2019年11月25日月曜日

【行政書士試験・行政法】10. 国家賠償法って何?公務員の不法行為の損害を受けた国民を救済する法

10. 国家賠償法




今回は行政法の分野「国家賠償法」について勉強していきましょう。

国家賠償法とは?


公務員の不法行為によって国民が損害を受けた場合に、国や地方公共団体がその損害をお金で補填することで権利利益の侵害を受けた国民を救済する法のことです。

国家賠償法は、救済3法と呼ばれる法律のグループの1つです。


他の救済3法について、以前のページでも学びましたが、もう一度おさらいです。


①行政不服審査法
行政活動に不服がある場合に、行政機関に対して処理を求めることに関する法律。

②行政事件訴訟法
行政活動に関する不満について、裁判所に訴えることに関する法律



行政事件訴訟法の取消訴訟とは、求める判決が処分の取り消しなのかお金による賠償なのかというように救済目的が違うので、取消訴訟の出訴期間が経過して取消訴訟を提起できなくなった後でも、国家賠償請求訴訟を提起することができるとした判例があります。


国家賠償法の責任


国家賠償法は全部で6条しかありません。

国家賠償法は

①国または地方公共団体の公権力の行使にあたる公務員が
②職務を行うについて
③故意または過失によって、
④違法に他人に損害を与えたとき


「公権力の行使」の意味


判例では、「公権力の行使」という言葉の意味について、裁判官の裁判過程における行為、国会議員の立法過程における行為、公立学校における教員の教育活動や公共施設の管理が「公権力の行使」にあたると判断しています。


「職務を行う」についての解釈


「職務を行う」についてはかなり緩やかに解釈されており、客観的にみて職務執行の外形を整える行為であればよいとされている。この考え方を外形主義という。

例えば、非番の警察官でも、制服を着用して行った行為であれば「職務を行う」に該当する。


公務員の過失


公務員の過失は、公務員が職務上要求される標準的な注意義務に違反していると認められる場合には過失を認定する。


違法行為


違法行為には、作為だけでなく不作為も含まれる。


不法行為を行なった公務員も、損害賠償責任を負うのか?


代位責任について


民法の使用者責任では、不法行為者自身も責任を負うことが前提でしたが、国家賠償法1条に基づく国や地方公共団体の責任は公務員の責任を肩代わりするもので(これを代位責任という)、不法行為を行なった公務員自身は、被害者に対して、直接責任を負うものではないとした判例があります。



国または地方公共団体の道路、河川その他の公の営造物の管理の瑕疵


国または地方公共団体は、道路、河川その他の公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために、他人に損害を生じたときは、国または地方公共団体が賠償する責任を負うと定めています。

国家賠償法2条 
1項 
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。


ここでいう「公の営造物」とは、国や地方公共団体が所有または管理する有体物で、公のように供されているもののことを意味します。これには不動産だけでなく、動産(車や道具等)も含まれるとしています。

また、道路などの人工公物だけでなく、河川などの自然公物なども、国や地方公共団体が管理しているかぎり、「公の営造物」に含まれます。


公務員に対する求償権


公務員の不法行為や「公の営造物」の設置または管理に瑕疵があって、国民が被害を受けた場合は、国などが損害賠償責任を負うこととされています。

不法行為を行なった公務員に故意または重大な過失があったとき、また、損害の原因にほかに責任を負うものがあるときは、国または地方公共団体は、そのものに対して求償権を行使することができると定めています。

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