2019年10月15日火曜日

【行政書士試験・民法】13. 物の貸し借り・・・賃貸借契約とはどんなものかをイメージしましょう!

13. 物の貸し借り


【行政書士試験】13. 物の貸し借り・・・賃貸借契約とはどんなものかをイメージしましょう!

今回は民法の分野の「物の貸し借り」について紹介していきます。





消費賃借




消費賃借契約とは何か


消費賃借契約とは、借主が貸主から金銭その他の代替を受け取り、それを消費し、受け取ったものと同時・同等・同意の物を返すという契約です。消費賃借では、借りた物の所有権は、借主に移ります。そのため、借主はそのものを自由に使ったり、処分したりすることができ、後日、同じ物を同じ量だけ別途調達し、貸主に返せばよいのです。

わかりやすい例でいうと、お金の貸し借りのがわかりやすいと思います。

消費賃借契約の性質


消費賃借契約は、目的物を受け取ることによって成立します。

民法587条 
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。


消費賃借契約は、目的物の授受があって初めて成立する要物契約です。

消費賃借契約は、要物契約であり、貸主は、既に目的物を引き渡し済みですから、契約成立によって発生する債務は、借主の返済債務だけです。消費賃借契約は、借主だけが、引き渡しを受けた物と同種・同等・同量の物の返済債務を負う片務契約なのです。

なお、利息を付けることに合意していた場合には、借主は、借りた金額に利息を加えて返還する必要があります。(利息付の消費賃借契約)。


返還時期


返還時期について定めがあれば、当然それに従います。しかし、借主は、返還時期が到達しなくても、返還することができます。期限の利益は借主にあり、借主はそれを放棄できますから、いつでも返還することができるのです。

返還時期が定まっていない場合には、貸主は、相当の期間を定めて催告することができます。そして、相当の期間が経過すると、借主に返済義務が生じ、これを怠ると、履行遅滞の責任を負うことになります。


使用貸借




使用貸借契約とは何か?


使用貸借契約とは、目的物を無償で、使用収益させる契約です。使用貸借契約は、目的物の授受によって成立し、効力が発生する要物契約です。

つまりは、わかりやすく言うと、タダで物を貸す契約ということです。

民法593条 
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。


そのため、契約成立後には、借主が返済債務を負うだけで、借主は債務を負いません(片務契約)。


目的物の使用収益


使用貸借契約が成立すると、借主は目的物の使用収益権を取得しますが、その使用収益は、契約または目的物の性質によって決まる用法どおりのものでなければなりません。また、無断で目的物を第三者に使用収益させてはなりません。

民法594条 
1項 
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。 
2項 
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。 
3項 
借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。


借主がこれらの義務に違反すると、貸主は、契約を解除して、目的物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償請求をすることもできます。

民法600条 
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。


使用貸借の終了


契約に返還時期の定めがある場合、その時期の到来によって使用貸借契約は終了し、借主は借りた物そのものを返還しなければなりません。

返還時期の定めはないが、使用収益の目的について定めがある場合には、その目的に従った使用収益が終了した時に、借主は目的物を返還しなければなりません。現実には契約の目的を達成できていなくても、その目的達成に必要な期間が経過した場合には、貸主は目的物の返還を請求できます。

そして、返還時期も、使用収益の目的も定めていない場合には、貸主は、いつでも返還を請求することができます。

民法597条 
1項 
借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。 
2項 
当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。 
3項 
当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

また、使用貸借契約は、借主の死亡によって終了します。使用貸借契約は、貸主と借主の特殊な思いやりを持った人間関係に基づくただ貸しであって、人的特定性の強い契約だからです。


賃貸借:ちんたいしゃく


賃貸借契約とは何か?


賃貸借契約とは何か?


