係でも、行政指導の透明性を確保することになります。



行政指導の限界


1. 法律優位の原則からの限界


行政指導は事実行為ではありますが、公行政の一つの手段として用いられている以上、法律優位の原則の運用を受けます。したがって、法令の趣旨に反する行政指導は違法となります。

2. 法の一般原理からの限界


行政指導も、行政活動ですので、法の一般原理の運用があります。したがって、平等原則や比例原則、禁反言、信頼保護の原則に反する場合には、その行政指導は違法となります。



行政指導に対する救済措置


1. 取消訴訟


行政指導は、取消訴訟で争うことができないとされています。行政指導は、取消訴訟の要件である「処分」に当たらないからです。


2. 国家賠償請求


行政指導であっても「公権力の行使」には当たるので、国家賠償請求を行うことは可能です。


次は、行政法の行政手続法について紹介しています。
➡️【リンク】6. 行政手続法

➡サイトトップへ戻る



【行政書士試験】行政行為のトレーニング問題

【行政書士試験】行政行為のトレーニング問題


テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★行政行為


(1)行政行為とは行政庁がその一方的判断で国民の権利義務その他の法的地位を具体的に決定する行為をいう。

〇…問題文の通り。


★行政行為の種類


(2)行政行為は、国会で制定した法律に基づく必要があり、このように法律の規定どおりに行政を執行することを「羈束行為」という。

〇…行政行為は、法律の規定通り「羈束行為」で執行することが基本とされている。



★公定力


(3)公定力とは、ある行政行為が法令に違反していない限り、実情に合わなくなっても、権限のある機関による取り消しがあるまでは有効である、ということである。

✕…公定力とは、ある行政行為が法令・条例などに違反していても、権限のある機関による取消しがあるまでは有効である、ということである。


★自力執行力


(4)自力執行力とは、行政行為によって命じられたことを国民が履行しない場合、行政庁が、裁判所の判断を経て国民に対して強制執行をすることができるということである。

✕…自力執行力とは、行政行為によって命じられたことを国民が履行しない場合、裁判所の判断を経ることなく「行政庁自らの判断で」国民に対して強制執行をすることができる。



★行政行為の瑕疵


(5)行政行為の瑕疵とは、違法性のある行政行為などのことである。

〇…違法性のある行政行為だけでなく、不当に行われた行政行為も行政行為の瑕疵である。


➡トレーニング問題まとめへ戻る

➡サイトトップへ戻る

【行政書士試験・行政法】4. 行政行為・・押さえておきたいポイント

4. 行政行為・・・行政書士試験で押さえておきたいポイント





行政行為とは


行政行為とは、一般的には、行政庁がその一方的な判断で国民の権利義務その他法的地位を具体的に決定する行為を言います。


行政行為の特徴


①一方的であること
②直接的であること
③特定の国民についての
④具体的権利を決定すること

行政の活動によるものでも、特定の国民の具体的権利ではなく、一般的に全ての国民に対する基準を作る行政立法や、任意の協力依頼であって一方的に権利義務を決定するわけではない行政指導は、行政行為ではありません。


一般民法の秩序では、市民の権利義務は、当事者双方の自由な合意が形成されたときに成立します(私的自治の原則)。しかし、行政関係においては、行政目的の確実、迅速、公平な達成のために、私人に一方的に義務を課したり、権利を与えたりする必要があります。

例えば、公共工事の用地取得を、常に任意買収の手段で行うとすれば、用地買収の完了までに多大な費用と時間がかかってしまいます。

そこで、行政法では、行政庁が一方的な判断で国民の権利義務など法的地位を決定したりする手法を認めています。これを「行政行為」と呼んでいます。しかし、行政行為は私人の権利義務を一方的に確定しているので、法律の根拠がある場合にのみ行えるとしています。

また、行政行為には特別な効力が認められ、その効力は特別の手段によらなければ失わせることはできないものとされています。


行政行為の種類


裁量行為と覊束行為


行政行為は裁量行為と覊束行為とに分けられます。この行政行為の分類は行政庁に一定の裁量権が認められるか認められないかにより分けられます。


1. 裁量行為


裁量行為とは、行政庁に一定の裁量が認められる行政行為のことです。

行政行為は私人の権利義務を一方的に確定するものなので、法律の根拠が必要とされています。しかし、、駐車違反の取り締まりや飲食店の営業禁止処分等の多種多様の状況の対応をしなければならない場面もあるので、法律の根拠を必要としつつも、その判断にある程度の行政庁の裁量の幅を持たせる必要があります。これを裁量行為と言います。

裁量行為の具体的な例として、飲食店などの営業許可が挙げられます。食品の安全性を確保できないような場合を、法律で全て想定するのは無理です。急であったり、不測である事態の対処ができません。そこで法律上、許可の要件は細かく定められておらず、裁量行為とされています。


