2019年12月4日水曜日

博多駅テレビフィルム提出命令事件ってどんな事件?行政書士試験の重要判例

【重要判例】博多駅テレビフィルム提出命令事件/最大決昭44.11.28


【重要判例】博多駅テレビフィルム提出命令事件/最大決昭44.11.28


今回は、報道の自由は憲法21条で保障されるかが争点となった博多駅テレビフィルム提出命令事件について紹介したいと思います。


博多駅テレビフィルム提出命令事件の内容




時は1968年(昭和43年)、アメリカ政府は日本政府に対して行った原子力空母の寄港の申し出が承認されたことから、原子力空母を佐世保湾に入港させました。当時は、アメリカがベトナム戦争の最中であった為、この寄港に対して反対派の学生が大々的な反対運動を展開し、機動隊と衝突しました。



そして、闘争に参加するため博多駅に下車した学生に対し、機動隊員が行き過ぎた静止行為を行ったとして、特別公務員暴行陵虐罪、職権濫用罪で告発されました。この騒動は、佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争と呼ばれています。

しかし、地検が機動隊員を不起訴処分としたため、刑事訴訟法262条により審判請求がなされた。この付審判請求がなされた。この付審判請求の審理にあたって、裁判所は、そのときの模様を撮影したとされるテレビフィルムの提出をテレビ局に命じた。


この事件の争点


①報道の自由は、憲法21条で保障されるか?

②報道のための取材自由は、憲法21条で保障されるか?

③裁判所がテレビフィルムの提出を命じることは、報道・取材の自由に対する侵害となるか?


判決のポイント


①報道の自由は、憲法21条によって保障される。

②報道のための取材の自由は、憲法21条の趣旨に照らし十分尊重に値する。この点で、憲法21条によって保障される報道の自由とは異なることに特に注意が必要である。取材は、報道のための手段にすぎない。つまり、取材の自由は、憲法21条によって「保障」まではされない。「尊重」までにとどまる。


報道の自由 → 憲法21条から保障される。

取材の自由 → 憲法21条から尊重される。保証まではされない。

提出命令の合憲性は、公正な裁判の要請に基づく提出命令の必要性と、取材の自由が妨げられる程度及び報道の自由に及ぼす影響の度合い等の諸事情を比較衡量して決められる。
本件の提出命令は、証拠上重要な価値があり、テレビフィルムはすでに放映済みである点などから、合憲である。

2019年12月2日月曜日

【行政書士試験・商法・会社法】16. 合併について

16. 合併について


【行政書士試験・商法・会社法】11. 合併について


今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野「合併」について勉強していきましょう。


合併


合併とは何か


合併とは、複数の会社が、契約によって1つの会社に合体することをいいます。

合併には、吸収合併と新設合併があります。


①吸収合併

吸収合併というのは、1つの会社が存続し、他の消滅する会社を吸収する場合をいいます。


②新設合併

新設合併とは、全ての会社を消滅させて、1つの新しい会社を設立する場合をいいます。


合併の手続


1. 合併契約の締結


合併をするためには、まず、当時会社間で、法定事項を定めた合併契約を締結しなければなりません。

会社法700条 
1項 
社債発行会社は、社債券が発行されている社債をその償還の期限前に償還する場合において、これに付された利札が欠けているときは、当該利札に表示される社債の利息の請求権の額を償還額から控除しなければならない。ただし、当該請求権が弁済期にある場合は、この限りでない。 
2項 
前項の利札の所持人は、いつでも、社債発行会社に対し、これと引換えに同項の規定により控除しなければならない額の支払を請求することができる。

2. 株主総会の特別決議による承認


合併契約で定めた効力発生日の前日までに、それぞれの当事会社において、株主総会の特別決議による承認を得なければなりません。

会社法783条 
1項 
消滅株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。


会社法795条 
1項 
存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。


会社法804条 
1項 
消滅株式会社等は、株主総会の決議によって、新設合併契約等の承認を受けなければならない。


3. 反対株主の株主買取請求権


合併に反対の株主には、株式買取請求権が認められています。

会社法785条

会社法797条

会社法806条

合併承認決議が成立した場合、その決議前に反対の意思表示をし、かつ合併承認決議に反対した株主は、株式買取請求権を行使できます。


4. 会社債権者保護手続


合併の各当事会社は、原則として、債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨などを官報公告し、知れている債権者に各別に催告しなければなりません。ただし、公告を官報への掲載に加え、日刊新聞紙への掲載または電子公告でする場合には、各別の公告は必要ありません。

会社法789条

会社法799条

会社法810条



合併の効果


合併の効力が発生するのは、吸収合併の場合は、合併契約で定めた効力発生日です。

会社法750条 
1項 
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。


これに対して、新設合併の場合は、新設会社の成立の日(設立登記の日)に、合併の効力が発生します。

会社法754条 
1項 
新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。


合併によって消滅する会社の権利義務は、法律上当然に、全て一括して、存続会社または新設会社に移転します。

会社法750条 
1項 
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。


会社法752条 
1項 
吸収合併存続持分会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。


合併の無効


合併の手続に瑕疵があった場合に、合併の無効を主張するには、合併の効力が生じた日から6ヶ月以内に、合併無効の訴えを提起しなければなりません。
訴えを提起できるのは、各当事会社の株主、取締役、合併を承認しなかった債権者などです。

合併を無効とする確定判決には、対世効があり、第三者にも効力が及びます。

会社法838条 
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容するw:確定判決は、w:第三者に対してもその効力を有する。


しかし、遡及効はなく、合併は、将来に向かって効力を失います。

会社法839条 
会社の組織に関する訴え(第834条第一号から第十二号まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。


会社分割


会社分割というのは、会社(分割会社)がその事業に関してもっている権利義務の全部または一部を会社から切り離して、既存の別の会社(承継会社)あるいは新しく設立する会社(新設会社)に包括的に承継させることです。権利義務を既存の別会社に承継させる場合にを吸収分割といいます。これに対して、新しく設立する会社(新設会社)に承継させる場合を新設分割といいます。

株式会社と合同会社は、分割会社になれますが、合名会社と合資会社は、分割会社になれません。

会社法757条 
1項
会社(株式会社又は合同会社に限る。)は、吸収分割をすることができる。この場合においては、当該会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(以下この編において「吸収分割承継会社」という。)との間で、吸収分割契約を締結しなければならない。


会社法762条 
1項 
一又は二以上の株式会社又は合同会社は、新設分割をすることができる。この場合においては、新設分割計画を作成しなければならない。


承継会社には、すべての種類の会社がなれます。


株式交換・株式移転


株式交換とは、株式会社がその発行済株式をすべてほかの会社または合同会社に取得させることです。

株式移転とは、株式会社がその発行済株式を全て新たに設立し株式を全て新たに設立する株式会社に取得させることです。

合名会社と合資会社は、完全親会社にはなれません。

会社法767条 
株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。


合同会社も、株式移転によって新たに設立される完全親会社にはなれません。

会社法772条 
1項 
一又は二以上の株式会社は、株式移転をすることができる。この場合においては、株式移転計画を作成しなければならない。 
2項 
二以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には、当該二以上の株式会社は、共同して株式移転計画を作成しなければならない。



2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】15. 組織再編

【行政書士試験・商法・会社法】15. 組織再編


【行政書士試験・商法・会社法】8. 組織再編


今回は、商法・会社法の分野の「組織再編」について勉強していきましょう。

組織変更


組織変更とは何か


いったん設立した株式会社を持分会社に変えることができます。また、逆に、持分会社を株式会社に変えることもできます。このように、会社が法人格の同一性を維持しながら、別の種類の会社になることを組織変更といいます。


組織変更手続


組織変更をするときには、法定事項を定めた組織変更計画を作成し、総株主または総社員の同意を得なければなりません。また、会社債権者の保護手続を行う必要もあります。

会社法779条 
1項
組織変更をする株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、組織変更について異議を述べることができる。 
2項
組織変更をする株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。 
一 組織変更をする旨 
二 組織変更をする株式会社の計算書類(第435条第2項に規定する計算書類をいう。以下この章において同じ。)に関する事項として法務省令で定めるもの 
三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨 
3項 
前項の規定にかかわらず、組織変更をする株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第939条第1項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。 
4項 
債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該組織変更について承認をしたものとみなす。 
5項 
債権者が第2項第三号の期間内に異議を述べたときは、組織変更をする株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該組織変更をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。



組織変更の効力は、組織変更計画で定めた効力発生日に発生します。

会社法745条 
1項 
組織変更をする株式会社は、効力発生日に、持分会社となる。


会社法747条 
1項 
組織変更をする持分会社は、効力発生日に、株式会社となる。


事業譲渡


事業譲渡って何?


