2019年8月26日月曜日

3. 代理制度・・自分の代わりに!?事例を条文にあてはめられるように繰り返し学習しましょう。

3. 代理制度

3. 代理制度・・自分の代わりに!?事例を条文にあてはめられるように繰り返し学習しましょう。

どうもTakaです。今回は代理制度について紹介したいと思います。




代理とは何か


代理の特徴


代理とは、ある人(代理人)のした意思表示の効果を直接他の人(本人)に帰属させる制度です。代理人が代理権の範囲内で有効な代理行為を行うと、その効果は、代理人ではなく、本人に帰属します。

任意代理と法定代理


代理には、任意代理と法定代理があります。
任意代理・・・本人の意思(信任)に基づく代理
法廷代理・・・本人の意思とは無関係に法律の規定を根拠として発生する代理


代理権


代理権の発生


代理権とは、代理人が自分の意思表示の効果を本人に帰属させるための権限(資格・地位)です。
任意代理の場合には、本人が代理権を授与します。これに対して、法定代理の場合には
本人の意思とは無関係に、法律の規定に基づき、一定の身分関係のあるものに当然代理権が発生したり、本人以外の者の指定や家庭裁判所の選任などによって代理権が発生したりします。


代理権の範囲


任意代理の場合、代理権によって何ができるのか(代理権の範囲)は、本人の意思によります。
これに対して、法廷代理における代理権の範囲は、法律で定められています。
代理権の範囲がはっきりしない場合、代理人にできるのは、財産の現状を維持するための行為(保存行為)と現状を変更しない限度での利用や価値を増加させる行為(改良行為)だけです。

民法 第103条 
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。 
一 保存行為 
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

自己契約・双方代理


1. 自己契約。双方代理とは何か?


売買契約において、売主が買主の代理人になることを自己契約といいます。そして、第三者が、売主の代理人になると共に、買主の代理人にもなることを双方代理と言います。

2. 自己契約と双方代理の禁止

(用語の整理)
債務の履行・・・契約などによって発生した義務を実行すること。

自己契約と双方代理は、いずれも禁止されています。
民法108条
これらは、当事者の一方が不当な不利益を被る恐れがあるからです。
ただし、債務の履行や本人があらかじめ許諾した行為については、一方が不当な不利益を被るおそれがなく、これらには、例外的に自己契約や双方代理が許されます。
民法108条
【重要判例】大判大12.5.24
【重要判例】最判昭43.3.8


代理権の濫用


代理人が本人のためではなく、自己または第三者の利益を図るために
代理行為を行った場合(代理権の濫用)について、判例は、民法93条を類推適用しています。このような代理行為も、原則として有効ですが、相手方が代理人の真意を知っていた場合、または知らないことに過失があった場合には、本人は無効を主張できるというのです。
【重要判例】代理権の濫用


代理権の消滅

代理権は、本人や代理人の死亡・破産手続開始の決定などによって消滅します。
民法111条、民法653条

また、代理人が後見開始の審判を受け、成年被後見人になっても、代理権は消滅しません。しかし、本人が後見開始の裁判を受け、成年被後見人になっても、代理権は消滅しません。

復代理人


復代理人って何?

復代理人とは、代理人が選任した本人の代理人です。復代理人は、代理人が選任したり、解任したりします。しかし、代理人の代理人ではなく、本人を直接代理する本人の代理人です。
民法107条1条

復代理人の選任


本人との特別な信頼関係に基づいて代理権を授与された任意代理人は、自ら代理権を行使することが強く求められます。そのため、復代理人を選任できるのは、本人の許諾を得た場合、またはやむを得ない事由のある場合だけです。

第104条 
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

これに対して、法定代理人は、本人との信頼関係に基づいて代理権を授与されたわけではないため、いつでも復代理人を選任することができます。
第106条 
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

代理人の責任

復代理人が選定されても、代理人の代理権が消滅するわけではなく、代理人は依然として代理人です。そして、代理人は、復代理人の行為について一定の責任を負います。
任意代理人は、復任権が限定されているため、復代理人の選任・監督についてのみ責任を負うのが原則です。

