2020年5月19日火曜日

大阪市売春取締条例事件って何?行政書士試験の重要判例・・地方自治法14条およびそれに基づく本件条例は、罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反しないか?

大阪市売春取締条例事件/最大判昭37.5.30




大阪市売春取締条例事件の内容


Aさんは、売春を行う目的で大阪市内において通行人を勧誘したことから「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」の2条1項に違反したとして起訴されましたが、Aさん側は、本件条例違反者に対する罰則の根拠となる地方自治体法14条1項および3項(当時の5項)は、条例に対する授権の範囲が不特定かつ抽象的であり、その結果、一般に条例でいかなる事項についても罰則を付することが可能となるから、罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反するものであるとして、無罪を訴えた。

地方自治体法14条 
1項 
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。 
3項 
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。


憲法31条 
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。


大阪売春事件の争点


法令に特定の定めがあるものを除くほかは、地方公共団体がその条例の中に条例違反者に対して、一定範囲の刑罰を科する旨の規定を設けることができると定める地方自治法14条およびそれに基づく本件条例は、罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反しないか?


判決のポイント


憲法31条に違反しない。

条例で刑罰を定める場合は、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる。

地方自治法14条3項のように、限定された刑罰の範囲内で条例をもって罰則を定めることができるとしたのは、憲法31条の法律の定める手続きによって刑罰を科すもので、同条に違反しない。



➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和31(あ)4289

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2020年3月20日金曜日

皇居前広場事件って何?行政書士試験の重要判例・・特定の期日に対する訴えの利益は、その期日を経過すれば喪失するか?

皇居前広場事件/最大判昭28.12.23

最終更新日:2020年3月20日




今回は、特定の期日における公園の使用を求める申請に対する不許可処分の取消訴訟は、当該期日の経過により判決を求める法律上の利益が失われるかどうかが問われた皇居前広場事件について紹介したいと思います。

皇居前広場事件の内容


昭和26年(1951年)の日本は、講和問題や賃上げ問題などをめぐって全般的に労働運動・学生運動が復活の動きを見せた年であり、全国で労働運動が高揚していました。日本最大の労働組合だった日本労働組合総評議会は、昭和26年11月10日付で、昭和27年5月1日のメーデーのために皇居外苑の使用許可を求める申請を厚生大臣(今の厚生労働大臣にあたる)にしましたが、大臣は、国民公園管理規則4条に基づき、昭和27年3月13日にこれを不許可としました。このため、評議会は、当該処分が表現の自由を保障する憲法21条や就労者の団結権を保護する憲法28条に違反しているとして、その取り消しを求めて出訴しましたが、その訴訟の係属中(ある事件が裁判所で訴訟中であること)に本件申請に関わる同年5月1日が経過したことから、第二審の東京高等裁判所は、それにより原告が処分の取り消しを求める権利保障の利益がなくなったとして請求を棄却した為、日本労働組合総評議会が上告した事件です。


皇居前広場事件の争点


公園使用についての不許可処分の取り消しを求める訴えについては、使用すべき日が経過することにより判決を求める法律上の利益が失われることなるか?


判決のポイント


特定の期日における公園の使用を求める申請に対する不許可処分の取消訴訟は、当該期日の経過により判決を求める法律上の利益が失われる。

本件では、「5月1日」が過ぎれば、訴えの利益がなくなるということになる。



➡【リンク】最高裁判所HP・・  昭和27(オ)1150

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2020年3月3日火曜日

交通反則金の納付通告と取消訴訟って何?行政書士試験の重要判例・・反則金の納付通告は、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟の対象となるか?

交通反則金の納付通告と取消訴訟/最判昭57.7.15


警視庁HPより抜粋


交通反則金の納付通告と取消訴訟の内容


大阪府警の警察官から駐車違反の事実を指摘されたAさんは、それが自己の行為によるものではないことを主張したため、現行犯逮捕され身柄を拘束された。そのためAさんは、早期釈放を願って翌日に反則金を仮納付し釈放されたが、後日、大阪府警察本部長から仮納付を本納付とみなす効果を持つ反則金納付通告を受けた。

そこで、Aさんは、駐車違反者につき事実誤認があることを理由として、当該反則金納付通告の取り消しを求めて出訴した。


交通反則金の納付通告と取消訴訟の争点


道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付通告は、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟の対象となるか?


判決のポイント


交通反則通告制度は、反則金の納付の通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは刑事訴追を行わないが、一定期間内に反則金の納付がなかったときは本来の刑事手続きを遂行させることとする制度である。通告を受けた者がその自由意志により通告に係る反則金を納付したときは、抗告訴訟によってその効果を覆すことは許されず、当該通告の理由となった反則行為の不成立を主張したいのであれば、反則金の納付をしないまま、後日の公訴提起を待って刑事訴訟手続の中で争うべきである。

したがって、当該通告に対して行政事件訴訟法による取消訴訟を提起することは、不適法である。



➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和55(行ツ)137



2020年2月9日日曜日

宝塚市パチンコ条例事件って何?行政書士試験の重要判例・・地方公共団体が行政権の主体として、国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たるか?

【重要判例】宝塚市パチンコ条例事件/最判平14.7.9




今回は、地方公共団体が行政権の主体として、国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たるかが問われた「宝塚市パチンコ条例事件」について紹介したいと思います。


宝塚市パチンコ条例事件の内容


兵庫県の宝塚市長は、同市パチンコ店等の建築等を規制する条例(8条)に基づき、同市内においてパチンコ店を建築しようとするAさんに対して、建築工事の中止命令を発したが、Aさんがこれに従わなかったために、宝塚市BがAさんに対し、工事を続行してはならないことを求める民事訴訟を提起した事件です。


宝塚パチンコ条例事件の争点


地方公共団体が行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たるか?


判決のポイント


地方公共団体が行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たる。

法律上の争訟として当てはまるものは
財産権の主体
行政権の主体(法律に特別な規定がある場合)

今回のケースは、財産権の主体とした訴えではなく。行政権を主体とした訴えでした。

地方公共団体が行政権の主体として、国民に行政上の義務の履行を求める対象は、法律上の争訟に限られ、国又は地方公共団体が、財産権の主体ではなく、もっぱら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律に特別の規定がない限り、裁判所の審判の対象とはならない。

高速増殖炉もんじゅ原発訴訟って何?行政書士試験の重要判例・・行政事件訴訟法36条にいう「法律の利益を有するもの」とは?

【重要判例】高速増殖炉もんじゅ原発訴訟/最判平4.9.22


国立研究開発法人
日本原子力研究開発機構 HPより抜粋



今回は、「高速増殖炉もんじゅ原発訴訟」について紹介したいと思います。


高速増殖炉もんじゅ原発訴訟の内容


内閣総理大臣が行った福井県敦賀市に設置予定の高速増殖炉「もんじゅ」に関する原子炉設置許可処分に対して、付近住民らが「もんじゅ」の設置稼働により、生命身体を損傷させる等の重大な被害を受けるとして、設置許可処分の無効確認を求めて出訴した。

行政事件訴訟法9条 
1項 
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。 
2項 
裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

行政事件訴訟法36条 
無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。


高速増殖炉もんじゅ原発訴訟の争点


取消訴訟における原告適格は、いかなる要素を考慮して判断すべきか?