事業譲渡とは、事業所、ノウハウ、得意先といった財産を丸ごと譲渡し、事業活動を受け継がせることです。

事業譲渡によって生じるのは、資産と負債の特定承継です。

特定承継とは、ここの権利義務を個々の原因によって取得することです。そのため、譲渡の対象を自由に選別することができます。しかし、各々について移転する手続きをしなければなりません。

事業譲渡後の規制


事案を譲渡した会社は、原則として、同一の市町村の区域内及び隣接する市町村の区域内において、事業を譲渡した日から20年間、同一の事業を行うことができません。

会社法21条 
1項 
事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。

事業を譲り受けた会社が、譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、原則として、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。

会社法22条 
1項 
事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。



株式会社の事業譲渡


1. 全部調達


株式会社がその事業を全て譲渡する場合は、原則として譲渡会社および譲受会社において株主総会の特別決議による承認が必要です。

会社法467条
1項

また、取締役会を設置する会社なら、重要な財産の処分や譲受に、取締役会決議が必要ですから、譲渡会社および譲受会社の取締役会決議があることも、事業を全て譲受するための要件となります。

2. 一部譲渡


株式会社が事業の一部を譲渡する場合、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認は不要です。しかし、それを超えて、重要な一部に当たるときは、原則として譲渡会社において株主総会の特別決議による承認が必要です。

全部譲渡の場合と一部譲渡の場合は異なり、譲受会社においては、株主総会の特別決議による承認は必要ありません。ただし、取締役会を設置する会社であれば、譲渡会社だけでなく、譲受会社も、取締役会決議が必要となります。

会社法362条 
4項 
取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。 
1 重要な財産の処分及び譲受け 
2 多額の借財 
3 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 
4 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 
5 第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項 
6 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備 
7 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除



3. 反対株主の株式買取請求権


株主総会の特別決議を要する事業の譲渡について、反対株主に株式買取請求権が認められています。事前に反対を通知し、株主総会においても反対した株主は、会社に対して、所有株式を公正な価格で買い取るように請求できるのです。

会社法469条



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【行政書士試験・商法・会社法】14. 会社の計算

14. 会社の計算



今回は商法・会社法の分野「会計帳簿、資本金、剰余金」等の分野に関して勉強してきます。


会計帳簿と計算書類




会社の計算


会社の計算というのは、会社の営む経済活動の効果を会計的に処理することです。株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従います。

会社法433条 
株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。


会計帳簿


1. 会計帳簿の作成と保存


株式会社は、正確な会計帳簿を作成しなければなりません。そして、会計帳簿閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければなりません。

会社法432条 
1項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。 
2項 
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

2. 会計帳簿の閲覧権


総株主の議決権の3%以上を持つ株主、または発行株式の3%以上の株式を持つ株主
は、会社の営業時間内であれば、いつでも、請求の理由を明らかにして、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写(とうしゃ:写しとること)を請求できます。

会社法433条 
1項 
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。 
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求 
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

計算書類


1. 計算書類って何?



計算書類とは、貸借対照表・損益計算書その他株式会社の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいいます。


2. 計算書類の作成・保存


株式会社は、法務省令の定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければなりません。また、各事業年度に係る計算書類・事業報告およびこれらの附属明細書を作成しなければなりません。そして、10年間、計算書類とその附属明細書を保存しなければなりません。

会社法435条 
1項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。 
2項 
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。 
4項 
株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。


資本金と準備金


資本金と準備金って何?


資本金とは、原則として、設立または株式の発行に際して、株主となるものが会社に払い込みまたは給付をした財産の額です。

会社法445条 
1項 
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。


これに対して、準備金とは、企業の健全な発達と会社債権者保護のために、積み立てておくべきものです。準備金には、資本準備金と利益準備金があります。

株主となる人が会社に払い込みまたは給付した財産の額のうち、2分の1を超えない額は、資本金として計上せず資本準備金とすることができます。

会社法445条 
2項 
前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。 
3項 
前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。


資本金・準備金の減少


1. 減少の方法


資本金や準備金の額を減少させることができます。資本金の減少は、原則として株主総会の特別決議によって、準備金の減少は、株主総会の普通決議によって、減少額や効力発生日などを定めれば、減少させることができます。ただし、マイナスにすることはできません。

会社法447条
1項
2項

会社法309条
2項
9号

会社法448条
1項
2項

2. 債権者の異議


資本金と準備金の減少は、会社債権者の利益に重大な影響を与えます。そのため、会社は、会社債権者に異議を述べる機会を与えるため、減少の内容や異議を述べられる旨などを官報に公告し、判明している債権者には催告しなければならないのが原則です。

会社法449条


資本金・準備金の増加


株主総会の普通決議によって、減少する剰余金の額・資本金または準備金の増加の効力発生日を定めれば、剰余金を減少させて、それを資本金・準備金に組み入れることができます。ただし、剰余金をマイナスにすることはできません。

会社法450条 
1項 
株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一 減少する剰余金の額 
二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日 
2項 
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 
3項 
第1項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。


会社法451条 
1項 
株式会社は、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一 減少する剰余金の額 
二 準備金の額の増加がその効力を生ずる日 
2項 
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 
3項 
第1項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。


剰余金の配当


剰余金とは何か?


剰余金とは、貸借対照表上の純資産額(資産の部の額から、負債の部の額を差し引いた額)から、資本金と準備金を差し引き、さらに、決算日以降の変動を考慮した額です。

会社法446条



剰余金の配当


1. 配当の要件


純資産額が300万円以上であれば、株式会社は、分配可能額の限度内で、いつでも(同一事業年度以内に何度でも、株主に剰余金の配当をすることができます)

会社法453条 
株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。

会社法458条 
第453条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。


会社法461条


ただし、自己株式を持っていても、会社自身に剰余金を配当することはできません。

会社法453条



剰余金の配当をする場合には、配当によって減少する剰余金の10分の1を資本準備金または利益準備金として計上しなければなりません。

会社法445条4項 
剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

2. 配当手続


剰余金の配当をするには、その都度、株主総会の決議で配当財産の書類などを定めなければなりません。


会社法454条 
1項 
株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 
一  配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額 
二  株主に対する配当財産の割当てに関する事項 
三  当該剰余金の配当がその効力を生ずる日



取締役会設置会社は、定款で1事業年度の途中に1回に限り、取締役会決議で剰余金を金銭で配当できる旨を定めることができます。これを中間配当といいます。

会社法454条
5項


3. 配当財産


中間配当の配当財産は、金銭に限定されています。しかし、通教の剰余金の配当は、現物(金銭以外の財産)で行うこともできます。株主総会の特別決議により、株主に金銭分配請求権を与えず、現物のみを配当することもできます。

