2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】5. 株式制度

5. 株式制度


【行政書士試験・商法・会社法】5. 株式制度

今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野「株式制度」について勉強していきましょう。

株式




株式って何?


株式とは、株式会社の社員たる地位(社員権)のことです。株式を1株でも持てば、その株式会社の社員になります。そして、複数の株式を買えば、その株式の数だけ、社員たる地位を持つことになります。株式会社は、多数の人が参加できるよにするため、社員たる地位を株式という単位に均一に細分化しています。

公開会社


公開会社とは、全ての種類の株式について譲渡制限のある株式会社以外の株式会社のことをいいます。この公開会社では、設立時に、発行可能株式総数の4分の1以上の株式を発行しなければならないとされています。

会社法37条 
3項 
設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。


株式の内容


各株式の内容は、原則として同一です。各株式に含まれる権利の内容は、同一であるのが原則です。ただし、株式会社は、定款の定めによって、発行する全ての株式を特別な内容の買う式にすることができます。

会社法107条


特殊な内容の株式


譲渡制限株式
・・譲渡に会社の承認が必要な株式。

取得請求権付株式
・・株主が会社に対して取得(買取り)を請求できる株式

 取得条件付株式
・・一定の事由が生じた場合に、会社側が強制的に取得できる株式



種類株式


1. 種類株式とは何か?


株式会社は、一定の事項について内容の異なる複数の種類の株式を発行することができます。

会社法108条
1項

これを種類株式といいます。


2. 剰余金の配当・残余財産の配分


剰余金の配当・残余財産の分配またはその双方について、他の種類の株式よりも優先的な地位が与えられる株式を優先株式といい、逆に、劣後的な地位が与えられる株式を劣後株式といいます。そして、標準となる株式を普通株式といいます。

発行可能種類株式総数と剰余金の配当・残除財産の分配に関する取り扱いの内容を定款に定めることによって、これらを種類株式として発行することができます。これは多様な資金調達を可能とするためです。


会社法108条 
2項 
株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。 
 1号 
剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容 
 2号 
残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容


3. 議決権制限種類株式


株式会社は、発行する株式の一部を議決権制限種類株式とすることができます。議決権制限種類株式というのは、株主総会の会議または一部の事項について、議決権を行使できない株式のことです。

会社法108条
1項
3号

経済的利益のみに関心のある株主に応えるとともに、従来の支配関係を変えずに、新株発行を伴う資金調達を行えるようにするためのものです。


4. 譲渡制限種類株式


株式会社は、発行する株式の一部について、譲渡に会社の承認が必要な株式とすることもできます。これを譲渡制限種類株式といいます。

会社法108条
1項
1号


株券


1. 株券とは何か?


株券とは、株式を表示した有価証券です。


2. 株式不発行


株式会社は、株券を発行しないのが原則です。例外的に株券を発行するのは、定数で定められた場合だけです。

会社法214条 
株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。


3. 株券発行会社


定数で株券の発行を定めた株式会社を株券発行会社といいます。株券発行会社は、株式を発行した日以降、遅滞なく、株券を発行しなければなりません。ただし、公開会社でない場合は、株主の請求があるまで、株券を発行しなくてもよいとされています。

会社法215条 
1項 
株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない。 
4項 
前三項の規定にかかわらず、公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる。



株主名簿


1. 株主名簿とは何か?


株式名簿とは、株主の氏名または名称・住所・持株数などを記載または記録するために、株式会社に作成が義務付けられた帳簿です。

会社法121条 
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。 
一 株主の氏名又は名称及び住所 
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数) 
三 第一号の株主が株式を取得した日 
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号

2. 基準日


株式の取引によって、会社は、一定の日(基準日)を定めて、その日に株主名簿に記載・記録されている株主(基準日株主)を権利者とすることができます。ただし、会社は、基準日の2週間前までに、基準日および基準日株主が行使できる権利の内容を公表しなければなりません。

会社法124条 
1項 
株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日においてw:株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。 
2項 
基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。 
3項 
株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項をw:公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。 
4項 
基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。 
5項 
第1項から第3項までの規定は、第149条第1項に規定する登録株式質権者について準用する。

3. 株主に対する通知


株主に対する通知や催告は、株主名簿に記載された住所または株主が通知した場所・連絡先宛にすればよいとされています。そして、通知や催告が通常到達するであろう時に、到達したものとみなされます。

会社法126条
1項 
株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。 
2項 
前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。 
3項 
株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者一人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を株主とみなして、前二項の規定を適用する。 
4項 
前項の規定による共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの一人に対してすれば足りる。 
5項 
前各項の規定は、第299条第1項(第325条において準用する場合を含む。)の通知に際して株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、第2項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。


株主の権利


株主権とは何か?


