2019年8月1日木曜日

【行政書士試験・民法】2. 意思表示と制限行為能力者・・出題頻度が高い分野ですしっかり理解しましょう。

2. 意思表示と制限行為能力者


民法タイトル


どうもTakaです。今回もまた民法の続きを進めていきます。 今回は、民法の分野の「意思表示と制限行為能力者」について紹介したいと思います。この章は、民法の基本的な部分であり、出題頻度が高い分野ですのでしっかり理解していきましょう。

法律行為

法律行為とは


法律行為とは、意思表示を要素とし、それに基づいて権利義務の変動(発生・変更・消滅)という法律効果が与えられる行為です。

法律行為の内容


1. 法律行為自由の原則


法律行為をするかしないか、その内容をどのようなものにするか、それをどのような形式でするかは、当事者が自由に決定できるのが原則です。(法律行為自由の原則)

2. 内容の確定性


内容を確定できない法律行為は無意味であり、これに法律効果を認めることは適当ではありません。そのため、内容を確定できない法律行為は、無効とされています。

3. 内容の実現可能性


当初から実現可能性のない(原始的不能)法律行為に、法的効果を帰属させても無意味です。最初から実現可能性のないことを内容とする法律行為も、無効です。

4. 内容の適法性


法令の規定のうち、強行規定は当事者の意思を阻害するものであり、強行規定に反する内容の法律行為は、無効です。 これに対して、任意規定は当事者の意思を補完するものにすぎず、明確な意思表示があれば、それが任意規定に優先します。そのため、任意規定と異なった内容の法律行為も、有効です。

 強行規定>法律行為>任意規定

5. 内容の社会的妥当性


社会的に許容できない法律行為は、公序良俗に反し、無効です。
例えば、売春契約や賭博などです。

条件と期限

1. 条件と期限とは何か?


当事者間の特約によって、法律行為の効力の発生または消滅を一定の事実にかけることができます。この特約を付款といいます。 付款のうち、一定の事実が発生するか否かが不確実なものを条件と言い、発生が確実なものを期限と言います。

2. 停止条件と期限


条件は、停止条件と解除条件に分けることができます。 停止していた法律行為の能力を発生されるのが、停止条件であり、逆に、発生していた法律行為の効力を消滅させるのが、解除条件です。

3. 期限の利益


期限が到達していないために、当事者が受ける利益のことを期限の利益と言います。期限の利益は、債務者のためにあると推定されています。そして、期限の利益は、相手方の利益を害さない限り、放棄することができます。

民法136条 
一項
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
 
二項
期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

意思表示

意思表示とは何か?

意思表示とは、民法の上で使われる場合の意味をいうと法律上の効果の発生を望む意思を相手に表現する行為のことをいいます。民法上の意思表示は基本的に、法律上の効果に対する意志の表示でなければなりません。
文字で書くだけだとわかり辛いですね。売買契約を例に図で表してみましょう。
意思表示の例(売買契約)
意思表示の例(売買契約)
この図でいうと、自転車を所有するAさんの「自転車売るよ」という部分と、自転車が欲しいBさんの「自転車買うよ」という部分が「意思表示」になります。
法律行為の構成要素である意思表示とは、一定の法的効果の発生を求める意思の表示であって、所定の要件さえ備えれば、意思通りの法的効果を発生させるものです。

例:契約の申し込みや承諾・契約の解除・転貸の承諾など


意思能力


意思表示を行うには、それによってどのような結果が生じるかを理解できる精神能力が必要です。この精神能力を意思能力といいます。 意思能力のないものが行なった意思表示は、無効とされています。

意思表示の効力発生時


意思表示が即座に相手に伝わる場合には、意思表示は原則として即時に効力を生じます。これに対して、発信時と到達時との間に社会通念上問題となるような時間差がある場合は、到達主義が採られ、意思表示は、相手方に到達した時点で効力を生じます。
民法97条 
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。


意思と表示の不一致

心裡留保・・その気が無い意思表示

民法93条は、「心裡留保」という規定を置いています。次の例でいうと、心裡留保とは、Aさん(売主)は、本当は自転車を売るつもりがないのに「自転車売るよ」と言った場合のことです。本当の意思を心のうちに隠して、それとは別のことを表示することを「心裡留保」といいます。
心裡留保の例
心裡留保

この心裡留保の場合、原則としてAさんの意思表示は有効です。とぼけたことをいったAさんを保護する必要はないです。
しかし、相手方であるBさんがAさんの気持ちを知っていた、または、知ることができたときはBさんを保護する必要はないので、例外的にAさんの意思表示は無効となります。

第九十三条 
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方表意者の真意知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。


虚偽表示・・口裏合わせを封じる規定

1. 虚偽表示とは何か?

