2019年12月1日日曜日

【行政書士試験・商法・会社法】4. 株式会社の設立

4. 株式会社の設立

最終更新日:2020年1月9日


今回は商法・会社法の分野「株式会社の設立」について勉強していきましょう。


株式会社とは何か?


株式会社の社員


1. 株式制度


株式会社は、出資者である社員(構成員)が株式を持つ会社です。株式会社の社員(構成員)は、株式の所有者である株主です。

株式会社は、社員たる地位を株式という単位に均一に細分化しています。そのため、少数の資金しかない人も、株式会社に投資して、その社員となることができます。


2. 間接有限責任


株主は、会社に対して一定の出資義務を負うだけで、会社債権者に対しては責任を負いません。

会社法104条 
株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。



株主は、間接有限責任しか負わないのです。そのため、株式会社には安心して投資し、社員となることができます。



所有と経営の分離


株式会社も、他の会社と同様に、出資者である株主が会社の所有者となり企業の運営を支配するとともに、企業活動によって生じた利益を取得します。

しかし、他の会社とは異なり、株式会社は、株主が自ら経営に当たるわけではありません。株式会社では、株主が業務執行者を選任し、業務執行者が事業経営の意思を決定し、それを執行するのが原則です。出資者であり、所有者である株主と業務執行者を分けることで、経営権を一部の経営者に集中させるのです。



発起設立と募集設立


株式会社の設立方法


株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立の2つの方法があります。


1. 発起設立とは?


発起設立とは、設立に際して発行する株式(設立時発行株式)の全てを発起人が引き受けるという方法です。


2. 募集設立とは?


募集設立とは、設置時の発行株式の一部だけを発起人が引き受け、残りについては、株式引受人を募集するという設立方法です。


発起人


発起設立にせよ、募集設立にせよ、株式会社を設立するためには、発起人が必要となります。株式会社では、発起人が株式会社の設立手続を進めて、出資者は、設立の過程で発起人との契約により、徐々に参加してくれるという形がとられています。

発起人というのは、定款に発起人として署名した人のことです。発起人は、1人でも構いません。また、資格に剥奪はなく、行為能力のない人や法人も発起人になることができます。


擬似発起人


擬似発起人というのは、発起人として定款に署名はしていないが、株式募集に関する文章に設立を賛同する旨を記載することを承諾した人のことです、擬似発起人は発起人と同様の責任を負います。



株式会社の設立


定款の作成


1. 発起人の署名と交渉人の認証


株式会社の設立も、定款を作成することが始めの一歩となります。発起人は、定款を作成し、発起人全員の署名または記名押印をしなければなりません。定款はパソコン等(電磁的記録)で作成することもできます。

会社法26条 
1項 
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。 
2項 
前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

完成した定款は、公証人の認証を受ける必要があります。公証人の認証を受けないと、定款は、効力を生じません。

会社法30条 
1項 
第26条第1項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。 
2項 
前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第33条第7項若しくは第9項又は第37条第1項若しくは第2項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

定款の内容を明確にして、後日の紛争や不正行為を防止するためです。


2. 絶対的記載事項


定款には、必ず記載しなければならない絶対的記載事項があります。

絶対的記載事項とされるのは、次の内容です。

①目的
②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価値又はその最低額
⑤発起人の氏名又は名称および住所

会社法27条

絶対的記載事項を記載しないと、その定款は無効になります。


3. 変態設立事項


変態設立事項というのは、設立手続における危険な約束であり、次の項目がこれに該当します。

①現物出資
・・金銭以外の財産での出資のこと。目的物の過大評価によって会社の財産的基礎を危うくする恐れがあるので、変態設立事項とされている。

②財産引受け
・・発起人が会社のために会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約です。目的物の過大評価によって会社の財産的基礎を危うくする恐れがあるので、変態設立事項とされています。議決の対等となる財産、その価格、譲渡人の氏名を定款に記載しなければなりません。

③発起人の報酬と特別利益
④設立費用

変態設立行為は、定款に記載しないと、効力を生じません。

会社法28条 
1項 
株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第26条第1項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。 
一  金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第33条第1項第一号において同じ。) 
二  株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称 
三  株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称 
四  株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)


