3. 持分会社
今回は、商法・会社法の分野「持分会社」を勉強していきましょう。
会社とは?
会社は、対外活動によって得た利益を構成員に分配すること(営利)を目的とした団体(社団)です。そして、会社は、法人とされ、権利義務の主体になれます。
会社法3条
会社は、法人とする。
持分会社とは何か?
持分会社は、出資者である社員(社団の構成員)が持分を持つ会社です。各社員が持分を一つずつ持ちます。そして、持分の大きさは、社員ごとに決められています。
持分会社は、会社の債務についての社員の責任のあり方によって、合名会社、合資会社、合同会社という3つの種類の会社に分類されます。
1. 合名会社ってなに?
合名会社は、出資義務に加えて
会社の財産で会社の債務を弁済できない場合に、連帯して直接債務を完済する責任を負う社員だけで作られる(この社員を直接無限責任社員といいます)会社です。直接無限責任社員には、金銭などの財産だけでなく、労務や信用による出資が認められています。
2. 合資会社とは?
合資会社とは、直接無限責任社員と出資義務に加えて、定款で定めた出資の価額からすでに利用した額を除いた額を限度として、会社の再建を弁済する責任を負う社員(直接有限責任社員という)から作られる会社です。
3. 合同会社とは?
合同会社は、入社時に出資義務を負うだけで、会社の債務を弁済する責任を負わない社員だけ(間接有限責任社員という)から作られるの持分会社です。
間接有限責任社員の出資は、直接有限責任社員と同じく、金銭などの財産に限定されています。
持分会社の社員
法人も持分会社の社員になれます。そして、合名会社や合同会社の社員は一人だけでも成立します。しかし、合資会社の社員は、少なくとも2人は必要です。合資会社には、無限責任社員と有限責任社員の両方が必要だからです。無限責任者社員だけになれば、合名会社になったとみなされます。有限責任社員だけになれば、合同会社になったとみなされます。
そして、社員が誰もいなくなると、持分会社は解散します。
会社法641条
持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第824条第1項又は第833条第2項の規定による解散を命ずる裁判
持分会社の設立と管理
持分会社の設立
1. 定款の作成
持分会社を設立するには、社員になろうとするものが定款を作成し、それに全員が記名押印をしなければなりません。
会社法575条
2. 設立登記
本店所在地で設立の登記をすると、法人格を取得し、持分会社は成立します。
3. 違法な設立
設立過程に違法な点があっても、設立が当然に無効になるわけではありません。
設立を無効にするには、会社の設立の日から2年以内に設立無効の訴えを提起しなければなりません。また、設立には参加した社員の意思表示による取り消し原因があった場合、その社員は、会社設立の日から2年以内に設立の取り消しの訴えを提起することができます。
設立無効の訴え、設立の取消しの訴えを認容する確定判決は、第三者にも効力が及びます。しかし、遡及効はなく、設立は将来に向かって効力を失います。
会社法839条
持分会社の管理
1. 定款自治
持分会社の内部関係(会社と社員の関係、社員と社員の関係)は原則として定款自治が認められています。定款で会社独自のルールを定めることができます。持分会社の定款を変更するには、原則として総社員の同意が必要です
会社法637条
2. 業務執行権
持分会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、各社員が業務を執行します。無限責任社員であろうと、有限責任社員であろうと、業務を執行することができます。出資者であり、会社の所有者である社員が、自ら経営に当たるのです。業務執行社員を定款で定めた場合、業務執行権のない社員にも、業務および財産状況の調査県が認められています。
会社法592条1項
3. 代表権
業務執行社員は、代表権を持つのが原則です。
会社法599条
業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
代表権のある社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上の裁判校以外の権限があります。この権限に制限を加えても、善意の第三者には対抗できません。
会社法599条5項
持分の譲渡と退社
持分の譲渡
持分会社の社員が持分を譲渡することは、他の社員全員の承諾が必要です。ただし、業務執行をしない有限責任社員については、業務執行をする社員全員の承諾があれば、持分を譲渡することができます。
会社法585条
1項
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2項
前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
持分を全て譲渡としても、それを投棄する前に発生した持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。
会社法586条
1項
持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
2項
前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
退社と持分の払い戻しについて
1. 退社
持分会社の社員は、所定の事由(定款に存続期間が定められていない)により、退社することができます。また、持分会社の社員は、やむを得ない事由があれば、いつでも退社することができます。
会社法606条
1項
持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
2項
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3項
前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
2. 退社に伴う持分の払い戻し
退社した社員は、出資の種類を問わず、持分の払い戻しを受けることができます。ただし、退社しても、それを登記する前に発生した持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。
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