民法94条は、虚偽表示という規定を置いています。これを例で表すと、次のような感じになります。相手方と通じて真意でない意思表示をすることを「虚偽表示」あるいは「通謀虚偽表示」といいます。
通謀虚偽表示の例
通謀虚偽表示の例

つまり、AさんもBさんも共に、売る気も買う気もないのに、何らかの理由で、売買が行われたことにしておこうとするものです。この虚偽表示の実際の例として、Aが差し押さえを免れるためにBと口裏合わせをして、いったんBに売るといった事件がありました。
この場合は、AさんとBさんは売る気もない・買う気もないので、双方の意思表示は、原則として無効であり、結果としてAさんBさんの間の契約も無効となります。

しかし、Bさんがその後に、Cさんにその自転車を売ってしまった場合は、もしCさんがAさんとBさんの間の事情について知らない場合には、AさんはCさんに対して「無効だから、自転車返して!」とは言えなくなります。

民法94条 
1項
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
 
2項
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。


2. 善意の第三者


善意の第三者とは、当事者・包括承継人(一般承継人)以外のものであって、虚偽表示であることも知らずに、権利者らしい外観を持つものと新たな関係を作り、独立した利益を持つようになった者のことです。

3. 民法94条2項の類推適用


民法94条2項は、通謀と虚偽の意思表示の存在を前提としていますが、これらがなくても、権利の外観に対する信頼を保護するべき場合には、同条項を類推適用すべきと判例ではいわれています。


錯誤

1 錯誤とは何か?


錯誤とは、表示から推測される意思と表意者の真実の意思が食い違っているのに、表意者がそれに気づいていないことです。言い違い・書き間違いや、表示行為の意味を誤解している場合が錯誤です。

2. 要素の錯誤


その錯誤がなければ、表意者はもちろん、一般人もそのような意思表示をしなかったであろう場合を「法律行為の要素に錯誤」があるといいます。

3. 動機の錯誤


動機の錯誤とは、意思を生じさせる動機に錯誤があるに過ぎない場合です。動機の錯誤では、表示に対応する意思が存在し、意思と表示に食い違いがあるわけではないです。そのため判例では、動機の錯誤については、動機の表示という新たな要件を要求し、動機が表示されて意思表示の内容になった場合に限り、法律行為の要素の錯誤になり得ると言っています。
【重要判例】 要素の錯誤による意思表示の無効(油絵代金返還請求事件)

瑕疵ある意思表示


詐欺による意思表示

1. 詐欺による意思表示とは何か?


詐欺とは、取引上要求される信義に反して、事実を隠したり、虚偽の事実を言ったりして、他人を騙し、勘違いされることです。そして騙されて、勘違いをしたまま行なった意思表示を詐欺による意思表示と言います。

2. 善意の第三者との関係


詐欺による意思表示を取り消す前に現れた善意の第三者に対しては、取り消しを主張できません。
第九十六条 
一項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
 
二項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
 
三項
前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。


※善意の第三者
善意の第三者とは、当事者およびその一般承継人以外のものであって、詐欺の事実を知らずに新たに利害関係に入った者のことです。

強迫による意思表示


強迫とは、相手方に恐怖心を抱かせ、それによって意思表示をさせることです。 そして、強迫されて怖くなり、やむを得ず行う意思表示を強迫による意思表示といいます。 強迫による意思表示は、詐欺の場合と異なり、強迫を行なった者が誰であろうと、無条件に取り消すことができます。 また、詐欺の場合と異なり、強迫による意思表示は、取り消し前に出現した善意の第三者に対しても、取り消しを主張できます。強迫の場合は、止むを得ず意思表示をした表意者に落ち度はないからです。


制限行為能力者

行為能力とは?