設置許可申請に係る原子炉(高速増殖炉)から約29kmないし約58kmの範囲内の地域に居住している住民は、原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法36条にいう「法律の利益を有するもの」に該当するか?

判決のポイント


当該放棄の趣旨・目的のみならず、保護しようとする利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。

行政事件訴訟法9条にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害される恐れのあるものをいうのであり、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を公益としてだけでなく、個々人の個別的利益としても保護する主旨を含む場合には、かかる利益も右にいう法律業保護された利益にあたる。行政法規が右の主旨を含むかは、当該放棄の趣旨目的・当該放棄が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。原子炉設置許可基準の各規定は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般公益として保護しようとするにとどまらず、原子炉施設周辺に居住し、右事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個人的利益としても保護するものとする主旨をも含むと解する。




京都府立医大学生放学処分事件って何?行政書士試験の重要判例・・公立大学の学生に対する懲戒処分は、学長の覊束裁量行為と解するべきか?それとも自由裁量行為と解すべきか?

京都府立医大学生放学処分事件

(公立大学の学生に対する懲戒処分)

/最判昭和29.7.30




今回は、公立大学の学生に対する懲戒処分は、学長の覊束裁量行為と解するべきか?それとも自由裁量行為と解すべきか?が争われた「京都府立医大学生放学処分事件」について紹介したいと思います。


京都府立医大学生放学処分事件の内容


京都府立医科大学附属女子専門部の教授会は、同専門部に属するA教授の身体問題を審議するための会議を開こうとしたが、A教授の解雇反対を主張する学生たちによって会議室は混乱し、教授会は流会となった。このため、京都府立医科大学学長Yは、専門部教授会における学生たちの行為は学生の本文にもとり学内の秩序を乱すものであるとして、本科の学生5名(Xら)の懲戒処分を行った。
これに対して、Xさんらは、当該懲戒処分は学長としての裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとして、本件放学処分の取り消しを求めて出訴した。


京都府立医大学生放学処分事件の争点


公立大学の学生に対する懲戒処分は、学長の覊束裁量行為と解するべきか?それとも自由裁量行為と解すべきか?


京都府立医大学生放学処分事件の判決のポイント


公立大学の学生の行為に対して懲戒処分を発動するかどうか、および懲戒処分のうちいずれかの処分を選ぶかを決定することは、その決定が全く事実上の根拠に基づかないと認められる場合であるか、または社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、学長の裁量権に任される、つまり、学長の自由裁量行為である。


➡【リンク】最高裁判所HP・・    昭和28(オ)525

2020年2月8日土曜日

下関商業高校事件って何?行政書士試験の重要判例・・執拗な退職勧奨(たいしょくかんしょう)は、国家賠償法に基づく慰謝料請求の対象となるか?

下関商業高校事件

執拗な退職勧奨(たいしょくかんしょう)に対する

慰謝料請求/最判昭55.7.10


下関商業高校事件・執拗な退職勧奨(たいしょくかんしょう)に対する 慰謝料請求/最判昭55.7.10


下関商業高校事件の内容


下関市立商業高校に勤務するXら3人の教諭に対し、下関市教育委員会が退職勧奨の基準年齢である57歳になったことを理由に、2~3年にわたり退職勧奨を継続し、当該一連の行為により精神的苦痛を受けたとして、Xさん達が下関市に対して国家賠償法に基づく慰謝料の支払いを求めて出訴した。

※不当に退職を強要された例としては、勧奨に応じない旨を表明しているにもかかわらず、計10回以上、職務命令として市教育委員会への出頭を命じられたり、1名~4名の職員から20分から90分にわたって勧奨されたり、優遇措置もないまま退職するまで勧奨を続けると言われたり等のことが行われていたそうです。

下関商業高校事件の争点


執拗な退職勧奨は、国家賠償法に基づく慰謝料請求の対象となるか?


判決のポイント


対象となる

本来の目的である被勧奨者の自発的な退職意思の形成を促す限度を超える心理的圧力を加えた場合には、違法な権利侵害として不法行為を構成する。



➡【リンク】最高裁判所HP・・     昭和52(オ)405

2020年1月26日日曜日

川崎民商事件って何?行政書士試験の重要判例・・所得税法が規定する税務署による質問検査は、憲法35条に違反しないか?

【重要判例】川崎民商事件/最大判昭47.11.22


川崎民商事件って何?行政書士試験の重要判例・・所得税法が規定する税務署による質問検査は、憲法35条に違反しないか?


今回は、行政手続に憲法35条(令状主義)、憲法38条(不利益供述の強要禁止等)の規定が適用されるか?どうかが問われた川崎民商事件について紹介したいと思います。

川崎民商事件の内容


川崎税務署は、被告川崎民主商工会員Aさんの所得税確定申告に疑いを抱き、帳簿書類を検査しようとしたところ、Aさんはこれを拒み、検査拒否罪で起訴された。Aさんは、検査拒否罪は、憲法35条、38条に違反すると主張した。

憲法35条 
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

憲法38条 
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。


川崎民商事件の争点


①所得税法が規定する税務署職員による質問検査は、裁判所の判断を経ることなく行政庁の判断だけで行えるとしている点で、捜索・押収には正当な理由に基づいて裁判所が発する令状が必要であるとする憲法35条に違反しないか?

②所得税法が規定する税務署職員による質問検査は、自己に不利益な供述の強要を禁止する憲法38条に違反しないか?


判決のポイント


憲法35条1項に違反しない。

刑事責任追及を目的としない手続きにおいて、一切の強制が憲法35条1項の保障の枠外にあると解すべきではないが、税務署職員による質問検査があらかじめ裁判所の発する令状によるべきことを一般要件としていなくても、憲法35条1項に違反しない。

憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下に置かれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続きが刑事責任追及を目的とするものではないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。


憲法38条に違反しない。

憲法38条1項による保障は、刑事手続き以外でも、それが実質上の刑事責任追及を目的とした資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続きには等しく及ぶ解するべきであるが、税務署職員による質問検査は、そのような手続には当たらないので、自己に不利益な供述を強要するものではない。

憲法38条1項による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶものと解するものを相当とする。


➡【リンク】最高裁判所HP・・     昭和44(あ)734

2020年1月23日木曜日

個人タクシー事件って何?行政書士試験の重要判例・・事業免許申請の許否手続において抽象的な免許要件を定めていれば足りるか?行政庁は申請人に主張・立証の機会を与える必要があるのか?