会社法
309条
2項
10号

ただし、当該株式会社の株式・新規予約権・社債を配当財産とすることはできません。

会社法454条
1項
1号

会社法107条
2項
2号


違法な剰余金の配当


分配位可能額を超えた剰余金の配当は、無効です。株主や業務執行者などは、
会社に対して、交付を受けた金銭や現物の帳簿価額に相当する金銭を返還しなければなりません。

会社法462条
1項



➡【リンク】9. 組織再編

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【行政書士試験・商法・会社法】13.会社の資金調達

13.資金調達



今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野の「会社の資金調達」について勉強していきましょう。




資金の調達方法


内部資金


会社を設立する際には、資金を全て外部から集めなければなりません。これに対して、会社成立後は、事業活動によって得た収益を社内に留保して、内部資金として事業活動に使うこともできます。


外部資金の調達


会社成立後に外部から資金を調達する方法として、銀行などから借り入れるという方法もありますが、大きな企業は、株式や社債を発行して資金を集めるという方法を用いています。


株式発行による資金調達




新株の発行


会社成立後に行われる株式の発行を新株の発行といいます。新株の発行には、通常の新株発行と特殊な新株発行(株式分割)があります。

通常の新株発行


通常の新株発行は、発行するやり方によって、次のように分類されます。

①株主割当て
・・既存の株主に持分比率に応じた新株の割当てを受ける権利を与えること。

②第三者割当て
・・特別の人に対してのみ、株式引き受けの申し込みを勧誘すること。

③公募
・・広く不特定多数の投資家に対して、株式の引き受けの申し込みを勧誘することです。


募集株式の発行


募集事項の決定


募集に応じて、株式の引き受けの申し込みをした者に割り当てる株式を募集株式といいます。募集株式を発行するには、その都度、募集株式の数・払込金額・払込期日などの募集事項を決めなければなりません。

会社法199条
1項


募集事項の決定方法


募集事項を決定する方法は、非公開会社と公開会社にわかれます。


①非公開会社の場合

非公開会社であれば、原則として、株主総会の特別決議で募集事項を決定しなければなりません。

会社法199条2項

会社法309条
2項
5号


②公開会社の場合

公開会社であれば、原則として取締役会の決議で募集事項を決定します。ただし、払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合(有利発行)は、既存の株主を保護するために、公開会社であっても、株式総会の特別決議で募集事項を決定しなければなりません。

会社法201条
1項


募集株式の発行


1. 募集事項等の通知


募集事項を決定したら、次は、通知です。会社は、募集株式引受の申し込みをしようとしている者に対して、会社の商号・募集事項・払込取扱場所などを通知しなければならないのが原則です。

会社法203条
1項




2. 募集株式引受の申し込み


募集株式引受けの申し込みは、

①氏名または名称および住所
②引受けようとする募集株式の数を記載した書面を会社に交付

して行うのが原則です

会社法203条 
2項 
第199条第1項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。 
 一
申込みをする者の氏名又は名称及び住所 
 二 
引き受けようとする募集株式の数


ただし、会社の承諾を得て、電磁的方法で行うこともできます。

会社法203条 
3項 
前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。


3. 募集株式の割り当て


引受けの申し込みななされると、会社は次のことを定めなければなりません。

①募集株式の割当てを受ける者
②そのものに割り当てる募集株式の数

そして、会社は、払込期日までに、申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければなりません。


会社法204条 
1項 
株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第2項第二号の数よりも減少することができる。


会社法204条 
3項 
株式会社は、第199条第1項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。


4. 全額払込み・全部給付


割当を受けた申込人は、その株式の引受人となります。

会社法206条 
次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集株式の数について募集株式の引受人となる。 
一 
申込者 株式会社の割り当てた募集株式の数 
二 
前条の契約により募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集株式の数


引受人は、払込期日または払込期日内に、払込取扱場所で払込金額を全額払い込み、現物出資を全額給付しなければなりません。

会社法208条 
1項 
募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第199条第1項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。

会社法209条
2項

これがなされないと、その引受人は、法律上当然に権利を失います。

会社法208条
5項


5. 効力の発生


払込期日までに払い込み・給付のあった株式は、払込期日に効力を発生し、引受人は、その日から株主になります。払込期間を定めた場合は、払込み・給付のあった日に効力を発生し、株主になります。

会社法209条 
募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。 
一 
第199条第1項第四号の期日を定めた場合 当該期 
二 
第199条第1項第四号の期間を定めた場合 出資の履行をした日

発行予定株式の全てについて払込み・給付がなくても、払込み・給付のあった分については、効力が発生するのです。


募集株式発行の差し止め請求


募集株式の発行が、法令・定款に違反し、または著しく不公平な方法のため、これによって不利益を受ける恐れのある株主は、会社に対してその株式の発行をやめるように請求することができます。

会社法210条 
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第199条第1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。 
一 
当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合 
二 
当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合

無効・不存在確認の訴え


会社成立後に発行された株式の効力を否定しようという場合、会社を相手取って、無効確認の訴えあるいは不存在の確認の訴えを提起しなければなりません。

無効確認の訴えは、提起権者が株主・取締役・監査役などに限定され、提起期間も効力発生日から6ヶ月間(非公開会社は1年間)に限定されています

会社法828条
1項
3号


新株予約権


募集新株予約権


1. 新株予約権とは何か?


新株予約権というのは、行使すると、当該株式会社の株式の交付を受けとることができる権利です。新株予約権は、譲渡できるのが原則です。

新株予約権付社債


新株予約権付社債は、社債が消滅しない限り、新株予約権のみを譲渡することはできません。新株予約権付社債は、新株予約権が消滅しない限り、社債のみを譲渡することはできません。


2. 募集新株予約権とは何か?


募集に応じて新株予約権の引受の申し込みをした者に対して割り当てる新株予約権を募集新株予約権といいます。

会社法245条 
1項 
次の各号に掲げる者は、割当日に、当該各号に定める募集新株予約権の新株予約権者となる。 
一 
申込者 株式会社の割り当てた募集新株予約権 
二 
前条第1項の契約により募集新株予約権の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集新株予約権

新株予約権者は、所定の期日までに募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければなりません。

会社法246条 
1項 
第238条第1項第三号に規定する場合には、新株予約権者は、募集新株予約権についての第236条第1項第四号の期間の初日の前日(第238条第1項第五号に規定する場合にあっては、同号の期日。第三項において「払込期日」という。)までに、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければならない。


3. 募集新株予約権の発行の差止請求


募集新株予約権の発行が、法令・定款に違反し、または著しく不公平な方法により行われるため、これによって不利益を受ける恐れのある株主は、会社に対してその募集新株予約権の発行をやめるように請求することができます。

会社法247条 
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株は、株式会社に対し、第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。 
一 
当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合 
二 
当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合


新株予約権無償割当て


株式会社は、株主に無償で新株予約権を割り当てることができます。

会社法277条 
株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。


これを新株予約権無償割当てといいます。これをするには、その都度、株主総会の普通決議(取締役会設置会社は取締役会の決議)で、株主に割り当てる新株予約権の内容・数またはその算定方法・効力発生日などを定めなければなりません。

会社法278条 
1項 
株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。 
 一 
株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法 
 二 
前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法 
 三 
当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日 
 四 
株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当てを受ける株主の有する株式の種類


新株予約権の割当を受けた株主は、効力発生日に自動的に新株予約権者になります。

会社法279条 
1項 
前条第一項第一号の新株予約権の割当てを受けた株主は、同項第三号の日に、同項第一号の新株予約権の新株予約権者(同項第二号に規定する場合にあっては、同項第一号の新株予約権の新株予約権者及び同項第二号の社債の社債権者)となる。



新株予約権の行使

新株予約権の行使は、①その内容および数、②行使日を明らかにして行われなければなりません。

会社法280条

新株予約権を行使すると、そのものは、行使日に株主になります。

会社法282条 
新株予約権を行使した新株予約権者は、当該新株予約権を行使した日に、当該新株予約権の目的である株式の株主となる。


社債


社債とは何か?


