2019年10月8日火曜日

11. 契約総論・・・契約とは何かという基本から勉強していきましょう。

11. 契約総論



今回は、民法の分野の「契約総論」について説明していきます。




契約の成立


契約とは何か?


契約とは、相対する両当事者の意思表示(申し込みと承諾)の合致(合意)によって成立する法律行為です。契約は、法律行為の1つであり、その成立によって債権・債務という私法上の効果が発生するものです。

契約は、向かい合った関係にある2つの意思表示によって成り立っています。2つの意思表示のうち、先になされた意思表示を申し込みといい、これを受けて後からなされた意思表示を承諾といいます。



契約の成立要件


1. 諾成契約と要物契約


契約は、原則として両当事者の意思表示が合致すれば成立します。このように両当事者の合意だけで成立する契約を諾成契約といいます。

これに対して、両当事者の合意だけでは契約が成立せず、目的物が引き渡されて初めて契約が成立するものもあります。これを要物契約といいます。


2. 契約方法の自由


両当事者の合意は、口契約だけでよく、書面を作成する必要はないのが原則です。これを契約方式の自由といいます。


申し込みと承諾


1. 申込みの効力


契約が成立するためには、まず一方が申し込みをしなければなりません。隔地者間の申込みは、相手型が知ることのできる状態になった時(到達時)に効力を生じ、相手型が承諾をして、契約を成立させることのできる状態(承諾適格のある状態)になります。
申込者が承諾期間を定めていた場合には、その期間の経過により、申し込みは効力を失い、承諾適格を失います。また、申し込みが承諾期間を定めずになされた場合も、取引慣行等に従った相当な期間の経過によって、申込みの承諾適格は消滅します。


2. 申込みの撤回


申 し込みをしたものの、途中で気が変わった場合、申込みが相手方に到達する前であれば、申込みの効力が発生していませんから、当然撤回することができます。
申し込みが、既に相手方に到達しており、しかも、承諾期間を定めていた場合には、その期間が経過するまで、申込みを撤回することができません。これを申し込みの拘束力といいます。
そして、承諾期間を定めていない場合も、承諾通知を受けるのに相当な期間は、申込みの拘束力があり、その期間は、申込みを撤回できないことになっています。

民法524条 
承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。


3. 承諾


承諾は、申込みに対応する内容でなければなりません。条件をつけるなど、申込みに変更を加えて承諾をした場合には、その申込みを拒絶するとともに、新たな申し込みをしたものとみなされます。

民法528条 
承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

承諾は、申込みに承諾適格がある間にしなければなりません。申し込みに承諾期間が定められていた場合には、その期間の経過により、申し込みの承諾適格がなくなりますから、承諾期間内に承諾を到達させる必要があります。ただし、承諾が遅れ、承諾期間経過後に到達した場合には、申込者は、遅延した承諾を新たな申し込みとみなすことができます。

民法523条 
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。


そのため、申込者が、遅延した承諾を新たな申込みとみなし、承諾すると、契約が成立します。


契約の成立時期


1. 発信主義


契約の成立時期については、発信主義がとられており、隔地者間の契約も、承諾の発信時に成立します。

民法526条 
1項 
隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。 
2項 
申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

2. 意思実現による契約の成立


申込者が返事は要らないと言った場合や、取引慣行上特に承諾の通知が必要でなかった場合には、承諾の意思表示と認められるような行為があれば、その時に契約が成立します。これを意思実現による契約の成立といいます。

3. 交叉申込み


両当事者がほぼ同時に申込みを行う(先になされた申込みが到達する前に、後の申し込みがなされる)という場合もあります。これを交叉申し込みといいます。

交叉申込みによっても、契約は成立します。ただし、いずれも申込みであり、承諾がないため、民法526条1校は適用されず、後の申し込みが到達した時に契約が成立します。


契約存続中の関係


双務契約の牽連性


1. 双務契約と片務契約


契約が成立すると、当事者双方か相互に対価的な関係にある債務を負うことになる契約を双務契約といいます。代表例は、売買契約です。
これに対して、双方の債務が対価的な関係にない契約や一方の当事者だけが債務を負うことになる契約を片務契約といいます。

例:贈与契約



2. 牽連性



双務契約によって生じる2つの債務は、相互に対価的関係にあります。


双務契約によって生じる2つの債務は、双方ともに有効に成立する場合にのみ成立し、一方の債務が何らかの理由で有効に成立しない場合には、他方も有効に成立しません(成立上の牽連性)。

そして、両債務は、一方が履行されない間は、他方も履行しなくて良いという関係にあります(履行上の牽連性)。

また、両債務は、一方が履行されずに消滅した場合には、他方も消滅するのが原則です(存続上の牽連性)。


同時履行の抗弁権


1. 同時履行の抗弁権とは何か?