【重要判例】個人タクシー事件/最判昭46.10.28


個人タクシー事件って何?行政書士試験の重要判例


今回は、事業免許申請の許否手続において抽象的な免許要件を定めていれば足りるか?行政庁は申請人に主張・立証の機会を与える必要があるのか?が問われた「個人タクシー事件」について紹介したいと思います。

個人タクシー事件の内容


Aさんは、陸運局長Bさんに対して、一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシー)免許申請を行なったが、道路運送法6条1項3号〜5号の用件に該当しないことを理由に申請が却下された。これに対し、Aさんは陸運局側はあらかじめ審査基準を定めてその内容を申請人に告知することにより申請人に主張と証拠提出の機会を与えるのべきにもかかわらず、それがなされないまま申請を却下したのは、職業選択の自由にかかわる法的利益を侵害するものであり違法であり違法であると主張し、Aさんは申請却下処分の取消しを求めて出訴した。


個人タクシー事件の争点


①個人タクシー事業の免許申請の許否手続において抽象的な免許要件を定めていれば足りるか?


②申請人に主張・立証の機会を与える必要があるのか?



判決のポイント


①抽象的な免許基準だけでは足りず、具体化した審査基準を設定しなければならない。


②申請人に主張・立証の機会を与える必要がある。


個人タクシー事業免許が個人の職業選択の自由に関わりを有すことと、道路運送法の規定を合わせ考えれば、多数のもののうちから少数特定の者を具体的個別的事実関係に基づき行政庁の判断を疑うことが客観的にもっともと認められるような不公正な手続きをとってはならず、法律上の抽象的な免許基準を具体化した審査基準を設定し、基準を適用する上で必要とされる事項について、申請人に主張と証拠の提出の機会を与えなければならない。


➡【リンク】最高裁判所HP・・    昭和40(行ツ)101


2020年1月22日水曜日

大阪国際空港公害訴訟って何?行政書士試験の重要判例・・営造物の設置又は管理の瑕疵とは何か?将来にわたって継続する不法行為を理由とする損害賠償請求は認められるのか?

【重要判例】大阪国際空港公害訴訟/最大判昭56.12.16




どうもTakaです。今回は、民事上の請求として、一定の時間帯につき航空機のの離着陸の為になされる国営空港の供用の差止を求めることはできるのか?営造物の欠陥以外の原因を理由として国家賠償法2条1項が規定する営造物の設置・管理の瑕疵を認定することは許される?将来にわたって継続する不法行為を理由とする損害賠償請求は認められるのか?が争点となった「大阪国際空港公害訴訟」について紹介します。


大阪国際空港公害訴訟の内容


大阪国際空港(現在の伊丹空港)は、昭和34年の開設以来、拡張を重ね、大型のジェット機が頻繁に離着陸するようになり、周辺の地域に深刻な騒音光害をもたらした。そこで。周辺住人は、空港の設置者である国に対し、国家賠償法2条1項に基づく午後9時から翌朝7時までの空港の使用差し止めと、過去及び将来に係る損害賠償の支払いなどを求めて出訴した。

国家賠償法2条 
1項 
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。


大阪国際空港公害訴訟の争点


国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは何か?

民事上の請求として、一定の時間帯につき航空機のの離着陸の為になされる国営空港の供用の差止を求めることはできるのか?

営造物の欠陥以外の原因を理由として国家賠償法2条1項が規定する営造物の設置・管理の瑕疵を認定することは許されるか?

将来にわたって継続する不法行為を理由とする損害賠償請求は認められるのか?


判決のポイント



国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいう。そこにいう安全性の欠如すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、物的施設自体にある物理的、外形的な欠陥ないし不備によって危害を発生させる危険性がある場合だけではなく、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を発生する危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解するべきである。

①求めることは認められない。

行政訴訟の方法により請求をすることはともかく、通常の民事請求として、一定の時間帯についての国営空港の供用の差し止めを求めることは認められない。


②許されない

営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態には、営造物が供用目的によって利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合も含む。つまり、飛行機の離発着による騒音公害も含むということ。また、その危害は、当該営造物の利用者以外の第三者に対するそれをも含む。つまり、周辺住民への被害も含むということ。


③認められない。

不法行為が将来も継続することが予想されても、損害賠償請求権の成否・額をあらかじめ一義的明確に認定できないなどの場合には、将来の給付の訴えとして損害賠償を求めることは認められない。



➡【リンク】最高裁判所HP・・   昭和51(オ)395

多摩川水害訴訟って何?行政書士試験の重要判例・・河川の安全性とは?また河川管理の瑕疵とは?

【重要判例】多摩川水害訴訟/最判平2.12.13


水害当時の写真 狛江市HPより抜粋 -悪夢のような多摩川堤防決壊


どうもTakaです。
今回は、改修済みの河川における安全性とは何かが問われた「多摩川水害訴訟」について紹介したいと思います。この水害に関しては、長年にわたって裁判で争われた事案で一審は原告の住民が勝訴。控訴審は国が勝訴したが、上告審で破棄差し戻しとなった。最終的には、差戻控訴審で住民が勝訴し、確定しました。今回は、上告審で示された、河川の安全性とは?また河川管理の瑕疵とはどう考えられるかに焦点を当てて、内容を紹介したいと思います。


多摩川水害訴訟の内容


多摩川は、昭和41年に河川法4条に基づき一級河川に指定され、同年7月に建設大臣が策定した「多摩川水系工事実施基本計画」に従って改修工事が実施されました。しかし、狛江市猪方地区については、「改修工事完成区画」とされて、新しい改修の計画はなされませんでした。

そんな中、昭和49年は夜から降り続いた豪雨により、多摩川は著しく増水し、堤防及びその後背地の一部が浸食されて家屋19棟が流されてしまいました。この時の洪水は過去に発生した洪水とほぼ同程度のものであり、そこで、この水害の被害者らは、河川を管理する国に対して、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償を請求した。

国家賠償法2条 
1項 
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。


多摩川水害訴訟の争点


①河川の安全性とは何か?

②河川の改修整備がなされた後に水害発生の危険の予測が可能となっていた場合には、それについての河川管理の瑕疵はどのように考えるべきか?


判決のポイント


①河川の備えるべき安全性とは、一般に施行されてきた治水事業の過程における河川の改修・整備の段階に対応する安全性を持って足りるものとせざるを得ない。工事実施基本計画が策定され、右計画に準拠して改修・整備の必要がないものとされた河川の改修、整備の段階に対応する安全性とは、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性をいうものと解すべきである。

②改修整備後に水害発生の危険の予測が可能になった場合の河川管理の瑕疵は、過去に発生した水害の規模や頻度の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無といった諸般の事情、河川管理における財政的・技術的・社会的制約を考慮した上で、当該危険の予測が可能となった時点から現実の水害発生時までの間にその危険に対する対策を講じるべきであったか否かを判断すべきである。

以上の①②の様に示されました。
➡【リンク】最高裁判所HP・・   昭和63(オ)791

2020年1月16日木曜日

川崎駅非番警察官強盗殺人事件って何?行政書士試験頻度の重要判例・・公務員の職務行為の範囲ってどこまで?

