2020年1月22日水曜日

多摩川水害訴訟って何?行政書士試験の重要判例・・河川の安全性とは?また河川管理の瑕疵とは?

【重要判例】多摩川水害訴訟/最判平2.12.13


水害当時の写真 狛江市HPより抜粋 -悪夢のような多摩川堤防決壊


どうもTakaです。
今回は、改修済みの河川における安全性とは何かが問われた「多摩川水害訴訟」について紹介したいと思います。この水害に関しては、長年にわたって裁判で争われた事案で一審は原告の住民が勝訴。控訴審は国が勝訴したが、上告審で破棄差し戻しとなった。最終的には、差戻控訴審で住民が勝訴し、確定しました。今回は、上告審で示された、河川の安全性とは?また河川管理の瑕疵とはどう考えられるかに焦点を当てて、内容を紹介したいと思います。


多摩川水害訴訟の内容


多摩川は、昭和41年に河川法4条に基づき一級河川に指定され、同年7月に建設大臣が策定した「多摩川水系工事実施基本計画」に従って改修工事が実施されました。しかし、狛江市猪方地区については、「改修工事完成区画」とされて、新しい改修の計画はなされませんでした。

そんな中、昭和49年は夜から降り続いた豪雨により、多摩川は著しく増水し、堤防及びその後背地の一部が浸食されて家屋19棟が流されてしまいました。この時の洪水は過去に発生した洪水とほぼ同程度のものであり、そこで、この水害の被害者らは、河川を管理する国に対して、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償を請求した。

国家賠償法2条 
1項 
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。


多摩川水害訴訟の争点


①河川の安全性とは何か?

②河川の改修整備がなされた後に水害発生の危険の予測が可能となっていた場合には、それについての河川管理の瑕疵はどのように考えるべきか?


判決のポイント


①河川の備えるべき安全性とは、一般に施行されてきた治水事業の過程における河川の改修・整備の段階に対応する安全性を持って足りるものとせざるを得ない。工事実施基本計画が策定され、右計画に準拠して改修・整備の必要がないものとされた河川の改修、整備の段階に対応する安全性とは、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性をいうものと解すべきである。

②改修整備後に水害発生の危険の予測が可能になった場合の河川管理の瑕疵は、過去に発生した水害の規模や頻度の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無といった諸般の事情、河川管理における財政的・技術的・社会的制約を考慮した上で、当該危険の予測が可能となった時点から現実の水害発生時までの間にその危険に対する対策を講じるべきであったか否かを判断すべきである。

以上の①②の様に示されました。
➡【リンク】最高裁判所HP・・   昭和63(オ)791

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