13.資金調達
今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野の「会社の資金調達」について勉強していきましょう。
資金の調達方法
内部資金
会社を設立する際には、資金を全て外部から集めなければなりません。これに対して、会社成立後は、事業活動によって得た収益を社内に留保して、内部資金として事業活動に使うこともできます。
外部資金の調達
会社成立後に外部から資金を調達する方法として、銀行などから借り入れるという方法もありますが、大きな企業は、株式や社債を発行して資金を集めるという方法を用いています。
株式発行による資金調達
新株の発行
会社成立後に行われる株式の発行を新株の発行といいます。新株の発行には、通常の新株発行と特殊な新株発行(株式分割)があります。
通常の新株発行
通常の新株発行は、発行するやり方によって、次のように分類されます。
①株主割当て
・・既存の株主に持分比率に応じた新株の割当てを受ける権利を与えること。
②第三者割当て
・・特別の人に対してのみ、株式引き受けの申し込みを勧誘すること。
③公募
・・広く不特定多数の投資家に対して、株式の引き受けの申し込みを勧誘することです。
募集株式の発行
募集事項の決定
募集に応じて、株式の引き受けの申し込みをした者に割り当てる株式を募集株式といいます。募集株式を発行するには、その都度、募集株式の数・払込金額・払込期日などの募集事項を決めなければなりません。
会社法199条
1項
募集事項の決定方法
募集事項を決定する方法は、非公開会社と公開会社にわかれます。
①非公開会社の場合
非公開会社であれば、原則として、株主総会の特別決議で募集事項を決定しなければなりません。
会社法199条2項
会社法309条
2項
5号
②公開会社の場合
公開会社であれば、原則として取締役会の決議で募集事項を決定します。ただし、払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合(有利発行)は、既存の株主を保護するために、公開会社であっても、株式総会の特別決議で募集事項を決定しなければなりません。
会社法201条
1項
募集株式の発行
1. 募集事項等の通知
募集事項を決定したら、次は、通知です。会社は、募集株式引受の申し込みをしようとしている者に対して、会社の商号・募集事項・払込取扱場所などを通知しなければならないのが原則です。
会社法203条
1項
2. 募集株式引受の申し込み
募集株式引受けの申し込みは、
①氏名または名称および住所
②引受けようとする募集株式の数を記載した書面を会社に交付
して行うのが原則です
会社法203条
2項
第199条第1項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。
一
申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二
引き受けようとする募集株式の数
ただし、会社の承諾を得て、電磁的方法で行うこともできます。
会社法203条
3項
前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。
3. 募集株式の割り当て
引受けの申し込みななされると、会社は次のことを定めなければなりません。
①募集株式の割当てを受ける者
②そのものに割り当てる募集株式の数
そして、会社は、払込期日までに、申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければなりません。
会社法204条
1項
株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第2項第二号の数よりも減少することができる。
会社法204条
3項
株式会社は、第199条第1項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。
4. 全額払込み・全部給付
割当を受けた申込人は、その株式の引受人となります。
会社法206条
次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集株式の数について募集株式の引受人となる。
一
申込者 株式会社の割り当てた募集株式の数
二
前条の契約により募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集株式の数
引受人は、払込期日または払込期日内に、払込取扱場所で払込金額を全額払い込み、現物出資を全額給付しなければなりません。
会社法208条
1項
募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第199条第1項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。
会社法209条
2項
これがなされないと、その引受人は、法律上当然に権利を失います。
会社法208条
5項
5. 効力の発生
払込期日までに払い込み・給付のあった株式は、払込期日に効力を発生し、引受人は、その日から株主になります。払込期間を定めた場合は、払込み・給付のあった日に効力を発生し、株主になります。
会社法209条
募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。
一
第199条第1項第四号の期日を定めた場合 当該期
二
第199条第1項第四号の期間を定めた場合 出資の履行をした日
発行予定株式の全てについて払込み・給付がなくても、払込み・給付のあった分については、効力が発生するのです。
募集株式発行の差し止め請求
募集株式の発行が、法令・定款に違反し、または著しく不公平な方法のため、これによって不利益を受ける恐れのある株主は、会社に対してその株式の発行をやめるように請求することができます。
会社法210条
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第199条第1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。
一
当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
二
当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合
無効・不存在確認の訴え
会社成立後に発行された株式の効力を否定しようという場合、会社を相手取って、無効確認の訴えあるいは不存在の確認の訴えを提起しなければなりません。
無効確認の訴えは、提起権者が株主・取締役・監査役などに限定され、提起期間も効力発生日から6ヶ月間(非公開会社は1年間)に限定されています
会社法828条
1項
3号
新株予約権
募集新株予約権
1. 新株予約権とは何か?
新株予約権というのは、行使すると、当該株式会社の株式の交付を受けとることができる権利です。新株予約権は、譲渡できるのが原則です。
新株予約権付社債
新株予約権付社債は、社債が消滅しない限り、新株予約権のみを譲渡することはできません。新株予約権付社債は、新株予約権が消滅しない限り、社債のみを譲渡することはできません。
2. 募集新株予約権とは何か?