【重要判例】川崎駅非番警察官強盗殺人事件

(公務員の職務行為の範囲)/最判昭和31.11.30


【重要判例】川崎駅非番警察官強盗殺人事件 (公務員の職務行為の範囲)/最判昭和31.11.30


どうもTakaです。
今回は、公務員の行為が、外形から見て職務執行行為といえる場合、国家賠償法1条1項の職務を行うについて該当するかが問われた「川崎駅非番警察官強盗殺人事件」を紹介したいと思います。

川崎駅非番警察官強盗殺人事件の内容


警視庁の巡査Aは、非番の日に、川崎駅前で制服制帽を着たうえで、仕事を装って通行人を呼び止め、現金等を取り上げた後、その通行人を射殺した。そこで、被害者の遺族が東京都に損害賠償を請求した。

川崎駅非番警察官強盗殺人事件の争点


公務員の行為が、外形から見て職務執行行為といえる場合、国家賠償法1条1項の職務を行うについて該当するか?

国家賠償法1条 
1項 
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

判決のポイント


該当する


国家賠償法1条は、公務員が主観的に権限行使の意思を持ってする場合に限らず、自己の利を図る意思を持ってする場合でも、客観的に職務執行の外形を備える行為をして、これによって、他人に損害を加えた場合には、国または公共団体に損害賠償の責を負わしめて、広く国民の権益を擁護することをもって、その立法の趣旨とするものと解すべきである。


➡【リンク】最高裁判所HP・・  昭和29(オ)774

高知落石事件って何?行政書士試験の重要判例・・管理の瑕疵により損害が発生しても国・公共団体は賠償責任を免れるか?

【重要判例】高知落石事件/最判昭和45.8.20

【重要判例】高知落石事件/最判昭和45.8.20


どうもTakaです。
今回は、道路における防護柵等を設置することが予算上困難である場合、道路管理の瑕疵により損害が発生しても、国または公共団体は賠償責任を免れることができるかが
争点となった「高知落石事件」を紹介したいと思います。

高知落石事件の内容


高知県の山間部にある国道56号線を走っていたトラックに落石が直撃して、助手席に乗っていた人が死亡しました。この道路には以前から落石が多かったが、県は「落石注意」の標識程度の対策しか行っていませんでした。そこで、死亡した被害者の遺族が、事故は国道の管理者である国・県の道路管理に瑕疵があったことが原因であるとして、損害賠償を請求した事件です。

高知落石事件の争点


道路における防護柵等を設置することが予算上困難である場合、道路管理の瑕疵により損害が発生しても、国または公共団体は賠償責任を免れることができるか?

判決のポイント


免れない。


国家賠償法2条でいう設置管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国及び公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないとし、さらには落石の対策には予算が掛かり、管理する国や県が困ることにはなるが、だからといって莫大な費用が掛かることは免責事由とはならない。

国家賠償法2条 
1項 
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。 
2項 
前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。


➡【リンク】最高裁判所HP・・  昭和42(オ)921

2020年1月1日水曜日

【行政書士試験・一般知識】1. 政治(国家とは何か?)

1.政治(国家とはなにか?)



今回は一般知識の分野「国家」について勉強していきましょう。


国家ってなんだろう?


【行政書士試験・一般知識】1. 政治(国家とは何か?)


国家となる条件


国家とは、一定の地域とそこに住む住民に対して、他国の影響を排して権力を行使する政治組織のことをいいます。

現代における国家は次の3つの要素で成立しているといわれます。

国家の3要素

①領域・・領土・領海・領空

②国民・・そこに居住している住民

③主権・・領土と国民を統治する有効な政府


国家の体制


それでは、国家にはどのような種類の体制を持った国があるのでしょうか?それぞれ見てみましょう。

現在の民主的な世界では、立憲君主制と共和制が代表的な国家体制です。ただし、一部は軍事国家や独裁国家なども存在します。

1. 君主制


君主制は、国や皇帝など君主が支配する政治体制です。そのうち、君主の権力が制限されない政治体制を絶対君主国家(専制君主制)、憲法によって制限される政治体制を立憲君主国家といいます。

近代以降、君主国家は減少し、20世紀には、多くの国が君主制から共和制へと移行しました。


2. 共和制


君主を置かず、国民により選出されたリーダーによって国を統治する政治体制を共和制といいます。


民主主義の基本原理

民主主義には次の4つの基本原理があります。

①国民主権・・政治の主役が国民であること

②基本的人権の尊重・・国民の人権の保証

③権力分立則・・権力が1つに集中しないこと

④代議制・・国民が選んだ議員による政治


民主主義は住民が直接政治に参加する直接民主制と、国民が選挙で代表を選び、選ばれた議員が議会で政治を行う間接民主制に分けれらます。
すべての国民が直接政治に参加するのは現実的ではないことから、多くの国で間接民主制が採用されています。


近代国家とは?


近代の国家は、大きな流れとして次のように変わってきました。

18世紀から19世紀には多くの国が「夜警国家」と呼ばれる、
政治の役割が、安全保障や警察等に限られた、最低限に絞った、消極的な
ものでしたが、当時の社会は、資本主義社会へと移行しており、結局、資産を持っている人はより富み、貧しい人は貧しいままで、貧富の格差が拡大することとなりました。


この社会問題を議論し、社会権という概念が誕生します。
そして克服すべく、

20世紀に入っていくつかの国が「福祉国家」へと移ってきました。
すべての人が人間らしく、生活できるよう保障するのが国家の役割。国家が積極的に国民生活に関与する国家です。

2019年12月4日水曜日

博多駅テレビフィルム提出命令事件ってどんな事件?行政書士試験の重要判例

【重要判例】博多駅テレビフィルム提出命令事件/最大決昭44.11.28


【重要判例】博多駅テレビフィルム提出命令事件/最大決昭44.11.28


今回は、報道の自由は憲法21条で保障されるかが争点となった博多駅テレビフィルム提出命令事件について紹介したいと思います。


博多駅テレビフィルム提出命令事件の内容




時は1968年(昭和43年)、アメリカ政府は日本政府に対して行った原子力空母の寄港の申し出が承認されたことから、原子力空母を佐世保湾に入港させました。当時は、アメリカがベトナム戦争の最中であった為、この寄港に対して反対派の学生が大々的な反対運動を展開し、機動隊と衝突しました。



そして、闘争に参加するため博多駅に下車した学生に対し、機動隊員が行き過ぎた静止行為を行ったとして、特別公務員暴行陵虐罪、職権濫用罪で告発されました。この騒動は、佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争と呼ばれています。

しかし、地検が機動隊員を不起訴処分としたため、刑事訴訟法262条により審判請求がなされた。この付審判請求がなされた。この付審判請求の審理にあたって、裁判所は、そのときの模様を撮影したとされるテレビフィルムの提出をテレビ局に命じた。


この事件の争点


①報道の自由は、憲法21条で保障されるか?

②報道のための取材自由は、憲法21条で保障されるか?

