2019年7月4日木曜日

郵便法事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】郵便法違憲事件/最大判平14.9.11



困った顔の郵便職員

どうも。今回は国の損害賠償責任を制限している郵便法の旧規定は、憲法17条に違反しているかが争点となった、郵便法違憲事件を紹介したいと思います。

第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

郵便法違反事件の内容


不動産会社Aは、勝訴決定に基づき、Bに対する債権の弁済を得るため、裁判所に対してBの銀行預金の差押命令を申し出た。同裁判所は、差押命令を行い、命令正本を特別送達の方法で銀行宛に出したが、郵便業務従事者が私書箱に投函したため送達が1日遅滞し、差押えを察知したBが預金を引き出してしまい、不動産会社Aは債権回収の目的を達成することができなかった。そこで、不動産会社Aが、国に対して損害賠償を求めた。

※特別送達郵便とは、特別送達のための書留郵便の一種です。

特別送達郵便(見本)


公的機関(裁判・公正取引委員会・特許審判など)が確実に文書を送るため、送った相手に届いたことを証明するために使われる郵便物です。

郵便法違反事件の争点


国の損害賠償責任を制限している郵便法の旧規定は、憲法17条に違反するか。

第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

判決のポイント


書留郵便物について、郵便業事業者の故意・重過失によって損害が生じた場合に
不法行為に基づく国の賠償責任を免除・制限している郵便法の旧規程は、憲法17条に違反する。

特別送達郵便物について、郵便業務者の軽過失によって損害が生じた場合に、国家賠償法に基づく国の賠償責任を免除・制限している郵便法の旧規程は、憲法17条に違反する。

判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


1 郵便法68条及び73条の規定のうち,書留郵便物について,郵便の業務に従事する者の故意又は重大な過失によって損害が生じた場合に,不法行為に基づく国の損害賠償責任を免除し,又は制限している部分は,憲法17条に違反する。

2 郵便法68条及び73条の規定のうち,特別送達郵便物について,郵便の業務に従事する者の故意又は過失によって損害が生じた場合に,国家賠償法に基づく国の損害賠償責任を免除し,又は制限している部分は,憲法17条に違反する。
(1,2につき補足意見及び意見がある。)

➡️【リンク】最高裁判所HP・・ 平成11(オ)1767

旭川学力テスト事件って何?行政書士試験の重要判例・・普通教育の教師にも完全な教授の自由は認められる?

【重要判例】旭川学力テスト事件/最大判昭51.5.21


学力テスト

どうもTakaです。今回は、憲法23条の学問の自由は、学問研究の自由、研究発表の自由、教授の自由を意味しますが、教授の自由は、普通教育課程の教授にも認められるか?教育内容を決定する権限はどこにあるか?が争点となった旭川学力テスト事件について紹介したいと思います。

第23条 学問の自由は、これを保障する。

旭川学力テスト事件の内容


 文部省(現文部科学省)の企画した全国中学一斉学力テストを旭川市立中学校において校長が実施しようとしたところ、教師Aさんは「教育内容が学力テスト対策に偏り、ゆがめられ、テストの平均点が都道府県別に公表されることで、点数競争が起き、学校が競争に駆り立てられてしまう」と考えました。
 教師Aさんはこれを阻止するため同校舎に侵入し、テストの実施を妨害した。そのため、教師Aさんは、建造物侵入や公務執行妨害罪等で起訴されたが、本件学力テストは違法であり、公務執行妨害罪は成立しないと主張した。

旭川学力テスト事件の争点


①憲法23条の学問の自由は、学問研究の自由、研究発表の自由、教授の自由を意味するが、教授の自由は、普通教育課程の教授にも認められるか?

②教育内容を決定する権限はどこにあるか?