行為能力とは、一人で完全に有効な法律行為を行うことのできる資格・地位のことです。民法は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人について、行為能力を制限しています。

未成年者



1. 未成年者とは何か


未成年者は満20歳未満の者です。

2. 未成年者の法律行為


未成年者が法律行為を行うには、原則として法定代理人(原則として父母)の同意が必要であり、法定代理人の同意を得ずに、未成年者が一人で行なった法律行為は、取り消すことができます。ただし次の場合は例外的に未成年者が単独で行うことができます。
第五条 
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
第六条 
一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。


※未成年者が単独で行えること
①単に権利を得または義務を逃れるだけの行為
②法定代理人が許した財産の処分
③法定代理人が許した特定の営業に関する行為

取消権者は、未成年者本人や法定代理人です。

民法120条 
一項
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
 
二項
詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕か 疵しある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

未成年者本人にも取消権があり、自分一人の判断で取消権を行使でき、法定代理人の同意を得る必要はありません。

成年被後見人


1. 成年被後見人とは何か?


成年被後見人とは、精神上の障害によって事理弁識能力(物事の判断能力)がなく、自分の行為の意味さえわからず、その行為によって負うことになる義務の内容を理解できないのが通常のため、本人・配偶者・4親等内の親族などの請求に基づいて、家庭裁判所が貢献開始の審判を行い、成年後見人に面倒を見てもらっている人のことです。
第七条 
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
第八条 
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

具体的には、 脳死認定をされた方、重度の認知症を患っている方などが当てはまります。
 

2. 成年被後見人の法律行為


成年被後見人が自ら行なった法律行為は、取り消すことができます。たとえ成年後見人の同意を得ていても、成年被後見人の法律行為は取り消すことができます。 ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為については、自己決定権が尊重され、成年被後見人が単独で行うことができます。
第九条 
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

取消権があるのは、成年被後見人本人や成年後見人などです。

第百二十条 
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

成年被後見人本人にも取消権があり、意思能力のある状態であれば、自分の判断で取消権を行使できます。

被保佐人


1. 被保佐人とは何か?


被保佐人とは、成年被後見人のように行為の意味さえわからないという状態ではないが、精神上の障害によって事理弁識能力が著しく低いため、本人・配偶者・4親等内の親族などの請求に基づいて、家庭裁判所が保佐開始の審判を行い、保佐人の保護のもとに置かれている人のことです。 具体的には、 日常の買い物程度ならできるが、大きな財産を購入したり、契約を締結したりすることは難しい方、中どの認知症の方などが当てはまります。

2. 被保佐人の代理権


本人・配偶者・4親等内の親族などの請求に基づく家庭裁判所の審判によって、被保佐人の特定の法律行為について、被保佐人の特定の法律行為について保佐人に代理権を付与することができます。 ただし、保佐人に代理権を付与することができるのは、被保佐人時自身が請求した場合または同意している場合だけです。

3. 保佐人の同意権


元本の領収・借財・不動産の売買などの十よな法律行為を行なう場合それが日常生活に関する行為でない限り、保佐人の同意またはそれにかわる家庭裁判所の許可が必要です。 保佐人の同意を要するにもかかわらず、同意も、家庭裁判所の許可も得ずに行われてた被保佐人の行為は、被保佐人本人や保佐人などが取り消すことができます。

第十三条 
四項
保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第百二十条 
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。


被補助人



1. 被補助人とは何か?


精神上の障害によって事理弁識能力不十分なため、本人・配偶者・4親等内の親族などの請求に基づいて家庭裁判所が補助開始の審判を行い、補助人に手助けをしてもらっている人を被補助人といいます。
第十五条 
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
第十六条 
補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

具体的には、 常の買い物はひとりでも問題なくできるが、援助者の支えがあったほうが良いと思われる方、軽度の認知症の方などが当てはまります。

2. 被補助人の法律行為


補助開始の審判を行う場合には、
①民法13条所定の行為の一部について補助人に同意見を付与する審判
または
②被補助人の特定の法律行為について補助人に代理権を付与する審判を行わなければなりません。
第十五条 
一項
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
 
二項
本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
 
三項
補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
これらの審判を行うには、被補助人本人の請求または同意が必要です。
第十七条 
家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
第八百七十六条の九 
家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

