2019年9月2日月曜日

4. 時効制度・・・援用ができる「当事者」と中断の効力が及ぶ範囲に関して理解しましょう。行政書士試験の勉強

4. 時効制度


4. 時効制度・・・援用ができる「当事者」と中断の効力が及ぶ範囲に関して理解しましょう。行政書士試験の勉強

どうもTakaです。今回は民法の分野の「時効制度」について説明したいと思います。


時効制度



時効とは何か?


時効とは、一定の事実状態が永続する場合に、それが真実の権利関係と一致するか否かを問わず、そのまま権利関係として認めようとする制度のことです。時効には、取得時効と消滅時効があります。
時間が経つことにより権利を取得するのが取得事項で、
時間が経つことにより権利を失うことになるのが、消滅時効です。


時効の中断と停止


時効の中断とは?


時効が完成するには、一定の事実状態が一定期間続かなければなりません。その事実の状態が継続していることが破られることを時効の中断と言います。時効が中断すると、それまでに経過した期間はご破算となりクリアされます。そして、また振り出しに戻ってしまいます。そして、中断事由の終了後に、また新たな時効が進行します。

法定中断


取得時効、消滅時効に共通する中断事由は、

①請求

②差押さえ、仮差押さえまたは仮処分

③承認

の3つです。これらの中断を法定中断といいます。
法定中断の効力は、原則として当事者およびその承認人にしか及びません。この事を中断の相対効といいます。

裁判上の請求

請求の代表例は、裁判上の請求です。権利者が原告として訴えを提起すると、その時点で時効中断の効果が発生します。この中断の効果は、請求を認める判決が確定するまで続きます。そして、その判決が確定すると、その時点からあらたな時効が進行を開始します。ただし、訴えが却下されたり、取り下げられたりした場合は、時効中断の効力は生じません。


催告

催告とは、裁判外で執行を請求することです。催告は裁判所が関与せず、単に債務の履行を請求するだけですから時効は中断しません。しかし、催告も一時のつなぎにはなり催告後6ヶ月以内に裁判上の請求などをすれば、時効を中断することができます。ただし、催告を繰り返すことはできません。

承認

承認とは、相手方の権利の存在を事実として認めることであり、支払猶予の申し込みや利息の支払いがこれに当たります。承認をするには、行為能力や代理権といった処分の能力や権限は必要なく、管理の能力・権限があれば良いとされています。

自然中断

取得時効の成立には、一定期間の占有の継続が必要です。占有を自ら中止したり、他人に占有を奪われたりして占有が途切れると、経過した期間はご破算となってしまいます。これを自然中断といいます。

時効の停止

時効の停止とは、時効の進行が一時中断する制度です。時効完成間際に中断を困難にするような事情が生じた場合、その事情が消滅し、所定期間が経過するまでは、時効が完成しないとして、自己の怠慢によらず時効を中断できなかった者を保護しようとするものです。

時効の援用

1. 援用とは何か?

援用とは、時効によって利益を受けるものが、その利益を受けるという意思を表示することです。この時効によって利益を受けるものを「当事者」と判例では定めています。つまり、当事者が時効が完成したよと主張しないと時効の効果が発生しません。
時効の効果が発生するか否かは、当事者の意思にかかっています。時効の効果は、援用をしたものにのみ発生し、援用の効果は、当該援用者のみ及ぶのが原則となっています。

2. 援用権者

援用を受ける権利を持つ者は、時効によって直接利益を受ける者であるとしつつ、保証人は勿論、物上保証人や抵当不動産の第三取得者にも援用権を認めています。


時効の利益の放棄

1. 時効完成前の放棄


民法では、時効の完成前に、時効の利益を放棄する事を禁止しています。債権者によって濫用される恐れがあるためです。

民法146条 
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

2. 時効完成後の放棄


民法の反対解釈より、時効完成後であれば、時効の権利を放棄することができると解されています。時効の完成を知りつつ、その利益を受ける事を放棄することができるのです。
時効の利益を放棄すると、時効の援用権を失い、時効の利益を享受できなくなります。この効果は、放棄したものにのみ生じ、他の援用権者には及びません。
時効の利益放棄後には、再び新たな時効の進行が開始されます。

3. 債務の自認行為


債務の消滅時効の完成を知らずに、債務者が債務の一部を弁済したり、弁済の猶予を求めたりしたとしても、時効の完成を知らない以上、時効の利益を放棄したとはいえません。しかし、これらの行為がなされると、相手方はもはや時効を援用されることはないとの期待を抱くのが通常です。そのため、判例では、これらの行為を行った後に事項を援用することは信義則上許されないとしています。
【重要判例】時効援用権の喪失(請求異議事件)/最判昭41.4.20

ただし、その後再び新たな時効が進行するまで否定するものではないと、判例ではいっています。
【重要判例】時効の利益の放棄/最判昭45.5.21



取得時効


取得時効とは何か?