③裁判所がテレビフィルムの提出を命じることは、報道・取材の自由に対する侵害となるか?


判決のポイント


①報道の自由は、憲法21条によって保障される。

②報道のための取材の自由は、憲法21条の趣旨に照らし十分尊重に値する。この点で、憲法21条によって保障される報道の自由とは異なることに特に注意が必要である。取材は、報道のための手段にすぎない。つまり、取材の自由は、憲法21条によって「保障」まではされない。「尊重」までにとどまる。


報道の自由 → 憲法21条から保障される。

取材の自由 → 憲法21条から尊重される。保証まではされない。

提出命令の合憲性は、公正な裁判の要請に基づく提出命令の必要性と、取材の自由が妨げられる程度及び報道の自由に及ぼす影響の度合い等の諸事情を比較衡量して決められる。
本件の提出命令は、証拠上重要な価値があり、テレビフィルムはすでに放映済みである点などから、合憲である。

2019年12月2日月曜日

【行政書士試験・商法・会社法】16. 合併について

16. 合併について


【行政書士試験・商法・会社法】11. 合併について


今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野「合併」について勉強していきましょう。


合併


合併とは何か


合併とは、複数の会社が、契約によって1つの会社に合体することをいいます。

合併には、吸収合併と新設合併があります。


①吸収合併

吸収合併というのは、1つの会社が存続し、他の消滅する会社を吸収する場合をいいます。


②新設合併

新設合併とは、全ての会社を消滅させて、1つの新しい会社を設立する場合をいいます。


合併の手続


1. 合併契約の締結


合併をするためには、まず、当時会社間で、法定事項を定めた合併契約を締結しなければなりません。

会社法700条 
1項 
社債発行会社は、社債券が発行されている社債をその償還の期限前に償還する場合において、これに付された利札が欠けているときは、当該利札に表示される社債の利息の請求権の額を償還額から控除しなければならない。ただし、当該請求権が弁済期にある場合は、この限りでない。 
2項 
前項の利札の所持人は、いつでも、社債発行会社に対し、これと引換えに同項の規定により控除しなければならない額の支払を請求することができる。

2. 株主総会の特別決議による承認


合併契約で定めた効力発生日の前日までに、それぞれの当事会社において、株主総会の特別決議による承認を得なければなりません。

会社法783条 
1項 
消滅株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。


会社法795条 
1項 
存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。


会社法804条 
1項 
消滅株式会社等は、株主総会の決議によって、新設合併契約等の承認を受けなければならない。


3. 反対株主の株主買取請求権


合併に反対の株主には、株式買取請求権が認められています。

会社法785条

会社法797条

会社法806条

合併承認決議が成立した場合、その決議前に反対の意思表示をし、かつ合併承認決議に反対した株主は、株式買取請求権を行使できます。


4. 会社債権者保護手続


合併の各当事会社は、原則として、債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨などを官報公告し、知れている債権者に各別に催告しなければなりません。ただし、公告を官報への掲載に加え、日刊新聞紙への掲載または電子公告でする場合には、各別の公告は必要ありません。

会社法789条

会社法799条

会社法810条



合併の効果


合併の効力が発生するのは、吸収合併の場合は、合併契約で定めた効力発生日です。

会社法750条 
1項 
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。


これに対して、新設合併の場合は、新設会社の成立の日(設立登記の日)に、合併の効力が発生します。

会社法754条 
1項 
新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。


合併によって消滅する会社の権利義務は、法律上当然に、全て一括して、存続会社または新設会社に移転します。

会社法750条 
1項 
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。


会社法752条 
1項 
吸収合併存続持分会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。


合併の無効


合併の手続に瑕疵があった場合に、合併の無効を主張するには、合併の効力が生じた日から6ヶ月以内に、合併無効の訴えを提起しなければなりません。
訴えを提起できるのは、各当事会社の株主、取締役、合併を承認しなかった債権者などです。

合併を無効とする確定判決には、対世効があり、第三者にも効力が及びます。

会社法838条 
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容するw:確定判決は、w:第三者に対してもその効力を有する。


しかし、遡及効はなく、合併は、将来に向かって効力を失います。

会社法839条 
会社の組織に関する訴え(第834条第一号から第十二号まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。


会社分割


会社分割というのは、会社(分割会社)がその事業に関してもっている権利義務の全部または一部を会社から切り離して、既存の別の会社(承継会社)あるいは新しく設立する会社(新設会社)に包括的に承継させることです。権利義務を既存の別会社に承継させる場合にを吸収分割といいます。これに対して、新しく設立する会社(新設会社)に承継させる場合を新設分割といいます。

株式会社と合同会社は、分割会社になれますが、合名会社と合資会社は、分割会社になれません。

会社法757条 
1項
会社(株式会社又は合同会社に限る。)は、吸収分割をすることができる。この場合においては、当該会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(以下この編において「吸収分割承継会社」という。)との間で、吸収分割契約を締結しなければならない。


会社法762条 
1項 
一又は二以上の株式会社又は合同会社は、新設分割をすることができる。この場合においては、新設分割計画を作成しなければならない。


承継会社には、すべての種類の会社がなれます。


株式交換・株式移転


株式交換とは、株式会社がその発行済株式をすべてほかの会社または合同会社に取得させることです。

株式移転とは、株式会社がその発行済株式を全て新たに設立し株式を全て新たに設立する株式会社に取得させることです。

合名会社と合資会社は、完全親会社にはなれません。

会社法767条 
株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。


合同会社も、株式移転によって新たに設立される完全親会社にはなれません。

会社法772条 
1項 
一又は二以上の株式会社は、株式移転をすることができる。この場合においては、株式移転計画を作成しなければならない。 
2項 
二以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には、当該二以上の株式会社は、共同して株式移転計画を作成しなければならない。



2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】15. 組織再編

【行政書士試験・商法・会社法】15. 組織再編


【行政書士試験・商法・会社法】8. 組織再編


今回は、商法・会社法の分野の「組織再編」について勉強していきましょう。

組織変更


組織変更とは何か


いったん設立した株式会社を持分会社に変えることができます。また、逆に、持分会社を株式会社に変えることもできます。このように、会社が法人格の同一性を維持しながら、別の種類の会社になることを組織変更といいます。


組織変更手続


組織変更をするときには、法定事項を定めた組織変更計画を作成し、総株主または総社員の同意を得なければなりません。また、会社債権者の保護手続を行う必要もあります。

会社法779条 
1項
組織変更をする株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、組織変更について異議を述べることができる。 
2項
組織変更をする株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。 
一 組織変更をする旨 
二 組織変更をする株式会社の計算書類(第435条第2項に規定する計算書類をいう。以下この章において同じ。)に関する事項として法務省令で定めるもの 
三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨 
3項 
前項の規定にかかわらず、組織変更をする株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第939条第1項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。 
4項 
債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該組織変更について承認をしたものとみなす。 
5項 
債権者が第2項第三号の期間内に異議を述べたときは、組織変更をする株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該組織変更をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。



組織変更の効力は、組織変更計画で定めた効力発生日に発生します。

会社法745条 
1項 
組織変更をする株式会社は、効力発生日に、持分会社となる。


会社法747条 
1項 
組織変更をする持分会社は、効力発生日に、株式会社となる。


事業譲渡


事業譲渡って何?