社員(株主)の確定


1. 株式の引受け


定款を作成したら、次は、株式会社の社員(構成員)になるものを確定します。株式会社では、社員たる地位が株式という単位になっており、株式の所有者である株主が社員です。そのため、株式会社においては、株式の引受けという形で、社員を確定します。

各発起人は、株式会社設立に際して、設立時発行株式を1株以上引き受けなれけばなりません。

会社法25条 
2項 
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。


発起人は、必ず株式を引き受け、株主になるというわけです。



2. 発起設立の社員


発起設立の場合には、発起人が設立時発行株式を全て引き受けます。そのため、発起設立の場合は、株式会社の社員になるのは発起人だけです。

3. 募集設立の社員


募集設立の場合は、設立時発行株式の一部を発起人が引受け、残りについては、発起人が株主を募集します。

会社法57条 
1項 
発起人は、この款の定めるところにより、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができる。 
2項 
発起人は、前項の募集をする旨を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

会社法58条

募集設立の場合には、発起人と募集株式の引受人が、株式会社の社員になるのです。


会社財産の形成


1. 全額振り込み・全部給付


社員である株主が間接有限責任しか負わない株式会社では、債権者の引当となる財産的基礎は会社財産だけです。そのため、会社財産の形成はとても重要なことです。

そこで、発起人は、設立時発行株式の引受け後に、遅滞なく、引受けた株式について発行価額の全額の払込みをしなければなりません。そして、現物出資をする場合には、その全部の給付をしなければなりません。

会社法34条 
1項 
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。


また、募集設立における募集株式の引受人は、会社成立の際に株主になります。

会社法50条 
1項 
発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となる。


会社法102条
2項


2. 出資の未履行と失権


出資を履行していない発起人がいる場合、発起人は、その発起人に対して、期日を定め、出資の履行を催告しなければなりません。催告した期日までに発起人が出資を履行しない場合には、その発起人は株主となる権利を失います。

会社法36条 
1項 
発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければならない。 
2項 
前項の規定による通知は、同項に規定する期日の二週間前までにしなければならない。 
3項 
第1項の規定による通知を受けた発起人は、同項に規定する期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失う。


これに対して、募集株式の引受人が所定の期日までに払込みをしない場合には、直ちに株主となる権利を失います。

会社法63条3項

募集株式の引受人が払込みをせず、失権した場合、設立に関して出資される財産の価値またはその最低額を満たしていれば、そのまま設立手続を続行することができます。しかしそうでない場合は引受人を追加募集します。



機関の選任


1. 発起設立における機関の選任


発起設立の場合、発起人は、出資の履行が完了した後は遅滞なく、設立時取締役など、それぞれの会社の機関に応じた役員を選任しなければなりません。

会社法38条 
1項 
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。 
2項 
次の各号に掲げる場合には、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、当該各号に定める者を選任しなければならない。 
 一 
設立しようとする株式会社が会計参与設置会社である場合 設立時会計参与(株式会社の設立に際して会計参与となる者をいう。以下同じ。) 
 二 
設立しようとする株式会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 設立時監査役(株式会社の設立に際して監査役となる者をいう。以下同じ。) 
 三 
設立しようとする株式会社が会計監査人設置会社である場合 設立時会計監査人(株式会社の設立に際して会計監査人となる者をいう。以下同じ。) 
3項 
定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。



発起人は、1株につき1票の議決権を持ち、その議決権の過半数で設立時取締役などを選任します。

会社法40条 
1項 
設立時役員等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する。 
2項 
前項の場合には、発起人は、出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。 
3項 
前項の規定にかかわらず、設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、取締役の全部又は一部の選任について議決権を行使することができないものと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは、当該種類の設立時発行株式については、発起人は、当該取締役となる設立時取締役の選任についての議決権を行使することができない。 
4項 
前項の規定は、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人の選任について準用する。

2. 募集設立における機関の選任


これに対して、募集設立の場合に、設立時取締役などの機関を選任するのは、創立総会(そうりつそうかい)です。創立総会は、設立時株主の総会であり、株式会社の設立に関する事項に限り、決議することができます。

