2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】14. 会社の計算

14. 会社の計算



今回は商法・会社法の分野「会計帳簿、資本金、剰余金」等の分野に関して勉強してきます。


会計帳簿と計算書類




会社の計算


会社の計算というのは、会社の営む経済活動の効果を会計的に処理することです。株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従います。

会社法433条 
株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。


会計帳簿


1. 会計帳簿の作成と保存


株式会社は、正確な会計帳簿を作成しなければなりません。そして、会計帳簿閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければなりません。

会社法432条 
1項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。 
2項 
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

2. 会計帳簿の閲覧権


総株主の議決権の3%以上を持つ株主、または発行株式の3%以上の株式を持つ株主
は、会社の営業時間内であれば、いつでも、請求の理由を明らかにして、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写(とうしゃ:写しとること)を請求できます。

会社法433条 
1項 
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。 
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求 
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

計算書類


1. 計算書類って何?



計算書類とは、貸借対照表・損益計算書その他株式会社の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいいます。


2. 計算書類の作成・保存


株式会社は、法務省令の定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければなりません。また、各事業年度に係る計算書類・事業報告およびこれらの附属明細書を作成しなければなりません。そして、10年間、計算書類とその附属明細書を保存しなければなりません。

会社法435条 
1項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。 
2項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。 
4項 
株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。


資本金と準備金


資本金と準備金って何?


資本金とは、原則として、設立または株式の発行に際して、株主となるものが会社に払い込みまたは給付をした財産の額です。

会社法445条 
1項 
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。


これに対して、準備金とは、企業の健全な発達と会社債権者保護のために、積み立てておくべきものです。準備金には、資本準備金と利益準備金があります。

株主となる人が会社に払い込みまたは給付した財産の額のうち、2分の1を超えない額は、資本金として計上せず資本準備金とすることができます。

会社法445条 
2項 
前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。 
3項 
前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。


資本金・準備金の減少


1. 減少の方法


資本金や準備金の額を減少させることができます。資本金の減少は、原則として株主総会の特別決議によって、準備金の減少は、株主総会の普通決議によって、減少額や効力発生日などを定めれば、減少させることができます。ただし、マイナスにすることはできません。

会社法447条
1項
2項

会社法309条
2項
9号

会社法448条
1項
2項

2. 債権者の異議


資本金と準備金の減少は、会社債権者の利益に重大な影響を与えます。そのため、会社は、会社債権者に異議を述べる機会を与えるため、減少の内容や異議を述べられる旨などを官報に公告し、判明している債権者には催告しなければならないのが原則です。

会社法449条


資本金・準備金の増加


株主総会の普通決議によって、減少する剰余金の額・資本金または準備金の増加の効力発生日を定めれば、剰余金を減少させて、それを資本金・準備金に組み入れることができます。ただし、剰余金をマイナスにすることはできません。

会社法450条 
1項 
株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一 減少する剰余金の額 
二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日 
2項 
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 
3項 
第1項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。


会社法451条 
1項 
株式会社は、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一 減少する剰余金の額 
二 準備金の額の増加がその効力を生ずる日 
2項 
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 
3項 
第1項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。


剰余金の配当


剰余金とは何か?


剰余金とは、貸借対照表上の純資産額(資産の部の額から、負債の部の額を差し引いた額)から、資本金と準備金を差し引き、さらに、決算日以降の変動を考慮した額です。

会社法446条



剰余金の配当


1. 配当の要件


純資産額が300万円以上であれば、株式会社は、分配可能額の限度内で、いつでも(同一事業年度以内に何度でも、株主に剰余金の配当をすることができます)

会社法453条 
株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。

会社法458条 
第453条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。


会社法461条


ただし、自己株式を持っていても、会社自身に剰余金を配当することはできません。

会社法453条



剰余金の配当をする場合には、配当によって減少する剰余金の10分の1を資本準備金または利益準備金として計上しなければなりません。

会社法445条4項 
剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

2. 配当手続


剰余金の配当をするには、その都度、株主総会の決議で配当財産の書類などを定めなければなりません。


会社法454条 
1項 
株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一  配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額 
二  株主に対する配当財産の割当てに関する事項 
三  当該剰余金の配当がその効力を生ずる日



取締役会設置会社は、定款で1事業年度の途中に1回に限り、取締役会決議で剰余金を金銭で配当できる旨を定めることができます。これを中間配当といいます。

会社法454条
5項


3. 配当財産


中間配当の配当財産は、金銭に限定されています。しかし、通教の剰余金の配当は、現物(金銭以外の財産)で行うこともできます。株主総会の特別決議により、株主に金銭分配請求権を与えず、現物のみを配当することもできます。

会社法
309条
2項
10号

ただし、当該株式会社の株式・新規予約権・社債を配当財産とすることはできません。

会社法454条
1項
1号

会社法107条
2項
2号


違法な剰余金の配当


分配位可能額を超えた剰余金の配当は、無効です。株主や業務執行者などは、
会社に対して、交付を受けた金銭や現物の帳簿価額に相当する金銭を返還しなければなりません。

会社法462条
1項



➡【リンク】9. 組織再編

➡サイトトップへ戻る

0 件のコメント:

コメントを投稿