判決のポイント


普通教育の教師にも、一定の範囲の教授の自由が保障されるが、完全な教授の自由は認められない
➡️教育の機会均等を図るため

②国は、必要かつ相当と認められる範囲で、教育内容についても決定する権限を有する。

判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


一、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項は、文部大臣に対し、昭和三六年度全国中学生一せい学力調査のような調査の実施を教育委員会に要求する権限を与えるものではないが、右規定を根拠とする文部大臣の右学力調査の実施の要求に応じて教育委員会がした実施行為は、そのために手続上違法となるものではない。

二、憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由をもち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する。

三、教育行政機関が法令に基づき教育の内容及び方法に関して許容される目的のために必要かつ合理的と認められる規制を施すことは、必ずしも教育基本法一〇条の禁止するところではない。

四、昭和三六年当時の中学校学習指導要領(昭和三三年文部省告示第八一号)は、全体としてみた場合、中学校における教育課程に関し、教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして、有効である。

五、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査は、教育基本法一〇条一項にいう教育に対する「不当な支配」として同条に違反するものではない。

六、文部大臣が地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項の規定を根拠として教育委員会に対してした昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の実施の要求は、教育の地方自治の原則に違反するが、右要求に応じてした教育委員会の調査実施行為自体は、そのために右原則に違反して違法となるものではない。


➡️【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和43(あ)1614

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2019年7月3日水曜日

森林法共有林事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】森林法共有林事件/最大判昭52.4.2



どうもTakaです。
今回は憲法29条1項の「財産権」の保障の意味や
持分価値2分の1以下の共有者からの分割請求を禁止した森林法の規定は、
憲法29条2項に違反しないかが争点となった「森林法共有林事件」について
紹介したいと思います。

第二十九条 
一項
財産権は、これを侵してはならない。
二項
財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

森林法共有林事件の内容


AさんとBさんの兄弟は父親から山林を譲り受けましたが、
各自2分の1の割合でその山林を共有していました。
弟Aさんは、兄Bさんに対して、共有山林の分割を求めて訴訟を提起した。
しかし、持分価値2分の1以下の共有者からの分割請求を禁止した森林法旧186条の規定により、分割請求が認められなかった。そのため、Aさんが、森林法旧186条の規定は憲法29条1項の財産権の保障に違反するとして争った事件です。

森林法第186条
森林の共有者は、民法第二百五十六条第一項(共有物の分割請求)の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することができない。但し、各共有者の持分の価格に従いその過半数をもつて分割の請求をすることを妨げない。

森林法共有林事件の争点


①憲法29条1項の「財産権」の保障の意味とは何か?

②持分価値2分の1以下の共有者からの分割請求を禁止した森林法の規定は、憲法29条2項に違反しないか

判決のポイント


1. 憲法29条1項の「財産権」の保障とは、
①個人の現に有する具体的な財産権の保障
②私有財産権の保障
の2つを意味します。すなわち、人権保障と制度的保障です。

2. 憲法29条2項に違反しないか
違反している。
森林法旧186条の規定の立法目的は、森林の細分化を防止することで、森林経営の安定を図り、もって国民経済の発展に資することにありました。しかし、この立法目的の達成との関係において、持分価値2分の1以下の共有者からの分割請求を禁止した規定に合理性と必要性を認めることはできないので、違憲であると判断されました。

判決要旨(最高裁判所HPから抜粋)


一 森林法一八六条本文は、憲法二九条二項に違反する。

二 民法二五八条により共有物の現物分割をする場合には、その一態様として、持分の価格を超える現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせて過不足を調整することも許される。

三 数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法二五八条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される。

四 多数の者が共有する物を民法二五八条により現物分割する場合には、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残す方法によることも許される。
(一につき補足意見、意見及び反対意見、二、四につき補足意見がある。)

➡️【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和59(オ)805

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2019年7月2日火曜日

奈良県ため池条例事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】奈良県ため池条例事件/最大判昭38.6.26



どうもTakaです。今回は、憲法29条2項は「法律」で財産権の内容を制限できるとしているが、条例によって財産権を制限することは憲法29条2項に違反しないかが争点となった奈良県ため池条例事件を紹介したいと思います。

奈良県ため池条例事件の内容


Aさんは代々ため池の堤とうで耕作を行っていました。そんなある日、県の条例が施行され、ため池の堤とうの耕作は農作物を狙ったモグラ等の動物を誘い、穴を掘ることにより堤とうに決壊等の損害を与えるため、堤とうでの耕作を禁止されました。しかし、Aさんは条例の施行後も耕作を続けたために起訴され条例違反で罰金刑を受けた事件です。

奈良県ため池条例事件の争点


憲法29条2項は「法律」で財産権の内容を制限できるとしているが、「条例」によって財産権を制限することは憲法29条2項に違反しないか?