社債とは、会社の割り当てによって発生する会社に対する金銭債権であり、募集車載に関する事項の定めに従って償還されるものです。社債は、一般公募から、直接、大量かつ長期の資金を調達するための手段です。株式会社だけでなく、持分会社も、社債を発行することができます。


募集社債の発行


募集社債とは、会社による募集に応じて、社債の引受の申し込みをした者に割り当てられる社債のことです。

会社が社債を引き受けるものを募集する場合、次の事項を定めなければなりません。

①募集社債の総額
②各募集社債の金額
③募集社債の利率
④募集社債の償還方法および期限
⑤利息支払の方法および期限

会社法676条 
1項 
会社は、その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集社債(当該募集に応じて当該社債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる社債をいう。以下この編において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。 
 一 
募集社債の総額 
 二 
各募集社債の金額 
 三 
募集社債の利率 
 四 
募集社債の償還の方法及び期限 
 五 
利息支払の方法及び期限 
 六 
社債券を発行するときは、その旨 
 七 
社債権者が第698条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨 
 八 
社債管理者が社債権者集会の決議によらずに第706条第1項第二号に掲げる行為をすることができることとするときは、その旨 
 九 
各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法 
 十 
募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日 
 十一 
一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日 
 十二 
前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項



取締役会設置会社では、これらを取締役会で決定しなければなりません。

会社法362条
4項
5号


取締役会の決める事項です。取締役会が置かれている場合は、取締役が定めます。



社債権者の権利


社債権者には、元本の償還を受ける権利と利息の支払いを受ける権利があります。元本の償還を受けるのは、社債の期限が到来した時です。それまでは、発行時に定められた内容の利息の支払いを受けます。



社債管理者


会社は、原則として、社債管理者を定めなければなりません。社債管理者とは、社債の発行会社から委託を受けて、社債の管理をする人です。

会社法702条 
会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りでない。


社債管理者になれるのは、銀行・信託会社などだけです。

会社法703条 
社債管理者は、次に掲げる者でなければならない。 
一 銀行 
二 信託会社 
三 前二号に掲げるもののほか、これらに準ずるものとして法務省令で定める者

社債管理者には、社債権者のために弁済を受け、また再建を実現できるようにするために必要な一切の裁判上。裁判外の行為をする権限があります。

会社法705条 
1項 
社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。


社債権者集会


社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織します。

会社法715条 
社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織する。


社債権者集会は、必要がある場合は、いつでも招集することができます。

会社法717条 
1項 
社債権者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。


法定事項および社債権者の利害に関する事項について決議をすることができます。

会社法716条 
社債権者集会は、この法律に規定する事項及び社債権者の利害に関する事項について決議をすることができる。


招集者は、決議のあった日から1週間以内に裁判所に決議の認可を申し立てしなければなりまん。

会社法732条 
社債権者集会の決議があったときは、招集者は、当該決議があった日から一週間以内に、裁判所に対し、当該決議の認可の申立てをしなければならない。


社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、効力を発生しないからです。

会社法734条 
1項 
社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。

【行政書士試験・商法・会社法】12. 委員会設置会社とは?

12. 委員会設置会社



今回は商法・会社法の分野「委員会設置会社」について勉強していきましょう。

委員会設置会社って何?


委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会および、報酬委員会を置く株式会社のことです。委員会設置会社には、取締役会、執行役および会計監査人を置かなければなりません。

会社法327条 
1項 
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。 
1. 公開会社 
2. 監査役会設置会社 
3. 監査等委員会設置会社 
4. 指名委員会等設置会社


委員会の構成・権限

各委員会は、取締役会決議で選定した3人以上の委員で組織し、委員の過半数は社外取締役でなければなりません。

会社法400条 
1項 
指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の各委員会(以下この条、次条及び第911条第3項第23号ロにおいて単に「各委員会」という。)は、委員三人以上で組織する。 
2項 
各委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議によって選定する。 
3項 
各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。 
4項 
監査委員会の委員(以下「監査委員」という。)は、指名委員会等設置会社若しくはその子会社の執行役若しくは業務執行取締役又は指名委員会等設置会社の子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは支配人その他の使用人を兼ねることができない。


指名委員会は、株主総会に提出する取締役・会計参与の選任・解任に関する議案の内容を決定します。監査委員会は、執行役等の職務執行の監査や監査記録の作成などを行います。そして報酬委員会は、執行役等の個人別の報酬内容を決定します。


会社法404条 
指名委員会は、株主総会に提出する取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の選任及び解任に関する議案の内容を決定する。


委員会設置会社の監督と執行

委員会設置会社になると、監督と執行が制度的に分類され、取締役会は、監督機能が中心となります。業務執行は、取締役決議で選任された執行役が担当し、

会社法402条 
2項 
執行役は、取締役会の決議によって選任する。


会社法418条 
執行役は、次に掲げる職務を行う。 
第416条第4項の規定による取締役会の決議によって委任を受けた委員会設置会社の業務の執行の決定 
委員会設置会社の業務の執行

代表権は、取締役会が執行役の中から選定した代表執行役が行使します。

会社法420条 
1項 
取締役会は、執行役の中から代表執行役を選定しなければならない。この場合において、執行役が一人のときは、その者が代表執行役に選定されたものとする。 
2項 
代表執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解職することができる。 
3項 
第349条第4項及び第5項の規定は代表執行役について、第352条の規定は民事保全法第56条 に規定する仮処分命令により選任された執行役又は代表執行役の職務を代行する者について、第401条第2項から第4項までの規定は代表執行役が欠けた場合又は定款で定めた代表執行役の員数が欠けた場合について、それぞれ準用する。

原則として、取締役という資格では、業務を執行できなくなるのです。

会社法415条 
委員会設置会社の取締役は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行することができない。


【行政書士試験・商法・会社法】11. 会計監査人とは?

11. 会計監査人


【行政書士試験・商法・会社法】11. 会計監査人とは?

今回は商法・会社法の分野「会計監査人」について紹介していきます。

会計監査人って何?


会計監査人って何?


会計監査人は、計算書類等の監査を行う機関です。会計監査人は、会社の役員ではなく、外部の者がならなければなりません。外部の会計のプロによって監査を受けることで、計算書類が適正であることをアピールすることができ、資金を集める際の保障に役立つからです。よって、大きな会社および委員会設置会社は、会計監査人を置かなければなりません。

会社法327条 
5項 
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。


会社法328条 
1項 
大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。 
2項 
公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。

会計監査人は、株主総会の普通決議で選任します。会計監査人は、公認会計士または監査法人でなければなりません。

会社法327条 
1項 
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。 
1. 公開会社
2. 監査役会設置会社
3. 監査等委員会設置会社
4. 指名委員会等設置会社

会計監査人の権限


会計監査人は、会社の計算書類およびその附属明細書・臨時計算書類・連結計算書類を監査します。そして、その監査について、会計監査報告を作成しなければなりません。

会社法396条 
1項 
会計監査人は、次章の定めるところにより、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する。この場合において、会計監査人は、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。

【行政書士試験・商法・会社法】10. 監査役とは?監査役会とは?

10. 監査役



今回は商法・会社法の分野「監査役」について勉強していきましょう。

監査役って何?