会社法66条


3. 創立総会


創立総会とは、発起人が召集します。

会社法65条 
1項 
第57条第一項の募集をする場合には、発起人は、第58条第一項第三号の期日又は同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主(第50条第一項又は第102条第二項の規定により株式会社の株主となる者をいう。以下同じ。)の総会(以下「創立総会」という。)を招集しなければならない。 
2項 
発起人は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、いつでも、創立総会を招集することができる


創立総会の決議には、議決権を行使できる設立時株主が持っている議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる人数が必要です。

会社法73条
1項

創立総会においても、議決権の代理行使、書面による議決権の行使、電磁的方法による議決権の行使が認められています。

会社法74条

会社法75条

会社法76条



創立総会は、その決議によって定款を変更することもできます。

会社法96条 
第30条第2項の規定にかかわらず、創立総会においては、その決議によって、定款の変更をすることができる。


創立総会で、変態設立事項に関する定数の変更を決議した場合、それに反対した設立時株主は、決議後2週間に限り、設立時発行株式の引き受けについての意思表示を取り消すことができます。

会社法97条 
創立総会において、第28条各号に掲げる事項を変更する定款の変更の決議をした場合には、当該創立総会においてその変更に反対した設立時株主は、当該決議後二週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。


設立の登記


以上のような過程を経て、社団が完成すると、次は法人格の取得です。本店の所在地で設立の登記をすると、法人格を取得し、株式会社が成立します。

会社法49条 
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。


これによって、発起人に形式的に帰属していた権利義務は、会社に帰属することになります。


発起人等の責任


発起人・設立時取締役・設立時監査役は、設立について任務懈怠があれば、会社に対して損害賠償責任を負います。

会社法53条 
1項 
発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


この責任は、総株主の同意がなければ、免除することはできません。

会社法55条 
第52条第1項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び第53条第1項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。



会社の不成立



会社の設立が途中で挫折し、設立の登記に至らなかった場合、会社は成立しません。株式会社が成立しなかった場合は、発起人が連帯して、会社の設立に関した行為について責任を負い、設立に関して支出した費用を負担します。

会社法56条 
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。


発起人だけが連帯責任を負い、発起人以外の株式引受人には、一切負担をかけないのです。


次は、株式制度について紹介しています。
➡【リンク】株式制度



2019年11月30日土曜日

【行政書士試験・商法・会社法】3. 持分会社

3. 持分会社




今回は、商法・会社法の分野「持分会社」を勉強していきましょう。


会社とは?


会社は、対外活動によって得た利益を構成員に分配すること(営利)を目的とした団体(社団)です。そして、会社は、法人とされ、権利義務の主体になれます。

会社法3条 
会社は、法人とする。

会社は、営利社団法人となります。会社法では、株式会社と持分会社という2つの会社を認めています。


持分会社とは何か?


持分会社は、出資者である社員(社団の構成員)が持分を持つ会社です。各社員が持分を一つずつ持ちます。そして、持分の大きさは、社員ごとに決められています。
持分会社は、会社の債務についての社員の責任のあり方によって、合名会社、合資会社、合同会社という3つの種類の会社に分類されます。


1. 合名会社ってなに?


合名会社は、出資義務に加えて
会社の財産で会社の債務を弁済できない場合に、連帯して直接債務を完済する責任を負う社員だけで作られる(この社員を直接無限責任社員といいます)会社です。直接無限責任社員には、金銭などの財産だけでなく、労務や信用による出資が認められています。


2. 合資会社とは?


合資会社とは、直接無限責任社員と出資義務に加えて、定款で定めた出資の価額からすでに利用した額を除いた額を限度として、会社の再建を弁済する責任を負う社員(直接有限責任社員という)から作られる会社です。


3. 合同会社とは?


