2. 行政組織
今回は、行政法の分野の行政組織について紹介したいと思います。
行政主体とは
行政を行う権利と義務を持ち、自己の名と責任で行政を行う団体を、行政主体といいます。
行政主体の代表例は、国と地方公共団体です。行政の権限を有し、自己の名と責任で行政を行う法人です。
国や地方公共団体の他にも、行政に属する特定の事業を実施するために特殊法人、営造物法人、公共組合、独立行政法人等があります。独立行政法人とは、国や地方公共団体が実施してきた行政のうち、試験研究、研修、検査検定などの実務事務や国公立大学などを国や地方公共団体から切り離して独立して行わせるために設立される法人のことをいいます。
行政機関
行政は、国や地方公共団体などの法人である行政主体がその名と責任で行います。そして、行政主体の手足となって現実にその職務を行うために設置される機関を行政機関といいます。例えば、各省の大臣や都道府県知事、市町村長などはいずれも行政機関ということになります。行政機関がその権限内で行った行為の効果は、行政主体に帰属します。
行政機関が行政主体のために行為できる職権の範囲を権限といい、組織法によって明記されています。
1. 行政庁
行政主体の法律上の意思を決定し外部に表示する権限を持つ機関を行政庁といいます。具体的には、国民に対して、行政処分を発したり、義務を決定したりする機関です。各省の大臣、知事、市長だけでなく、税務署長、保健所長などもこれに当たります。
2. 補助機関
行政庁の職務を補助するために、日常的な事務を遂行する機関を補助機関といいます。事務次官、局長、課長をはじめ一般職員はみな補助機関です。
3. 諮問機関
行政庁から諮問を受けて意見を具申する機関をいいます。各種の審議会がこの例に当たります。審議会の答申は当然、最大限に尊重されるべきですが、行政庁が法的に拘束されることはありません。
4. 参与機関
行政庁の意思を拘束する議決を行う行政機関。
5. 監査機関
行政機関の事務や会計の処理を検査する機関です。
6. 執行機関
行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関です。例えば、警察官、消防職員、収税官などがこれに当たります。
行政庁
行政庁は、組織法上、明確に限界づけられた範囲内で行政主体の意思を決定し、教示する意思を持ちます。
1. 独任制・合議制
行政法は、独任制が原則です。行政の機敏性を確保して行政需要に素早く対応し行政責任の所在を明確にするのに適切なためです。
政治的に中立公平な行政を運営する必要のある領域や専門技術的知見に基づく行政分野においては、独立して各界の識者・利害関係の代表者等を集めて合議制の行政庁が設置されます。公正取引委員会などが例です。
2. 権限の委任・代理・代決
行政庁は、法令に定められた権限を自ら行使するのが原則ですが、例外として他の期間にその権限を行わせることがあります。
①権限の委任
権限の委任とは、自己に与えられた権限の一部を他の機関に委任して行わせることをいいます。委任は、法令に定められた権限の一部を他に移動させる行為なので、法律の根拠が必要です。
権限が委任されると、委任した行政庁はその権限を失い、委任を受けた期間が自己の名と責任でその権限を行使することになります。
②権限の代理
権限の代理には、授権代理と法定代理があります。
・授権代理とは
授権代理とは、本来の行政庁が他の機関に対しその権限の一部を代理公使する権限を与えられるものです。代理機関は、あくまで代理権限の範囲内で、代理であることを明示してその効果は本来の行政庁に帰属します。本来の行政庁の権限は、代理制度に移動するわけではありません。この点が権限の委任との大きな違いです。ゆえに、権限の代理には法律の根拠は必要ではないと解されています。
・法定代理とは
法定代理とは、法律の定めに従い、他の行政機関が本来の行政庁の権限の全てを代行することをいいます。行政庁が欠けた時、または自己にあったときのために定められています。
③代決
行政庁が、規程などに基づいてその補助機関に事務処理についての決定を委ねますが、外部に対する関係では本来の行政庁の名で表示することです。
国の行政の仕組み
内閣と内閣府
内閣とは、内閣総理大臣と国務大臣から組織される合議機関をいいます。内閣は行政権本来の主体として、政策の決定や行政各部の総合的な調整を行います。
内閣には、内閣府が置かれています。内閣府は、政府全体の見地から関係行政機関の連携の確保を図るとともに、内閣総理大臣が政府全体の見地から管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行を図ることを仕事としています。
省、委員会および庁
内閣は省・委員会および省を置き、それぞれの行政事務を分担管理させる方式をとっています。これら国の行政機関の組織は、国家行政組織法で定められています。省は、内閣の統括者とに行政事務をつかさどる機関として置かれるものです。委員会および庁は、省に外局として置かれるものです。
内閣のもとに置かれた復興庁や、環境省の外局として置かれた原子力規制委員会、その事務局として置かれた原子力規制庁があります。
各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理します。各省大臣は、国務大臣の中から、内閣総理大臣がこれを命じます。ちなみに、内閣総理大臣が自らこれに当たることを妨げません。呼び名としては、委員会の長は、委員長であり、庁の長は、長官とします。
次は、行政法の行政行為について紹介しています。
→【リンク】3. 行政立法
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