監査役は、取締役や会計参与の職務執行を監査する機関です。

会社法381条 
1項 
監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。


取締役会設置会社や会計監査人設置会社では、原則として監査役を設置しなければなりません。

会社法327条 
2項 
取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、 公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。 
3項 
会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。


監査役の選任


監査役は、株式総会の普通決議で選任されます。

会社法329条 
1項 
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

監査役は、自然人でなければなりません。また、自然人であっても、成年被後見人や被保佐人は、監査役にはなれません。

会社法335条 
1項 
第331条第1項及び第2項の規定は、監査役について準用する。


監査役の権限


監査役は、取締役や会計参与の職務執行を監査します。

会社法381条 
1項 
監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

監査役は、会計の監査だけではなく業務全般の監査を行います。ただし、非公開会社であって、監査役会も、会計監査人も置いていない会社は、定款で、監査役の監査範囲を会計監査に限定することができます。

会社法389条 
1項 
公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及びw:会計監査人設置会社を除く。)は、第381第1項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。


監査役会


監査役会の設置


委員会設置会社以外の大きな会社で、公開会社である会社は、監査役会を置かなければなりません。監査役会は、3人以上いなければならず、かつ、その半数以上は、社外監査役でなければなりません。

監査役会の業務


監査役会は、すべての監査役で組織され、次の業務を行います。

会社法390条 
1項 
監査役会は、すべての監査役で組織する。 
2項 
監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない。 
 一 
監査報告の作成 
 二 
常勤の監査役の選定及び解職 
 三 
監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定

①監査報告の作成
②常勤の監査役の選定・解職
③監査役の職務に関する事項の決定

監査役会は、必要に応じて開催され、招集後は、原則として個々の監査役にあります。

会社法391条 
監査役会は、各監査役が招集する。

監査役会の決議は、監査役の過半数で行います。

会社法393条 
1項 
監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行う。

【行政書士試験・商法・会社法】9. 会計参与とは?

9. 会計参与



今回は商法・会社法の分野「会計参与」について勉強していきましょう。

会計参与って何?




会計参与とは、取締役と共同して、計算書類等を作成する機関です。定款によって、任意に設置することができます。

会計参与の選任


株主総会の普通決議によって選任されます。員数については特に制限はなし。しかし、会計参与は、公認会計士・監査法人または税理士・税理士法人でなければなりません。

会社法333条 
1項 
会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。

会計に関する専門的な知識のあるものしか、会計参与にはなれません。


会計参与の権限


会計参与は、取締役と共同で、計算書類およびその附属明細書・臨時計算書類・連結計算書類を作成します。

会社法374条 
1項 
会計参与は、取締役と共同して、計算書類(第四百三十五条第二項に規定する計算書類をいう。以下この章において同じ。)及びその附属明細書、臨時計算書類(第441条第1項に規定する臨時計算書類をいう。以下この章において同じ。)並びに連結計算書類(第444条第1項に規定する連結計算書類をいう。第396条第1項において同じ。)を作成する。この場合において、会計参与は、法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければならない。

両者の意見が一致しないと、有効な計算書類等を作成することはできません。会計参与が承認しない限り、計算書類等は無効となります。


【行政書士試験・商法・会社法】8. 代表取締役とは?

8. 代表取締役



今回は、商法・会社法の分野「代表取締役」について勉強していきましょう。

代表取締役とは?


【行政書士試験・商法・会社法】8. 代表取締役とは?


代表取締役とは、取締役の中から選定され、会社を代表する機関をいいます。一般的に社長といわれる立場の人です。取締役会が設置されない会社では、原則として、取締役が会社を代表する機関となります。

代表取締役の権限


1. 業務執行権


代表取締役には、会社の業務を執行する権限があります。代表取締役は、株主総合決議・取締役会決議で決められた事項を執行します。また、日常の業務など、取締役会から委譲された事項について、自ら意思決定し、執行することもできます。

2. 代表権


代表取締役には、会社を代表する権限があり、対外的に会社を代表します。代表取締役が複数いる場合、各自が単独で会社を代表します。

会社法349条 
1項 
取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。 
2項 
前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。

代表取締役の代表権は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ包括的なものです。

会社法349条 
4項 
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。


そのため、代表権を制限しても、善意の第三者をに対抗することはできません。

会社法349条 
5項 
前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない


ただし、取締役と会社の訴訟については、監査役が会社を代表します。


表見代表取締役


会社が、代表権を与えていない取締役に、社長・副社長など世間から見れば代表権があるように見える名称をつけた場合、その取締役を表兼代表取締役といいます。

表見代表取締役の行為については、会社は、善意の第三者に対して責任を負わなければなりません。

会社法354条 
株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。


そのような名称をつけた会社には、帰責性がありますから、代表取締役らしい外観を信じた第三者を保護しようというわけです。

【行政書士試験・商法・会社法】7. 取締役とは?取締役会とは?

7. 取締役とは?取締役会とは?



今回は商法・会社法の分野「取締役・取締役会」について勉強していきましょう。

取締役


取締役とは?


1. 員数


株式会社は必ず取締役を置かなければなりません。取締役は、株式総会の普通決議で選任します。

会社法329条 
1項 
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。


取締役会の置かれていない会社では、取締役は1人だけでOKです。しかし、取締役会設置会社では3人以上必要です。

会社法331条 
4項 
指名委員会等設置会社の取締役は、当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。


2. 取締役になるための資格


取締役になれるのは、自然人だけです。法人はなれません。また自然人であっても、成年被後見人や被保佐人などは、取締役にはなれません。

会社法331条


定款で、株主であることを取締役になるための要件としてはならないのが原則です。


3. 善管注意義務と忠実義務


取締役は、経営の受任者として、全良な管理者の注意を持って職務を遂行しなければなりません。(善管注意義務)
また、取締役は、法令・定款・株式総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を行わなければなりません。

会社法355条 
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。


4. 競業取引の規制


取締役が、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引(競業取引)をする場合、取締役がその地位を利用して、取引先を奪うなどの損害を与える恐れがあります。その為、取締役はその取引について重要な事実を開示して、取締役会(ない場合株主総会)の事前承認を得なければなりません。

会社法356条 
1項 
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。 
 一 
取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。 
 二 
取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。 
 三 
株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

取締役設置会社の取締役は、取引後、遅滞なく取引の重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。

会社法365条 
1項 
取締役会設置会社における第356条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。 
2項 
取締役会設置会社においては、第356条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。



取締役の責任


1. 会社に対する責任


取締役が任務を怠ったことによって会社に損害が生じた場合、取締役は、損害賠償責任を負います。

会社法423条

この損害賠償は、総株主の同意がなければ免除できません。


2. 第三者に対する責任


職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは取締役は、それによって第三者に生じた障害を賠償する責任を負います。

会社法429条


3. 責任追及等の訴え


6ヶ月前からずっと株式を持ち続けている株主(非公開会社なら、株主なら誰でも)は、会社に対して取り締まりの責任を追及する訴え提起しない場合には、その請求をした株主が責任追及の訴えを提起できます。60日の経過を持っていては、回復できない損害が発生する恐れがある場合には、その株主は、直ちに責任追及の訴えを提起できます。

会社法847条 
1項 
六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第189条第2項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第423条第1項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第120条第3項の利益の返還を求める訴え又は第212条第1項若しくは第285条1項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。 
3項 
株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。 
5項 
第1項及び第3項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。


4. 違法行為の差止め


取締役が法令もしくは定款に違反する行為をし、または、そのおそれがあり、それによって会社に著しい損害が生じる恐れのある場合には、6ヶ月前からずっと株式を持ち続けている株主(非公開会社なら株主なら誰でも)は、その取締役に対してその行為を止めるように請求できます。

会社法360条


取締役会


取締役会とは何か?


