2019年9月15日日曜日

5. 物権総論・・・物権の意味と全体像を勉強しましょう!

5. 物権総論


民法のアイコン


どうもTakaです。今回は民法の物権について全体像から説明していきたいと思います。





物権


物権とは何か?


物権とは、人のものに対する権利です。物を直接かつ排他的に支配して利益を得る権利が、物権です。例として、所有権が挙げられます。


物権の特徴


1. 物権法定主義


物権の種類や内容は、法律で定めた者に限定されます。当事者の合意によって、新しい物権を創設したり、物件に新しい内容を与えたりすることはできません。これを物権法定主義といいます。


2. 物権の絶対性


物権はすべての人に対して主張できる絶対的な権利です。その為、権利行使を妨害された場合は、妨害者が誰であろうとその妨害を排除することができます。


3. 物権の排他性


物権には排他性があります。一つの物の上に、同一内容の物権は、一つしか成立しません。これを一物一権主義といいます。一つの物の上に、所有権は一つしか成立しないのです。一つの物の上に、物権が競合する場合には、その優劣は、対抗要件を備えた順序によって決められます。



物権の種類

物権は民法上は次のように分類できます。んー、メッチャ沢山ですね!

物権の分類
物権の分類

ひとつひとつ分けてみましょう。

1. 所有権


所有権とは、その物を自由に使用・収益・処分できる権利のことです。つまり、特定の物を全面的に支配する権利のことです。所有者は自由に物を使用収益したり、処分したりすることができます。

民法206条 
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。


2. 制限物権




制限物権(他物権)とは、制限が付いている物権のことです。例えば、地上権という権利は、工作物または竹木を所有するために他人の土地を使用できる権利のことをいいます。この権利は、「工作物または竹木を所有するため」の権利なので、自由な使用とは言えません。つまり、物に対する全面的な支配権である所有権の権能の一部を内容とする物権のことです。制限物権には、用益物権と担保物権があります。

用益物権
物を利用する機能を内容とする物権。ある用途のために他人の土地の使用や収益ができる権利で、例えれば、上の例で出たように地上権という権利は、工作物または竹木を所有するために他人の土地を使用できる権利がこれに当たります。


担保物権
物の担保価値の把握という機能を内容とする物権。例えば、お金を貸す場合、あらかじめ特定の物に担保物権を設定しておいて、返してもらえない場合は、その物に対する権利を譲り受けるという権利といったものが当たります。


3. 占有権


占有権とは、者の所持に基づいて認められる一種の物権です。物を支配しているという事実状態を保護する特殊な物権です。



物権の客体



物権は、物を直接かつ排他的に支配する権利です。ここでいう物とは実際に姿・形を持つ存在(これを有体物といいます)を意味しています。
物体の客体となるためには、有体物であることに加えて、

①支配可能性

②特定性

③独立性・単一性

という要件を満たす必要があります。物権の客体は、原則として、支配可能な、特定の一個の独立した物でなければならないということです。


不動産と動産


物は、不動産と動産に分けられます。不動産は、土地およびその定着物だけであり、それら以外の物は、すべて動産です。また、商品券等の無記名債権も、動産として扱います。
土地の定着物とは、土地に固定された状態で継続的に使用されるものをいいます。建物や線路などがこれに当たります。土地の定着物は、土地の一部を成し、土地の所有権に含まれるのが原則です。しかし、建物は、敷地から独立した一つの不動産です。土地と建物は、別々の独立した不動産であり、それぞれを独立して取引できます。


物権的請求権


物権的請求権とは何か?


物権的請求権とは、物権の円滑な実現に対する支障を除去し、正常化するための制度です。物に対する支配の維持あるいは回復を目的とする請求権であり、相手方の主観的事情は問いません。
物権的請求権には、物権的返還請求権・物権的妨害排除請求権・物権的妨害予防請求権があります。

所有権に基づく物権的請求権


所有者には、所有権に基づく物権的請求権として、次の権利があります。


①物権的返還請求権
目的物の戦友を奪われた場合、現にその目的物を占有している人に対して返還を請求できる。

②物権的妨害排除請求権
所有権の行使が権限なく妨害された場合には、その妨害の排除を請求できる

③物権的妨害予防請求権
所有権侵害の恐れがある場合には、それを防止するための措置を請求できる。


物権変動


物権変動とは何か


物権変動とは、当事者の発生・変更・消滅を意味します。所有権の移転や抵当権の設定が、物権変動です。


物権変動の方法


物権は、当事者の意思表示だけで変動します。意思表示があれば、それだけで物権変動が生じるのです。(意思主義)
よって、売買契約が成立すれば、それだけで所有権は移転します。