合同会社は、入社時に出資義務を負うだけで、会社の債務を弁済する責任を負わない社員だけ(間接有限責任社員という)から作られるの持分会社です。
間接有限責任社員の出資は、直接有限責任社員と同じく、金銭などの財産に限定されています。


持分会社の社員


法人も持分会社の社員になれます。そして、合名会社や合同会社の社員は一人だけでも成立します。しかし、合資会社の社員は、少なくとも2人は必要です。合資会社には、無限責任社員と有限責任社員の両方が必要だからです。無限責任者社員だけになれば、合名会社になったとみなされます。有限責任社員だけになれば、合同会社になったとみなされます。
そして、社員が誰もいなくなると、持分会社は解散します。

会社法641条 
持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。 
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第824条第1項又は第833条第2項の規定による解散を命ずる裁判

持分会社の設立と管理


持分会社の設立


1. 定款の作成


持分会社を設立するには、社員になろうとするものが定款を作成し、それに全員が記名押印をしなければなりません。
会社法575条

2. 設立登記


本店所在地で設立の登記をすると、法人格を取得し、持分会社は成立します。

3. 違法な設立


設立過程に違法な点があっても、設立が当然に無効になるわけではありません。
設立を無効にするには、会社の設立の日から2年以内に設立無効の訴えを提起しなければなりません。また、設立には参加した社員の意思表示による取り消し原因があった場合、その社員は、会社設立の日から2年以内に設立の取り消しの訴えを提起することができます。
設立無効の訴え、設立の取消しの訴えを認容する確定判決は、第三者にも効力が及びます。しかし、遡及効はなく、設立は将来に向かって効力を失います。
会社法839条


持分会社の管理


1. 定款自治


持分会社の内部関係(会社と社員の関係、社員と社員の関係)は原則として定款自治が認められています。定款で会社独自のルールを定めることができます。持分会社の定款を変更するには、原則として総社員の同意が必要です
会社法637条


2. 業務執行権


持分会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、各社員が業務を執行します。無限責任社員であろうと、有限責任社員であろうと、業務を執行することができます。出資者であり、会社の所有者である社員が、自ら経営に当たるのです。業務執行社員を定款で定めた場合、業務執行権のない社員にも、業務および財産状況の調査県が認められています。
会社法592条1項


3. 代表権


業務執行社員は、代表権を持つのが原則です。

会社法599条 
業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。


代表権のある社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上の裁判校以外の権限があります。この権限に制限を加えても、善意の第三者には対抗できません。
会社法599条5項


持分の譲渡と退社


持分の譲渡


持分会社の社員が持分を譲渡することは、他の社員全員の承諾が必要です。ただし、業務執行をしない有限責任社員については、業務執行をする社員全員の承諾があれば、持分を譲渡することができます。

会社法585条 
1項 
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。 
2項 
前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。


持分を全て譲渡としても、それを投棄する前に発生した持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。

会社法586条 
1項 
持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。 
2項 
前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。


退社と持分の払い戻しについて


1. 退社


持分会社の社員は、所定の事由(定款に存続期間が定められていない)により、退社することができます。また、持分会社の社員は、やむを得ない事由があれば、いつでも退社することができます。

会社法606条 
1項 
持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。 
2項 
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。 
3項 
前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。

2. 退社に伴う持分の払い戻し


退社した社員は、出資の種類を問わず、持分の払い戻しを受けることができます。ただし、退社しても、それを登記する前に発生した持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います。


次は、商法・会社法の株式会社の設立について説明しています。


【行政書士試験】商人(商法・会社法)の分野のトレーニング問題

【行政書士試験】商人(商法・会社法)の分野のトレーニング問題

最終更新日:2020年1月5日

テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。


★商人とは何か

(1)商法において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

〇…問題文の通り。商行為を業としない者でも、店舗での物品販売を業とする者や鉱業者なども商人とみなされる。
商法4条1項

★商事に関する法

(2)商事に関して、商法に定めがない事項については民法の定めるところに従い、民法にも定めがないときには、商慣習に従う。

×…商事に関して、商法に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習に定めがないときは、民法の定めるところによる。