取締役会とは、すべての取締役によって組織される合議制の機関です。取締役会全員を構成メンバーとして、次のことをする機関です。

①会社の業務執行の決定
②取締役の職務執行の監督
③代表取締役の選定・解雇

会社法362条 
1項 
取締役会は、すべての取締役で組織する。 
2項 
取締役会は、次に掲げる職務を行う。 
 一 
取締役会設置会社の業務執行の決定 
 二 
取締役の職務の執行の監督 
 三 
代表取締役の選定及び解職 
3項 
取締役会は、取締役の中からw:代表取締役を選定しなければならない。 
4項 
取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。 
 一 
重要な財産の処分及び譲受け 
 二 
多額の借財 
 三 
支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 
 四 
支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 
 五 
第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項 
 六 
取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備 
 七 
第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除 
5項 
大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。

取締役会の設置は、公開会社、監査役設置会社、委員会設置会社にのみ義務付けられて、他の株式会社については、各社の判断に任させられています。


会社法327条 
1項 
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。 
公開会社
監査役会設置会社
監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社

取締役会の権限


1. 業務執行の決定


取締役会は、業務執行を決定します。重要な財産の処分や譲受けといった重要な業務執行の決定は、取締役会の専決事項とされ、必ず取締役会で決定しなければなりません。定款をもってしても、代表取締役に委ねることはできません。

会社法362条
4項

取締役会の主な専決事項
①重要な財産の処分や譲受
②多額の借財
③支配人などの重要な使用人の選任・解任
④支店などの重要な組織の設置、変更、廃止
⑤取締役の職務執行が法令および定款に適合することを確保するための体制の整備


2. 取締役の監督


取締役会は、取締役の職務の執行を監督します。

会社法362条 
2項 
取締役会は、次に掲げる職務を行う。 
一 
取締役会設置会社の業務執行の決定 
二 
取締役の職務の執行の監督 
三 
代表取締役の選定及び解職

この監督機能を向上させるために、会社業務を執行する代表取締役などに、3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行状況を取締役会に報告することを義務付けています。

会社法363条2項


3. 代表取締役の選定・解職


取締役会は、取締役の中から、代表取締役を選定しなければなりません。

会社法362条 
3項 
取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。


取締役会の運営


1. 取締役会の招集権


取締役会は、3ヶ月に一回以上招集しなければなりません。取締役会の招集権は、原則として個々の取締役にあります。定款または取締役会の決議で、一定の取締役だけを招集権者とすることもできます。ただし、その場合には、他の取締役に招集請求権を認められ、招集請求が放置されると、請求した取締役が自ら取締役会を招集できます。

会社法366条 
1項 
取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。 
2項 
前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。 
3項 
前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。

2. 取締役会の招集手続


取締役会は、招集権者が取締役会の日の1週間前までに招集通知をして招集するのが原則です。取締役に対してだけでなく、監査役がいれば、監査役に対しても招集通知を発しなければなりません。ただし、取締役および監査役全員が同意すれば、招集手続なしで、取締役会を開催することができます。

会社法368条 
1項 
取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。 
2項 
前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

3. 取締役会の決議


取締役会の決議は、原則として議決に加わることのできる取締役の過半数が出席して、出席した取締役の過半数で行います。

会社法369条 
1項 
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。


取締役会においては、株主総会と異なり、議決権の代理行為は認められていません。取締役の議決権は、その取締役に対する個人的信頼に基づいています。

しかし、書面による持ち回り議決は認められています。議決に加わることのできる取締役全員が、書面または電磁的記録で議案に同意し、監査役が異議を述べなかった場合には、その議案をかけるする取締役会決議があったものとみなすと、定款に定めることができます。

会社法370条 
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。


特別取締役による取締役会


取締役が5人以上いて、かつ、その中の少なくとも1人が社外取締役である取締役会設置会社は、重要な財産の処分によって議決し、それを取締役会決議として扱うことができます。

会社法373条

特別取締役は、取締役会のメンバーの中からあらかじめ選任されたものです。



【行政書士試験・商法・会社法】6. 株式会社の機関とは?株主総会とは?

6. 株式会社の機関とは?



今回は、商法・会社法の分野「株式会社の機関、株主総会」について勉強していきましょう。

機関とは何か?


会社の機関とは、社団である会社に代わって意思決定や意思表示を行う地位のある自然人または会議のグループ(会議体)のことをいいます。

会社法は、株式会社の機関として、株主総会・取締役・取締役会・会計参与・ 監査役・監査役会・会計監査人・委員会を用意しています。


機関設計の自由化


株式会社は、株主総会と取締役を設置しなければなりません。

会社法326条
1項
株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

しかし、全ての株式会社に必須の期間は、株主総会と取締役だけであり、株主総会と取締役だけの株式会社を設置することができます。

会社法は、株主総会と取締役だけの最も基本的な形の会社をスタートとし、成長に応じて、必要な機関を追加して、育てていけるようにしています。



株主総会


株主総会って何?


株主総会というのは、株主を構成メンバーとする合議制の意思決定機関のことです。株主総会は、出資者であり、共同所有者である株主を構成員とする唯一の機関です。


株主総会の権限


取締役会に設置されていない株式会社では、株主総会は最高の機関です。株主総会は、会社法に規定する事項だけでなく、組織・運営・管理その他、株式会社に関する一切の事項についての決議に限定されます。他の事項の決議は、取締役会に委ねられています。

会社法295条 
2項 
前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。


株主総会の招集


1. 定時株主総会と臨時株主総会


株式会社は、毎事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を開催しなければなりません。また、必要がある場合には、いつでも、臨時株主総会を招集することができます。

会社法296条 
1項 
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。 
2項 
株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。 
3項 
株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

2. 招集権者


株主総会を招集するのは、原則として取締役です。

会社法296条 
3項 
株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。


ただし、取締役会設置会社では、取締役会が招集を決定し、それに基づいて、代表取締役などが招集するのが原則です。

会社法298条 
4項 
取締役会設置会社においては、前条第4項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第1項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。


3. 招集の請求権


6ヶ月前からずっと、総株主の議決権の100分の3以上を持ち続けている株主は、議決権のある課題に関し、招集の理由を示して、株主総会の招集を取締役に請求することができます。そして、遅滞なく、招集手続がとられない場合には、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集することができます。

会社法297条 
1項 
総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、w:株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。 
4項 
次に掲げる場合には、第1項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。 
 一 
第1項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合 
 二 
第1項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で 定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合

4. 招集通知


株主総会を招集するためには、2週間前までに、議決権のある株主に対して招集通知をしなければなりません。ただし、非公開会社は、書面投票または 電子投票を認めた場合を除いて、1週間前までに招集通知をすればいいとされています。

会社法299条 
1項 
株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。 
2項 
次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。 
 一 
前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合 
 二 
株式会社が取締役会設置会社である場合 

3項 
取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。  
4項 
前二項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

5. 招集手続の省略


招集手続は、株主総会を始めるためのもので、招集手続を経ないと、株主総会を始めないのが原則です。しかし、株主全員の同意があれば、書面投票または電子投票を認めた場合を除いて、招集手続を経ずに株主総会を開催することができます。


6. 総会検査役


経営権に関する争いがあり、株主総会の混乱が予想される場合などには、株主総会の招集手続きと決議方法の公正さを調査し、決議の成否についての証拠を保全するために、裁判所に総会検査役の選任を請求できます。提案できるのは、一定の要件を満たす株主だけです。