事業譲渡とは、事業所、ノウハウ、得意先といった財産を丸ごと譲渡し、事業活動を受け継がせることです。

事業譲渡によって生じるのは、資産と負債の特定承継です。

特定承継とは、ここの権利義務を個々の原因によって取得することです。そのため、譲渡の対象を自由に選別することができます。しかし、各々について移転する手続きをしなければなりません。

事業譲渡後の規制


事案を譲渡した会社は、原則として、同一の市町村の区域内及び隣接する市町村の区域内において、事業を譲渡した日から20年間、同一の事業を行うことができません。

会社法21条 
1項 
事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。

事業を譲り受けた会社が、譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、原則として、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。

会社法22条 
1項 
事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。



株式会社の事業譲渡


1. 全部調達


株式会社がその事業を全て譲渡する場合は、原則として譲渡会社および譲受会社において株主総会の特別決議による承認が必要です。

会社法467条
1項

また、取締役会を設置する会社なら、重要な財産の処分や譲受に、取締役会決議が必要ですから、譲渡会社および譲受会社の取締役会決議があることも、事業を全て譲受するための要件となります。

2. 一部譲渡


株式会社が事業の一部を譲渡する場合、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認は不要です。しかし、それを超えて、重要な一部に当たるときは、原則として譲渡会社において株主総会の特別決議による承認が必要です。

全部譲渡の場合と一部譲渡の場合は異なり、譲受会社においては、株主総会の特別決議による承認は必要ありません。ただし、取締役会を設置する会社であれば、譲渡会社だけでなく、譲受会社も、取締役会決議が必要となります。

会社法362条 
4項 
取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。 
1 重要な財産の処分及び譲受け 
2 多額の借財 
3 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 
4 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 
5 第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項 
6 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備 
7 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除



3. 反対株主の株式買取請求権


株主総会の特別決議を要する事業の譲渡について、反対株主に株式買取請求権が認められています。事前に反対を通知し、株主総会においても反対した株主は、会社に対して、所有株式を公正な価格で買い取るように請求できるのです。

会社法469条



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【行政書士試験・商法・会社法】14. 会社の計算

14. 会社の計算



今回は商法・会社法の分野「会計帳簿、資本金、剰余金」等の分野に関して勉強してきます。


会計帳簿と計算書類




会社の計算


会社の計算というのは、会社の営む経済活動の効果を会計的に処理することです。株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従います。

会社法433条 
株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。


会計帳簿


1. 会計帳簿の作成と保存


株式会社は、正確な会計帳簿を作成しなければなりません。そして、会計帳簿閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければなりません。

会社法432条 
1項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。 
2項 
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

2. 会計帳簿の閲覧権


総株主の議決権の3%以上を持つ株主、または発行株式の3%以上の株式を持つ株主
は、会社の営業時間内であれば、いつでも、請求の理由を明らかにして、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写(とうしゃ:写しとること)を請求できます。

会社法433条 
1項 
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。 
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求 
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

計算書類


1. 計算書類って何?



計算書類とは、貸借対照表・損益計算書その他株式会社の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいいます。


2. 計算書類の作成・保存


株式会社は、法務省令の定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければなりません。また、各事業年度に係る計算書類・事業報告およびこれらの附属明細書を作成しなければなりません。そして、10年間、計算書類とその附属明細書を保存しなければなりません。

会社法435条 
1項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。 
2項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。 
4項 
株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。


資本金と準備金


資本金と準備金って何?


資本金とは、原則として、設立または株式の発行に際して、株主となるものが会社に払い込みまたは給付をした財産の額です。

会社法445条 
1項 
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。


これに対して、準備金とは、企業の健全な発達と会社債権者保護のために、積み立てておくべきものです。準備金には、資本準備金と利益準備金があります。

株主となる人が会社に払い込みまたは給付した財産の額のうち、2分の1を超えない額は、資本金として計上せず資本準備金とすることができます。

会社法445条 
2項 
前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。 
3項 
前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。


資本金・準備金の減少


1. 減少の方法


資本金や準備金の額を減少させることができます。資本金の減少は、原則として株主総会の特別決議によって、準備金の減少は、株主総会の普通決議によって、減少額や効力発生日などを定めれば、減少させることができます。ただし、マイナスにすることはできません。

会社法447条
1項
2項

会社法309条
2項
9号

会社法448条
1項
2項

2. 債権者の異議


資本金と準備金の減少は、会社債権者の利益に重大な影響を与えます。そのため、会社は、会社債権者に異議を述べる機会を与えるため、減少の内容や異議を述べられる旨などを官報に公告し、判明している債権者には催告しなければならないのが原則です。

会社法449条


資本金・準備金の増加


株主総会の普通決議によって、減少する剰余金の額・資本金または準備金の増加の効力発生日を定めれば、剰余金を減少させて、それを資本金・準備金に組み入れることができます。ただし、剰余金をマイナスにすることはできません。

会社法450条 
1項 
株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一 減少する剰余金の額 
二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日 
2項 
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 
3項 
第1項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。


会社法451条 
1項 
株式会社は、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一 減少する剰余金の額 
二 準備金の額の増加がその効力を生ずる日 
2項 
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 
3項 
第1項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。


剰余金の配当


剰余金とは何か?


剰余金とは、貸借対照表上の純資産額(資産の部の額から、負債の部の額を差し引いた額)から、資本金と準備金を差し引き、さらに、決算日以降の変動を考慮した額です。

会社法446条



剰余金の配当


1. 配当の要件


純資産額が300万円以上であれば、株式会社は、分配可能額の限度内で、いつでも(同一事業年度以内に何度でも、株主に剰余金の配当をすることができます)

会社法453条 
株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。

会社法458条 
第453条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。


会社法461条


ただし、自己株式を持っていても、会社自身に剰余金を配当することはできません。

会社法453条



剰余金の配当をする場合には、配当によって減少する剰余金の10分の1を資本準備金または利益準備金として計上しなければなりません。

会社法445条4項 
剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

2. 配当手続


剰余金の配当をするには、その都度、株主総会の決議で配当財産の書類などを定めなければなりません。


会社法454条 
1項 
株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一  配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額 
二  株主に対する配当財産の割当てに関する事項 
三  当該剰余金の配当がその効力を生ずる日



取締役会設置会社は、定款で1事業年度の途中に1回に限り、取締役会決議で剰余金を金銭で配当できる旨を定めることができます。これを中間配当といいます。

会社法454条
5項


3. 配当財産


中間配当の配当財産は、金銭に限定されています。しかし、通教の剰余金の配当は、現物(金銭以外の財産)で行うこともできます。株主総会の特別決議により、株主に金銭分配請求権を与えず、現物のみを配当することもできます。