商法

商慣習

民法
の順

★擬制商人

(3)店舗などでの物品販売を業とする者や鉱業を営む者は、経営の形態・企業的接尾に着目して、商行為を行わなくても、商人とみなされる。

〇…問題文の通り。
民法4条2項


★商業登記

(4)商業登記は、商人の取引に必要な事項を公示するもので、すでに出来上がっている事実を広く一般に明らかにして、第三者が思わぬ損害を被らないようにするものである。

〇…問題文の通り。

★商号

(5)個人商人が複数の営業を営む場合には、その営業ごとに複数の商号を使用することができるが、会社は1個の商号しか使用することができない。

〇…問題文の通り。会社は複数の営業を営む場合でも、商号は1個に限定される。


(6)商人の商号は、営業と共にする場合または営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。

〇…問題文の通り。商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


★商業使用人

★支配人

(7)支配人は、商人に代わって、裁判上の行為を除いて、その営業に関する一切の行為をする権限を有する。

×…支配人は、商人に代わって、その営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する。
商法21条1項


(8)商人が支配人を選任したとき、その登記をするか、しないかは任意である。

×…商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。


(9)支配人は、商人の許可なく、自ら営業を行うことができない。

〇…支配人の競業禁止規定の一つ。なお、商人の許可を得れば、自ら営業を行うこともできる。


(10)商行為の代理人が、本人のためにすることを示さないでした商行為は、本人に対して効力を生じない。

×…商行為の代理人が、本人のためにすることを示さないでした商行為であっても、本人に対して効力を生じる。
商法504条


★代理商

(12)代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でない者のことである。

○…問題文の通り
商法27条


(13)代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業に属する取引を自己または第三者のために行うことはできません。

〇…問題文の通り。また、代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役などになることはできない。


【行政書士試験・商法・会社法】2. 商行為

2. 商行為




今回は商行為に関して説明していきます。配点自体は低い分野ですが、余力があればカバーしておきたい分野でもあります。頑張っていきましょう!


商行為とは何か?


基本的な商行為


自己の名をもって商行為をすること業とする者が商人です。
基本的商行為とされるのは、商法56条に列挙された行為と、502条に列挙された行為です。

商法56条 
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

商法502条 
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。 
一  賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為 
二  他人のためにする製造又は加工に関する行為 
三  電気又はガスの供給に関する行為 
四  運送に関する行為 
五  作業又は労務の請負 
六  出版、印刷又は撮影に関する行為 
七  客の来集を目的とする場屋における取引 
八  両替その他の銀行取引 
九  保険 
十  寄託の引受け 
十一  仲立ち又は取次ぎに関する行為 
十二  商行為の代理の引受け


絶対的商行為


商法501条に列挙された次の行為は、その性質から商行為となるもので、絶対的商行為と呼ばれています。安く仕入れて、高く売ることが例です。

商法501条 
次に掲げる行為は、商行為とする。 
一  利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 
二  他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 
三  取引所においてする取引 
四  w:手形その他の商業証券に関する行為

営業的商行為


商法で列挙された行為は、営業的商行為と呼ばれ、営業として行われて初めて商行為となります。電気やガスの供給・作業や労務の請負などがこれに該当します。


付属的商行為


商人が営業のためにする行為も、商行為とされています。これを附属的商行為といいます。営業のためにする行為にも、商法を適用するため、これを商行為としています。


双方的商行為と一方的商行為


当事者双方にとって商行為である行為を双方的商行為と言います。これに対して、当事者の一方にとってのみ商行為である行為を一方的商行為といいます。双方的商行為であれば、当然、双方に商法が適用されます。そして、一方的商行為についても、双方に商法が適用されます。


商行為の特則


商行為の代理


代理人が行う意思表示は本人のためにすること(代理意思)を示して行う必要があるというのが、民法の原則です。これを顕名主義と言います。
しかし、商行為の代理には顕名が要求されません。速さが求められ、相手が誰かよりも、内容が重んじられる商取引では、代理人が本人のためにすることを示さなくても、原則として代理行為の効果は本人に帰属するのです。


諾否の通知義務


民法では、申し込みを受けても、これに対して許否を通知する義務はありません。しかし、商人がふだん取引をする人からその営業の部類の契約の申し込みを受けた場合は、遅滞なく、諾否の通知を発しなければなりません。これを怠ると、申し込みを承諾したとみなされます。


物品の保管義務


商人がその営業の部類に属する契約の申し込みを受けるとともに、物品を受け取ったときは、その申し込みを拒絶した場合であっても、申込者の費用でその物品を保管しなければならないのが原則です。