第105条 
1項 
代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。 
2項 
代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

これに対して、法定代理人は復代理人の行為について全責任を負うのが原則です。

第106条 
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

復代理人の権限

復代理人の権限は、代理人の代理権を基礎として成立しています。そのため、代理権が消滅してしまいます。また、復代理人の権限は、代理権の範囲内で代理人が代理人が授与した範囲に限定されます。
復代理権の授与は、代理人と復代理人との合意でなされ、本人が直接タッチするわけではありません。しかし、便宜を考え、復代理人は、本人に対して直接権利を持ち義務を負うとされています。
民法107条2項


顕名主義


顕名ってなに?

代理人が行う意思表示は、本人のためにすること(代理意思)を示して行う必要があります。
第99条 
1項 
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 
2項 
前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

この代理意思を表示することを顕名と言います。


顕名のない意思表示


顕名のない意思表示は、原則として代理人の意思表示とみなされます。

民法100条 
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

代理人であることを明らかにしないと、意思表示の効果は、代理人に帰属します。ただし、相手方が代理意思を知っていた場合、または過失があるために代理意思を知ることができなかった場合には、本人に効果が帰属します。


本人の名で行なった代理行為


代理人が自分の名前を出さず、直接本人の名前で代理行為を行なった場合も、原則として代理行為は有効であり、その効果は本人に帰属します。


代理行為の瑕疵


瑕疵の有無の判断


代理行為の効力に問題が生じた場合に、まず考慮すべきは、代理人の事情です。代理行為の瑕疵や善意・悪意などの判断は、代理人について行うのです。
民法101条1項

現実に意思表示を行うのは、代理人だからです。
しかし、代理人が委託された特定の法律行為を本人の指図に従って行なった場合には、本人の事情を考慮します。
民法101条2項

代理と詐欺


相手方が代理人に対して詐欺を行なった場合、代理人が騙された以上民法101条1項により、その代理行為は、取り消すことができます。ただし、代理行為の効果は本人に帰属しますから、取消権をもつのは、本人です。
また、判例では、代理人が相手方に対して詐欺を行なった場合にも、民法101条1項を適用し、本人の善意・悪意を問わず、相手方は取り消すことができるとしているようです。


代理人の能力


意思能力

代理人にも意思能力が必要です。代理人は、自ら意思を決定し、それを表示するのですから、意思能力は当然必要となります。

行為能力

しかし、代理人に行為能力は必要なく、未成年者や成年被後見人でも代理人になれます。
民法102条

代理行為の効果は本人に帰属し、代理人の保護を考える必要がないからです。

無権代理


無権代理とは何か?


無権代理とは、代理権がないのに代理行為をしたり、与えられた代理権の範囲外の行為をしたりすることをいいます。無権代理の効果は、本人に帰属しません。

民法 第113条 
1項 
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 
2項 
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

無権代理行為の追認


1. 追認とは何か?


無理代理権の効果が、本人に帰属しないのは、本人の利益を考慮したものにすぎず
公序良俗違反のような絶対的無効ではありません。そのため、本人が追認すると、本人に効果が帰属します。ここでいう追認とは、無権代理行為を有効な代理行為と同じに扱うという本人の意思表示であり、効果帰属の承認を意味します。

2. 追認の方法


追認は、単独行為であり、、本人が一方的に行うことができます。追認は、相手方に対して行なっても良いし、代理人に対して行なってもよいです。ただし、相手方に対して行うか、相手方がそれらの事実を知るか、いずれかでないと、相手方に主張することができません。

民法 第113条 
1項 
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 
2項 
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

3. 追認の効果


追認には、原則として遡及効(法律や法律要件がその成立以前にさかのぼって効力をもつこと)があります。そのため、追認によって、無理代理行為は、その行為の時から本人に効果が帰属していたことになります。