株主の提案権


株主には、株主総会の議題の提案権と議案の提出権があります。株主総会の議題を提案できるのは、一定の要件を満たす株主だけです。

会社法303条

これに対して、自ら議決権を行使できる議題について、議案を提出することは、株主なら誰でもできます。


議決権


1. 1株1議決権


株主は原則として、1株につき1票の議決権をもちます。株主は出資に応じたリスクを負担しており、そのリスクの割合に応じた議決権が与えられるという考え方です。(資本多数決の原理)


2. 議決権の代理行使


議決権は、株主自身が株主総会に出席して行使するのが原則ですが、株主に議決権の行使を保証するために、また、株主総会の定数を確保するために、議決権の代理行使が認められています。


3. 書面投票・電子投票


投票には、書面で行う方法と電子投票で行う方法が認められています。書面投票制度では、議決権のある株主が1000人以上いる会社は、原則として書面投票制度を採用しなければなりません。

会社法298条
2項

この制度が採用されると、総会に出席しない株主は、議決権行使書面を会社に提出することによって議決権を行使します。

会社法311条
1項



株主総会の決議


1. 決議する事項


取締役会設置会社では、原則として議題として招集通知に明記された事項しか決議することができません。

会社法309条 
5項 
取締役会設置会社においては、株主総会は、第298条第1項第2号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第316条第1項若しくは第2項に規定する者の選任又は第398条第2項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。


これに対して、取締役会を設置していない会社では、あらかじめ議題としていない事項についても、株主総会で決議することができます。


2. 普通決議


株式総会の決議は、原則として議決権行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で行います。

会社法309条 
1項 
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。


これを普通決議といいます。


3. 特別決議


定款の変更や合弁など、会社法309条2項に列挙された事項については、株主総会の特別決議が必要です。特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数で行うのが原則です。

会社法309条 
2項 
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。


4. 反対株主の株式買取請求権


株主総会において事業の全部または重要な一部の譲渡等の決議がなされた場合、反対株主に株式買取請求権が認められています。反対株主は、会社に対して所有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できるのです。

会社法469条


決議の瑕疵


1. 決議取消しの訴え


次のいずれかの瑕疵がある場合、決議の日から3ヶ月以内に限り、株主・取締役・監査役・清算人は、決議取り消しの訴えを提起できます。

会社法831条
1項


①招集手続または決議方法が、法令・定款に違反する場合、または著しく不公正な場合

②決議の内容が定款に違反する場合

③特別利害関係人が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がなされた場合。


2. 決議不存在・決議無効確認の訴え


外形的・物理的に決議と認められる者が存在しない場合や、外形的にはなんらかの決議があっても、それを法的に決議と評価できない場合には、決議は存在しません。また、決議の内容が法令に違反する場合、その決議は無効です。

決議不存在や決議内容の法令違反という大きな瑕疵がある場合には、誰でも、いつでも、決議不存在または決議無効確認の訴えを提起することができます。

会社法830条 
1項 
株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第937条第1項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。 
2項 
株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

【行政書士試験・商法・会社法】5. 株式制度

5. 株式制度


【行政書士試験・商法・会社法】5. 株式制度

今回は、行政書士試験の商法・会社法の分野「株式制度」について勉強していきましょう。

株式




株式って何?


株式とは、株式会社の社員たる地位(社員権)のことです。株式を1株でも持てば、その株式会社の社員になります。そして、複数の株式を買えば、その株式の数だけ、社員たる地位を持つことになります。株式会社は、多数の人が参加できるよにするため、社員たる地位を株式という単位に均一に細分化しています。

公開会社


公開会社とは、全ての種類の株式について譲渡制限のある株式会社以外の株式会社のことをいいます。この公開会社では、設立時に、発行可能株式総数の4分の1以上の株式を発行しなければならないとされています。

会社法37条 
3項 
設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。


株式の内容


各株式の内容は、原則として同一です。各株式に含まれる権利の内容は、同一であるのが原則です。ただし、株式会社は、定款の定めによって、発行する全ての株式を特別な内容の買う式にすることができます。

会社法107条


特殊な内容の株式


譲渡制限株式
・・譲渡に会社の承認が必要な株式。

取得請求権付株式
・・株主が会社に対して取得(買取り)を請求できる株式

 取得条件付株式
・・一定の事由が生じた場合に、会社側が強制的に取得できる株式



種類株式


1. 種類株式とは何か?


株式会社は、一定の事項について内容の異なる複数の種類の株式を発行することができます。

会社法108条
1項

これを種類株式といいます。


2. 剰余金の配当・残余財産の配分


剰余金の配当・残余財産の分配またはその双方について、他の種類の株式よりも優先的な地位が与えられる株式を優先株式といい、逆に、劣後的な地位が与えられる株式を劣後株式といいます。そして、標準となる株式を普通株式といいます。

発行可能種類株式総数と剰余金の配当・残除財産の分配に関する取り扱いの内容を定款に定めることによって、これらを種類株式として発行することができます。これは多様な資金調達を可能とするためです。


会社法108条 
2項 
株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。 
 1号 
剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容 
 2号 
残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容


3. 議決権制限種類株式


株式会社は、発行する株式の一部を議決権制限種類株式とすることができます。議決権制限種類株式というのは、株主総会の会議または一部の事項について、議決権を行使できない株式のことです。

会社法108条
1項
3号

経済的利益のみに関心のある株主に応えるとともに、従来の支配関係を変えずに、新株発行を伴う資金調達を行えるようにするためのものです。


4. 譲渡制限種類株式


株式会社は、発行する株式の一部について、譲渡に会社の承認が必要な株式とすることもできます。これを譲渡制限種類株式といいます。

会社法108条
1項
1号


株券


1. 株券とは何か?


株券とは、株式を表示した有価証券です。


2. 株式不発行


株式会社は、株券を発行しないのが原則です。例外的に株券を発行するのは、定数で定められた場合だけです。

会社法214条 
株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。


3. 株券発行会社


定数で株券の発行を定めた株式会社を株券発行会社といいます。株券発行会社は、株式を発行した日以降、遅滞なく、株券を発行しなければなりません。ただし、公開会社でない場合は、株主の請求があるまで、株券を発行しなくてもよいとされています。

会社法215条 
1項 
株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない。 
4項 
前三項の規定にかかわらず、公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる。



株主名簿


1. 株主名簿とは何か?


株式名簿とは、株主の氏名または名称・住所・持株数などを記載または記録するために、株式会社に作成が義務付けられた帳簿です。

会社法121条 
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。 
一 株主の氏名又は名称及び住所 
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数) 
三 第一号の株主が株式を取得した日 
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号

2. 基準日


株式の取引によって、会社は、一定の日(基準日)を定めて、その日に株主名簿に記載・記録されている株主(基準日株主)を権利者とすることができます。ただし、会社は、基準日の2週間前までに、基準日および基準日株主が行使できる権利の内容を公表しなければなりません。

会社法124条 
1項 
株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日においてw:株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。 
2項 
基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。 
3項 
株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項をw:公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。 
4項 
基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。 
5項 
第1項から第3項までの規定は、第149条第1項に規定する登録株式質権者について準用する。

3. 株主に対する通知


株主に対する通知や催告は、株主名簿に記載された住所または株主が通知した場所・連絡先宛にすればよいとされています。そして、通知や催告が通常到達するであろう時に、到達したものとみなされます。

会社法126条
1項 
株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。 
2項 
前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。 
3項 
株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者一人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を株主とみなして、前二項の規定を適用する。 
4項 
前項の規定による共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの一人に対してすれば足りる。 
5項 
前各項の規定は、第299条第1項(第325条において準用する場合を含む。)の通知に際して株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、第2項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。


株主の権利


株主権とは何か?