第29条 1項 財産権は、これを侵してはならない。
2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

判決のポイント


条例によって財産権を制限することも許され、憲法29条2項に違反しない。

➡ため池を破壊、決壊するかもしれない使用行為は、憲法・民法の保護する財産権の行使の範囲外であり、条例をもって禁止、処罰しても、憲法及び法律に違反しない。
条例の目的は、決壊等の損害を未然に防止するためのものであるから、それによってAさんの財産権の行使がほぼ全面的に制限されることになっても、「公共の福祉」に照らして「当然に」受任しなければならない。

判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


奈良県ため池の保全に関する条例(昭和二九年奈良県条例第三八号)第四条第二号、第九条は、憲法第二九条第二項、第三項に違反しない。

➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和36(あ)2623

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【行政書士試験】経済的自由・人身の自由と社会権のトレーニング問題

【行政書士試験】経済的自由・人身の自由と社会権のトレーニング問題



テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

(1)小売市場の適正配置(距離制限)規制により、小売市場の出店規制が行われても、憲法違反ではない。


〇…小売市場の出店規制は、小売市場の乱設に伴う小売商相互間の競争による共倒れを防ぐ理由から、小売商を保護するという積極目的規制(政策規制)であり、憲法に反しない。
【重要判例】小売市場距離制限事件


(2)酒類販売業の免許制により酒類販売業をすることができない人がいても、職業選択の自由を保障する憲法22条に同免許制が違反するとはいえない。

〇…酒類販売業の免許制は、酒類販売業者の確実な経営を通じて酒税収入を保全するための措置であり、職業選択の自由を侵して違憲であるとまではいえない。
【重要判例】酒類販売業の免許制事件


(3)既存の薬局から一定以上の距離を置かないと新規に薬局を開業できないとする薬局の適正配置規制(距離制限)は、新規に薬局を開業しようとする者の職業選択の自由を奪うことになるので、職業選択の自由を保障する憲法22条に違反する。

〇…不良医薬品の供給から国民を守るために一定の資格要件で薬局を限定することは、公共の福祉に適合する合理的措置である。しかし、薬局の距離制限は、不良医薬品の供給防止のための必要かつ合理的な規制とはいえず、憲法22条1項に違反する。
【重要判例】薬局距離制限事件


(4)義務教育は保障されているが、学問の自由は憲法上、保障されているものではない。

x…憲法23条に「学問の自由は、これを保障する」とあり、憲法上、明確な保障の対象となっている。

第二十三条 
学問の自由は、これを保障する。


(5)職業選択の自由は、「公共の福祉に反しない限り」という留保つきでの保障である。

〇…憲法 22条1項に「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、 「移転及び職業選択の自由を有する」とある。


(6)在留外国人や永住許可資格者とは異なり、日本国民には居住、移転の自由が絶対的に保障されている。

x…憲法22条1項より、何人に対しても「公共の福祉に反しない限り」という留保つきで、
居住、移転の自由が保障されている。

第二十二条 
一項 
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 
二項 
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。


(7)日本は資本主義・自由主義国なので、私有財産は所有者の意に反する使い方をすることは許されていない。

×…私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる

第二十九条 
一項 
財産権は、これを侵してはならない。 
二項 
財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 
三項 
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる


