2019年11月30日土曜日

【行政書士試験・商法・会社法】2. 商行為

2. 商行為




今回は商行為に関して説明していきます。配点自体は低い分野ですが、余力があればカバーしておきたい分野でもあります。頑張っていきましょう!


商行為とは何か?


基本的な商行為


自己の名をもって商行為をすること業とする者が商人です。
基本的商行為とされるのは、商法56条に列挙された行為と、502条に列挙された行為です。

商法56条 
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

商法502条 
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。 
一  賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為 
二  他人のためにする製造又は加工に関する行為 
三  電気又はガスの供給に関する行為 
四  運送に関する行為 
五  作業又は労務の請負 
六  出版、印刷又は撮影に関する行為 
七  客の来集を目的とする場屋における取引 
八  両替その他の銀行取引 
九  保険 
十  寄託の引受け 
十一  仲立ち又は取次ぎに関する行為 
十二  商行為の代理の引受け


絶対的商行為


商法501条に列挙された次の行為は、その性質から商行為となるもので、絶対的商行為と呼ばれています。安く仕入れて、高く売ることが例です。

商法501条 
次に掲げる行為は、商行為とする。 
一  利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 
二  他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 
三  取引所においてする取引 
四  w:手形その他の商業証券に関する行為

営業的商行為


商法で列挙された行為は、営業的商行為と呼ばれ、営業として行われて初めて商行為となります。電気やガスの供給・作業や労務の請負などがこれに該当します。


付属的商行為


商人が営業のためにする行為も、商行為とされています。これを附属的商行為といいます。営業のためにする行為にも、商法を適用するため、これを商行為としています。


双方的商行為と一方的商行為


当事者双方にとって商行為である行為を双方的商行為と言います。これに対して、当事者の一方にとってのみ商行為である行為を一方的商行為といいます。双方的商行為であれば、当然、双方に商法が適用されます。そして、一方的商行為についても、双方に商法が適用されます。


商行為の特則


商行為の代理


代理人が行う意思表示は本人のためにすること(代理意思)を示して行う必要があるというのが、民法の原則です。これを顕名主義と言います。
しかし、商行為の代理には顕名が要求されません。速さが求められ、相手が誰かよりも、内容が重んじられる商取引では、代理人が本人のためにすることを示さなくても、原則として代理行為の効果は本人に帰属するのです。


諾否の通知義務


民法では、申し込みを受けても、これに対して許否を通知する義務はありません。しかし、商人がふだん取引をする人からその営業の部類の契約の申し込みを受けた場合は、遅滞なく、諾否の通知を発しなければなりません。これを怠ると、申し込みを承諾したとみなされます。


物品の保管義務


商人がその営業の部類に属する契約の申し込みを受けるとともに、物品を受け取ったときは、その申し込みを拒絶した場合であっても、申込者の費用でその物品を保管しなければならないのが原則です。


多数当事者の債務の連帯


複数の債権者がいる場合、債権者は、それぞれ複数で分割した給付だけを行えばよいというのが、民放の原則です。これを分割債務の原則といいます。
複数の人が一人または全員にとって商行為に当たる行為によって債務を負った場合には、その債務は連帯債務です。そのため、債務者はそれぞれ独立して債権全額を弁済しなければなりません。


報酬請求権


民法では、他人のために行為をしても、無償が原則です。これに対して、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をした場合には、相当な報酬を請求することができます。


商人間の金銭消費貸借


お金の貸し借りなどの消費賃借契約は、民法では無利息が原則ですが、商人間で、金銭の消費賃借を行った場合、貸した人は借りた人に対して法定利息を請求できます。商人間の金銭消費賃借は、その営利性から、当然利息がつくとされています。


商事法定利率


利息について、民法の法定利率により、年3%(3分)とし、3年ごとに見直しを行う変動利率を採用しています。以前は、商法514条により、商行為によって発生した債務の法定利率は、年6分でしたが、こちらは削除されました。


商人間の留置権


商人間において双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にある場合、債権者は、債権の弁済を受けるまで、債権者が占有する債権者所有の物または有価証券を留置できます。
➡【リンク】5. 物権総論・・・物権の意味と全体像を勉強しましょう!


商事時効


債権は、10年間放置しておくと時効によって消滅するというのが、民法の原則でしたね。しかし、商行為によって発生した債権は、5年間行使しないと消滅時効にかかります。商取引は速さが求められるため、時効期間も短縮されています。


商人間の売買


商人間の売買とは何か?