募集に応じて新株予約権の引受の申し込みをした者に対して割り当てる新株予約権を募集新株予約権といいます。
会社法245条
1項
次の各号に掲げる者は、割当日に、当該各号に定める募集新株予約権の新株予約権者となる。
一
申込者 株式会社の割り当てた募集新株予約権
二
前条第1項の契約により募集新株予約権の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集新株予約権
新株予約権者は、所定の期日までに募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければなりません。
会社法246条
1項
第238条第1項第三号に規定する場合には、新株予約権者は、募集新株予約権についての第236条第1項第四号の期間の初日の前日(第238条第1項第五号に規定する場合にあっては、同号の期日。第三項において「払込期日」という。)までに、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければならない。
3. 募集新株予約権の発行の差止請求
募集新株予約権の発行が、法令・定款に違反し、または著しく不公平な方法により行われるため、これによって不利益を受ける恐れのある株主は、会社に対してその募集新株予約権の発行をやめるように請求することができます。
会社法247条
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株は、株式会社に対し、第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。
一
当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合
二
当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合
新株予約権無償割当て
株式会社は、株主に無償で新株予約権を割り当てることができます。
会社法277条
株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。
これを新株予約権無償割当てといいます。これをするには、その都度、株主総会の普通決議(取締役会設置会社は取締役会の決議)で、株主に割り当てる新株予約権の内容・数またはその算定方法・効力発生日などを定めなければなりません。
会社法278条
1項
株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一
株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法
二
前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法
三
当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日
四
株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当てを受ける株主の有する株式の種類
新株予約権の割当を受けた株主は、効力発生日に自動的に新株予約権者になります。
会社法279条
1項
前条第一項第一号の新株予約権の割当てを受けた株主は、同項第三号の日に、同項第一号の新株予約権の新株予約権者(同項第二号に規定する場合にあっては、同項第一号の新株予約権の新株予約権者及び同項第二号の社債の社債権者)となる。
新株予約権の行使
新株予約権の行使は、①その内容および数、②行使日を明らかにして行われなければなりません。
会社法280条
新株予約権を行使すると、そのものは、行使日に株主になります。
会社法282条
新株予約権を行使した新株予約権者は、当該新株予約権を行使した日に、当該新株予約権の目的である株式の株主となる。
社債
社債とは何か?
社債とは、会社の割り当てによって発生する会社に対する金銭債権であり、募集車載に関する事項の定めに従って償還されるものです。社債は、一般公募から、直接、大量かつ長期の資金を調達するための手段です。株式会社だけでなく、持分会社も、社債を発行することができます。
募集社債の発行
募集社債とは、会社による募集に応じて、社債の引受の申し込みをした者に割り当てられる社債のことです。
会社が社債を引き受けるものを募集する場合、次の事項を定めなければなりません。
①募集社債の総額
②各募集社債の金額
③募集社債の利率
④募集社債の償還方法および期限
⑤利息支払の方法および期限
会社法676条
1項
会社は、その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集社債(当該募集に応じて当該社債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる社債をいう。以下この編において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一
募集社債の総額
二
各募集社債の金額
三
募集社債の利率
四
募集社債の償還の方法及び期限
五
利息支払の方法及び期限
六
社債券を発行するときは、その旨
七
社債権者が第698条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
八
社債管理者が社債権者集会の決議によらずに第706条第1項第二号に掲げる行為をすることができることとするときは、その旨
九
各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法
十
募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日
十一
一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日
十二
前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
取締役会設置会社では、これらを取締役会で決定しなければなりません。
会社法362条
4項
5号
取締役会の決める事項です。取締役会が置かれている場合は、取締役が定めます。
社債権者の権利
社債権者には、元本の償還を受ける権利と利息の支払いを受ける権利があります。元本の償還を受けるのは、社債の期限が到来した時です。それまでは、発行時に定められた内容の利息の支払いを受けます。
社債管理者
会社は、原則として、社債管理者を定めなければなりません。社債管理者とは、社債の発行会社から委託を受けて、社債の管理をする人です。
会社法702条
会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りでない。
社債管理者になれるのは、銀行・信託会社などだけです。
会社法703条
社債管理者は、次に掲げる者でなければならない。
一 銀行
二 信託会社
三 前二号に掲げるもののほか、これらに準ずるものとして法務省令で定める者
社債管理者には、社債権者のために弁済を受け、また再建を実現できるようにするために必要な一切の裁判上。裁判外の行為をする権限があります。
会社法705条
1項
社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
社債権者集会
社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織します。
会社法715条
社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織する。
社債権者集会は、必要がある場合は、いつでも招集することができます。
会社法717条
1項
社債権者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
法定事項および社債権者の利害に関する事項について決議をすることができます。
会社法716条
社債権者集会は、この法律に規定する事項及び社債権者の利害に関する事項について決議をすることができる。
招集者は、決議のあった日から1週間以内に裁判所に決議の認可を申し立てしなければなりまん。
会社法732条
社債権者集会の決議があったときは、招集者は、当該決議があった日から一週間以内に、裁判所に対し、当該決議の認可の申立てをしなければならない。
社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、効力を発生しないからです。
会社法734条
1項
社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。
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