2. 覊束行為:きそくこうい


一方、法律上そのような余地を認めない場合もあります。このような行為を覊束行為(きそくこうい)といいます。羈束とは、つないでしばることです

覊束行為の例:

選挙人名簿への登録

18歳以上の有権者は、実際に投票するためには、市区町村の選挙管理委員会が管理する名簿に登録されていなければなりません。この登録の要件は、法律で市区町村に住所を持つ年齢が満18歳以上の日本国民で、その住民票がつくられた日(他の市区町村からの転入者は転入届をした日)から3ヶ月以上、その市区町村の住民基本台帳に記録されている人と決められています。この要件を満たしさえすれば登録されます。

これに加えて下記の場合にも、旧住所に登録されます。

旧住所地における住民票の登録期間が3箇月以上である17歳の人が転出後4箇月以内に、新住所地において18歳となったが、新住所地における住民票登録期間が3箇月未満である場合。

旧住所地における住民票の登録期間が3箇月以上である18歳以上の人が選挙人名簿に登録される前に転出をしてから4箇月以内で、かつ新住所地における住民票の登録期間が3箇月未満である場合。

総務省HP  なるほど!選挙 > 選挙人名簿


このような特定の事実または法律関係の存在を公に証明する行為のうち、法律により法律効果の発生が予定されているものを公証といいます。




法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為


1. 法律行為的行政行為


営業許可などのように行政庁が、一定の法律行為化の発生を欲する意思を持ち、それを外部に表示することによって成立する行政行為を法律行為的行政行為といいます。これは行政の意思に基づいて法的効果を認めているものなので、行政庁に一定の裁量権が認められています。

法律行為的行政行為の例:

下命、禁止、免除、許可、特許、剥権、認可


2. 準法律行為的行政行為


それに対して、選挙人名簿への登録などの公証あるいは、確認などは、行政庁が判断・認識・観念などを発現し、それに対して法律が法的効果を与える行政行為を準法律行為的行政行為といいます。意思を発現しているわけではないため、行政庁に裁量権を認める余地はありません。

準法律行為的行政行為の例:

確認、公証、通知、受理


命令的行為と形成的行為


法律行為的行政行為は、さらに命令的行為と形成的行為に分けられます。

1. 命令的行為


命令的行為とは、行政庁が、国民が本来有している自由に対して制限を加える、または自由の制限を解除する行為をいいます。


命令的行為の例:

下命、禁止、免除、許可


2. 形性的行為


形成的行為とは、行政庁が国民が本来有していない権利能力、行為能力、特定の権利、その他法的地位を与え、または剥奪するなどの行為をいいます。

形成的行為の例:

特許、剥権、認可、代理


※許可と特許の違い・・ここでいう「特許」は、発明などの権利を保全するための特許とは別の制度。

飲食店などの営業を認める場合、原則自由の原則(命令的行為)なので・・・「許可」という言葉を使う。

鉄道会社、電気供給事業者、ガス供給事業者等の国民生活に必須な役割の公益性の高い事業は、行政としても多くの観点からの検討が必要で、役所が公益事業を営む特権を与える場合、大幅な自由裁量(形成的行為)なので・・・「特許」という言葉を使う。


このように、命令的行為(許可)と形成的行為(特許)との違いは、行政庁に認められる最良の強さによります。


附款:ふかん


1. 附款の意味


行政行為に付られる条件で「何月何日から営業を開始してよい」というようなことを附款といいます。

附款を難しく定義すると、行政行為の効果の一部を制限するために、行政行為の主たる意思表示に附加された従たる意思表示のことを指します。


2. 附款の種類


①条件

行政行為の効力の発生や消滅を、発生不確実な将来の事実にかからせる意思表示のことです。条件には、停止条件と解除条件があります。


停止条件・・・事実の発生によって行政行為の効力が発生する場合

解除条件・・・事実の発生によって行政行為の効力が消滅する場合

②期限

行政能力の発生や消滅を、将来発生することの確実な事実にかからせる意思表示のことです。期限には、始期と終期があります。

始期・・・事実の発生によって行政行為の効力が発生する場合

終期・・・事実の発生によって行政行為の効力が消滅する場合


③負担

主たる行政行為の内容に付随する義務を追加することです。例えば、主たる行政行為が「自動車の運転免許」を付与する場合には、裸眼視力が一定以下のものに対して、負担として「メガネの使用」を義務付けたりすることがこれに当たります。

④撤回権の留保

主たる行政行為に付加して、公益上の支障が発生したり、相手方の義務違反が発生したりした時などには行政行為を消滅させる権利を留保することです。例えば、河川の使用を許可するが、公益上の必要が発生した時にはその許可を取り消すことができるなどの場合がこれに当たります。


⑤法律効果の一部除外

法律行為に付加して、法律効果の一部を発生させないことです。例えば、公務での出張を命じるが、規定の旅費を支出しないというような場合がこれに当たります。


3. 附款を附しうる場合


法律が俯瞰を付すことを認めている場合や行政庁に裁量が認められている場合でなければ附款を付けることはできません。附款は「主たる意思表示に 附加された」従たる意思表示なので、附款を付しうる行政行為は、意思表示を要素とする法律行為的行政行為に限られることになります。準法律的行政行為には、附款を付すことはできません。

法律行為的行政行為(営業許可など)・・・附款を付られる

準法律行為的行政行為(公証など)・・・附款を付られない


行政行為にはどのような効果が発生するのか?