(8)奴隷制度は認められないので、何人も絶対にその意に反する苦役に服させられない
と憲法で保障されている。

×…「絶対に」ではなく、「犯罪に因る処罰の場合を除いては」その意に反する苦役に服させられないと保障されている。

第十八条 
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。


(9)何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。

〇…外国に移住することも、日本国籍を捨てて外国人になることも自由である。

第二十二条 
一項 
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 
二項 
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。


(10)何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命もしくは
自由を奪われ、またはその他の刑を科せられない。

〇…問題文の通り。

第三十一条 
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。


(11)財産権に加えられる規則が是認されるものかどうかは、規制の目的・必要性・内容、その規制によって制限される財産権の種類・性質及び制限の程度等を比較衡量して決すべきである。

〇…問題文通り。


(12)憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束を受けない」と定めるが、最高裁判例は、「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。

×…奴隷的拘束は、絶対に禁止されている。例外は一切なく、公共の福祉による例外も許されない。


(13)国も、子供自身の利益の擁護の為、あるいは子供の成長に対する社会公共の利益と関心に応えるため、全ての範囲において、教育内容を決定する権能を有する。

×…国は、子供自身の利益の擁護の為、あるいは子供の成長に対する社会公共の利益と関心に応えるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容を決定する権能を有する。
【重要判例】旭川学力テスト事件


(14)使用者に対する経済的地位の向上と直接の関係があるとはいえない政治目的のために争議行為を行うことは、私企業の労働者であると公務員であるとを問わず、憲法28条の保障を受けない

〇…問題文の通り。
【重要判例】全農林警職法事件



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6. 経済的自由・人身の自由と社会権・・・行政書士試験の勉強で押さえておきたいポイント!経済的・人身の自由についてわかりやすく説明

6. 経済的自由・人身の自由と社会権




どうもTakaです。今回は行政書士試験の憲法分野の経済的自由・人身の自由と社会権についてまとめてみました。




経済的自由

職業の自由


labor


1. 職業選択の自由と営業の自由



憲法22条1項で職業選択の自由や広く営業の自由(職業活動の自由)を保障しています。職業選択の自由には、職業の選択だけでなく、選択した職業を遂行する自由も含まれています。

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


2. 経済活動に対する規制


個人の経済活動に対しては、
その活動がもたらす弊害を除去・緩和する規制だけではなく、
社会経済全体の調和的発展を図るための規制も許されると、判例はいっています。
経済活動の自由は、他者の利益を守るための内在的制約(消極規制ともいう)だけえなく、社会経済政策を実現するための政策的制約(積極規制ともいう)にも服するものです。

【重要判例】小売市場許可制事件

3. 経済活動の規制の合憲性判断


経済活動の合憲性を考えるために、
判断基準として、内在的制約(消極規制)政策的制約(積極規制)
使い分けています。

①内在的制約(消極規制
厳格な合理性の基準を用いる
国民の生命・健康を守るための規制のこと
同じ目的を達成できる、より緩やかな規制手段があれば違憲。

②政策的制約(積極規制
明白性の原則を用いる
社会的経済的弱者を守るための規制のこと
規制手段が著しく不合理であることが明白である場合に限り違憲。

4. 小売市場の許可制


小売商業調整特別措置法は、特定の都市でのマーケットの開設を許可制としています。
この小売市場の許可制について、
判例は、社会経済を調和的に発展させるための中小企業保護政策の一つとして採った積極規制です。
判例では著しく不合理であことが明白とはいえないとして合憲といっています。
【重要判例】小売市場許可制事件

5. 薬局の適正配置規制


薬事法が薬局の配置を規制していたことについて、
判例では、主として国民の生命および健康に対する危険を防止するための消極的・警察的規制であり、その必要性と合理性を認めることができないので、違憲であるといっています。
【重要判例】薬事法距離制限事件

6. 公衆浴場の配置規制


公衆浴場法による公衆浴場の配置規制については、
健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉を維持するという積極目的によるものとする判例と、国民の保健福祉の確保と自分の家に風呂を持たない国民の必要不可欠な厚生施設の確保という積極・消極目的の併有とする判例があります。
しかし、いずれの判例も合憲であるといっています。
【重要判例】公衆浴場距離制限事件/最大判昭30.1.26

