7. 取締役とは?取締役会とは?
今回は商法・会社法の分野「取締役・取締役会」について勉強していきましょう。
取締役
取締役とは?
1. 員数
株式会社は必ず取締役を置かなければなりません。取締役は、株式総会の普通決議で選任します。
会社法329条
1項
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
取締役会の置かれていない会社では、取締役は1人だけでOKです。しかし、取締役会設置会社では3人以上必要です。
会社法331条
4項
指名委員会等設置会社の取締役は、当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。
2. 取締役になるための資格
取締役になれるのは、自然人だけです。法人はなれません。また自然人であっても、成年被後見人や被保佐人などは、取締役にはなれません。
会社法331条
定款で、株主であることを取締役になるための要件としてはならないのが原則です。
3. 善管注意義務と忠実義務
取締役は、経営の受任者として、全良な管理者の注意を持って職務を遂行しなければなりません。(善管注意義務)
また、取締役は、法令・定款・株式総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を行わなければなりません。
会社法355条
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
4. 競業取引の規制
取締役が、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引(競業取引)をする場合、取締役がその地位を利用して、取引先を奪うなどの損害を与える恐れがあります。その為、取締役はその取引について重要な事実を開示して、取締役会(ない場合株主総会)の事前承認を得なければなりません。
会社法356条
1項
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一
取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二
取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三
株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
取締役設置会社の取締役は、取引後、遅滞なく取引の重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。
会社法365条
1項
取締役会設置会社における第356条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
2項
取締役会設置会社においては、第356条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
取締役の責任
1. 会社に対する責任
取締役が任務を怠ったことによって会社に損害が生じた場合、取締役は、損害賠償責任を負います。
会社法423条
この損害賠償は、総株主の同意がなければ免除できません。
2. 第三者に対する責任
職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは取締役は、それによって第三者に生じた障害を賠償する責任を負います。
会社法429条
3. 責任追及等の訴え
6ヶ月前からずっと株式を持ち続けている株主(非公開会社なら、株主なら誰でも)は、会社に対して取り締まりの責任を追及する訴え提起しない場合には、その請求をした株主が責任追及の訴えを提起できます。60日の経過を持っていては、回復できない損害が発生する恐れがある場合には、その株主は、直ちに責任追及の訴えを提起できます。
会社法847条
1項
六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第189条第2項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第423条第1項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第120条第3項の利益の返還を求める訴え又は第212条第1項若しくは第285条1項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
3項
株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
5項
第1項及び第3項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
4. 違法行為の差止め
取締役が法令もしくは定款に違反する行為をし、または、そのおそれがあり、それによって会社に著しい損害が生じる恐れのある場合には、6ヶ月前からずっと株式を持ち続けている株主(非公開会社なら株主なら誰でも)は、その取締役に対してその行為を止めるように請求できます。
会社法360条
取締役会
取締役会とは何か?
取締役会とは、すべての取締役によって組織される合議制の機関です。取締役会全員を構成メンバーとして、次のことをする機関です。
①会社の業務執行の決定
②取締役の職務執行の監督
③代表取締役の選定・解雇
会社法362条
1項
取締役会は、すべての取締役で組織する。
2項
取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一
取締役会設置会社の業務執行の決定
二
取締役の職務の執行の監督
三
代表取締役の選定及び解職
3項
取締役会は、取締役の中からw:代表取締役を選定しなければならない。
4項
取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一
重要な財産の処分及び譲受け
二
多額の借財
三
支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四
支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五
第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六
取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七
第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
5項
大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。
取締役会の設置は、公開会社、監査役設置会社、委員会設置会社にのみ義務付けられて、他の株式会社については、各社の判断に任させられています。
会社法327条
1項
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
公開会社
監査役会設置会社
監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社
取締役会の権限
1. 業務執行の決定
取締役会は、業務執行を決定します。重要な財産の処分や譲受けといった重要な業務執行の決定は、取締役会の専決事項とされ、必ず取締役会で決定しなければなりません。定款をもってしても、代表取締役に委ねることはできません。
会社法362条
4項
取締役会の主な専決事項
①重要な財産の処分や譲受
②多額の借財
③支配人などの重要な使用人の選任・解任
④支店などの重要な組織の設置、変更、廃止
⑤取締役の職務執行が法令および定款に適合することを確保するための体制の整備
2. 取締役の監督
取締役会は、取締役の職務の執行を監督します。
会社法362条
2項
取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一
取締役会設置会社の業務執行の決定
二
取締役の職務の執行の監督
三
代表取締役の選定及び解職
この監督機能を向上させるために、会社業務を執行する代表取締役などに、3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行状況を取締役会に報告することを義務付けています。
会社法363条2項
3. 代表取締役の選定・解職
取締役会は、取締役の中から、代表取締役を選定しなければなりません。
会社法362条
3項
取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
取締役会の運営
1. 取締役会の招集権
取締役会は、3ヶ月に一回以上招集しなければなりません。取締役会の招集権は、原則として個々の取締役にあります。定款または取締役会の決議で、一定の取締役だけを招集権者とすることもできます。ただし、その場合には、他の取締役に招集請求権を認められ、招集請求が放置されると、請求した取締役が自ら取締役会を招集できます。
会社法366条
1項
取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。
2項
前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。
3項
前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。
2. 取締役会の招集手続
取締役会は、招集権者が取締役会の日の1週間前までに招集通知をして招集するのが原則です。取締役に対してだけでなく、監査役がいれば、監査役に対しても招集通知を発しなければなりません。ただし、取締役および監査役全員が同意すれば、招集手続なしで、取締役会を開催することができます。
会社法368条
1項
取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。
2項
前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
3. 取締役会の決議
取締役会の決議は、原則として議決に加わることのできる取締役の過半数が出席して、出席した取締役の過半数で行います。
会社法369条
1項
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
取締役会においては、株主総会と異なり、議決権の代理行為は認められていません。取締役の議決権は、その取締役に対する個人的信頼に基づいています。
しかし、書面による持ち回り議決は認められています。議決に加わることのできる取締役全員が、書面または電磁的記録で議案に同意し、監査役が異議を述べなかった場合には、その議案をかけるする取締役会決議があったものとみなすと、定款に定めることができます。
会社法370条
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
特別取締役による取締役会
取締役が5人以上いて、かつ、その中の少なくとも1人が社外取締役である取締役会設置会社は、重要な財産の処分によって議決し、それを取締役会決議として扱うことができます。
会社法373条
特別取締役は、取締役会のメンバーの中からあらかじめ選任されたものです。
0 件のコメント:
コメントを投稿