行政行為には、その特徴をよりよく発揮できるように、特別の効果が認められています。一般的には、公定力、自力執行力、不可争力、不可変更力があるとされています。

1. 公定力


行政行為は、法律の規定に違反していい方なものであったとしても、権限ある機関が正式にこれを取り消さない限り有効とされ、国民を拘束する力が持たされています。このように違法であっても、有効なものとして通用し関係人を拘束する力を公定力といいます。

一般的に法の世界では、法律に違反する行為は無効であって、何人に対しても法的拘束力は持たないというのが原則です。しかし、役所が下した行政行為(行政処分)に対して、それぞれの勝手な判断で「違法だから無効である、したがって従う必要はない」ということが許されてしますと、公共の安全は守ることができない場合が発生してしまいます。

なので、いったんは有効として扱い、国民はそれに拘束されるとしました、しかし、役所にも間違いはありうるので行政行為が違法である場合もないとはいえません。そこで、行政不服申し立て、取消訴訟などの手続によって権限ある機関が取り消すことができることにしたのです。


2. 不可争力


違法な行政行為によって権利利益を侵害された者が、侵害を排除するには、まず行政行為の取り消しを求めて公定力を除去しなければなりません。そのための手続が行政不服審査と取消訴訟です。

行政不服審査は、原則として処分を知った日の翌日から起算して60日以内に申し立てをしなければなりません。

取消訴訟は原則として処分を知った日から6ヶ月以内です。

これら不服申立期間や出訴機関が経過してしまうと、行政行為によって権利利益を侵害された者であっても、不服申立てや出訴ができなくなります。国民はもはや違法を主張してその拘束を免れることはできなくなります。この効力を不可争力といいます。行政行為を速やかに安定させるため、このような効力が認められています。

ただしこれは「私人が」不服申し立てや出訴ができないということにすぎません。したがって、行政庁の側から行政行為を取消す分には、期間を過ぎていてもいっこうにかまいません。

3. 自力執行力


自力執行力とは、行政行為によって命じられたことを国民が利口しない場合、裁判判決を経ることなく、行政行為自体を法的根拠として、行政庁自らの判断で義務者に対して強制執行を行い、義務の内容を実現することができることをいいます。


4. 不可変更力


不可変更力とは、行政庁が一度行った行政行為は自ら取り消したり、変こくしたりすることができないという動力のことです。

役所は公益の管理者として、常時、適法かつ公益に適合した状態を作り出さなければならなく、もし誤って違法・不当な行政行為をした場合には、自ら進んでこれを取り消し、適法な状態にしなければなりません。したがって、行政行為には原則として不可変更力は認められません。

ただ、異議申し立てに対する決定や審査請求に対する裁決あるいは審決のように、紛争裁断作用として行われるものには例外的に不可変更力が認められる事があります。


行政行為の瑕疵


行政行為はその成立の手続、内容、形式などあらゆる点で法律の定めに合致し、かつ公益に合致していなければなりません。適法性に反する違法な行政行為、法律には違反しているといえなくても公益適合性に反する不当な行政行為は、いずれも危うい行政行為であり、瑕疵ある行政行為といいます。

行政行為が違法とされても、公定力によって、ただちに無効とはなりません。権限ある機関によって取消されるまでは、違法であっても一応有効なものとして扱われます。


しかし、瑕疵があまりにもひどい場合、本来の手続きで取り消されるまでは有効であるとして国民はそれに従わなければならないとするのは不合理です。そこで、瑕疵があまりにもひどく、行政庁側のいいかげんな判断によるときは、例外的に無効な行政行為として、公定力、不可争力などいかなる法的効果も生じないとしました。

行政行為が無効であるということは、正規の取消し手続を経るまでもなく、いつでも誰でも行政行為の瑕疵を主張してその効果を否定することができるような行為であることとなります。

そもそも行政行為に公定力が認められ、瑕疵があってもただちに無効とせず、権限ある国家機関が正式に取り消すまでは有効としたのは、行政行為の瑕疵の判定には専門的又は技術的な判断が必要であり、ここの国民が各人の判断でこれを無効と判定し、「無効故に従う必要はない」とできるとすれば行政行為の目的は達成できないからです。だとすれば、行政行為が、重要な要件に違反し、そのことが客観的に疑う余地のないほど明白であれば、あえて専門機関の判断を待つまでもないと考えられます。

