2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】4. 株式会社の設立

4. 株式会社の設立

最終更新日:2020年1月9日


今回は商法・会社法の分野「株式会社の設立」について勉強していきましょう。


株式会社とは何か?


株式会社の社員


1. 株式制度


株式会社は、出資者である社員(構成員)が株式を持つ会社です。株式会社の社員(構成員)は、株式の所有者である株主です。

株式会社は、社員たる地位を株式という単位に均一に細分化しています。そのため、少数の資金しかない人も、株式会社に投資して、その社員となることができます。


2. 間接有限責任


株主は、会社に対して一定の出資義務を負うだけで、会社債権者に対しては責任を負いません。

会社法104条 
株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。



株主は、間接有限責任しか負わないのです。そのため、株式会社には安心して投資し、社員となることができます。



所有と経営の分離


株式会社も、他の会社と同様に、出資者である株主が会社の所有者となり企業の運営を支配するとともに、企業活動によって生じた利益を取得します。

しかし、他の会社とは異なり、株式会社は、株主が自ら経営に当たるわけではありません。株式会社では、株主が業務執行者を選任し、業務執行者が事業経営の意思を決定し、それを執行するのが原則です。出資者であり、所有者である株主と業務執行者を分けることで、経営権を一部の経営者に集中させるのです。



発起設立と募集設立


株式会社の設立方法


株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立の2つの方法があります。


1. 発起設立とは?


発起設立とは、設立に際して発行する株式(設立時発行株式)の全てを発起人が引き受けるという方法です。


2. 募集設立とは?


募集設立とは、設置時の発行株式の一部だけを発起人が引き受け、残りについては、株式引受人を募集するという設立方法です。


発起人


発起設立にせよ、募集設立にせよ、株式会社を設立するためには、発起人が必要となります。株式会社では、発起人が株式会社の設立手続を進めて、出資者は、設立の過程で発起人との契約により、徐々に参加してくれるという形がとられています。

発起人というのは、定款に発起人として署名した人のことです。発起人は、1人でも構いません。また、資格に剥奪はなく、行為能力のない人や法人も発起人になることができます。


擬似発起人


擬似発起人というのは、発起人として定款に署名はしていないが、株式募集に関する文章に設立を賛同する旨を記載することを承諾した人のことです、擬似発起人は発起人と同様の責任を負います。



株式会社の設立


定款の作成


1. 発起人の署名と交渉人の認証


株式会社の設立も、定款を作成することが始めの一歩となります。発起人は、定款を作成し、発起人全員の署名または記名押印をしなければなりません。定款はパソコン等(電磁的記録)で作成することもできます。

会社法26条 
1項 
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。 
2項 
前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

完成した定款は、公証人の認証を受ける必要があります。公証人の認証を受けないと、定款は、効力を生じません。

会社法30条 
1項 
第26条第1項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。 
2項 
前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第33条第7項若しくは第9項又は第37条第1項若しくは第2項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

定款の内容を明確にして、後日の紛争や不正行為を防止するためです。


2. 絶対的記載事項


定款には、必ず記載しなければならない絶対的記載事項があります。

絶対的記載事項とされるのは、次の内容です。

①目的
②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価値又はその最低額
⑤発起人の氏名又は名称および住所

会社法27条

絶対的記載事項を記載しないと、その定款は無効になります。


3. 変態設立事項


変態設立事項というのは、設立手続における危険な約束であり、次の項目がこれに該当します。

①現物出資
・・金銭以外の財産での出資のこと。目的物の過大評価によって会社の財産的基礎を危うくする恐れがあるので、変態設立事項とされている。

②財産引受け
・・発起人が会社のために会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約です。目的物の過大評価によって会社の財産的基礎を危うくする恐れがあるので、変態設立事項とされています。議決の対等となる財産、その価格、譲渡人の氏名を定款に記載しなければなりません。

③発起人の報酬と特別利益
④設立費用

変態設立行為は、定款に記載しないと、効力を生じません。

会社法28条 
1項 
株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第26条第1項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。 
一  金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第33条第1項第一号において同じ。) 
二  株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称 
三  株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称 
四  株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)


社員(株主)の確定


1. 株式の引受け


定款を作成したら、次は、株式会社の社員(構成員)になるものを確定します。株式会社では、社員たる地位が株式という単位になっており、株式の所有者である株主が社員です。そのため、株式会社においては、株式の引受けという形で、社員を確定します。

各発起人は、株式会社設立に際して、設立時発行株式を1株以上引き受けなれけばなりません。

会社法25条 
2項 
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。


発起人は、必ず株式を引き受け、株主になるというわけです。



2. 発起設立の社員


発起設立の場合には、発起人が設立時発行株式を全て引き受けます。そのため、発起設立の場合は、株式会社の社員になるのは発起人だけです。

3. 募集設立の社員


募集設立の場合は、設立時発行株式の一部を発起人が引受け、残りについては、発起人が株主を募集します。

会社法57条 
1項 
発起人は、この款の定めるところにより、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができる。 
2項 
発起人は、前項の募集をする旨を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