商人間の売買とは、売主・買主がともに商人であって、その売買が、売主・買主のいずれかにとっても商行為に当たることをいいます。


受領拒絶・不能


個人間の売買において、買主が目的物の受領を拒んだ場合、または、受領できない場合には、売主は、その物を供託することができます。また、売主は相当の期間を定めて催告した後に競売に付すこともできます。損傷などにより価格の低落の恐れのある物については催告をしないで競売に付すことができます。ただし、供託または競売に付した場合には、遅滞なく、売主に通知しなけれなりません。


目的物の検査・通知義務


商人間の売買では、買主は、受領した目的物を遅滞なく検査しなければなりません
そして、検査によって瑕疵または数量不足を発見した場合には、売主が悪意でない限り、買主は直ちにそれを売主に通知しなければなりません。そうしないと、契約の解除・代金減額請求・損害賠償請求ができなくなります。ただし、瑕疵が直ちに発見できないものであれば、6ヶ月以内に発見し、直ちに通知すればよいとされています。


目的物の保管・供託義務


商人間の売買では、買主が目的物を受領した場合は、たとえ契約を解除したときであっても、売主の費用で目的物を保管または供託しなければなりません。
ただし、売主と買主の営業所が同一市町村の区域内にある場合は別で、営業所が同一市町村内にあれば、買主に保管する義務はありません。
商法527条1項


注文と異なる物品の保管・供託義務


注文した物品と異なる物品が引き渡された場合や、注文数よりも多くの物品が引き渡された場合も、同一市町村区域内に売主と買主の営業所がない限り、買主はたとえ、契約を解除したときであっても、売主の費用で目的物を保管または供託しなければなりません。


匿名組合



匿名組合とは何か?


匿名組合契約とは、匿名組合員が営業者の営業のために出資を行い、その営業から生じる利益を分配することを約束する契約のことです。

商法535条 
匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。


匿名組合員の出資


匿名組合の出資は、金銭その他の財産に限定されています。信用や労務での出資は許されません。匿名組合員の出資は、営業する人の財産に属するとされています。出資は、営業者のものになるのです。


業務の執行


業務を行うのは、営業者です。匿名組合員が、営業者の業務を執行したり、営業者を代表したりすることはできません。また、匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利および義務を持つことはありません。ただし、匿名組合員が自己の商号などを営業者の商号として使用することを許諾したときには、そのしよう以後に生じた債務について、営業車と連帯して弁済する責任を負います。


匿名組合契約の終了


匿名組合契約が終了すると、出資は、匿名組合員に返還されます。ただし、出資が損失によって減少した場合には、匿名組合員が損失を負担し、営業者は残額を返還すればよいことになっています。

商法542条 
匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りる。


運送営業




物品運送契約


荷送人の依頼により、運送人が物品を保管して運送することを引き受ける契約を物品運送契約といいます。運送人は、物品または旅客の運送を業とする者であり、荷送人は、物品運送の委託者です。荷送人は、運送人が請求した場合には、、運送品の種類、重量などを記載した運送状を交付しなければなりません。


貨物引換証


運送人は、荷送人が請求した場合には、運送賃などを記載した貨物引換証を交付しなければなりません。貨物引換証を作成すると、運送に関する事項は、そこに記載された通りの内容になります。そして貨物引換証の引き渡しは、運送品の上に行使する権利の取得について、運送品の引き渡しと同一の効力があります。また、貨物引換証と引き換えでないと、運送品の引渡しを請求できなくなります。


運送人の責任


1. 運送品の滅失


運送品の全部または一部が滅失した場合、その原因がその性質、瑕疵または送る人の過失であれば、運送人は、運送費を全額請求するとこができます。しかし、不可抗力によって滅失した場合には、運送人は、運送費を請求することができません。すでに受け取っている運送費は、返還しなければなりません。


2. 損害賠償責任


運送人は、自己または運送に使用した者が、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明しない限り、運送品の滅失、毀損または遅れて着くことについて損害賠償責任を負います。ただし、貨幣、有価証券などの高価品については、送る人が高価品の種類および価格を明示しなければ、損害賠償責任を負いません。


寄託




寄託とは何か?


寄託とはものを他人に預け、その処理を頼むことを意味します。

寄託を受けた商人の責任


商人がその営業の範囲内で寄託を受けた場合は、無報酬であっても、善良な管理者の注意で保管しなければなりません。


旅館、飲食店、浴場など(場屋)の主人の責任


1. 客の物品の滅失・毀損


旅館、飲食店、浴場など、客の来場を目的とする場屋の主人は、客から寄託を受けた物品が滅失または毀損した場合、それが不可抗力によることを証明しない限り、損害賠償責任を負います。客が寄託しないで携帯している物品であっても、場屋の主人またはその使用人の不注意によって滅失または毀損した場合には、場屋の主人は、損害賠償責任を負います。客の携帯品に付いては、責任を負わない旨を告示しても、場屋の主人が責任を免れることはできません。


2. 高価品の滅失・毀損


貨幣・有価証券などの高価品については、客がその種類および価格を明示して寄託しない限り、その滅失または毀損について、場屋の主人は損害賠償責任を負いません。


次は、商法・会社法の持分会社について説明しています。




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