そこで最高裁は、行政行為の違法が重大かつ明白である場合は、その行政行為は法律上当然無効となるとしました。



瑕疵の治癒と違法行為の転換


瑕疵ある行政行為は本来取り消されることになります。しかし、法的安定性の観点から、一定の例外が認められています。


1. 瑕疵の治癒


行政行為が行われた時には存在していた瑕疵がのちになくなった時には、行政行為は適法として扱われるようになります。これを瑕疵の治癒といいます。


2. 違法行為の転換


行政庁が意図した行政処分としては違法な行政処分であったとしても、それを他の種類の行政処分としてとらえると違反でない場合もあります。このような場合に、この処分を取り消すことなく、その効力を別の種類の行政処分として維持することもできます。これを違法行為の転換といいます。


行政行為の取消と撤回


行政行為がいったん有効に成立すると、期限の到来、条件の成就、義務の履行その他の事情によってその効力が消滅するまでは存在します。しかし、役所としては、つねにもっとも国民全体の利益に適した状況を作り出すべきなので、行政行為の効力は行政行為の効力はもはや維持すべきではないと判断したならば、職権でその効力を消滅させることができます。


1. 職権取消し


行政行為が成立当初から違法または不当であったと判断したときは、そのことを理由に処分庁は行為を取り消す旨の意思表示をして、はじめから無かったものとすべきです。これを、職権による取消しといいます。職権取消とは、瑕疵ある行政行為について、行政行為が行われた時点に戻って、その行政行為がなかった、ことにすることです。法律上の根拠は不要です。


2. 撤回


撤回とは、当初瑕疵なく敵法理成立した行政行為について、その後の事情の変化によりその法律関係を存続させることが妥当でないということが生じたときに、この法律関係を消滅させる行為のことをいいます。

例:医薬品の製造承認

医薬品の製造承認をしたが、その薬品が後日有害であると判断したときは、承認を取り消すべきです。

撤回は、問題が生ずるまでは瑕疵がなく成立していた行為の効力を失わせるものですから、その効力は将来に向かってのみ生じます。また、撤回はいったん適法に行われた行為に対して公益判断などに基づいて行われるもので、その権限は処分をする権限の中に内包されていると考えられるため、処分庁は公益の管理者として自由にこれを撤回することができます。これは処分庁の権限であり、原則として処分庁にしかできないことです。


次は、行政法の分野の「行政指導」を説明します。
➡【行政書士試験・行政法】5. 行政指導

➡サイトトップへ戻る

【行政書士試験・一般知識】社会(社会保障制度)についてまとめてみました。

一般知識・社会(社会保障制度)


【行政書士試験・一般知識】社会(社会保障制度)についてまとめてみました。

今回は一般知識の社会の分野「社会保障」についてまとめてみたいと思います。

日本の社会保障制度


社会保障制度とは?


個人がカバーすべき部分でもある病気や怪我が、失業などといった様々な生活上の問題について、社会全体で負担を分けあって、カバーするものです。



日本の社会保障制度の種類


日本の社会保障制度は、つぎの4つの項目から成り立っております。

①社会保険

②社会福祉

③公的扶助

④公衆衛生

それでは、それぞれの項目をひとつひとつ見てみましょう。

①社会保険とは?




社会保険とは、生活を脅かす様々な事項に対して、給付を行う制度のことです。この制度は、医療保険・年金保険・労働保険・介護保険に分類されます。


➁社会福祉とは?


児童、障害者、高齢者、母子家庭等の特別に援助を必要とする人々が、安心して社会生活を営むことができるように公的な支援を行う制度のことです。


③公的扶助とは?




国の責任で生活に困窮するすべての国民に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行う制度のことです。生活保護制度がこれに当たります。


④公衆衛生とは?


社会的な対応が必要な医療制度の整備や環境政策的な予防的医療など、社会的な必要から、公衆衛生の促進を図る制度のことです。

2019年11月22日金曜日

【行政書士試験】行政立法のトレーニング問題

【行政書士試験】行政立法のトレーニング問題


テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★行政立法の体系


(1)国会の定める法律では大まかなことを決め、専門的な規定は行政に委任することができる。この委任を受けて行政機関が策定する規範を法律命令という。

〇…問題文の通り。


★法規命令


(2)法規命令とは、法律の委任を受けて、行政機関が定める規範で、国民の自由を制限したり、義務を課す内容のもの。

〇…問題文の通り。


(3)法規命令は、国民の権利や義務の内容そのものを規定する委任命令と国民の権利の内容そのものを規律するのではなく、単に執行方法などの細則を決める執行命令がある。

〇…問題文通り。


★委任命令


(4)委任命令は個別具体的な法律による委任が必要であり、その法律の委任の範囲を超えることはできない。

〇…問題文通り。


★執行命令


(5)委任命令とは、個別・具体的な法律からの委任を受けて国民の権利・義務の内容を規定する命令である。

〇…問題文の通り。


(6)執行命令は法律を執行するための細則であるから、国家行政組織法によって一般的受験があるので、それ以上に個別の法律によって具体的な委任までは必要としない。

〇…問題文通り。


★行政規則


(7)行政規則は、行政機関内部で上級行政機関が下級行政機関を規律するための規範である。直接的に国民の権利を制限したり、義務を課したりするものではないので、法律の根拠は必要ない。

