【行政書士試験・行政法】行政手続法
今回は、行政法の分野「行政手続法」について勉強していきましょう。
行政手続法の目的
行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利・利益の保護に資することを目的としています。
行政手続法1条
1項
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
行政手続法は何に対して適用されるのか?
行政手続法は、処分(申請に対する処分及び不利益処分)と行政指導および届出に関する手続について、共通する事項を定めています。
申請に対する処分について
処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為をいいます。
行政手続法2条
処分には、申請に対する処分・不利益処分がありますが、「申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可・免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいいます。
行政庁は、申請が到着した時は、遅滞なく申請の審査を開始しなくてはなりません。ただし、申請書に不備等があるときには、すみやかに補正(直すこと)を求めるか、許認可を拒否しなければなりません。
行政手続法7条
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
ちなみに申請に対する処分について、行政手続法では、他にも次のような規定があります。
①行政庁は、申請にかかる許認可の判断基準を(審査基準)を定め、事務所などに公示しなければならない。
②行政庁は、申請の標準的な処理期間を定めるように努め、定めた時は公表しなければなりません。
行政手続法6条
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。
③行政庁は、審査に関わる情報の提供に努めなければなりません。
行政手続法9条
1項
行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
2項
行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。
④申請を拒否する場合には、申請者に対して理由を示さなければなりません。
行政手続法8条
1項
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
行政指導とは、行政機関が、その任務または所掌事務(法令で特定機関の事務に属すると定められている事務)の範囲内において、一定の行政目的を実現するために、特定の人や事業者に一定の行為を行うように(または行わないように)、具体的に求める行為(指導、勧告、助言などで、処分を除く)をいいます。
行政手続法2条6号
この、行政指導が複数の者を対象とするときは、行政機関はあらかじめ、行政指導指針を定め、原則として、公表しなければなりません。
行政手続法36条
同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
行政指導は、指導を受けた人の自主的な努力によって実現されるものなので、従わなければならないものではありません。また、従わなかったとしても、その後に許認可を受けられないなどといった不利益な取り扱いを受けることもありません。
行政手続法32条
2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
書面の請求
行政指導について、書面を要求すれば、原則として、書面にしてもらうことができます。
行政手続法35条
3項
前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの
また、行政指導を行うものは、その行政指導の趣旨、内容、責任者を明確に示さなければなりません。
行政手続法35条
1項
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
行政庁への届け出について
届出とは
行政庁に対して、一定の事項の通知をする行為(申請を除く)であって、(国民に対して)法令によって、通知が義務付けられているものをいいます。
行政手続法2条
7項
届出
行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。
記載事項に漏れがなく、必要な書類が添えられているなど、法令に定められた形式上の要件に適合しているときには、役所は、裁量(自分の権限内の判断)で受け取らないとすることはできません。
もし受け取らなかった場合でも、その届出が、提出先とされる期間の事務所に到達した時に、届出の行為が完了したとされています。
行政手続法37条
届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。
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