7. 酒類販売業の免許制


酒税法が酒類の販売業について免許制を採用しているのは、
憲法22条1項に違反しないというのが判例です。
【重要判例】酒類販売業の免許制事件

居住・移転の自由






1. 居住・移転の自由とは何か


憲法22条1項は、国内の居住・移転の自由も保障しています。
居住・移転の自由を保障しています。居住・移転の自由というのは、
居所をどこに定めるかを自由に決定できることにして、広く人の移動の自由を保障しようというものですね。
居住・移住の自由も、経済的自由の一つとされています。
人が自由に働くことができ、労働力が商品化することが、資本主義の大前提だからです。

2. 海外渡航の自由

憲法22条2項は、海外に移住する自由には、外国への一時旅行する自由も含まれるというのが判例です。

憲法22条2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

憲法22条1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

この問題が争点となったのが、次の帆足事件でした。
【重要判例】帆足事件

財産権






1. 個人の財産権・私有財産制

財産権


憲法29条1項では、個人が持っている具体的な財産上の権利を人権として保障するとともに、私有財産制を保障しています。

第二十九条 一項 財産権は、これを侵してはならない。二項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。三項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


2. 財産権の規制


財産権は、経済活動の自由と同様に、他者の権利を守るという消極目的のための内在的制約だけでなく、社会経済政策を実施するという政策的制約にも服します。
【重要判例】森林法共有林事件
【重要判例】奈良県ため池条例事件

3. 損失補償


公共のために、特定人の財産を強制的に取得したり、
利用方法について制限方法について制限を加えたりすることができます。
ただし、その結果、特定人が損失を被った場合には、正当な保障をしなければなりません。


人身の自由

奴隷的拘束・苦役からの自由




憲法18条前段は、奴隷的拘束を禁じています。
奴隷的拘束は、人間の尊厳に反するものなので、絶対に禁止されています。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

法定手続きの保障


1. 適正な手続きの法定


憲法31条は、刑罰を科すには、法定の定めた手続きによらなければならないことを定めています。また、憲法31条は、犯罪や刑罰の要件という刑事実体面の法定・適性をも要求する趣旨です。そのため、刑法の大原則である罪刑法定主義(法律なくば刑罰なく、法律なくば犯罪なしという原則)の根拠になると解されています。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

2. 告知・聴聞の権利


憲法31条の要請する適正手続きの実質的な内容とは、告知と聴聞の権利であると解されています。告知と聴聞の権利というのは、公権力が国民に対して不利益を課す場合には、予めその内容を当事者に告知して、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならないことを言います。

3. 行政手続の適正


憲法31条は、刑事手続きに関するものです。
法律上の手続きによらなければ、
公権力によって捕まったり、監獄に入れられたりしないということです。
【重要判例】成田新法事件

不当な抑留・拘禁からの自由

憲法34条では、権力による不当な逮捕・身体の拘束などをすべて禁止しています。

抑留とは
一時的な身体の拘束、刑事訴訟法上の逮捕や勾引にともなう留置

拘禁とは
継続的な身体の拘束、勾留・鑑定留置

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。


社会権

社会権とは何か


社会権とは、国家に対して積極的な配慮を要求する権利です。
資本主義によって生じた社会経済的弱者が国家に対して人間に値する生活を営むことを要求する現代的な人権が社会権です。国家による自由とも呼ばれています。

生存権

1. 生存権とは何か


生存権とは、人間に値する生活を営む権利です。
憲法25条1項の「健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利」のことです。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2. 生存権は具体的権利か?