〇…問題文通り。





➡トレーニング問題まとめへ戻る

➡サイトトップへ戻る

2019年11月15日金曜日

【行政書士試験・行政法】3. 行政立法・・行政立法の全体像、法規命令、行政規則

3. 行政立法

最終更新日:2020年1月5日




行政立法とは?・・・行政機関が作る法規範


行政活動と呼ばれるものは多種に渡りますが、その中でも、国民の権利を制限したり、国民に義務を課すような行政活動を行政(役所)が勝手な判断で強制することはできません。国民の権利を制限できるのは主権者である国民自身以外にはありえません。つまり、行政による強制的な活動は、国民の代表者である国会で決めた法律に基づいたものであることが必要となります。

ただ、法律で事細かになんでも決めると実情に合わせた機動的な活動ができない場合もあり、国会、すなわち「法律」では大枠を決め、細かい部分は役所に任せておいたほうがいい場合もあります。このように国会(法律)の委任を受けて定めた細かい基準などを行政立法といいます。

さらに、行政(役所)の仕事を進めていくためには、国民の権利・義務とは直接関係しないことでも、いろいろと決め事が必要です。そういった決め事も行政立法といいます。

行政立法は行政機関が作る法規範なので、国会が作る「法律」とは別です。


行政立法は、国民の権利義務を規律する性質を有するか否かの違いによって、法規命令と行政規則に分けられます。




重要キーワード!「法規」と「命令」とは?

「法規」とは
国民の権利・自由を制限したり、国民に義務を課す法規範のことを指します。法規範とは、決まりとルールのことです。

「命令」とは
ここでの「命令」は行政機関が定立する法を意味します。つまり、法規命令とは
行政(役所)が定めた、国民の権利・自由を制限したり、国民に義務を課す法規範のことです。


法規命令


法規命令とは?


国民の権利義務を規律する性質をもつ行政法規を法規命令といいます。


委任命令と執行命令


法規命令は内容の観点から、委任命令と執行命令に分類されます。

1. 委任命令


個別・具体的な委任を受けて国民の権利・義務の内容を規定する命令のことです。

①委任立法の限界(国会側の限界)
国会が唯一の立法機関であることから法律による委任は包括的な委任であってはならず、個別・具体的な委任でなければなりません。

②委任命令の内容(行政側の限界)
国会(法律)の委任を受けて定立するので、委任の範囲を超えてはなりません。

2. 執行命令


執行命令とは、様々な法律を執行していくために必要となる実施期日を定める命令です。委任命令は義務の内容を定めるものですが、その内容を実現する手続きを定めているのが執行命令です。手続き・形式を定めるもので、国民の権利・義務の内容自体には直接関わらないので、個別・具体的な法律の根拠まではようしないとされています。ただし、法規である以上、法律の委任は必要です。


行政規則


行政規則とは、国民の権利義務を規律する法律たる性質を有しない行政法規をいい、内規、要領、通達などの形式で定めることができます。

法規命令が、国民の権利・自由を制限するものであったのに対し、こちらはそのような外部的効果を有しません。したがって、制定に当たり法律の授権は不要です。
上級行政機関が下級行政機関に対して「通達」という形式で法律の解釈を統一するために解釈基準を示すことが多いです。下級行政機関は、上級行政機関の示した通達に原則として拘束されることになります。しかし通達は、国民や裁判所を拘束する外部的効果はありません。外部効果を持たない以上、行政規則自体を取消訴訟の対象として争うことはできません。裁判所も、通達の解釈に拘束されることなく、何が正しい解釈であるかを法令に照らして判断することになります。