多数当事者の債務の連帯


複数の債権者がいる場合、債権者は、それぞれ複数で分割した給付だけを行えばよいというのが、民放の原則です。これを分割債務の原則といいます。
複数の人が一人または全員にとって商行為に当たる行為によって債務を負った場合には、その債務は連帯債務です。そのため、債務者はそれぞれ独立して債権全額を弁済しなければなりません。


報酬請求権


民法では、他人のために行為をしても、無償が原則です。これに対して、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をした場合には、相当な報酬を請求することができます。


商人間の金銭消費貸借


お金の貸し借りなどの消費賃借契約は、民法では無利息が原則ですが、商人間で、金銭の消費賃借を行った場合、貸した人は借りた人に対して法定利息を請求できます。商人間の金銭消費賃借は、その営利性から、当然利息がつくとされています。


商事法定利率


利息について、民法の法定利率により、年3%(3分)とし、3年ごとに見直しを行う変動利率を採用しています。以前は、商法514条により、商行為によって発生した債務の法定利率は、年6分でしたが、こちらは削除されました。


商人間の留置権


商人間において双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にある場合、債権者は、債権の弁済を受けるまで、債権者が占有する債権者所有の物または有価証券を留置できます。
➡【リンク】5. 物権総論・・・物権の意味と全体像を勉強しましょう!


商事時効


債権は、10年間放置しておくと時効によって消滅するというのが、民法の原則でしたね。しかし、商行為によって発生した債権は、5年間行使しないと消滅時効にかかります。商取引は速さが求められるため、時効期間も短縮されています。


商人間の売買


商人間の売買とは何か?


商人間の売買とは、売主・買主がともに商人であって、その売買が、売主・買主のいずれかにとっても商行為に当たることをいいます。


受領拒絶・不能


個人間の売買において、買主が目的物の受領を拒んだ場合、または、受領できない場合には、売主は、その物を供託することができます。また、売主は相当の期間を定めて催告した後に競売に付すこともできます。損傷などにより価格の低落の恐れのある物については催告をしないで競売に付すことができます。ただし、供託または競売に付した場合には、遅滞なく、売主に通知しなけれなりません。


目的物の検査・通知義務


商人間の売買では、買主は、受領した目的物を遅滞なく検査しなければなりません
そして、検査によって瑕疵または数量不足を発見した場合には、売主が悪意でない限り、買主は直ちにそれを売主に通知しなければなりません。そうしないと、契約の解除・代金減額請求・損害賠償請求ができなくなります。ただし、瑕疵が直ちに発見できないものであれば、6ヶ月以内に発見し、直ちに通知すればよいとされています。


目的物の保管・供託義務


商人間の売買では、買主が目的物を受領した場合は、たとえ契約を解除したときであっても、売主の費用で目的物を保管または供託しなければなりません。
ただし、売主と買主の営業所が同一市町村の区域内にある場合は別で、営業所が同一市町村内にあれば、買主に保管する義務はありません。
商法527条1項


注文と異なる物品の保管・供託義務


注文した物品と異なる物品が引き渡された場合や、注文数よりも多くの物品が引き渡された場合も、同一市町村区域内に売主と買主の営業所がない限り、買主はたとえ、契約を解除したときであっても、売主の費用で目的物を保管または供託しなければなりません。


匿名組合



匿名組合とは何か?


匿名組合契約とは、匿名組合員が営業者の営業のために出資を行い、その営業から生じる利益を分配することを約束する契約のことです。

商法535条 
匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。


匿名組合員の出資


匿名組合の出資は、金銭その他の財産に限定されています。信用や労務での出資は許されません。匿名組合員の出資は、営業する人の財産に属するとされています。出資は、営業者のものになるのです。


業務の執行


業務を行うのは、営業者です。匿名組合員が、営業者の業務を執行したり、営業者を代表したりすることはできません。また、匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利および義務を持つことはありません。ただし、匿名組合員が自己の商号などを営業者の商号として使用することを許諾したときには、そのしよう以後に生じた債務について、営業車と連帯して弁済する責任を負います。


匿名組合契約の終了


匿名組合契約が終了すると、出資は、匿名組合員に返還されます。ただし、出資が損失によって減少した場合には、匿名組合員が損失を負担し、営業者は残額を返還すればよいことになっています。