会社法
309条
2項
10号

ただし、当該株式会社の株式・新規予約権・社債を配当財産とすることはできません。

会社法454条
1項
1号

会社法107条
2項
2号


違法な剰余金の配当


分配位可能額を超えた剰余金の配当は、無効です。株主や業務執行者などは、
会社に対して、交付を受けた金銭や現物の帳簿価額に相当する金銭を返還しなければなりません。

会社法462条
1項



➡【リンク】9. 組織再編

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【行政書士試験・商法・会社法】13.会社の資金調達

13.資金調達



今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野の「会社の資金調達」について勉強していきましょう。




資金の調達方法


内部資金


会社を設立する際には、資金を全て外部から集めなければなりません。これに対して、会社成立後は、事業活動によって得た収益を社内に留保して、内部資金として事業活動に使うこともできます。


外部資金の調達


会社成立後に外部から資金を調達する方法として、銀行などから借り入れるという方法もありますが、大きな企業は、株式や社債を発行して資金を集めるという方法を用いています。


株式発行による資金調達




新株の発行


会社成立後に行われる株式の発行を新株の発行といいます。新株の発行には、通常の新株発行と特殊な新株発行(株式分割)があります。

通常の新株発行


通常の新株発行は、発行するやり方によって、次のように分類されます。

①株主割当て
・・既存の株主に持分比率に応じた新株の割当てを受ける権利を与えること。

②第三者割当て
・・特別の人に対してのみ、株式引き受けの申し込みを勧誘すること。

③公募
・・広く不特定多数の投資家に対して、株式の引き受けの申し込みを勧誘することです。


募集株式の発行


募集事項の決定


募集に応じて、株式の引き受けの申し込みをした者に割り当てる株式を募集株式といいます。募集株式を発行するには、その都度、募集株式の数・払込金額・払込期日などの募集事項を決めなければなりません。

会社法199条
1項


募集事項の決定方法


募集事項を決定する方法は、非公開会社と公開会社にわかれます。


①非公開会社の場合

非公開会社であれば、原則として、株主総会の特別決議で募集事項を決定しなければなりません。

会社法199条2項

会社法309条
2項
5号


②公開会社の場合

公開会社であれば、原則として取締役会の決議で募集事項を決定します。ただし、払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合(有利発行)は、既存の株主を保護するために、公開会社であっても、株式総会の特別決議で募集事項を決定しなければなりません。

会社法201条
1項


募集株式の発行


1. 募集事項等の通知


募集事項を決定したら、次は、通知です。会社は、募集株式引受の申し込みをしようとしている者に対して、会社の商号・募集事項・払込取扱場所などを通知しなければならないのが原則です。

会社法203条
1項




2. 募集株式引受の申し込み


募集株式引受けの申し込みは、

①氏名または名称および住所
②引受けようとする募集株式の数を記載した書面を会社に交付

して行うのが原則です

会社法203条 
2項 
第199条第1項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。 
 一
申込みをする者の氏名又は名称及び住所 
 二 
引き受けようとする募集株式の数


ただし、会社の承諾を得て、電磁的方法で行うこともできます。

会社法203条 
3項 
前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。


3. 募集株式の割り当て


引受けの申し込みななされると、会社は次のことを定めなければなりません。

①募集株式の割当てを受ける者
②そのものに割り当てる募集株式の数

そして、会社は、払込期日までに、申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければなりません。


会社法204条 
1項 
株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第2項第二号の数よりも減少することができる。


会社法204条 
3項 
株式会社は、第199条第1項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。


4. 全額払込み・全部給付


割当を受けた申込人は、その株式の引受人となります。

会社法206条 
次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集株式の数について募集株式の引受人となる。 
一 
申込者 株式会社の割り当てた募集株式の数 
二 
前条の契約により募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集株式の数


引受人は、払込期日または払込期日内に、払込取扱場所で払込金額を全額払い込み、現物出資を全額給付しなければなりません。

会社法208条 
1項 
募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第199条第1項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。

会社法209条
2項

これがなされないと、その引受人は、法律上当然に権利を失います。

会社法208条
5項


5. 効力の発生


払込期日までに払い込み・給付のあった株式は、払込期日に効力を発生し、引受人は、その日から株主になります。払込期間を定めた場合は、払込み・給付のあった日に効力を発生し、株主になります。

会社法209条 
募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。 
一 
第199条第1項第四号の期日を定めた場合 当該期 
二 
第199条第1項第四号の期間を定めた場合 出資の履行をした日

発行予定株式の全てについて払込み・給付がなくても、払込み・給付のあった分については、効力が発生するのです。


募集株式発行の差し止め請求


募集株式の発行が、法令・定款に違反し、または著しく不公平な方法のため、これによって不利益を受ける恐れのある株主は、会社に対してその株式の発行をやめるように請求することができます。

会社法210条 
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第199条第1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。 
一 
当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合 
二 
当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合

無効・不存在確認の訴え


会社成立後に発行された株式の効力を否定しようという場合、会社を相手取って、無効確認の訴えあるいは不存在の確認の訴えを提起しなければなりません。

無効確認の訴えは、提起権者が株主・取締役・監査役などに限定され、提起期間も効力発生日から6ヶ月間(非公開会社は1年間)に限定されています

会社法828条
1項
3号


新株予約権


募集新株予約権


1. 新株予約権とは何か?


新株予約権というのは、行使すると、当該株式会社の株式の交付を受けとることができる権利です。新株予約権は、譲渡できるのが原則です。

新株予約権付社債


新株予約権付社債は、社債が消滅しない限り、新株予約権のみを譲渡することはできません。新株予約権付社債は、新株予約権が消滅しない限り、社債のみを譲渡することはできません。


2. 募集新株予約権とは何か?


募集に応じて新株予約権の引受の申し込みをした者に対して割り当てる新株予約権を募集新株予約権といいます。

会社法245条 
1項 
次の各号に掲げる者は、割当日に、当該各号に定める募集新株予約権の新株予約権者となる。 
一 
申込者 株式会社の割り当てた募集新株予約権 
二 
前条第1項の契約により募集新株予約権の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集新株予約権

新株予約権者は、所定の期日までに募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければなりません。

会社法246条 
1項 
第238条第1項第三号に規定する場合には、新株予約権者は、募集新株予約権についての第236条第1項第四号の期間の初日の前日(第238条第1項第五号に規定する場合にあっては、同号の期日。第三項において「払込期日」という。)までに、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければならない。


3. 募集新株予約権の発行の差止請求


募集新株予約権の発行が、法令・定款に違反し、または著しく不公平な方法により行われるため、これによって不利益を受ける恐れのある株主は、会社に対してその募集新株予約権の発行をやめるように請求することができます。

会社法247条 
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株は、株式会社に対し、第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。 
一 
当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合 
二 
当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合


