2019年7月20日土曜日

【行政書士試験・民法】1. 民法の基本原則と権利の主体

1. 民法の基本原則と権利の主体


【行政書士試験】1. 民法の基本原則と権利の主体


どうもTakaです。今回から民法について取り扱っていきます。

この民法と行政法が行政書士試験の要となる部分ですので、

皆さん頑張っていきましょう!




民法の基本原則



民法とは何か?


民法とは、私法一般法であり、私たち個人の生活関係を全般的・一般的に規律する法です。

※私法と公法
私法・・・個人の生活関係を規律する法
公法・・・国家の組織や国家と国民との関係を規律する法

※一般法と特別法
一般法・・・適用領域が限定されずに一様に適用される法
特別法・・・適用領域が限定された法


民法は、大きく分けると
「お金」と「物」に関するルール(財産法)
「家族関係」に関するルール(家族法)に分けられます。

民法の全体像



基本原則


1. 権利の社会性


私法上の権利は、その内容や権利を行使する方法が公共の福祉(社会全体の利益)と調和するものでなければいけません。

第一条  
一項 
私権は、公共の福祉に適合しなければならない。 
二項 
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 
三項 
権利の濫用は、これを許さない。

2. 信義誠実の原則


相手の信頼を不当に裏切らないように誠意をもって行うことを信義誠実の原則(信義則)といいます。

3. 権利の濫用の禁止


権利の濫用とは、見かけは権利の行使だけど、内容は権利の社会性に反し、是認できない行為をいいます。
権利の濫用は、禁止されています。権利の濫用とされると、その権利の行使には本来認められる効果が発生しません。
また、権利の濫用が著しい場合には、法律の定めによって権利が剥奪されることもあり、権利の濫用によって他人に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負います。

この権利の濫用が問われた有名な事件が以下のケースです。
【重要判例】宇奈月温泉事件


自然人



権利能力


権利義務の主体になる資格を、権利能力といいます。
権利能力がないと、権利を持ったり、義務を負ったりすることはできません。

自然人の権利能力


自然人とは、生きた人間のことです。自然人は生まれたとき(出生した時)に権利能力を取得します。


自然人の権利能力

自然人は、生きている限り、権利能力を持っており、自然人の権利能力を契約によって制限することはできません。

また外国人も、法令又は条約の規定によって禁止される場合を除いて、権利能力が認められます。

第三条  
一項
私権の享有は、出生に始まる。
 
二項
外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

胎児の権利能力


胎児


自然人が権利能力を持つのは、出生時からであって、出生前には、権利能力はありません。生命として誕生しても、母体内にいる胎児には、権利能力がないのが判例です。
しかし、民法では
①不法行為に基づく損害賠償請求
②相続
③遺贈
に関して、例外的に胎児を生まれたものとみなしています。
これらは、胎児の時点で権利能力が認められるわけではなく、無事に生まれてくると、問題になった時点に遡って権利能力を持っていたことにするというのが判例です。
【重要判例】阪神電鉄事件/大判昭7.10.6


失踪宣告と権利能力


民法では、生死不明の人を死亡したものとみなす失踪宣言という制度があります。
失踪宣言は次の要件を満たす場合に、家庭裁判所によって行われます。


①不在者が7年間生死不明状態でいること(普通失踪)
または、戦争や航空事故といった死亡の原因となるような危難に遭遇し、その危難が去ってから1年が経過すること。(特別失踪)

②利害関係人(配偶者・相続人・債権者など)から請求のあること。

失踪宣言を受けた人は、普通失踪なら7年の失踪期間満了後に、そして、特別失踪なら危難の去った時に、死亡したとみなされます。

第三十一条 
前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。


死亡が擬制(性質の異なるものを同一のものとみなして同じ効果を与える取扱い)されるから、相続が開始します。つまり、死んだことにされるか相続が開始するということです。
また、婚姻関係が終了し、再婚が可能になります。

しかし、失踪宣言は、不在者等の死亡を擬制して、その住所地における私法上の法律関係を精算処理するだけで、不在者等の権利能力を完全に奪うものではありません。どこかで生きていれば、その地で、自由に権利を取得したり、義務を負ったりすることができるからです。



法人


法人-会社

法人とは何か?


自然人ではないが、法人格を付与され、権利義務の主体になれるものを法人といいます。

法人は、権利能力を持ち、権利義務の主体になれるため、法人になると、次のことが可能になります。

①取引の主体となることができる。法人自体の名前で取引ができる。
②取引によって取得した財産は、法人自体に帰属し、登記も、法人名で行うことができる。
③法人が負った債務は、法人自体の債務と扱われ、法人の財宝が抵当や担保になります。


法人の種類・・社団法人と財団法人


法人には、社団法人と財団法人があります。

※社団法人と財団法人


社団法人と財団法人


社団法人・・人の集団である団体(社団)に権利能力が与えられたもの

財団法人・・財産の集合体(財団)に権利能力が与えられたもの


法人の設立


法人を設立するには、法律に基づく必要があります。
法人は、法律に従って設立され、これを法人法定主義といいます。

法人は、法律の規定に適合した定款を作成し、公証人の認証を受け、設立の登記をすれば、成立します。

第三十三条
法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。


法人の権利能力


法人にはその性質上、自然人とは全く同様の権利能力を得られません。
例えば、法人は、結婚したり養子縁組をしたりすることはできません。
法人は法令の制限を受けます。

法人は一定の目的を持ったものとして権利能力が与えられているので、その権利能力は、定款に定められた目的の範囲内に限定され、法人の行為は、目的の範囲内のものだけが有効であり、目的外のものは無効である。

第三十四条 
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。


権利能力なき社団


1. 権利能力なき社団って何?


実質的には法人と同様の活動をしているのに、法人格を取得していない団体があります。団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものは存続し、団体としての主要な点が確定しているものを権利能力なき社団としています。

2. 資産や債務の帰属先


権利能力なき社団には、法人格がなく、権利義務の帰属主体にはなりません。そのため、実質的には権利能力なき社団に属する資産であっても、権利能力なき社団の資産とするわけにはいきません。法形式上は、構成員全員が共同で所有するといわざるを得ません。

3. 登記の方法


権利能力なき社団に法人格がないことから、社団名での登記を認めていません。また、判例は、個人名に代表者であることを示す肩書きを付けた登記も認めていません。しかし、肩書きなしの個人名で登記することは認められています。
したがって、権利能力なき社団が実質保有する不動産について登記する場合、構成員全員の共有登記か、あるいは肩書きなしの個人名で登記することになります。


次は、 民法の意思表示と制限行為能力者について紹介しています。

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