株式会社の株主としての法律上の地位を株主権といいます。株主に認められる権利の基礎となる法律上の地位を株主権と呼んでいます。


自益権と共益権


株主権は、自益権と共益権に分けられます。

自益権とは、会社から直接的な利益を得ることを目的とする権利です。
例:

共益権とは、会社の管理・運営に参加することを目的とする権利です。代表例は、株主総会における議決権です。

会社法105条
1項
3号


株主平等の原則


株式会社は、原則として、株主を、所有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければなりません。

会社法109条 
1項 
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。


内容の異なる種類の株式については、異なる取り扱いができますが、同じ内容の株式については、持っている株式数に応じて平等に取り扱わなければいけません。これを株主平等の原則といいます。法が例外を認める場合を除いて、株主平等の原則に反する定款の定め・株主総会の決議・取締役の議決取締役の業務執行行為等は、無効です。


株式の共有


複数の人が株式を共有することができます。ただし、会社が開業しない限り、その株式について権利を行使できるのは、1人だけです。権利行使者1人を決めて、そのものの氏名または名称を会社に通知しないと、共有株式の権利を行使できないのです。

会社法106条


利益供与の禁止


株主の権利の行使に関して、会社が自己または子会社の計算でざいさんじょうの利益を供与することは禁止されています。

会社法120条
1項

企業経営の健全性を確保するとともに、会社財産の消費を防止するための規制であり、総会屋対策が主な狙いです。



株式の譲渡


株式の譲渡とは何か


株式の譲渡というのは、売買や贈与などの規約によって、株式を移転することです。これによって、株主たる地位に基づく権利が全て譲受人に移転します。


株式譲渡自由の原則


株式は、原則として自由に譲渡することができます

会社法127条

出資して手に入れた株式会社の社員たる地位を売ることによって、投資した資金を回収することができます。


定款による株式の譲渡制限


定款の定めによって、全ての株式について、譲渡に会社の承認を要するとして、株式の譲渡を制限することができます。見ず知らずの人が、株主として仲間入りすることを嫌う会社のために用意された制度です。

株式譲渡を承認するか否かを決定するのは、株主総会です。ただし、取締役会設置会社の場合は、取締役会がその役目を担います。また、定款の定めによって、他の機関とすることもできます。

会社法139条
1項


株式の譲渡方法


株券を発行しない会社では、当事者の意思によって株式譲渡の効力が生じます。これに対して、株券発行会社の場合は、株券を交付しなければなりません。株券を交付しなければ効力は生じません。

会社法128条
1項


株券発行前の譲渡


株券発行会社が株券を発行する前に、株式を譲渡した場合は、譲渡自体は有効となりますが、効力は生じないため、譲受人は、会社に対して株主としての権利を主張できません。


株式譲渡の対抗要件


1. 会社に対する対抗要件


株式譲渡の対抗要件は、株主名簿の名義書き換えです。株式の譲渡は、株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しないと、会社に対抗できません

会社法130条

ただし、会社が正当な理由もないのに株主名簿の名義書き換えに応じない場合には、会社は新株主が株式名簿に記載されていないことを主張できません。新株主は、会社に対して株主であることを主張できます。


最判昭41.7.28



2. 第三者に対する対抗要件


株券をはっっこうしていない会社では、株主名簿の名義書き換えをしないと、会社以外の第三者にも対抗できません。

会社法130条

これに対して、株券発行会社の場合は、株券の所持が第三者に対する対抗要件です。


自己株式


自己株式とは何か?