物権変動のタイミング


物権変動は、契約の成立と同時に生じるのが原則です。ただし、変動に障害がある場合には、その障害が除去されたときに生じます。例えば、期限があれば、それが到達した時に、停止条件が付いていれば、それが成就した時に物権変動を生じるのです。


混同


併存させておく必要のない対立する2つの法律上の地位が、同一人に帰属することを混同といいます。併存させておく必要のない2つの物権が1人に集中した場合、弱い方の物権は、強い方の物権に吸収されて消滅します。ただし、他に利害関係者が存在し、本人または第三者の利益のために2つの物権の併存を認める必要がある場合は消滅しません。

また、占有権は、他の物権と混同しても、消滅しません。

民法179条 
1項 
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。 
2項 
所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。 
3項 
前二項の規定は、占有権については、適用しない。


不動産の物権変動


不動産の物権変動の対抗要件


1. 登記


不動産の物権変動を第三者に主張する為には、登記という()対抗要件を備えなければなりません。物権には排他性がある為、不動産の物権変動があったことを知らせるようにすることが求められており、登記によって物権変動を公示して、取引の安全を図っています。(公示の原則)


2. 民法177条の第三者


登記を要求する理由は、取引の安全のためです。そのため、民法177条の第三者は、登記のないこと(欠缺;けんけつ)を主張する正当な利益のある者に限られ、正当な利益のない者には、登記がなくても、不動産の物権変動を主張できるというのが判例です。


3. 悪意と背信的悪意


単にその物権変動を知っているだけの悪意の第三者に対しては、登記がないと、物権変動を主張できませんが、自由競争の範囲を逸脱し、登記がないという主張が信義則に反すると認められている背信的悪意者には、登記なしで物権変動を主張できるというのが判例です。
そして、判例では背信的悪意者から譲り受けた転得者に対して物権変動を主張するには、転得者が背信的悪意者と評価されない限り、登記が必要であると言っています。


民法177条の第三者について
相続人のように当事者の地位を包括的に承継した者は、当事者と同一視されます。よって、その承継した者は第三者ではありません。また、次の①から⑤に当たる者は、登記のないことを主張する正当な利益がないので、民法177条の第三者ではありません。

①全くの無権利者

②不法占拠者

③詐欺や強迫によって登記の申請を妨げた者

④他人ために登記を申請する義務のある者

⑤一般債権者
※ただし、差押債権者・破産債権者など、目的物に支配を及ぼした債権者は、民法177条の第三者です。


不動産登記制度


1. 登記の対抗力


登記が対抗力を持つためには、次の要件を満たす必要があります。

①実体的権利に裏付けられていること

②適式な申請手続きに基づき、現実に登記簿に記録されていること


2. 登記請求権


登記せよ、あるいは登記に協力せよと請求する権利を登記請求権といいます。登記請求権は、権利変動を忠実に表すという登記制度の理想を実現するための特殊な権利です。そのため、目的物を転売しても、登記請求権を失わず、転売後であっても、買主は売主に対して登記請求権を行使できるというのが判例です。また、登記請求権は、消滅時効にかからないとされています。


対抗問題


1. 二重譲渡


例えば、Aさんが、自分の土地をBさんに売り、引き渡したものの、登記を移転しなかったことをよいことに、同じ土地をCさんに二重に売り、登記もCさんに移転したとします。


このように、二重に譲渡がなされた場合、譲渡人の一方が背信的悪意者でない限り、先に登記を備えたほうが所有権を取得します。そのため、登記を備えているCさんが背信的悪意者でなければ、Cさんが土地の所有権を取得することになります。


2. 取消しと登記


次の例に話を進めます。
Aさんは、自分の土地をBさんに売却するという契約をBさんの詐欺を理由に取り消しましたが、Bさんはそれを無視してCにその土地を売却したとします。


この場合は、いったん、買主に移った所有権が、取消しによって、売主に戻ると消滅することができます。そうすると、買主を基点として、売主が第三者に二重譲渡されたのと同じ結果になります。したがって、したがって、先に登記を備えたほうが土地の所有権を取得できるというのが判例です。


3. 契約の解除と登記


契約の解除によって所有権を回復したことを、解除後に出現した第三者に主張するにも、対抗要件を備える必要があると、判例ではいっています。解除後の第三者との関係は、対抗要件によって決まり、先に対抗要件を備えたほうが勝つというわけです。