次は、行政法の行政行為について説明しています。
→【リンク】4. 行政行為

➡サイトトップへ戻る

2019年11月12日火曜日

【行政書士試験】行政組織のトレーニング問題

【行政書士試験】行政組織のトレーニング問題


テスト

基礎を勉強するなら、ここに戻ってください。

➡【リンク】2. 行政組織

●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★行政主体


(1)行政主体とは、国、都道府県、市町村であり、いずれも法人である。

〇…問題文の通り。


★行政機関


(2)行政機関とは、行政主体の手足となって現実にその職務を行うために設置される機関である。

〇…問題文の通り。


(3)行政機関が、行政主体の為に行うことのできる事項・活動の範囲は権限と呼ばれ、私法上の権利と同様に、その権限の行使を担当する公務員に効果が帰属する。

✕…行政機関がその権限内で行った行為の効果は、行政主体に帰属する。


(4)権限の委任とは、行政庁が法律に基づいて与えられた自己の権限を他の機関に委任することである。この場合は、必ず法律で委任が許されていないければならない。

〇…問題文の通り。


(5)委任した行政庁はその権限を失い、委任を受けた行政庁が自己の名と責任でその権限を行使する。

〇…問題文の通り。


(6)行政主体の意思を決定し、これを外部に対して表示する権限を有する行政機関のことを行政庁という。

〇…問題文の通り。


(7)諮問機関が示した答申・意見について行政庁はそれを尊重すべきではあるが、法的に拘束されることはない。

〇…問題文の通り。


(8)参与機関とは行政主体の手足として実力を行使する機関であり、警察官、消防官、収税官などがこれに当たる。

✕…執行機関が正解。


★行政庁


(9)行政庁は独任制でなければならず、委員会などの合議体が行政庁としての役割を果たすことはない。

✕…行政庁は、独任制が原則だが、政治的に中立公正な行政が必要な領域、専門技術的知見に基づく行政分野においては、独立して各界の識者・利害関係の代表者を集めて合議制の行政庁が設置される。



➡トレーニング問題まとめへ戻る

➡サイトトップへ戻る

2019年11月9日土曜日

【行政書士試験・行政法】2. 行政組織・・・行政主体とは?行政庁とは?授権代理とは?

2. 行政組織


【行政書士試験・行政法】2. 行政組織・・・行政主体とは?行政庁とは?授権代理とは?


今回は、行政法の分野の行政組織について紹介したいと思います。


行政主体とは


行政を行う権利と義務を持ち、自己の名と責任で行政を行う団体を、行政主体といいます。

行政主体の代表例は、国と地方公共団体です。行政の権限を有し、自己の名と責任で行政を行う法人です。

国や地方公共団体の他にも、行政に属する特定の事業を実施するために特殊法人、営造物法人、公共組合、独立行政法人等があります。独立行政法人とは、国や地方公共団体が実施してきた行政のうち、試験研究、研修、検査検定などの実務事務や国公立大学などを国や地方公共団体から切り離して独立して行わせるために設立される法人のことをいいます。


行政機関


行政は、国や地方公共団体などの法人である行政主体がその名と責任で行います。そして、行政主体の手足となって現実にその職務を行うために設置される機関を行政機関といいます。例えば、各省の大臣や都道府県知事、市町村長などはいずれも行政機関ということになります。行政機関がその権限内で行った行為の効果は、行政主体に帰属します。
行政機関が行政主体のために行為できる職権の範囲を権限といい、組織法によって明記されています。

1. 行政庁


行政主体の法律上の意思を決定し外部に表示する権限を持つ機関を行政庁といいます。具体的には、国民に対して、行政処分を発したり、義務を決定したりする機関です。各省の大臣、知事、市長だけでなく、税務署長、保健所長などもこれに当たります。


2. 補助機関


行政庁の職務を補助するために、日常的な事務を遂行する機関を補助機関といいます。事務次官、局長、課長をはじめ一般職員はみな補助機関です。


3. 諮問機関


行政庁から諮問を受けて意見を具申する機関をいいます。各種の審議会がこの例に当たります。審議会の答申は当然、最大限に尊重されるべきですが、行政庁が法的に拘束されることはありません。


4. 参与機関


行政庁の意思を拘束する議決を行う行政機関。


5. 監査機関


行政機関の事務や会計の処理を検査する機関です。


6. 執行機関


行政組織・・・執行機関


行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関です。例えば、警察官、消防職員、収税官などがこれに当たります。


行政庁


行政庁は、組織法上、明確に限界づけられた範囲内で行政主体の意思を決定し、教示する意思を持ちます。

1. 独任制・合議制


行政法は、独任制が原則です。行政の機敏性を確保して行政需要に素早く対応し行政責任の所在を明確にするのに適切なためです。
政治的に中立公平な行政を運営する必要のある領域や専門技術的知見に基づく行政分野においては、独立して各界の識者・利害関係の代表者等を集めて合議制の行政庁が設置されます。公正取引委員会などが例です。


2. 権限の委任・代理・代決


行政庁は、法令に定められた権限を自ら行使するのが原則ですが、例外として他の期間にその権限を行わせることがあります。

①権限の委任
権限の委任とは、自己に与えられた権限の一部を他の機関に委任して行わせることをいいます。委任は、法令に定められた権限の一部を他に移動させる行為なので、法律の根拠が必要です。

