5. 行政指導
最終更新日:2020年1月5日
今回は、行政書士試験の行政法の分野「行政指導」について勉強したいと思います。
行政指導とは?
行政指導とは禁止する法律・条例がなくても指導する対象に積極的に働きかけて、やめてもらうよう協力を依頼することをいいます。
例としては、
公園で鳩にエサをやる人に対してや、家の外の公道にゴミ等を山積する等などの迷惑行為が挙げられます。
行政活動は、権力的な行為だけで成り立っているわけではありません。毎日さまざまな新しい事態が発生し、法律による適切な制度がないからといって手をこまねいているわけにはいきません。そのため、行政指導が必要となります。
行政指導の意味
行政指導とは、行政機関がその行政目的を実現するため、指導、勧告、助言といった非権力的な手段で国民に働きかけて、協力を求め、目的を達成しようとする活動です。行政指導の内容は多種多様です。
例えば、
消費者を守るために広告のあり方などをめぐる規制的行政指導。
農作物を米から野菜等に転換しようという農家に対して技術的もしくは農業経営的な助言をするような助成的行政指導。私人間の紛争の解決のための手法として用いられるもので、マンション建築の建築主と付近住民の建築紛争の調整など調整的行政指導。この調整的行政指導は、建築主に対しては規制的行政指導という側面を持つ場合もあります。
行政指導の問題点
法律の根拠がない部分を埋めて柔軟な工夫で対応するのが、行政指導です。すなわち、法律の根拠なく、臨機応変に柔軟な対応が可能である点が行政指導の一番のメリットであるといえます。しかし、その反面では、法律の根拠が不要であるため手続きが不透明になり、恣意的な指導がされる危険性もあります。あくまで任意的なものであるといいながら、行政指導を受ける人の側からすると、半ば強制的になってしまうような事態もすくなからずあるわけです。
そこで、行政手続法によって行政指導についてのルールがあります。
行政手続法の規定
行政手続法 32条
1項
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
①行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
②行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
とされております。これはあくまで任意であり、従わざるを得ないような状況においこんではいけません。
行政手続法33条
申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
建築紛争などに対処するため、行政側が行政指導をした内容を事業主が聞き入れるまで、行政指導をしていることを理由に建築確認処分を留保し続けることは許されません。
行政手続法34条
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。
別の許認可に関わることをチラつかせることで国民が従わざるを得ない状況にしてはいけません。
行政手続法 35条
1項
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2項
行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
3項
前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
二 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの
行政指導の存在、内容及び責任の所在を明確にさせるための趣旨です。
行政手続法36条
行政指導の明確性に資するのみならず、一定の条件に該当する複数のものに対し、公平に行政指導がなされることを担保しています。また、行政指導方針が公表されることにより、行政指導の相手方以外の第三者も、当該指針を知りうることとなるので、第三者との関係でも、行政指導の透明性を確保することになります。
行政指導の限界
1. 法律優位の原則からの限界
行政指導は事実行為ではありますが、公行政の一つの手段として用いられている以上、法律優位の原則の運用を受けます。したがって、法令の趣旨に反する行政指導は違法となります。
2. 法の一般原理からの限界
行政指導も、行政活動ですので、法の一般原理の運用があります。したがって、平等原則や比例原則、禁反言、信頼保護の原則に反する場合には、その行政指導は違法となります。
行政指導に対する救済措置
1. 取消訴訟
行政指導は、取消訴訟で争うことができないとされています。行政指導は、取消訴訟の要件である「処分」に当たらないからです。
2. 国家賠償請求
行政指導であっても「公権力の行使」には当たるので、国家賠償請求を行うことは可能です。
次は、行政法の行政手続法について紹介しています。
➡️【リンク】6. 行政手続法
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