2019年10月14日月曜日

【行政書士試験】手付を解除できない場合がある?手付解除の可否の分かれ目を判例を交えて解説

【重要判例】所有権移転登記等請求事件(手付解除)/最大判昭40.11.24


【重要判例】所有権移転登記等請求事件(手付解除)/最大判昭40.11.24


どうもTakaです。今回は、履行に着手した者から着手していない者に対して解除権を行使できるのか?が争われた「 所有権移転登記等請求事件(手付解除)」について紹介したいと思います。

所有権移転登記等請求事件(手付解除)の内容


AさんとBさんは、不動産を200万円で売り渡す契約を締結し、買主Bが売主Aに対して手付金として40万円が交付され、残金160万円は所有権移転と引き換えに支払われることとなった。その後、その不動産の価格が急騰したので、Aは解除の意思表示をなしBさんに手付金の倍額の80万円を提供した。これに対して、Bさんは、すでに当事者の一方が契約の履行に着手しているから、もはやAは手付金の倍額を償還して契約を解除することはできないと主張し、Aに対して不動産の所有権移転登記を求めて訴えを提起した。

所有権移転登記等請求事件(手付解除)の争点


①「履行に着手」(民法557条1項)とは、どのような行為を指すのか?

②履行に着手した者から着手していない者に対して解除権を行使できるのか?

判決のポイント


手付解除の可否の結論

①履行に着手した当事者に対する解除は・・・✕ できない

②履行に着手していない当事者に対する解除は・・・〇 できる


民法557条 
1項 
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。 
2項 
第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない。


民法545条 
1項 
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。 
2項 
前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。 
3項 
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。


民法557条1項の履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなくし、または履行の提供をするために欠けることのできない前提行為をした場合を指す。

履行に着手した当事者が不測の損害を被ることを防止するのが557条1項の趣旨だから、同条項は、履行に着手した当事者に対して解除権を行使することを禁止するものであり、未だ履行に着手していない当事者に対しては事由に解除権を行使できる。

よって、履行に着手しているので解除できない。


➡【リンク】最高裁判HP・・・昭和37(オ)760

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