4. 相続と登記


遺産分割によって所有権を取得したことを第三者に主張する場合には、登記が必要ですが、相続の放棄による所有権の取得は、登記がなくても第三者に主張できます。相続の放棄は、相続資格を遡及的に失わせるものであって、権利の移転を考えることができないのに対して、遺産分割は、いったん取得した権利の移転と見ることができるからです。


5. 時効と登記


時効取得の対象となっている不動産を元来の所有者が第三者に売ってしまった場合について、判例では、次のようにいっています。


①不動産の売却が時効進行中であれば、第三者はその不動産の所有者として時効の完成を迎えるのでありそのものを特別に保護する必要はないから、時効取得者が常に所有権を取得出来る。

②これに対して、不動産の売却が時効完成後の場合は、元来の所有者を起点にして、第三者と時効取得者に二重に譲渡されたのと類似の関係になるから、登記を先に備えたほうが所有権を取得する。


このように判例の立場では、第三者の出現が時効完成の前か後かで結論が大きく異なることになります。そこで判例は、取得時効の起算点を自由に設定することを禁止し、それを現実に占有を開始した時点に固定しています。


動産の物権変動


動産の物権変動の対抗要件


動産の物権変動の対抗要件は、引渡しであり、動産の物権変動を第三者に主張するためには引き渡しが必要です。
引き渡しとは、占有を移転することであり、①現実の引き渡し、②簡易の引き渡し、③占有改定、④指図による占有移転という方法があります。


引渡しの方法


1. 現実の引渡しと簡易引き渡し


現実の引渡しとは、物を文字どうりに引き渡すことです。これに対して簡易引渡しとは、譲受人またはその占有代理人がすでに目的物を所持している場合に、占有移転の合意だけで、占有が移転することです。賃貸人から賃借人に賃借物を譲渡する場合などに簡易の引き渡しが用いられます。


2. 占有改定


占有改定とは、譲渡人が、譲渡後も占有代理人として目的物を所持するという意思を表示することです。

民法183条 
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。


3. 指図による占有移転


指図による占有移転とは、他人に所有させている目的物を譲渡する場合に、譲渡人が、所有人に対して、以後は譲受人のために占有するように命じ、譲受人がそれを承諾することによって占有が移転することです。


動産の即時取得


動産の即時取得って何?


動産の即時取得とは、取引の安全を図るため、動産の占有者を権利者と過失なく信頼し、取引行為よって動産の占有を取得した者に動産の所有権あるいは質権を原始取得させる制度です。


即時取得の対象


即時取得の対象となるのは、動産だけであり、不動産は対象となりません。自動車は動産ですが、登録されたものは対象外で、未登録のものや登録を抹消されたものだけが即時取得の対象です。


信頼の対象


即時取得における信頼の対象は占有です。代理権があると誤信したり、行為能力があると誤信したりしても、救済されるわけではありません。制限行為能力者や無権代理人から動産を購入した場合、前の占有者の占有に対する信頼を保護する場面ではないから民法192条は適用されないのです。
民法192条


ただし、制限行為能力者・無権代理人と取引した者は、無権利の占有者ですから、この者から動産を譲り受けた転得者には、民法192条が適用されます。


有効な取引行為


即時取得は、取引の安全を保障する制度なので、有効な取引行為によって動産の戦友を取得した場合に限定されています。そのため、拾ったものを即時取得することはできません。ただし、即時取得に必要な取引行為には、売買・贈与・質権設定・弁済としての給付も含まれます。


目的物の引き渡し


現実の引き渡しや簡易の引き渡しによって戦友を取得した場合に、即時取得が認められます。そして、判例では、指図による占有移転についても即時取得を認めています。しかし、占有改定では、即時取得できないというのが判例です。外観上占有状態に変更が認められないからです。


即時取得の効果


即時取得によって、所有権。質権を原始取得()することができます。取引の性質が、売買なら所有権を、質入なら質権を原始取得します。前の占有者の権利を引き継ぐのではなく、何の制約もない真新しい権利を取得するのです。
しかし、占有物が盗品または遺失物の場合には、被害者または遺失者は、盗難または遺失時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求できます。盗品または遺失物の場合は、即時取得の成立が盗難または遺失時から2年間猶予されるのです。

次は、民法の所有権と占有権について紹介しています。
➡【リンク】6. 所有権と占有権



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