2019年11月9日土曜日

【行政書士試験・民法】20. 家族法(遺言について)・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント!遺言についてわかりやすく説明

最終更新日:2020年1月5日


今回は、行政書士試験の民法の分野「家族法(遺言)」について説明します。




遺言




遺言とは何か


遺言とは、人の最終意識の表示であり、遺言者の死後の法律関係を定めるものです。遺言ができるのは、民法その他の法律が認めた事項だけです。


遺言能力


遺言は、一定の法律効果の発生を目的とする意思表示であるので、これを行うには、当然、意思能力が必要です。しかし、通常の取引行為ではないから、制限行為能力者の法律行為に関する規定は適用されません。

満15歳に達したものには、遺言能力があるとされ、15歳以上の者は、意思能力のある限り、遺言をすることができます。ただし、遺言能力は、遺言時になければなりません。

民法961条 
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

民法962条 
第5条、第9条、第13条 及び第17条 の規定は、遺言については、適用しない。

民法963条 
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。


そのため、成年被後見人が遺言をすることができるのは、15歳以上であり、かつ、
物事の判断能力が一時回復したときです。

民法973条 
1項 
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時においてw:遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。 
2項 
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。


遺言の方式


1. 要式行為


遺言は、人の最終意思の表示ですから、その内容を確定する要請が大きく、民法の定める方式で行わなければなりません。その方式に従わなければ、無効となります(要式行為)。

民法960条 
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。


民法は、遺言の普通の方式として、次の方式を定めています。


①自筆証書遺言

②公正証書遺言

③秘密証書遺言


2. 自筆証書遺言


自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を自筆し押印しなければなりません。

しかし、例外的に自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付するときは,その目録については自書しなくてもよいことになります。自書によらない財産目録を添付する場合には、遺言者は,その財産目録の各頁に署名押印をしなければならないこととされています。

目録の形式については,署名押印のほかには特段の定めはありません。したがって,書式は自由で、遺言者本人がパソコン等で作成してもよいですし、遺言者以外の人が作成することもできます。


民法968条 
1項 
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 
2項 
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。


ただし、判例では他人が補助(添手:そえて)した場合も、他人の支えを借りただけで、他人の意思が介入した形跡のない場合には、自書の要件を満たしているといっています。

しかし、暦条の特定の日を表示しないものは無効です。

遺言の日付について、判例では、「×年△月吉日」と記載した場合は無効であるといいます。


3. 公正証書遺言


公正証書遺言は、証人2名以上の立ち会いの下で、公証人が遺言者から直接口頭で遺言の趣旨を聞いて作成します。

民法969条 
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。 
一 証人二人以上の立会いがあること。 
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。 
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。 
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。 
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと

4. 秘密証書遺言


秘密証書遺言は、公証人と証人が必要です。遺言者は、封印した証書を公証人1名と証人2名以上の前に提出し、自分の住所・氏名および自分の遺言書であることを申述しなければなりません。

民法970条 
1項 
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。 
一  遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。 
二  遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。 
三  遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。 
四  公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。 
2項 
第968条第二項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

5. 特別の方式の遺言


普通の方式に従うことができない特別の事情がある場合もあります。そこで、民法では、死亡の危急に迫った者の遺言など、要件を緩和した特別の方式の遺言を認めています。

しかし、特別の方式の遺言は、特別の事情を考慮した例外的な措置であり、遺言者が、普通の方式の遺言をすることができるようになってから6ヶ月間生存していると、特別方式の遺言は効力を失います。

民法983条 
第976条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するときは、その効力を生じない。

6. 共同遺言の禁止


複数のものが、同一の証書で遺言をすることはできません。共同遺言は禁止されており、夫婦であっても、同一の証書で遺言をすることはできません。


遺言の効力と執行


1. 効力発生時期


遺言は遺言者の死亡時から効力を発生します。ただし、遺言に停止条件を付け、それが、相続開始後に成就した場合、 いごんは条件成就時から効力を生じます。

民法985条
1項
遺言は、 遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2項
遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

2. 検認


遺言書の保管者や発見者は、公正証書遺言を除いて、家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。

民法1004条 
1項 
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。 
2項 
前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。 
3項 
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

検認とは、遺言書の偽造・変造を防止するために、その形式・態様などを調査・確認するものであり、遺言内容の真否・有効無効を判定するものではありません。

3. 遺言執行者



遺言の内容を実現するために必要な行為を行うのは、遺言執行者です。遺言執行者は、遺言で、遺言者自ら指定したり、第三者に指定を委託したりすることができます。

民法1006条 
1項 
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。 
2項 
遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。 
3項 
遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

また、家庭裁判所が、利害関係人の請求に基づき、選任することもあります。

民法1010条 
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。



遺言の撤回


1. 遺言の撤回権


遺言者の死亡以前であれば、遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができます。

民法1022条 
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。


遺言の方式に従うといっても、遺言を行った時と同じ方式による必要はありません。公正証言で行った遺言を自筆証書で撤回することができます。


2. 抵触する複数の遺言


遺言が複数あり、前の遺言と後の遺言が抵触するという場合もあります。その場合には、前の遺言の抵触部分は後の遺言によって撤回されたとみなされます。

民法1023条 
1項 
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。 
2項 
前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

後の遺言を優先する形となります。


3. 撤回行為の撤回


遺言を撤回した後、その撤回行為を撤回しても、元の遺言は復活しないのが原則となります。

民法1025条 
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

撤回者の意思が明確がないからです。

次は、遺贈と遺留分について説明しています。
➡【リンク】21. 家族法(遺贈と遺留分について)

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