株式会社の株主としての法律上の地位を株主権といいます。株主に認められる権利の基礎となる法律上の地位を株主権と呼んでいます。


自益権と共益権


株主権は、自益権と共益権に分けられます。

自益権とは、会社から直接的な利益を得ることを目的とする権利です。
例:

共益権とは、会社の管理・運営に参加することを目的とする権利です。代表例は、株主総会における議決権です。

会社法105条
1項
3号


株主平等の原則


株式会社は、原則として、株主を、所有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければなりません。

会社法109条 
1項 
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。


内容の異なる種類の株式については、異なる取り扱いができますが、同じ内容の株式については、持っている株式数に応じて平等に取り扱わなければいけません。これを株主平等の原則といいます。法が例外を認める場合を除いて、株主平等の原則に反する定款の定め・株主総会の決議・取締役の議決取締役の業務執行行為等は、無効です。


株式の共有


複数の人が株式を共有することができます。ただし、会社が開業しない限り、その株式について権利を行使できるのは、1人だけです。権利行使者1人を決めて、そのものの氏名または名称を会社に通知しないと、共有株式の権利を行使できないのです。

会社法106条


利益供与の禁止


株主の権利の行使に関して、会社が自己または子会社の計算でざいさんじょうの利益を供与することは禁止されています。

会社法120条
1項

企業経営の健全性を確保するとともに、会社財産の消費を防止するための規制であり、総会屋対策が主な狙いです。



株式の譲渡


株式の譲渡とは何か


株式の譲渡というのは、売買や贈与などの規約によって、株式を移転することです。これによって、株主たる地位に基づく権利が全て譲受人に移転します。


株式譲渡自由の原則


株式は、原則として自由に譲渡することができます

会社法127条

出資して手に入れた株式会社の社員たる地位を売ることによって、投資した資金を回収することができます。


定款による株式の譲渡制限


定款の定めによって、全ての株式について、譲渡に会社の承認を要するとして、株式の譲渡を制限することができます。見ず知らずの人が、株主として仲間入りすることを嫌う会社のために用意された制度です。

株式譲渡を承認するか否かを決定するのは、株主総会です。ただし、取締役会設置会社の場合は、取締役会がその役目を担います。また、定款の定めによって、他の機関とすることもできます。

会社法139条
1項


株式の譲渡方法


株券を発行しない会社では、当事者の意思によって株式譲渡の効力が生じます。これに対して、株券発行会社の場合は、株券を交付しなければなりません。株券を交付しなければ効力は生じません。

会社法128条
1項


株券発行前の譲渡


株券発行会社が株券を発行する前に、株式を譲渡した場合は、譲渡自体は有効となりますが、効力は生じないため、譲受人は、会社に対して株主としての権利を主張できません。


株式譲渡の対抗要件


1. 会社に対する対抗要件


株式譲渡の対抗要件は、株主名簿の名義書き換えです。株式の譲渡は、株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しないと、会社に対抗できません

会社法130条

ただし、会社が正当な理由もないのに株主名簿の名義書き換えに応じない場合には、会社は新株主が株式名簿に記載されていないことを主張できません。新株主は、会社に対して株主であることを主張できます。


最判昭41.7.28



2. 第三者に対する対抗要件


株券をはっっこうしていない会社では、株主名簿の名義書き換えをしないと、会社以外の第三者にも対抗できません。

会社法130条

これに対して、株券発行会社の場合は、株券の所持が第三者に対する対抗要件です。


自己株式


自己株式とは何か?


自己株式とは、株式会社が有する自己の株式で、会社が自社の株式を所得すると、その株式は、自己資産になります。


自己の株式の取得


株主が会社に取得請求権付株式の買い取りを請求した場合や、一定の事由が生じたため、会社が強制的に取得条項株式を取得する場合などに、株式会社は、自己の株式を取得する場合などに、株式会社は、自己の株式を取得することができます。

また、株式会社は、株主総会の決議に基づいて、自己の株式を取得することもできます。これには2つの方法があります。

会社法156条


①市場取引等により取得する方法
②特定の株主から取得する方法
・・株主総会の特別決議によらなければならない。

会社法309条2項


会社法の定めた取得手続・方法に違反して、自己の株主を取得した場合、その取得は無効です。ただし、無効の主張は、会社側だけができます。


自己株式の保有


会社は、自己株式を期間の制限なく保有することができます。しかし、自己株式には、議決権がありません。また、剰余金を配当することもできません。

会社法453条


自己株式の消却


株式会社は、消却する株式の種類と数を定めて、保有する自己株式を消却することができます。株式の種類と数を定めるだけで、保有する自己株式を消滅させることができます。ただし、取締役会が設置されている会社では、取締役会の決議に基づく必要があります。

会社法178条


親会社株式の取得


子会社が親会社の株式を取得することは、原則として禁止されています。合併後消滅する会社から親会社株式を継承する場合など、例外的に取得が許される場合もあります。しかし、許される場合でも、子会社は、相当の時期にその所有する親会社株式を完全に処分しなければなりません。

会社法135条




株式数の増減


投資単位の調整


株式を1株でも買えば、その会社の株主になりますが、株式は、株式会社への投資の単位です。株式会社は、流通している株式の数を増減させて、投資単位を適切な大きさにコントロールする必要があります。その方法は以下の通りです。

①株式の併合


株式の併合とは、2株を1株に、10株を1株にするような、発行済み株式を一定の割合で一律にまとめて、株式の数を減少させる行為です。株式の併合は、株主の持ち株数を減らすものであり、株主に大きな影響を与えます。そこで、株式の併合には、株主総会の特別決議が必要とされています。

会社法180条



②株式の分割


株式の分割は、1株を2株に、1株を10株にというように、発行済みの株式を一定の割合で一律に分割して、株主の数を増加させる行為です。増加した株式は、既存の株主に、その持ち株数に応じて無償交付されます。

株式の分割は、既存の株主の利益に実質的な影響を与えるものではないため、取締役会を設置する会社は、取締役会の決議で、他の会社は、株主総会の普通決議で行うことができます。


③株式無償割当て


株主の無償割当てというのは、株主に一定の割合で一律に株式を無償で付与する行為であって、株式の分割に当たらないものです。

会社法185条

取締役会設置会社は取締役会の決議、他の会社は株主総会の普通決議により行われる。

会社法186条





単元株制度


単元株制度とは?


株式会社は、定数で、一定数の株式を1単元の株式と定めることができます。定数で1単元の株式を定めると、株式は、株主総会、種類株主総会において、1単元について1個の議決権を持つようになります。

会社法188条
1項




単元未満株式


1単元の株式数に満たない株式(単元未満株式)には、議決権はありません。単元未満株しかない株主は、議決権を行使できません。

会社法189条
1項

そこで、単元未満株式の株主の利益を保護するため、単元未満株式の買取請求権が認められています。株主は、会社に対して、所有する単元未満株式を買い取るように請求できます。

会社法192条 
1項 
単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。 
2項 
前項の規定による請求は、その請求に係る単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 
3項 
第1項の規定による請求をした単元未満株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、当該請求を撤回することができる。

また、単元未満株式の株主には、売渡請求権も認められています。これは、株主が会社に足して、現在所有する単元未満株式を単元株数にするために必要な数の株式を売り渡すように請求する権利です。

会社法194条 
1項 
株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求することをいう。以下この条において同じ。)をすることができる旨を定款で定めることができる。 
2項 
単元未満株式売渡請求は、当該単元未満株主に売り渡す単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 
3項 
単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は、当該単元未満株式売渡請求を受けた時に前項の単元未満株式の数に相当する数の株式を有しない場合を除き、自己株式を当該単元未満株主に売り渡さなければならない。 
4項 
第192条第3項及び前条第1項から第6項までの規定は、単元未満株式売渡請求について準用する。


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