賃貸借契約とは、当事者の一方(賃貸人)が相手方(賃借人)に目的物の使用収益権を与え、その対価として賃料を取るという契約です。賃料を取ってものを使わせるという契約が、賃貸借契約です。

わかりやすい例でいれば、賃貸マンションを借りるときのような契約のことです。

賃貸借契約は、賃貸人と賃借人の合意だけで成立する諾成契約です。

民法601条 
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。


賃貸借契約が成立すると、賃貸人は目的物を使用収益させる債務を負い、賃借人は賃料を支払う義務を負います。両債務は対価関係にあるから、賃貸借契約は、双務契約であり、有償契約でもあります。


賃借権の存続期間


賃借権の存続期間について、民法は上限を20年と定めています。当事者間で20年を超える存続期間を定めても、20年に短縮されます。

民法604条 
1項 
賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。 
2項 
賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。

しかし、建物の賃貸借については、20年以上の存続期間を定めることができます。

借地借家法29条 
1項 
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。 
2項 
民法第604条 の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。


また、普通の借地権の存続期間は、借地上の建物の種類を問わず、30年です。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間が存続期間となります。

借地借家法3条 
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。


賃貸人の義務


賃貸借契約が成立すると、賃貸人は、賃借人に目的物を使用収益させる義務を負います。そのため、第三者が目的物の使用収益を妨害している場合には、賃貸人は、それを排除しなければなりません。

また、賃貸人の目的物を使用収益させる義務には、目的物を使用収益可能の状態に維持する義務も含まれいてます。そのため、賃貸人は、必要な修繕や必要な費用の負担をしなければなりません。

民法606条 
1項 
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 
2項 
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。


民法608条 
1項 
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。 
2項 
賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。


賃借人の義務


賃借人は、目的物の使用収益の対価として賃料を支払わなければなりません。賃料は、後払いが原則であり、動産、建物および宅地については毎月末に支払わなければならないとされています。

民法614条 
賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。


また、賃借人は、契約または目的物の性質によって決まる用法を遵守して、目的物を使用収益しなければなりません。

民法616条 
第594条第1項、第597条第1項及び第598条の規定は、賃貸借について準用する。

民法594条 
1項 
主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。 
2項 
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。 
3項 
借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。


第三者に対する対抗力


1. 不動産賃借権の対抗要件


不動産賃借権は、登記をすれば、対抗力を取得し、賃借権を第三者にも主張できます。

民法605条 
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。


しかし、判例では、賃借権が債権であることを理由に、登記請求権を否定したため、賃借人自ら対抗要件を備えることは出来なくなり、民法605条は事実上機能しなくなっています。


2. 建物の賃貸借の対抗要件


借地借家法は、建物の賃貸借について、建物の引渡しを対抗要件としています。建物の引渡しがあれば、その後に建物が売却されても、従来の賃貸借関係がそのまま買主(新しい建物の所有者)との間で存続します。

借地借家法31条 
1項 
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。 
2項 
民法第566条第1項 及び第3項 の規定は、前項の規定により効力を有する賃貸借の目的である建物が売買の目的物である場合に準用する。 
3項 
民法第533条 の規定は、前項の場合に準用する。

3. 借地権の対抗要件


そして、借地権については、建物の存在とその登記を対抗要件としています。借地権者が土地条に登記された建物を持っていれば、借地権を第三者にも対抗することができます。


賃借権の譲渡・転貸


1. 賃借権の譲渡・転貸とは何か?


賃借権の譲渡とは、契約によって賃借人の地位を移転することです。これによって、従来の賃借人は、賃貸借関係から離脱し、賃借権の譲受人が、新たな賃借人となります。

これに対して、転貸とは、賃借人が賃貸借の目的物を第三者に賃貸することです。転貸の場合には、賃借人は依然として賃借人の地位にあります。

借地上に建てた自分の建物を譲渡することは、特約がない限り、借地権の譲渡に当たります。通常、譲渡人は借地関係から離脱する意思を有しており、借地利用権は建物の従たる権利にあたるからです。


2. 賃借権の譲渡転貸の要件


賃借権の譲渡や転貸には、賃貸人の承諾が必要です。

民法612条 
1項 
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 
2項 
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる

