2019年11月9日土曜日

【行政書士試験・民法】19. 家族法(相続について)・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント!相続についてわかりやすく説明





今回は、行政書士試験の民法の分野「家族法(相続)」について説明します。



相続




相続って何?


相続とは、人の権利や義務を、その者の死後、特定の者に受け継がせる(承継:しょうけい)ことをいいます。

自然人が死亡したり、失踪宣言によって死亡が擬制させたりすると、その人(被相続人)の住所で相続が開始します。

民法882条 
相続は、死亡によって開始する。

民法883条 
相続は、被相続人の住所において開始する。


相続人は、相続開始の時から非相続人の財産条の権利義務を全て継承します。例えば、占有権も、相続によって相続人に引き継がれます。

しかし、被相続人だけが持つことのできる一身専属権は別です。

民法896条 
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


例えば、身元保証人たる地位は一身専属権であり、被相続人が身元保証人になっていても、相続人がその地位を引き継ぐわけではありません。ただし、相続開始前に発生していた具体的な損害賠償義務などは、相続の対象となります。

また、生命保険は、受取人を被相続人とするものを除いて、遺産には含まれません。判例では、受取人として指定された者の固有財産であるといっています。
最判昭40.2.2


相続人


1. 配偶者


相続人となるのは、まず、被相続人の配偶者(夫または妻)です。

民法890条 
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。


配偶者は、常に相続人となります。ただし、配偶者は、法律上の婚姻関係にあるものに限られ内縁関係の者や婚姻を解消した者は含まれません。


2. 子



被相続人に子があれば、その子も相続人になります。被相続人の子も、第1順位の相続人です。

民法887条 
1項 
被相続人の子は、相続人となる。 


子には、嫡出子だけでなく、非嫡出子も含まれます。養子も養子縁組の日から嫡出子たる身分を取得していますから、当然含まれます。


3. 孫




子は、第1順位の相続人であるといっても、相続開始に生きていないと、相続することはできません。子が、先に、または、同時に死亡していた場合には、代襲相続(だいしゅうそうぞく)が行われ、相続人の孫が子に代わって相続人になります。

民法887条  
2項  
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。 


被相続人の子が排除や欠格事由によって相続権を失った場合も、代襲相続が行われます。しかし、相続の放棄は、代襲原因ではありません。

養子も、子として代襲相続ができますが、養子の連れ子はできません。代襲相続ができるのは、被相続人の直系卑属に限定されているからです。


4. ひ孫


被相続人の子だけでなく、孫も、先に死亡していたりすると、その子(ひ孫)が代襲相続します。(再代襲相続)


5. 直系卑属


被相続人の子が相続せず、代襲相続も行われなかった場合は、直系卑属が、第2順位の相続人として、配偶者と共に相続します。

民法889条 
1項 
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。 
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。


6. 兄弟姉妹


直系卑属がいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が、第3順位の相続人として、配偶者と共に相続します。

民法889条 
1項 
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。 
二  被相続人の兄弟姉妹


そして、兄弟姉妹が既に死亡していたり、欠格事由に該当したり、排除されていたりすると、兄弟姉妹の子が代襲相続します。

民法889条 
1項 
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。 
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。 
二  被相続人の兄弟姉妹 
2項 
第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
ただし、兄弟姉妹の孫が再代襲相続することは認められていません。



共同相続


1. 共同相続人の共有


相続人が複数いる場合、遺産は共有となります。

民法898条 
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。


遺産は、共同相続人にその相続文に応じて分配されますが(遺産分割)分配が終了するまでは、共同相続人の共有となり、各共同相続人は、その相続分に応じて、相続人の権利義務を承継します。

民法899条 
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。


2. 相続分


被相続人が遺言で相続分を指定したり、相続人の間の 遺産分割協議により相続文を定めることができますが、それらがなされなかったり、できなかった場合には、次のようになります。

民法902条 
1項 
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。 
2項 
被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。


民法900条 
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。  
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。 
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。 
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。 
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。



まず、配偶者と子が相続する場合には、配偶者の相続分が2分の1で、残りを子が均等に分けます。ただし、非嫡出子の相続分は、嫡出子の2分の1しかありません。

配偶者と直系卑属が相続する場合には、配偶者の相続分が3分の2で、残りが直系尊属の相続分です。そして、配偶者と兄弟姉妹が相続する場合には、配偶者の相続分が4分の3で、残りが兄弟姉妹の相続分です。


3. 特別受益者


共同相続人のうち、被相続人から遺贈や生前贈与を受けたものを特別受益者といいます。相続分は、特別受益を加えた額を相続財産として算出させます。特別受益者の相続分から特別受益を引いた額がゼロまたはマイナスになる場合には、特別受益者は相続分を受けることができません。

民法903条 
1項 
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。 
2項 
遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。 
3項 
被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。



相続の承認と放棄


1. 選択の自由


相続財産には、借金などのマイナス財産もあり、また相続を良くないと考える場合もあるため、相続の承認と放棄を認め、相続の効果を確定させるかどうかを相続人の意思に任せています。ただし、相続の承認・放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内にしなければなりません。

民法915条 
1項 
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 
2項 
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

2. 相続の放棄


相続を放棄すると、最初から相続しなかったことになります。

民法939条 
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続の放棄は、相続資格を遡及的に失わせるため、代襲原因となりません。


3. 単純承認と限定承認


単純承認をすると、相続人は、被相続人の権利義務を無限に承継することになります。

民法920条 
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。


これに対して、限定承認すると、祖王族人は、相続財産の限度で債務や遺贈を弁済すればよいことになります。

民法922条 
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。


共同相続人が限定承認するには、全員が共同して行わなければなりません。

民法923条 
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。


そのため、共同相続人の1人が単純承認すると、ほかの共同相続人は、限定承認をすることが出来なくなります。しかし、共同相続人の1人が相続の放棄をした場合には、その共同相続人は、最初から相続人でなかったことになりますから、残りの共同相続人全員が共同して限定承認をすることが出来ます。


4. 法定単純承認


自己のために相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内に、限定承認または放棄をしないと、相続人は、単純承認をしたものとみなされます。そして、相続人が相続財産の全部または一部を処分した時も、相続人は、原則として単純承認をしたものとみなされます。また、相続人が、限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠匿し、私的に消費し、または悪意で相続財産の目録に記載しなかったときも、単純承認をしたとみなされるのが原則です。

民法921条 
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 
一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。 
二  相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。 
三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。


遺産分割


1. 遺産分割の方法


遺産分割とは、共同相続人の共有になっている遺産を分割して、各相続人の財産にすることです。被相続人は、遺言で遺産分割の方法を定めることが出来ます。また、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁止することができます。

民法908条 
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。


このような遺言がなければ、共同相続人は、いつでも協議で遺産分割を行うことができます。また、特定の遺産を特定の相続人に相続させるという分割指定方式の遺言があっても、遺言執行者がいない限り、共同相続人全員の合意によって、その指定と異なる分割ができます。そして、共同相続人の間で、協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所に分割を請求できます。

民法907条 
1項 
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。 
2項 
遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。 
3項 
前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

2. 遺産分割の効果


遺産分割には遡及効があり。相続開始時に遡って効力を生じます。ただし、登記などの権利保護要件を備えた第三者は保護されます。

民法909条 
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


➡【リンク】20. 家族法(遺言について)

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