新株予約権無償割当て


株式会社は、株主に無償で新株予約権を割り当てることができます。

会社法277条 
株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。


これを新株予約権無償割当てといいます。これをするには、その都度、株主総会の普通決議(取締役会設置会社は取締役会の決議)で、株主に割り当てる新株予約権の内容・数またはその算定方法・効力発生日などを定めなければなりません。

会社法278条 
1項 
株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。 
 一 
株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法 
 二 
前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法 
 三 
当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日 
 四 
株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当てを受ける株主の有する株式の種類


新株予約権の割当を受けた株主は、効力発生日に自動的に新株予約権者になります。

会社法279条 
1項 
前条第一項第一号の新株予約権の割当てを受けた株主は、同項第三号の日に、同項第一号の新株予約権の新株予約権者(同項第二号に規定する場合にあっては、同項第一号の新株予約権の新株予約権者及び同項第二号の社債の社債権者)となる。



新株予約権の行使

新株予約権の行使は、①その内容および数、②行使日を明らかにして行われなければなりません。

会社法280条

新株予約権を行使すると、そのものは、行使日に株主になります。

会社法282条 
新株予約権を行使した新株予約権者は、当該新株予約権を行使した日に、当該新株予約権の目的である株式の株主となる。


社債


社債とは何か?


社債とは、会社の割り当てによって発生する会社に対する金銭債権であり、募集車載に関する事項の定めに従って償還されるものです。社債は、一般公募から、直接、大量かつ長期の資金を調達するための手段です。株式会社だけでなく、持分会社も、社債を発行することができます。


募集社債の発行


募集社債とは、会社による募集に応じて、社債の引受の申し込みをした者に割り当てられる社債のことです。

会社が社債を引き受けるものを募集する場合、次の事項を定めなければなりません。

①募集社債の総額
②各募集社債の金額
③募集社債の利率
④募集社債の償還方法および期限
⑤利息支払の方法および期限

会社法676条 
1項 
会社は、その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集社債(当該募集に応じて当該社債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる社債をいう。以下この編において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。 
 一 
募集社債の総額 
 二 
各募集社債の金額 
 三 
募集社債の利率 
 四 
募集社債の償還の方法及び期限 
 五 
利息支払の方法及び期限 
 六 
社債券を発行するときは、その旨 
 七 
社債権者が第698条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨 
 八 
社債管理者が社債権者集会の決議によらずに第706条第1項第二号に掲げる行為をすることができることとするときは、その旨 
 九 
各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法 
 十 
募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日 
 十一 
一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日 
 十二 
前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項



取締役会設置会社では、これらを取締役会で決定しなければなりません。

会社法362条
4項
5号


取締役会の決める事項です。取締役会が置かれている場合は、取締役が定めます。



社債権者の権利


社債権者には、元本の償還を受ける権利と利息の支払いを受ける権利があります。元本の償還を受けるのは、社債の期限が到来した時です。それまでは、発行時に定められた内容の利息の支払いを受けます。



社債管理者


会社は、原則として、社債管理者を定めなければなりません。社債管理者とは、社債の発行会社から委託を受けて、社債の管理をする人です。

会社法702条 
会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りでない。


社債管理者になれるのは、銀行・信託会社などだけです。

会社法703条 
社債管理者は、次に掲げる者でなければならない。 
一 銀行 
二 信託会社 
三 前二号に掲げるもののほか、これらに準ずるものとして法務省令で定める者

社債管理者には、社債権者のために弁済を受け、また再建を実現できるようにするために必要な一切の裁判上。裁判外の行為をする権限があります。

会社法705条 
1項 
社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。


社債権者集会


社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織します。

会社法715条 
社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織する。


社債権者集会は、必要がある場合は、いつでも招集することができます。

会社法717条 
1項 
社債権者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。


法定事項および社債権者の利害に関する事項について決議をすることができます。

会社法716条 
社債権者集会は、この法律に規定する事項及び社債権者の利害に関する事項について決議をすることができる。


招集者は、決議のあった日から1週間以内に裁判所に決議の認可を申し立てしなければなりまん。

会社法732条 
社債権者集会の決議があったときは、招集者は、当該決議があった日から一週間以内に、裁判所に対し、当該決議の認可の申立てをしなければならない。


社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、効力を発生しないからです。

会社法734条 
1項 
社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。

【行政書士試験・商法・会社法】12. 委員会設置会社とは?

12. 委員会設置会社



今回は商法・会社法の分野「委員会設置会社」について勉強していきましょう。

委員会設置会社って何?


委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会および、報酬委員会を置く株式会社のことです。委員会設置会社には、取締役会、執行役および会計監査人を置かなければなりません。

会社法327条 
1項 
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。 
1. 公開会社 
2. 監査役会設置会社 
3. 監査等委員会設置会社 
4. 指名委員会等設置会社


委員会の構成・権限

各委員会は、取締役会決議で選定した3人以上の委員で組織し、委員の過半数は社外取締役でなければなりません。

会社法400条 
1項 
指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の各委員会(以下この条、次条及び第911条第3項第23号ロにおいて単に「各委員会」という。)は、委員三人以上で組織する。 
2項 
各委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議によって選定する。 
3項 
各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。 
4項 
監査委員会の委員(以下「監査委員」という。)は、指名委員会等設置会社若しくはその子会社の執行役若しくは業務執行取締役又は指名委員会等設置会社の子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは支配人その他の使用人を兼ねることができない。


指名委員会は、株主総会に提出する取締役・会計参与の選任・解任に関する議案の内容を決定します。監査委員会は、執行役等の職務執行の監査や監査記録の作成などを行います。そして報酬委員会は、執行役等の個人別の報酬内容を決定します。


会社法404条 
指名委員会は、株主総会に提出する取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の選任及び解任に関する議案の内容を決定する。


委員会設置会社の監督と執行

委員会設置会社になると、監督と執行が制度的に分類され、取締役会は、監督機能が中心となります。業務執行は、取締役決議で選任された執行役が担当し、

会社法402条 
2項 
執行役は、取締役会の決議によって選任する。


会社法418条 
執行役は、次に掲げる職務を行う。 
第416条第4項の規定による取締役会の決議によって委任を受けた委員会設置会社の業務の執行の決定 
委員会設置会社の業務の執行

代表権は、取締役会が執行役の中から選定した代表執行役が行使します。

会社法420条 
1項 
取締役会は、執行役の中から代表執行役を選定しなければならない。この場合において、執行役が一人のときは、その者が代表執行役に選定されたものとする。 
2項 
代表執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解職することができる。 
3項 
第349条第4項及び第5項の規定は代表執行役について、第352条の規定は民事保全法第56条 に規定する仮処分命令により選任された執行役又は代表執行役の職務を代行する者について、第401条第2項から第4項までの規定は代表執行役が欠けた場合又は定款で定めた代表執行役の員数が欠けた場合について、それぞれ準用する。

原則として、取締役という資格では、業務を執行できなくなるのです。

会社法415条 
委員会設置会社の取締役は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行することができない。