自己株式とは、株式会社が有する自己の株式で、会社が自社の株式を所得すると、その株式は、自己資産になります。


自己の株式の取得


株主が会社に取得請求権付株式の買い取りを請求した場合や、一定の事由が生じたため、会社が強制的に取得条項株式を取得する場合などに、株式会社は、自己の株式を取得する場合などに、株式会社は、自己の株式を取得することができます。

また、株式会社は、株主総会の決議に基づいて、自己の株式を取得することもできます。これには2つの方法があります。

会社法156条


①市場取引等により取得する方法
②特定の株主から取得する方法
・・株主総会の特別決議によらなければならない。

会社法309条2項


会社法の定めた取得手続・方法に違反して、自己の株主を取得した場合、その取得は無効です。ただし、無効の主張は、会社側だけができます。


自己株式の保有


会社は、自己株式を期間の制限なく保有することができます。しかし、自己株式には、議決権がありません。また、剰余金を配当することもできません。

会社法453条


自己株式の消却


株式会社は、消却する株式の種類と数を定めて、保有する自己株式を消却することができます。株式の種類と数を定めるだけで、保有する自己株式を消滅させることができます。ただし、取締役会が設置されている会社では、取締役会の決議に基づく必要があります。

会社法178条


親会社株式の取得


子会社が親会社の株式を取得することは、原則として禁止されています。合併後消滅する会社から親会社株式を継承する場合など、例外的に取得が許される場合もあります。しかし、許される場合でも、子会社は、相当の時期にその所有する親会社株式を完全に処分しなければなりません。

会社法135条




株式数の増減


投資単位の調整


株式を1株でも買えば、その会社の株主になりますが、株式は、株式会社への投資の単位です。株式会社は、流通している株式の数を増減させて、投資単位を適切な大きさにコントロールする必要があります。その方法は以下の通りです。

①株式の併合


株式の併合とは、2株を1株に、10株を1株にするような、発行済み株式を一定の割合で一律にまとめて、株式の数を減少させる行為です。株式の併合は、株主の持ち株数を減らすものであり、株主に大きな影響を与えます。そこで、株式の併合には、株主総会の特別決議が必要とされています。

会社法180条



②株式の分割


株式の分割は、1株を2株に、1株を10株にというように、発行済みの株式を一定の割合で一律に分割して、株主の数を増加させる行為です。増加した株式は、既存の株主に、その持ち株数に応じて無償交付されます。

株式の分割は、既存の株主の利益に実質的な影響を与えるものではないため、取締役会を設置する会社は、取締役会の決議で、他の会社は、株主総会の普通決議で行うことができます。


③株式無償割当て


株主の無償割当てというのは、株主に一定の割合で一律に株式を無償で付与する行為であって、株式の分割に当たらないものです。

会社法185条

取締役会設置会社は取締役会の決議、他の会社は株主総会の普通決議により行われる。

会社法186条





単元株制度


単元株制度とは?


株式会社は、定数で、一定数の株式を1単元の株式と定めることができます。定数で1単元の株式を定めると、株式は、株主総会、種類株主総会において、1単元について1個の議決権を持つようになります。

会社法188条
1項




単元未満株式


1単元の株式数に満たない株式(単元未満株式)には、議決権はありません。単元未満株しかない株主は、議決権を行使できません。

会社法189条
1項

そこで、単元未満株式の株主の利益を保護するため、単元未満株式の買取請求権が認められています。株主は、会社に対して、所有する単元未満株式を買い取るように請求できます。

会社法192条 
1項 
単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。 
2項 
前項の規定による請求は、その請求に係る単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 
3項 
第1項の規定による請求をした単元未満株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、当該請求を撤回することができる。

また、単元未満株式の株主には、売渡請求権も認められています。これは、株主が会社に足して、現在所有する単元未満株式を単元株数にするために必要な数の株式を売り渡すように請求する権利です。

会社法194条 
1項 
株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求することをいう。以下この条において同じ。)をすることができる旨を定款で定めることができる。 
2項 
単元未満株式売渡請求は、当該単元未満株主に売り渡す単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 
3項 
単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は、当該単元未満株式売渡請求を受けた時に前項の単元未満株式の数に相当する数の株式を有しない場合を除き、自己株式を当該単元未満株主に売り渡さなければならない。 
4項 
第192条第3項及び前条第1項から第6項までの規定は、単元未満株式売渡請求について準用する。


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