本人と無権代理人の地位の同化


1. 無権代理人が本人を単独相続


判例では、無権代理人が本人を単独相続した場合には、無権代理人と本人との資格が一体となり、本人が自ら法律行為をしたものと同じになるから、無権代理行為は治癒され、法律行為の効果は、当然に本人を相続した無権代理人に帰属するといいます。
【重要判例】最判昭40.6.18
また、第三者が無権代理人を相続後に本人を相続した場合には、無権代理人が本人を相続したのと同様の状態になるので、当然に有効となると言っています。

2. 無権代理人が本人を共同相続


無権代理人が他の相続人とともに本人を共同相続した場合には、無権代理行為が当然に有効になるわけではないと、判例はいっています。

3. 本人が無権代理人を相続


本人が無権代理人を相続した場合は、判例では、本人の資格で追認を拒絶することもできるが、民法117条の責任を免れることはできないといっています。
【重要判例】無権代理人を相続した本人の責任/最判昭48.7.3

相手方の催告権

無権代理行為の相手方には、催告権があります。相手方は本人に対して相当の期間内に追認するか否かを確実に答えるように催告することができ、本人が答えない場合には、追認を拒絶したとみなされます。

民法 第114条 
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

善意の相手方の取消権


代理権のないことを知らない善意の相手方には、取消権もあります。本人が追認するまでの間であれば、代理権のないことを知らずにした契約を取り消すことができます。ただし、契約を取り消すと、その契約は初めから無かったことになるので、無権代理人の責任追求などの手段を取ることはできなくなります。また本人が契約を追認することもできなくなります。

無権代理人の責任追及


代理権のないことについて善意無過失の相手方は、無権代理人の責任を追及し、無権代理人に対して本来の履行・損害賠償のいずれかを選択して請求することができます。



表見代理


代理権授与の表示による表見代理


表見代理とは、無権代理行為がなされたことについて本人にも落ち度があり、相手方が代理人であると信じ、そう信じるのも無理がないという場合に、無権代理行為の効果を本人に帰属させようという制度です。
代理権などないのに、あるかのような外観を作り出した者は、その責任を負わなければなりません
次の要件を満たす場合には、表見代理が成立し、本人は、無権代理行為の効果帰属を拒めなくなります。
民法109条

①本人が代理権を与えたと表示したこと
②表示された代理権の範囲内で、無権代理人が代理行為をしたこと
③相手方が代理権のないことを知らず、かつそのことに過失のないこと(善意無過失)



権限外の行為による表見代理


一応代理権のある者がそれを超える行為をした場合、そのような代理人を選任した本人がリスクを負担し、代理人の行為について責任を負わなければなりません。次の要件を満たす場合には、表見代理が成立し、本人は、効果帰属を拒めなくなります。

民法110条 
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


①何らかの代理権(基本代理権)があること
②基本代理権を超えた行為がなされたこと
③相手方が権限ないと信じる正当な理由があること

【重要判例】最判昭39.4.2
【重要判例】最判昭46.6.3
【重要判例】最判昭44.12.18
【重要判例】最判昭44.12.19


代理権消滅後の表見代理


かつて代理権を持っていた者が、その代理権の範囲内で代理行為を行なった場合にも、善意無過失の相手方を保障するため、表見代理の成立が認められています。


表見代理と無理代理人の責任


表見代理が成立するといっても、それは無理代理の一種ですから、相手方は、表見代理を主張せず、あくまで民法117条の無理代理人の責任を追及することもできます。判例は、両者は独立した選択可能な手段であり、相手方はどちらでも好きな方を選択して良いといっています。
【重要判例】最判昭62.7.7

無理代理人は、表見代理人の成立を理由に自分の責任を免れることはできないのです。
また、表見代理が成立しても、善意の相手方は、取り消し権を行使することもできます。
民法115条
逆に、本人が追認することもできます。
民法113条

つぎは、民法の分野の時効ついて紹介しています。
➡【リンク】4. 時効制度

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