同時履行の抗弁権とは、相手方が、自分の債務も弁済期にあるのに何もせず、こちらの債務の履行ばかり要求する場合に、同時に履行しろと言い返すことができることです。

民法533条 
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。


同時履行の抗弁権は、当事者間の公平を図り、不必要な争いを未然に防ぐためのものであり、相手方の履行を確実なものにするという機能もあります、

2. 同時履行の抗弁権の成立要件


同時履行の抗弁権は、同一の双務契約から発生した対価的関係にある2つの債務について認められるのが原則である。しかし、この要件は緩和されており、2つの債務が同一の契約から発生したものでなくても、両債務の履行を関連して行わせるのが公平である場合に、同時履行の抗弁権が認められることがあります。例えば、契約が解除され、双方が原状回復義務を負う場合、その義務は、同時履行の関係にあります。
民法546条

3. 同時履行の抗弁権の効果


同時履行の抗弁権があれば、弁済期がやってきても、債務を履行する必要はありません。相手方が履行の提供をするまでは、履行を拒むことができ、履行を拒んでも、債務不履行責任は発生しません。そのため、売買の目的物の引き渡しを求める訴えが提起され、それが認められたとしても、目的物の引き渡しと代金の支払いが、同時履行の関係にある場合には、代金の支払いと引き換えに、目的物を引き渡せという判決(引換給付判決)がなされるにすぎないです。

危険負担


1. 危険負担とは何か?


双務契約の成立後、いずれの債務も完全には履行されていないときに、一方の債務がその債務者の帰責事由によらずに履行不能になった場合、他方の債務はどうなるかという問題を危険負担の問題といいます。一方の債務の消滅という危険(リスク)をいずれかの当事者が負担するかという問題です。

2. 債務者主義


当事者に落ち度がないのに、一方の債務が履行不能になった場合、双務契約の存続条の牽連性により、他方の債務も消滅するのが原則です。これは、履行不能になった債務の債務者から見れば、自分の権利が消滅してしまうことを意味します。そのため、一方の債務の履行不能による危険を負担するのは、原則として債務者であり、債権者は権利も失います。これを債務者主義といいます。


3. 特定物売買の危険負担


これに対して、特定物売買など、特定物に所有権などの物権を設定または移転する双務契約については、債権者主義が採用されています。
民法534条1項

特定物が、売主(債権者)の帰責事由によらずに滅失または損傷した場合には、買主(債権者)がそのリスクを負い、飼い主の代金支払い債務は残るということです。そのため、飼い主は、目的物を、受け取ることができないのに、代金を支払わなければならないことになります。


契約の解除


契約の解除とは何か?


契約の解除とは、契約の一方当事者の意思により契約がなされなかったのとほぼ同じ状態に戻すことをいいます。契約を一方的に破棄し、白紙に戻すことを解除と言います。

解除は、相手方に大きな影響を与えるため、解除は両当事者が合意した要件を満たす場合(約定解除)と、法が定めた要件を満たす場合(法定解除)に限定されています。

債務不履行を理由とする解除


1. 解除の要件


債務不履行があり、それを正当化する事由(同時履行の抗弁権など)がなく、かつ、それが債務者の帰責事由に基づく場合、債権者は、一方的にその債権の発生原因である契約を解除することができます。

2. 催告


履行遅滞や追感可能な不完全履行を理由に、契約を解除する場合には、原則として最後通知たる催告を行い、相手肩に解除を免れる最後のチャンスを与えなければなりません。

民法541条 
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。



相手方が催告に応じない場合に初めて、解除権が発生します。

履行の催告には、相当の期間を定める必要があります。具体的状況のもとで、客観的に見て履行に必要と判断される期間を定めて、履行を催告しなければなりません。

これに対して、履行不能になった場合には、催告なしで解除することができます。

民法543条 
履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


債務の本旨に従った履行ができない状態になっている場合には、催告をしても無意味だからです。


解除の効果


契約が解除されると、各当事者は、原状回復ぎむを負います。各当事者は、法律関係を契約前の状態に戻さなければならないのです。そのため、契約が解除されると、未履行の債務を履行する必要はなくなりますが、すでに履行した債務を元に戻さなければなりません。
しかし、解除の前に利害関係を持つようになった第3者は、善意・悪意を問わず、保護されるためには、目的物が不動産なら登記を備え、それが動産なら引渡しを受け、自分の権利を他の人にも主張できるようにしておく必要があるといってます。



次は、民法の分野の「売買と贈与」に関して紹介していきます。
➡【リンク】12. 売買と贈与

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