取得時効とは、この章の冒頭で、一定の期間の経過である権利を取得してしまうことだと説明しました。例えば、土地の所有者のような外観でその土地に権利行使ををしている状態が長期間続くと、法的にもその土地の所有権を認めるという制度です。

取得時効の対象


取得時効の対象となるのは、所有権・地上権といった財産権です。他人の土地を通行できる権利である身分権の取得事項は認められない権利があります。
例えば、留置権(他人の物の占有者が、そのものに関して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留置することを内容とする権利・・・例:自動車の修理でお店にお金を払うまで車をお店に置いておくこと)・先取特権(債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利・・・例:家賃滞納などで、自分の家の家具などが競売にかけられた時に、他の債権者よりも優先的に返済を受けられる権利)は、法律が定めた要件を満たして初めて取得できる権利なので、時効によって取得することはできません。
債権も、時効によって取得することはできないのが原則ですが、不動産賃借権については取得時効を認めるのが、判例です。
【重要判例】土地建物所有権移転登記抹消登記手続事件/最判昭43.10.8


所有権の取得時効

所有権の取得時効の要件


次の要件を満たすと、所有権の時効取得が完成します。


民法 第162条 
1項 
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 
2項 
十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

■所有権の時効取得の要件
①20年間、占有を継続すること

②占有が所有の意思のあるものであること

③占有が平穏かつ公然となされていること

④占有の対象が他人のものであること

占有期間の特則


自分のものであると信じて、なおかつそう信じることに過失がない状態(善意無過失)で占有を始めた場合には、占有期間が10年に短縮されます。善意無過失が要求されるのは、占有の開始時だけです。占有の開始時に善意無過失でありさえすれば、その後に悪意になってもの構わないということです。

また、占有を引き継いだ者は、自分自身の占有期間だけを主張してもいいですし、前の占有者の占有期間を合算して主張しても良いとされています。
ただし、前の占有者の占有期間を合わせて主張する場合には、前の占有者の占有の瑕疵(不利な事情)も引き継がなければなりません。前の占有者が悪意なら、それも引き継がなければならないということです。

所有の意思


所有の意思とは、権利の性質から客観的に判断して所有権の行使と認められるとこをいいます。つまり、外から見て所有者のように見えることをいっています。所有の意思の有無は、占有取得の原因(権原)または占有に関する事情により、外形的客観的に決定すべきであるということが判例です。

【重要判例】 民法186条1項の「所有の意思」の推定が覆される場合
(土地所有権移転登記手続事件)/最判昭58.3.24

所有権の時効取得の対象


所有権の時効取得の対象は、他人の物です。物であればよくて、動産・不動産を問いません。しかも、土地については、土地全体だけではなく、その一部について時効取得することもできるというのが、判例です。

取得時効の効力


時効による所有権の取得は、承継取得ではなく、原始取得です。時効によって取得した所有権は、抵当権や地上権などといった制限のついていない完全な支配権です。時効の効力は、起算日に遡ります。

民法144条 
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

そのため、取得時効が援用されると、時効の完成時ではなく、時効の起算日から所有権を持っていたことになり、時効期間中に生じた果実は、時効取得者に帰属します。


消滅時効


消滅時効って何?

消滅時効とは、一定の期間の経過で、ある権利を失ってしまうことです。つまり、権利を行使せず放置しているために、その権利が存在しないかのような状態が長期間続いた場合には、法的にもその権利は存在しないものと扱う制度です。

消滅時効の対象

消滅時効にかかる権利の主な例は、債権です。また、地上権なども、消滅時効にかかります。しかし、所有権は消滅時効にかからないとされています。

債権の消滅時効

1. 消滅時効期間

普通の債権の消滅時効期間は10年であり、10年間放置しておくと、債権は時効によって消滅するのが原則です。

民法 第167条 
1項 
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。 
2項 
債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

債権の中には、10年よりも短い期間で時効が消滅するものもあります。これを短期消滅時効といいます。これらの権利も、裁判上の請求によって時効が中断し、その裁判が判例や和解などによって確定すると、新しい時効が開始します。その新しい時効は、短期消滅時効ではなく、時効期間は10年とされています。

2. 時効の起算点

消滅時効は、権利を行使することができる時から進行します。権利を行使することができる時とは、債権行使の法律上の障害がなくなり、債権を実現できるようになった時をいいます。法律上の障害とは、期限が到達していないことおよび条件が成就していないことです。


3. 消滅時効の効力

消滅時効の効力も、起算日に遡ります。

民法144条
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

消滅時効が援用されると、債権は起算日に遡って消滅していたことになるのです。


次は民法の物権について紹介しています。

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