2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】6. 株式会社の機関とは?株主総会とは?

6. 株式会社の機関とは?



今回は、商法・会社法の分野「株式会社の機関、株主総会」について勉強していきましょう。

機関とは何か?


会社の機関とは、社団である会社に代わって意思決定や意思表示を行う地位のある自然人または会議のグループ(会議体)のことをいいます。

会社法は、株式会社の機関として、株主総会・取締役・取締役会・会計参与・ 監査役・監査役会・会計監査人・委員会を用意しています。


機関設計の自由化


株式会社は、株主総会と取締役を設置しなければなりません。

会社法326条
1項
株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

しかし、全ての株式会社に必須の期間は、株主総会と取締役だけであり、株主総会と取締役だけの株式会社を設置することができます。

会社法は、株主総会と取締役だけの最も基本的な形の会社をスタートとし、成長に応じて、必要な機関を追加して、育てていけるようにしています。



株主総会


株主総会って何?


株主総会というのは、株主を構成メンバーとする合議制の意思決定機関のことです。株主総会は、出資者であり、共同所有者である株主を構成員とする唯一の機関です。


株主総会の権限


取締役会に設置されていない株式会社では、株主総会は最高の機関です。株主総会は、会社法に規定する事項だけでなく、組織・運営・管理その他、株式会社に関する一切の事項についての決議に限定されます。他の事項の決議は、取締役会に委ねられています。

会社法295条 
2項 
前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。


株主総会の招集


1. 定時株主総会と臨時株主総会


株式会社は、毎事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を開催しなければなりません。また、必要がある場合には、いつでも、臨時株主総会を招集することができます。

会社法296条 
1項 
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。 
2項 
株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。 
3項 
株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

2. 招集権者


株主総会を招集するのは、原則として取締役です。

会社法296条 
3項 
株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。


ただし、取締役会設置会社では、取締役会が招集を決定し、それに基づいて、代表取締役などが招集するのが原則です。

会社法298条 
4項 
取締役会設置会社においては、前条第4項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第1項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。


3. 招集の請求権


6ヶ月前からずっと、総株主の議決権の100分の3以上を持ち続けている株主は、議決権のある課題に関し、招集の理由を示して、株主総会の招集を取締役に請求することができます。そして、遅滞なく、招集手続がとられない場合には、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集することができます。

会社法297条 
1項 
総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、w:株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。 
4項 
次に掲げる場合には、第1項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。 
 一 
第1項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合 
 二 
第1項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で 定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合

4. 招集通知


株主総会を招集するためには、2週間前までに、議決権のある株主に対して招集通知をしなければなりません。ただし、非公開会社は、書面投票または 電子投票を認めた場合を除いて、1週間前までに招集通知をすればいいとされています。

会社法299条 
1項 
株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。 
2項 
次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。 
 一 
前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合 
 二 
株式会社が取締役会設置会社である場合 

3項 
取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。  
4項 
前二項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

5. 招集手続の省略


招集手続は、株主総会を始めるためのもので、招集手続を経ないと、株主総会を始めないのが原則です。しかし、株主全員の同意があれば、書面投票または電子投票を認めた場合を除いて、招集手続を経ずに株主総会を開催することができます。


6. 総会検査役


経営権に関する争いがあり、株主総会の混乱が予想される場合などには、株主総会の招集手続きと決議方法の公正さを調査し、決議の成否についての証拠を保全するために、裁判所に総会検査役の選任を請求できます。提案できるのは、一定の要件を満たす株主だけです。


株主の提案権


株主には、株主総会の議題の提案権と議案の提出権があります。株主総会の議題を提案できるのは、一定の要件を満たす株主だけです。

会社法303条

これに対して、自ら議決権を行使できる議題について、議案を提出することは、株主なら誰でもできます。


議決権


1. 1株1議決権


株主は原則として、1株につき1票の議決権をもちます。株主は出資に応じたリスクを負担しており、そのリスクの割合に応じた議決権が与えられるという考え方です。(資本多数決の原理)


2. 議決権の代理行使


議決権は、株主自身が株主総会に出席して行使するのが原則ですが、株主に議決権の行使を保証するために、また、株主総会の定数を確保するために、議決権の代理行使が認められています。


3. 書面投票・電子投票


投票には、書面で行う方法と電子投票で行う方法が認められています。書面投票制度では、議決権のある株主が1000人以上いる会社は、原則として書面投票制度を採用しなければなりません。

会社法298条
2項

この制度が採用されると、総会に出席しない株主は、議決権行使書面を会社に提出することによって議決権を行使します。

会社法311条
1項



株主総会の決議


1. 決議する事項


取締役会設置会社では、原則として議題として招集通知に明記された事項しか決議することができません。

会社法309条 
5項 
取締役会設置会社においては、株主総会は、第298条第1項第2号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第316条第1項若しくは第2項に規定する者の選任又は第398条第2項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。


これに対して、取締役会を設置していない会社では、あらかじめ議題としていない事項についても、株主総会で決議することができます。


2. 普通決議


株式総会の決議は、原則として議決権行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で行います。

会社法309条 
1項 
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。


これを普通決議といいます。


3. 特別決議


定款の変更や合弁など、会社法309条2項に列挙された事項については、株主総会の特別決議が必要です。特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数で行うのが原則です。

会社法309条 
2項 
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。


4. 反対株主の株式買取請求権


株主総会において事業の全部または重要な一部の譲渡等の決議がなされた場合、反対株主に株式買取請求権が認められています。反対株主は、会社に対して所有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できるのです。

会社法469条


決議の瑕疵


1. 決議取消しの訴え


次のいずれかの瑕疵がある場合、決議の日から3ヶ月以内に限り、株主・取締役・監査役・清算人は、決議取り消しの訴えを提起できます。

会社法831条
1項


①招集手続または決議方法が、法令・定款に違反する場合、または著しく不公正な場合

②決議の内容が定款に違反する場合

③特別利害関係人が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がなされた場合。


2. 決議不存在・決議無効確認の訴え


外形的・物理的に決議と認められる者が存在しない場合や、外形的にはなんらかの決議があっても、それを法的に決議と評価できない場合には、決議は存在しません。また、決議の内容が法令に違反する場合、その決議は無効です。

決議不存在や決議内容の法令違反という大きな瑕疵がある場合には、誰でも、いつでも、決議不存在または決議無効確認の訴えを提起することができます。

会社法830条 
1項 
株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第937条第1項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。 
2項 
株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

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