賃貸借は賃借人に対する個人的信頼を基礎とする契約なので、賃借人がどのような人で、どのように利用をするかが、契約関係に大きな影響を与えるからです。


3. 無断譲渡・無断転貸


賃貸人に無断で賃借権を譲渡したり、転貸したりして、第三者に賃借物を使用収益させると、賃貸人は、賃貸借契約を解除できます。

民法612条 
1項 
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 
2項 
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる

ただし、判例では、不動産賃借権について、信頼関係破壊理論を用いて、解除権の発生を制限しています。不動産賃借権の無断譲渡・無断転貸が賃貸人に対する背信行為に当たらない特段の事情がない場合には、解除権は発生しないということです。


転借人の地位


違法な転貸が行われると、本来何の関係もないはずの賃貸人・転借人の間に直接の関係が生じ、転借人は賃貸人に対して直接義務を負うようになります。

民法613条 
1項 
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。 
2項 
前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

転借人が賃貸人に対して直接に負う義務として、賃料支払義務・目的物保管義務などがあります。転借人が賃貸人に対して支払わなければならない賃料は、原賃料と転借料のうち、少くない額の方です。
転借人が賃貸人から賃料の支払い請求を受けた場合、転借人は、賃料の前払いを主張することができません。そのため、転貸人に前払いをしていた場合には、二重に弁済しなければならないことになります。


賃貸借の終了


1. 存続期間の満了


貸借権の存続期間が満了すると、当然賃貸借は終了します。もちろん、契約を更新することもできます。特に、借地借家法は、契約の継続性を尊重しており、例えば、建物の賃貸借の場合、期間満了の1年前から6ヶ月までの間に正当事由のある更新拒絶がないと、従前の契約と同一条件で更新したものとみまされます

借地借家法26条 
1項 
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 
2項 
前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。 
3項 
建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

2. 解約の申入れ


期間の定めのない賃貸借の場合、各当事者はいつでも解約の申し入れを行うことができ、その後、所定の期間が経過すれば、賃貸借は終了します。例えば、建築物賃貸借の場合、賃借人の解約であれば、解約申し入れ後3ヶ月で賃貸借は終了します。ところが、賃貸人が解約する場合には、賃借人を保護するために、終了までの期間が6ヶ月に延長されます。

借地借家法27条 
1項 
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。 
2項 
前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

しかも、解約申し入れに正当事由が要求されます。

なお、建物の賃貸借が期間満了または解約の申し入れによって終了する場合、建物の賃貸人は、その旨を建物の転借人に通知しないと、賃貸借の終了を転借人に対抗できません。

借地借家法34条 
1項 
建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。 
2項 
建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。


3. 解除


賃借人が賃料不払い・用法違反・賃借権の無断譲渡などをすると、賃貸人は契約を解除することができます。ただし、賃貸借の解除には、遡及効がありません。賃貸借契約を解除しても、その効力は将来に向かって発生し、賃貸借は、将来に向かって消滅するにすぎません。


4. 賃借物の返還


賃貸借が終了すると、賃借人は、賃借物を返還しなければなりません。その際、賃借人は、賃借物の原状回復をし、賃借物に付属させたものを収去する必要があります。

民法616条 
第594条第1項、第597条第1項及び第598条の規定は、賃貸借について準用する。

民法598条 
借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。


5. 建物買取請求権と造作買取請求権


借地権の存続期間が満了し、契約が更新されない場合には、借地人は、地主に対して建物を直で買い取れるように請求できます。これを建物買取請求権といいます。
また、建物の賃貸借が期間の満了または賃貸人から買い受けた造作を時価で買い取るように請求できます。
借地借家法33条

これを造作買取請求権といいます。



次は、民法の分野の「他人の労務を利用する契約」について紹介していきます。
➡【リンク】14. 雇用・委任・請負・寄託(他人の労務を利用する契約)

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