補助人の同意を要する行為を、同意も、それに代わる家庭裁判所の許可も得ずに、被補助人が行なった場合、被補助人本人や補助人などは、その行為を取り消すことができます。


相手方の催告権


制限行為能力者と法律行為をした相手方は、法定代理人・保佐人・補助人に対して、法律行為を追認して有効なものに確定させるか否かを1ヶ月以上の期間内に回答するように催告できます。そして、行為能力の制限がなくなった後には、制限行為能力者であった本人に対して、同様の催告ができます。そして行為能力の制限がなくなった後には、制限行為能力者であった本人に対して、同様のの催告ができます。この催告に対して、所定の期間内に回答がない場合には、法律行為を追認したものとみなされます。 ただし、誰かの同意を得るなどの特別の方式を要する場合には、その期間内にその方法をとったという通知がない限り、逆に取り消したものとみなされます。
第二十条 
一項
制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす

また、相手方は、被保佐人または補助人の同意を要する被補助人に対して1ヶ月以上の期間内に保佐人または補助人の追認を得るように催告できます。そして、その期間内に追認を得たという通知がないと、その行為を取り消したものとみなされます。

詐術


制限行為能力者が自分の判断能力に問題がないと相手方を騙したり、法定代理人などの同意見者の同意を得ていると相手方を騙したりした場合には、その行為を取り消すことはできません。判例では、自分の行為の能力が制限されていることを黙っているに過ぎない場合は、詐術に当たらないが、他の言動と相まって能力者と思わせ、また強めた場合は、詐術にあたり、もはや取り消すことができなくなると言っています。
【重要判例】黙秘と詐術(土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件)

制限行為能力者のまとめ

一覧で制限行為能力者ついてまとめると次のように表せます。

種類どの様な人が該当するか単独の行為の結果単独でも有効 とされる行為
未成年者20歳に満たないもの取り消し可能単に権利を得たり、義務を免れる法律行為
成年被後見人精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く常況にあって、家庭裁判所の審判を受けたもの取り消し可能日用品の購入などの日常生活に関する行為
被保佐人精神上の障害によって事理を弁識する能力が著しく不十分であって、家庭裁判所の審判を受けたもの借財など一定の重要な行為については、取消し可能日用品の購入などの日常生活に関する行為や、重要性の低い行為
被補助人精神上の障害によって事理を弁償する能力が不十分であって、家庭裁判所の審判を受けた者家庭裁判が審判で定めた特定の行為のみ。取消し可能審判で定められなかった行為全般



無効と取り消し


無効と取り消しの違い

1. 無効と取消し可能


「無効」とは、当初から当然に効力のないことを言います。 「取り消すことができる」というのは、一応有効であるが、取消権が行使されると、遡及的に無効になることをいいます。

第百二十一条 
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

2. 無効・取消しの主張


向こうは誰でも主張することができ、また、誰に対しても主張することができるのが原則です。そして、無効の主張はいつでもできます。 これに対して、「取り消すことができる」は取消権のあるものだけです。しかも、取消権は、追認できる時から5年以内、かつ行為の時から20年以内に行使しなければなりません。

第百二十六条 
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

3. 追認


無効な行為を当事者の意思によって初めに遡って有効とすることはできず、追認しても、遡及的に有効になるわけではありません。ただし、無効であることを知りつつ追認すると、新しい行為をしたものとみなされます。 民法119条 これに対して、取消しの原因となった状況が消滅した後に、取消権者が取り消し可能であることを知った上で追認すると、取消権は消滅し、法律行為や意思表示は、最初から有効だったことになります。

民法122条 
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

民法124条 
追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。

 また、追認を明言しなくても、追認できるようになった後に、取消権者が、異議を留めずに、履行や履行の請求など追認と実質的に同じと認められる行為を行った場合には、追認したものとみなされます。

民法125条 
前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

無効・取消し後の後始末


無効であったり、取消権が行使されたりすると、意思表示は初めからなかったことになります。そのため、すでに義務が履行されていた場合には、それを元の状態に戻さなければならず、取得したものを、相手に返還しなければなりません。 ただし、制限行為能力を理由に取り消された場合の制限行為能力者の返還義務は、現に利益を受けている限度(現存利益)に限定されています。


 次は、民法の代理制度の分野について紹介しています。
 ➡【リンク】3. 代理制度

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