商法542条 
匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りる。


運送営業




物品運送契約


荷送人の依頼により、運送人が物品を保管して運送することを引き受ける契約を物品運送契約といいます。運送人は、物品または旅客の運送を業とする者であり、荷送人は、物品運送の委託者です。荷送人は、運送人が請求した場合には、、運送品の種類、重量などを記載した運送状を交付しなければなりません。


貨物引換証


運送人は、荷送人が請求した場合には、運送賃などを記載した貨物引換証を交付しなければなりません。貨物引換証を作成すると、運送に関する事項は、そこに記載された通りの内容になります。そして貨物引換証の引き渡しは、運送品の上に行使する権利の取得について、運送品の引き渡しと同一の効力があります。また、貨物引換証と引き換えでないと、運送品の引渡しを請求できなくなります。


運送人の責任


1. 運送品の滅失


運送品の全部または一部が滅失した場合、その原因がその性質、瑕疵または送る人の過失であれば、運送人は、運送費を全額請求するとこができます。しかし、不可抗力によって滅失した場合には、運送人は、運送費を請求することができません。すでに受け取っている運送費は、返還しなければなりません。


2. 損害賠償責任


運送人は、自己または運送に使用した者が、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明しない限り、運送品の滅失、毀損または遅れて着くことについて損害賠償責任を負います。ただし、貨幣、有価証券などの高価品については、送る人が高価品の種類および価格を明示しなければ、損害賠償責任を負いません。


寄託




寄託とは何か?


寄託とはものを他人に預け、その処理を頼むことを意味します。

寄託を受けた商人の責任


商人がその営業の範囲内で寄託を受けた場合は、無報酬であっても、善良な管理者の注意で保管しなければなりません。


旅館、飲食店、浴場など(場屋)の主人の責任


1. 客の物品の滅失・毀損


旅館、飲食店、浴場など、客の来場を目的とする場屋の主人は、客から寄託を受けた物品が滅失または毀損した場合、それが不可抗力によることを証明しない限り、損害賠償責任を負います。客が寄託しないで携帯している物品であっても、場屋の主人またはその使用人の不注意によって滅失または毀損した場合には、場屋の主人は、損害賠償責任を負います。客の携帯品に付いては、責任を負わない旨を告示しても、場屋の主人が責任を免れることはできません。


2. 高価品の滅失・毀損


貨幣・有価証券などの高価品については、客がその種類および価格を明示して寄託しない限り、その滅失または毀損について、場屋の主人は損害賠償責任を負いません。


次は、商法・会社法の持分会社について説明しています。




【行政書士試験・商法・会社法】1. 商人

1. 商人

商法・会社法

どうもTakaです。今回は、商法・会社法の分野の紹介をしたいと思います。
このページでは、商人とは何か?から始まり商業登記、商号、商業使用人、代理商に関して取り扱います。


商人とは何か?


固有の商人


商法における権利の主体は、商人です。商人というのは、自己の名を持って商行為をすることを業とする者をいいます。

商法4条 
1項 
この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

営利目的で継続的に反復して、自己名義で商行為を行うものは、全て商人です。これが本来の意味での商人であり、固有の商人と呼ばれています。


擬制商人


次の項目に該当する人は、経営の形態や企業の設備の点から、たとえ商行為を行わなくても、商人とみなされます。
商法4条2項


商業登記


商業登記とは何か?


商業登記とは、商人の取引に必要な事項を公示するものです。すでに出来上がっている


商業登記の公示力


登記すべき事項は、それが成立または存在していても、商業登記簿に登記しなければ、善意の第三者には対抗できません。
登記後は、その事項を善意の第三者にも対抗できるのが原則で、登記をすれば第三者もその事項を知ったものと擬制し、法律関係の画一化。安定化を図るのです。
ただし、登記をしても、正当な事由により、登記があることを知らなかった第三者には対抗できません。


不実の登記


故意または過失により不実の登記をしたものは、不実であることを善意の第三者に対抗できないとされています。

商号

商号とは何か?


