2019年6月13日木曜日

【行政書士試験・憲法】3. 人権総論・・・人が生まれながらに持つ権利

3.人権総論・・・行政書士試験で押さえておきたいポイント



3. 人権総論・・・行政書士試験で押さえておきたいポイント・人が生まれながらに持つ権利


どうもTakaです。今回は、行政書士試験の人権総論について紹介したいと思います。
暑い日が続きますが、がんばっていきましょう。





人権とは何か?



自然権


人権(基本的人権)は人間の尊厳の理念に基づいて当然認められるべき基本的な生活上の利益であって、憲法が保障しているものです。
日本の憲法によって保障されている人権は、自然権であると解されています。
自然権とは人間が生まれながらにして持つ固有の権利のことです。

国家に対しての人権の性質


憲法学において、人権は原則として国家権力(公権力)による
侵害から保護されるべきものとされています。これを人権の対国家性といいます。

そのため、判例は、憲法の人権規定は、原則として国または公共団体の統治行動に対するものであって、私人相互の関係を直接規律するものではないといっています。

但し、人権規定の中には奴隷的拘束・意に反した苦役を禁止した憲法18条や

第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

労働基本権を定めた28条などのように、規定の趣旨らかしても私人間にも適用されるものもあります

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。


憲法を私人間に直接適用することは、私的自治の原則(個人の間の法律関係は、各人の意思により自由に規律するという原則)に反しており、また上で取り上げた、対国家性という人権の本質にも抵触するからです。

この問題が有名な判例となったのが三菱樹脂事件です。
【重要事案】三菱樹脂事件/最大判昭48.12.12


人権の私人間効力


人権の対国家性から、私人による人権侵害的行為があっても、憲法の人権規定は直接適用されないのが原則です。

しかし、今は巨大な社会権力を持つ私的団体が存在し、その人権侵害的行為を適切に処理する必要があります。

そこで、判例・多数説は、憲法の人権規定の趣旨を私法の一般条項(信義則(民法1条)や公序良俗(民法90条)といった抽象的な概念を用いて定めた規定)に読み込み、人権保障の精神にそぐわない私人の行為を公序良俗違反のため無効であるとしたりして、間接的に私人間の行為を規律しようとしています(間接適用説)。

例えば、判例は、男子55歳、女子50歳を定年とする女子の若年定年制を定めた性別のみによる不合理な差別であって、民法90条により無効だと言っています。
【重要事案】日産自動車事件/最判昭56.3.24

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。


外国人・法人の人権



外国人の人権


外国人の人権享有主体性

憲法の人権規定は、性質上日本国民を対象とするものを除き、在留外国人にも等しく及ぶといっています。

不法入国の外国人であっても、わが国に在留する外国人には、性質上可能な限り、人権規定が適用されるのです。人権は生まれながらにして持つ固有の権利であり、また、憲法は国際協調主義を採用しているからです。

【重要事案】マクリーン事件/最判昭25.12.28
➡憲法第3章の規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としているものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ

外国人の入国・再入国の自由


外国人には、わが国に入国する自由は保障されておらず、在留する権利も保証されていないというのが、判例です。空港等の入国審査などがいい例です。
国際法上、入国を認めるかどうかは、その国が自由に決定できるとされているからです。
また、判例は、わが国に在留資格のある外国人であっても、外国に一時旅行し、再入国する自由は保障されていないといっています。

【重要事案】マクリーン事件/最大判53.10.4
➡憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されていないし、在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されていない。

【重要事案】森永キャサリーン事件/最判平4.11.16
➡我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由は保障されていない以上、外国人の再入国の自由は、憲法22条により保証されない。


外国人の政治活動の自由


政治活動の自由については、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位から考え相当でないものを除き、外国人にも保障されるというのが判例です。

【重要事案】マクリーン事件/最大判53.10.4
➡政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないものを除き、その保障がわが国に在留する外国人に及ぶ。

外国人の選挙権


国政選挙においても、地方公共団体の選挙においても、国民主権の原理に基づき、外国人に選挙権は保障されていないとい言うのが判例です。ただし判例は、地方公共団体の選挙について、法律で永住外国人等に選挙権を付与することは禁止されてないと言っています。


法人の人権




憲法3章の人権規定は、性質上可能な限り法人にも適用されるというのが、判例です。そして、判例は法人である会社の政治的行為の自由を認め、政治資金の寄付もその一環として許されるといっています。


【重要事案】八幡製鉄事件/最大判昭45.6.24
➡憲法第3章に定める国民の権利および義務の各事項は、性質上可能な限り、法人にも適用されるのであるから、会社は、自然人たる国民と同様、政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。

しかし、一方で政治献金が許されなかった例もあります。

政治資金の寄付が許されなかった例
【重要事案】南九州税理士会事件
➡これに対して、公的な団体であり、強制加入団体である税理士会については、多数決原理により政治献金を実施し、会員に協力を義務付けることはできないというのが判例です。


人権の制約



公共の福祉による制約


人権は「侵すことのできない永久の権利」(11条)とされていますが、制約を受けないわけではありません。公共の福祉による制約を受けます。(12条、13条)
人権には、他社の利益を守るための制約が内在しており、憲法12条、13条の「公共の福祉」は内在的制約の根拠であるというのが、多くの学者の考え方です。

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

公務員の人権制約



政治活動の自由の制約


今の法律では、公務員の政治活動の自由の制限は憲法に違反しないといっています。
判例では、行政の中立的運営とそれに対する国民の信頼の確保という正当な目的と合理的関連性があり、制限によって得られる利益と失われる利益との均衡がとれているからです。


労働基本権の制約


公務員の地位の特殊性と職務の公共性から、公務員の労働基本権を制限しないと、
国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼす恐れがあるとして、制限を認めています。

【重要事案】猿払事件/最大判昭49.11.6
➡公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的でやむをえない限度に
とどまるものか否かを判断するにあたっては、禁止の目的、この目的と禁止される
政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止する
ことにより失われる利益との折衝の3点から検討することが必要である。


刑事施設収容者(在監者)の人権制約



判例では刑事施設内の規律や秩序を維持し、逃亡を防止する為、
刑事施設収容者(在監者)の人権を制限することが認められています。
例えば、判例では、喫煙を禁止したり、読むのを自由に一定の制限を加えたりしても、憲法には違反しないといっています。

【重要判例】禁煙処分事件
➡禁煙の自由はあらゆる時、所において保障されなければならないものではない。未決拘留者の喫煙を禁止する規定は、憲法13条に違反しない。

【重要事案】よど号事件新聞記事抹消事件/最大判昭58.6.22
➡未決拘留により監獄に拘禁されているものの新聞紙、図書等の閲読の自由についても、逃亡及び罪証隠滅防止という交流の目的の為のほか、監獄内の規律および秩序の維持の為に必要とされる場合にも、一定の制限を加えられることはやむをえない


次は一般的基本人権と参政権・受益権について紹介しています。
➡【リンク】4. 一般的基本人権と参政権・受益権

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