憲法25条1項は、国の責務を宣言したにとどまり、
直接国民に具体的権利を付与したものではないというのが判例です。


3. 生存権の具体的立法

憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」は極めて抽象的・相対的な概念です。
これを具体的にするには、専門的な考えに基づいた判断が必要です。
そのため、具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、
立法府の広い裁量に委ねられると判例ではいっています。

また、立法措置が著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見えざるを得ない場合にのみ、裁判所は審査できると言っています。
【重要判例】堀木訴訟
【重要判例】塩見訴訟

教育を受ける権利

1. 教育を受ける権利と受けさせる権利


憲法26条1項は、教育を受ける権利を保障しています。
ここでいう教育は学校教育だけでなく、社会教育を受ける権利も保障しています。
また、26条2項では、義務教育について定めています。
すべての国民に対して、保護する子供に普通教育を受けさせる義務を課すとともに、
国に対して義務教育を無償とするように求めています。
ここでいう義務教育は授業料のことです。

第二十六条 一項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

第二十六条 二項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

2. 教育権


子供の教育は、子供の学習をする権利に対応し、
その充足を図り得る立場にある者の責務です。
そのため、判例では、国にも必要かつ相当と認められる範囲で、
教育内容を決定する権能があると言っています。


3. 教科書検定

教科書の検定とは、民間で著作・編集された図書について、
文部科学大臣が教科書として適切か否かを審査し、
これに合格したものを教科書として使用することを認めることです。
判例では、教科書検定は、教育を受ける権利を害するものではないと結論付けています。

ただし、判例は、審査が与えられた裁量権の範囲を逸脱すれば、
当然違法であるといっています。


労働基本権

労働基本権


1. 労働基本権とは何か



労働基本権とは、団結権・団体交渉権・団体行動権のことを指します。
憲法28条は、労働基本権を保障しています。使用者に対して劣位にある
労働者の自由と平等を実質的に確保するためです。労使間において
労働者を保護することが目的なので、憲法28条は、私人間にも直接適用されます。

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

2. 団結権


団結権とは、労働者が団体を組織する権利です(労働組合結成権)。
労働組合には、一定の範囲で、組合の統制を乱した組合員に対して
制裁を行う権利が認められています。これを統制権といいます。

3. 団体交渉権・団体行動権


団体交渉権とは、
労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利のことです。

団体行動権というのは、
労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利のことです。
判例は、政治的目的を達成するためのストライキには、
憲法28条の保障は及ばないといっています。
【重要判例】全農林警職法事件

次は、憲法の分野の国会について紹介しています。
➡7. 国会

2019年7月1日月曜日

成田新法事件って何?行政書士試験で頻出の重要判例

【重要判例】成田新法事件/最大判平成4.7.1


横堀要塞鉄塔
成田空港建設のためおよび土地収用の為の行政代執行の際には、反対派と警察が激しく衝突した
(横堀要塞鉄塔)

どうもTakaです。今回は憲法31条の適正手続の保障は、行政手続きにも適用されるかが争点となった成田新法事件について紹介したいと思います。

成田新法事件の内容


成田新法に基づき、当時の運輸大臣Aさんは、成田空港建設反対派のBさんの所有する家屋の使用禁止命令を行った。これに対して、Bさんは、事前の手続き保障なしに行政処分を行うことは適正手続を定めた憲法31条に反するとして、当該禁止処分の取消しを請求した。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

成田新法事件の争点


憲法31条の適正手続の保障は、行政手続にも適用されるか?

判決のポイント


憲法31条の適正の保障は、行政手続にも適用されうる。

※行政手続において憲法31条が適用されるのかどうかが特に問題となったが、最高裁はこの点についての判断を明示せず、成田新法は憲法31条の法意に反しないとして合憲にしたにとどまった。行政手続に憲法31条が適用されるのか、されるとしてどこまで保障されるのかといった論点はなお残ったままである。

判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


一 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一号は、憲法二一条一項に違反しない。

二 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一号は、憲法二二条一項に違反しない。

三 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一、二号は、憲法二九条一、二項に違反しない。

四 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一、二号は、憲法三一条の法意に反しない。

五 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第一八七号による改正前のもの)三条一、三項は、憲法三五条の法意に反しない。
(四につき意見がある。)



➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和61(行ツ)11

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