権限が委任されると、委任した行政庁はその権限を失い、委任を受けた期間が自己の名と責任でその権限を行使することになります。


②権限の代理
権限の代理には、授権代理と法定代理があります。


権利の代理



・授権代理とは
授権代理とは、本来の行政庁が他の機関に対しその権限の一部を代理公使する権限を与えられるものです。代理機関は、あくまで代理権限の範囲内で、代理であることを明示してその効果は本来の行政庁に帰属します。本来の行政庁の権限は、代理制度に移動するわけではありません。この点が権限の委任との大きな違いです。ゆえに、権限の代理には法律の根拠は必要ではないと解されています。

・法定代理とは
法定代理とは、法律の定めに従い、他の行政機関が本来の行政庁の権限の全てを代行することをいいます。行政庁が欠けた時、または自己にあったときのために定められています。


③代決
行政庁が、規程などに基づいてその補助機関に事務処理についての決定を委ねますが、外部に対する関係では本来の行政庁の名で表示することです。



国の行政の仕組み


内閣と内閣府


内閣とは、内閣総理大臣と国務大臣から組織される合議機関をいいます。内閣は行政権本来の主体として、政策の決定や行政各部の総合的な調整を行います。
内閣には、内閣府が置かれています。内閣府は、政府全体の見地から関係行政機関の連携の確保を図るとともに、内閣総理大臣が政府全体の見地から管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行を図ることを仕事としています。

省、委員会および庁


内閣は省・委員会および省を置き、それぞれの行政事務を分担管理させる方式をとっています。これら国の行政機関の組織は、国家行政組織法で定められています。省は、内閣の統括者とに行政事務をつかさどる機関として置かれるものです。委員会および庁は、省に外局として置かれるものです。
内閣のもとに置かれた復興庁や、環境省の外局として置かれた原子力規制委員会、その事務局として置かれた原子力規制庁があります。
各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理します。各省大臣は、国務大臣の中から、内閣総理大臣がこれを命じます。ちなみに、内閣総理大臣が自らこれに当たることを妨げません。呼び名としては、委員会の長は、委員長であり、庁の長は、長官とします。



次は、行政法の行政行為について紹介しています。
→【リンク】3. 行政立法

➡サイトトップへ戻る

【行政書士試験】行政法総論と行政の原理のトレーニング問題

【行政書士試験】行政法総論と行政の原理のトレーニング問題


テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

(1)行政主体とは、行政を行う権限を有し、事故の名と責任で行政を行う団体(法人)のことである。

〇…国家や地方公共団体などのこと。


(2)行政法は、行政組織に関する法、行政作用に関する法、行政救済に関する法の3つに大別できる

〇…行政法という個別の法はない。行政法は行政に関する法の総称。


(3)独立行政法人や公共組合も行政を行う権限を有する行政主体に含まれる。

〇…問題文通り。
※行政主体とは、行政を行う権限を有し、自己の名と責任で行政を行う団体(法人)のことである。


(4)行政機関が行政主体のために行うことのできる事項や活動の範囲を権限という。

〇…問題文通り。


(5)都道府県の補助期間は知事であり、市町村の補助期間は市町村長である。

×…補助機関とは、副知事、副市町村長などのことである。知事や市町村長の意思決定や活動を補助する機関である。


(6)行政主体とは、行政を行う権限を有し、自己の名と責任で行政を行う団体(法人)のことである。

〇…具体的には国家や地方公共団体(都道府県、市町村)などのことである。


(7)神奈川県や川崎市は行政主体だが、国土交通省や金融庁は行政主体ではない。

〇…行政主体とは国や地方公共団体など法人自体のことであり、その一部署である省庁は行政主体ではない。


(8)行政活動も、法の一般原則である平等原則、比例原則、信義則などに従う。

〇…問題文の通り。

➡トレーニング問題まとめへ戻る

➡サイトトップへ戻る



【行政書士試験・行政法】1. 行政法総論と行政の原理・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント

1. 行政法総論と行政の原理




どうもTakaです。今回から行政法に関しても着手していきます。民法と並び、この行政書士という資格のキモとなる行政法の分野を説明していきます。


行政法とは?


行政法とは、行政に関する法ですが、行政法と言う名の法律はありません。
道路交通法、食品衛生法、建築基準法などの国民の生活を守るために国民を規律する多くの法律や行政の違法・不当な活動を制限するための法律をひとくくりにしたものを行政法といいます。


行政ってなんだろう?


行政が行なっているものは、水道の運営や警察、福祉、教育、環境、まちづくりなど非常に多種多様です。これらを定義してみるのは難しいので、一般的には、
行政とは「国家の作用のうち、立法でも司法でもないものが、行政である」と定義しています。


行政の原理


役所が国民の権利を制限したり、国民に義務を課すには、必ず法律の根拠が必要となります。これを行政の原理といいます。


行政手続法とは


法律の根拠がある処分をするとしても、処分の前提となる事実の確認に誤認があったりしては国民の権利は守れないので、法律を適用し執行する際の手続きを定めているのが行政手続法です。


行政指導とは?


