【重要判例】博多駅テレビフィルム提出命令事件/最大決昭44.11.28
今回は、報道の自由は憲法21条で保障されるかが争点となった博多駅テレビフィルム提出命令事件について紹介したいと思います。
博多駅テレビフィルム提出命令事件の内容
時は1968年(昭和43年)、アメリカ政府は日本政府に対して行った原子力空母の寄港の申し出が承認されたことから、原子力空母を佐世保湾に入港させました。当時は、アメリカがベトナム戦争の最中であった為、この寄港に対して反対派の学生が大々的な反対運動を展開し、機動隊と衝突しました。
そして、闘争に参加するため博多駅に下車した学生に対し、機動隊員が行き過ぎた静止行為を行ったとして、特別公務員暴行陵虐罪、職権濫用罪で告発されました。この騒動は、佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争と呼ばれています。
しかし、地検が機動隊員を不起訴処分としたため、刑事訴訟法262条により審判請求がなされた。この付審判請求がなされた。この付審判請求の審理にあたって、裁判所は、そのときの模様を撮影したとされるテレビフィルムの提出をテレビ局に命じた。
この事件の争点
①報道の自由は、憲法21条で保障されるか?
②報道のための取材自由は、憲法21条で保障されるか?
③裁判所がテレビフィルムの提出を命じることは、報道・取材の自由に対する侵害となるか?
判決のポイント
①報道の自由は、憲法21条によって保障される。
②報道のための取材の自由は、憲法21条の趣旨に照らし十分尊重に値する。この点で、憲法21条によって保障される報道の自由とは異なることに特に注意が必要である。取材は、報道のための手段にすぎない。つまり、取材の自由は、憲法21条によって「保障」まではされない。「尊重」までにとどまる。
報道の自由 → 憲法21条から保障される。
取材の自由 → 憲法21条から尊重される。保証まではされない。
提出命令の合憲性は、公正な裁判の要請に基づく提出命令の必要性と、取材の自由が妨げられる程度及び報道の自由に及ぼす影響の度合い等の諸事情を比較衡量して決められる。
本件の提出命令は、証拠上重要な価値があり、テレビフィルムはすでに放映済みである点などから、合憲である。
0 件のコメント:
コメントを投稿