会社法58条

募集設立の場合には、発起人と募集株式の引受人が、株式会社の社員になるのです。


会社財産の形成


1. 全額振り込み・全部給付


社員である株主が間接有限責任しか負わない株式会社では、債権者の引当となる財産的基礎は会社財産だけです。そのため、会社財産の形成はとても重要なことです。

そこで、発起人は、設立時発行株式の引受け後に、遅滞なく、引受けた株式について発行価額の全額の払込みをしなければなりません。そして、現物出資をする場合には、その全部の給付をしなければなりません。

会社法34条 
1項 
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。


また、募集設立における募集株式の引受人は、会社成立の際に株主になります。

会社法50条 
1項 
発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となる。


会社法102条
2項


2. 出資の未履行と失権


出資を履行していない発起人がいる場合、発起人は、その発起人に対して、期日を定め、出資の履行を催告しなければなりません。催告した期日までに発起人が出資を履行しない場合には、その発起人は株主となる権利を失います。

会社法36条 
1項 
発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければならない。 
2項 
前項の規定による通知は、同項に規定する期日の二週間前までにしなければならない。 
3項 
第1項の規定による通知を受けた発起人は、同項に規定する期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失う。


これに対して、募集株式の引受人が所定の期日までに払込みをしない場合には、直ちに株主となる権利を失います。

会社法63条3項

募集株式の引受人が払込みをせず、失権した場合、設立に関して出資される財産の価値またはその最低額を満たしていれば、そのまま設立手続を続行することができます。しかしそうでない場合は引受人を追加募集します。



機関の選任


1. 発起設立における機関の選任


発起設立の場合、発起人は、出資の履行が完了した後は遅滞なく、設立時取締役など、それぞれの会社の機関に応じた役員を選任しなければなりません。

会社法38条 
1項 
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。 
2項 
次の各号に掲げる場合には、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、当該各号に定める者を選任しなければならない。 
 一 
設立しようとする株式会社が会計参与設置会社である場合 設立時会計参与(株式会社の設立に際して会計参与となる者をいう。以下同じ。) 
 二 
設立しようとする株式会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 設立時監査役(株式会社の設立に際して監査役となる者をいう。以下同じ。) 
 三 
設立しようとする株式会社が会計監査人設置会社である場合 設立時会計監査人(株式会社の設立に際して会計監査人となる者をいう。以下同じ。) 
3項 
定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。



発起人は、1株につき1票の議決権を持ち、その議決権の過半数で設立時取締役などを選任します。

会社法40条 
1項 
設立時役員等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する。 
2項 
前項の場合には、発起人は、出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。 
3項 
前項の規定にかかわらず、設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、取締役の全部又は一部の選任について議決権を行使することができないものと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは、当該種類の設立時発行株式については、発起人は、当該取締役となる設立時取締役の選任についての議決権を行使することができない。 
4項 
前項の規定は、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人の選任について準用する。

2. 募集設立における機関の選任


これに対して、募集設立の場合に、設立時取締役などの機関を選任するのは、創立総会(そうりつそうかい)です。創立総会は、設立時株主の総会であり、株式会社の設立に関する事項に限り、決議することができます。

会社法66条


3. 創立総会


創立総会とは、発起人が召集します。

会社法65条 
1項 
第57条第一項の募集をする場合には、発起人は、第58条第一項第三号の期日又は同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主(第50条第一項又は第102条第二項の規定により株式会社の株主となる者をいう。以下同じ。)の総会(以下「創立総会」という。)を招集しなければならない。 
2項 
発起人は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、いつでも、創立総会を招集することができる


創立総会の決議には、議決権を行使できる設立時株主が持っている議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる人数が必要です。

会社法73条
1項

創立総会においても、議決権の代理行使、書面による議決権の行使、電磁的方法による議決権の行使が認められています。

会社法74条

会社法75条

会社法76条



創立総会は、その決議によって定款を変更することもできます。

会社法96条 
第30条第2項の規定にかかわらず、創立総会においては、その決議によって、定款の変更をすることができる。


創立総会で、変態設立事項に関する定数の変更を決議した場合、それに反対した設立時株主は、決議後2週間に限り、設立時発行株式の引き受けについての意思表示を取り消すことができます。

会社法97条 
創立総会において、第28条各号に掲げる事項を変更する定款の変更の決議をした場合には、当該創立総会においてその変更に反対した設立時株主は、当該決議後二週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。


設立の登記


以上のような過程を経て、社団が完成すると、次は法人格の取得です。本店の所在地で設立の登記をすると、法人格を取得し、株式会社が成立します。

会社法49条 
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。


これによって、発起人に形式的に帰属していた権利義務は、会社に帰属することになります。


発起人等の責任


発起人・設立時取締役・設立時監査役は、設立について任務懈怠があれば、会社に対して損害賠償責任を負います。

会社法53条 
1項 
発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


この責任は、総株主の同意がなければ、免除することはできません。

会社法55条 
第52条第1項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び第53条第1項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。



会社の不成立



会社の設立が途中で挫折し、設立の登記に至らなかった場合、会社は成立しません。株式会社が成立しなかった場合は、発起人が連帯して、会社の設立に関した行為について責任を負い、設立に関して支出した費用を負担します。

会社法56条 
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。


発起人だけが連帯責任を負い、発起人以外の株式引受人には、一切負担をかけないのです。


次は、株式制度について紹介しています。
➡【リンク】株式制度



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