今回は、行政書士試験の民法の分野「家族法」について説明します。
遺贈と遺留分
遺贈
1. 遺贈とは何か?
遺贈とは、遺言によって資産の全部または一部を贈与することをいいます。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。
包括遺贈とは、遺言で遺産の全部または一定の割合を贈与することです。
特定遺贈とは、遺言で特定の遺産を贈与することです。
2. 遺贈の効力
遺贈は、遺言の効力が発生する遺言者(遺贈者)の死亡時に、効力を発生します。受遺者は、以蔵者の死亡時に生存していなければならず、それ以前に、受遺者が死亡した場合には、遺贈は無効となります。
民法994条
1項
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2項
停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
3. 遺贈の放棄
特定遺贈については、受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄することができます。そして、その放棄の効力は、遺言者の死亡時に遡及します。
民法986条
1項
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2項
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
これに対して、包括遺贈の受遺者は、自己のために包括遺贈が効力を生じたことを知った時から3ヶ月以内に、遺贈の承認・放棄をしなければなりません。
民法990条
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
民法915条
1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2項
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
なお、遺贈を履行する義務のある者などの利害関係人は、受遺者に対して、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承諾または放棄をするように催告することができ、その期間内に返答がなければ、遺贈を承認したとみなされます。
民法987条
遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。
遺留分
1. 遺留分とは何か
遺留分とは、一定の相続人にどうしても残してやらなければならない 相続財産の割合のことです。兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。直系尊属だけが相続人の場合には、相続財産の3分の1が、そのほかの場合は、相続財産の2分の1が遺留分となります。
2. 遺留分の放棄
遺留分は、放棄できます。ただし、被相続人による遺留分放棄の強要を防止するため、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。また、共同相続人の1人が遺留分を放棄しても、ほかの共同相続人の遺留分に影響を及ぼすわけではありません。
民法1043条
1項
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2項
共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
相続人たる地位を失うわけではありません。
3. 遺留分滅殺請求
遺贈・贈与によって、遺留分が侵害される場合には、遺留分権利者は、滅殺請求をすることができます。
民法1031条
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
滅殺は、まず遺贈について行い、その後、贈与について行わなければなりません。
民法1033条
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。
遺留分滅殺請求権は、相続の開始および滅殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅してしまいます。相続開始時から10年を経過した場合も同じです。
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