法律の根拠がなければ役所は行政活動をしなくてもよいわけではありません。強制的・権力的な活動を行うためには法律の根拠が必要になりますが、協力を依頼する非権力的な形での活動は必要となる場合もあります。これを行政指導といいます。


法律による行政の原理


行政活動の原理


行政活動は国会で決められる法律に従って行わなければならないということです。
具体的には次のような原則に基づいて行政活動は行われます。

①法律優位の原則
行政活動はすでに存在している法律の定めに違反して行われてはならないという原則。

②法律留保の原則
ある行政活動を行うには必ず法律の根拠が必要であるという原則。

しかしながら、全ての行政活動に法律の根拠を必要としてしまうと、迅速に物事に対応できなくなってしまう恐れもあります。その為、国民の自由と財産を侵害するような行政活動についてのみ法律の根拠が必要であると解されています。


法の一般原理


他には、行政活動も法の一般原理に従います。

法の一般原理には以下のものがあります。

①平等原則
行政というものは、ある一定の条件下では、誰に対しても同じように振舞わなければなりません。

②比例原則
行政活動で国民に対して規制をするときは、その規制によって除外しようとする障害や危険の程度に比例した必要最低限のものでなければなりません。

③信義則
役所は、相手方の信頼を裏切るようなことをしてはなりません。

④行政法と民事法
過去においては、実定法を公法体系と私法体系に分けて、権利についても公権と私権にわけて通用する法体系を決めるような公法私法二元論を基礎とした解釈論もありましたが、そのような考えはもうされておらず、行政法関係においても民事法が適用される場合は少なくないのが現状です。
例えば、国が何かの物品を購入する場合、国有財産を売却することは私法上の売買契約に当たります。水道供給についても地方公共団体との契約によっています。ただし、民事上の契約であったとしても、例えば水道契約のように私人間の契約とは違って「契約自由の原則」とはいかず、役所側は契約が強制されるように、国や地方公共団体が当事者となる場合には、私人間とは異なった配慮が必要とされる場合もあります。


次は、行政法の行政組織について紹介しています。
➡【リンク】2. 行政組織

➡サイトトップへ戻る

21. 家族法(遺贈と遺留分について)・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント!遺言についてわかりやすく説明




今回は、行政書士試験の民法の分野「家族法」について説明します。




遺贈と遺留分


遺贈


1. 遺贈とは何か?


遺贈とは、遺言によって資産の全部または一部を贈与することをいいます。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈とは、遺言で遺産の全部または一定の割合を贈与することです。

特定遺贈とは、遺言で特定の遺産を贈与することです。


2. 遺贈の効力


遺贈は、遺言の効力が発生する遺言者(遺贈者)の死亡時に、効力を発生します。受遺者は、以蔵者の死亡時に生存していなければならず、それ以前に、受遺者が死亡した場合には、遺贈は無効となります。

民法994条 
1項 
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。 
2項 
停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。


3. 遺贈の放棄


特定遺贈については、受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄することができます。そして、その放棄の効力は、遺言者の死亡時に遡及します。

民法986条 
1項 
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。 
2項 
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

これに対して、包括遺贈の受遺者は、自己のために包括遺贈が効力を生じたことを知った時から3ヶ月以内に、遺贈の承認・放棄をしなければなりません。

民法990条 
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。


民法915条 
1項 
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 
2項 
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。


なお、遺贈を履行する義務のある者などの利害関係人は、受遺者に対して、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承諾または放棄をするように催告することができ、その期間内に返答がなければ、遺贈を承認したとみなされます。

民法987条 
遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。


遺留分


1. 遺留分とは何か


遺留分とは、一定の相続人にどうしても残してやらなければならない 相続財産の割合のことです。兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。直系尊属だけが相続人の場合には、相続財産の3分の1が、そのほかの場合は、相続財産の2分の1が遺留分となります。


2. 遺留分の放棄


遺留分は、放棄できます。ただし、被相続人による遺留分放棄の強要を防止するため、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。また、共同相続人の1人が遺留分を放棄しても、ほかの共同相続人の遺留分に影響を及ぼすわけではありません。

民法1043条 
1項 
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。 
2項 
共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。


相続人たる地位を失うわけではありません。


3. 遺留分滅殺請求


遺贈・贈与によって、遺留分が侵害される場合には、遺留分権利者は、滅殺請求をすることができます。

民法1031条 
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

滅殺は、まず遺贈について行い、その後、贈与について行わなければなりません。

民法1033条 
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。


遺留分滅殺請求権は、相続の開始および滅殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅してしまいます。相続開始時から10年を経過した場合も同じです。



➡サイトトップへ戻る