商号とは、商人の営業上の名称です。商号は図形や模様などの呼称できないものではだめで、呼称できるものでなければなりません。


商号の選定


1. 商号の個数


1個の営業については、1個の称号しか許されません。これを「商号単一の原則」といいます。複数の営業を営む場合については、個人商人であれば、営業ごとに違った称号を用いることができます。しかし、会社は、複数の営業を営む場合でも、商号は1個に限定されています。

2. 商号自由主義


商号は、原則として自由に選定することができます。会社以外の商人であれば、自分の名前を商号とすることもできます。しかし、会社の場合は、その名称がそのまま商号になります。

会社法6条 
1項 
会社は、その名称を商号とする。

3. 商号の規制


不正の目的で、他の商人と誤認させる恐れのある商号を使用してはなりません。
これに違反する商号の使用よって営業上の利益を侵害され、または侵害される恐れのある商人は、侵害の停止または予防を請求することができます。


商号の譲渡

1. 商号の譲渡の方法


商号は、財産権的性質を持つので、譲渡することができます。しかし、営業と切り離して商号だけを譲渡すると、営業の主体が誰かについて誤認を生じます。
そのため、商号を譲渡するには、営業とともに行うか、または営業を廃止する必要があります。商号の譲渡は、登記をしないと、第三者に対抗することができません。

2. 営業の譲受人による商号の続用


営業が譲渡され、譲受人の商号を引き続き使用する場合、譲受人は、遅滞なく、譲受人の営業上の債務について責任を負わない登記をするか、通知をしないと
その債務について、譲受人と連帯して弁済をしなければなりません。また、譲受人の営業によって生じた債権について、善意無重過失で譲受人にした弁済は、有効とされています。


名板貸の責任


自己の称号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人は、事故を営業主と誤認した取引によって発生した債務について、その他人と連帯して弁済しなければなりません。外観を信頼した取引の相手方を保護しようとするわけです。



商業使用人

商業使用人とは何か?

商業使用人は、雇用契約によって商人に従属し、対外的な商業上の業務に従事する者です。例として、支配人が代表例です。商業使用人になれるのは、自然人だけです。

支配人

1. 支配人とは何か?


支配人とは、選任された営業所において、営業主に変わって営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為を行う権限のある商業使用人です。
商法21条1項

商人は、支配人を選任して、営業所の営業を行わせることができます。

商法20条 
商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。


支配人・支店長・マネージャーなど、名称は問いません。営業所の企業活動に関し、一切の代理権を与えられている使用人であれば、支配人に当たります。

2. 支配人の代理権

支配人は、全体的な代理権を持っています。そのため、支配人の代理権に制限を加えても、善意の第三者に対抗することはできません。
代理権が消滅すると、支配人の地位は消滅します。

3. 支配人の競業の禁止

支配人は商人の許可がなければ、次の行為をしてはなりません。支配人がその地位を利用して商人の利益を害することがないようにするためです。
①自ら営業を行うこと
②自己または第三者のために、その商人の営業の部類に属する取引をすること
③他の商人・会社・外国会社の使用人になること
④会社の取締役・執行役または業務を執行する社員となること。


4. 表見支配人

営業所の営業の主任者であることを表す名称をつけられた使用人(表見支配人)は、その営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限があるものとみなされます。



その他の商業使用人


1. ある種類・特定の事項の委任


商人の営業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人には、その事項に関して一切の裁判外の行為をする権限があります
その使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できません。

2. 物品の販売等を目的とする店舗


物品の販売等を目的とする店舗の使用人には、その店舗にある物品の販売等に関する権限があるとみなされます。ただし、相手方が悪意であった場合は、権限があるとはみなされません。



代理商

代理商とは何か?


代理商というのは、一定の商人のため、継続的にその営業の部類に属する取引の代理または媒介をする独立した商人です。代理商は、自然人だけでなく、法人もなれます。



締約代理商と媒介代理商


代理商はその性質で、締約代理商と媒介代理商の二つに分類されます。

1. 締約代理商


締約代理商とは、一定の商人から代理権を与えられ、その商人の取引行為の代理を行う代理商です。締約代理商が、与えられた代理権の範囲内で行なった代理行為の効果は、本人たる商人に帰属します。締約代理商の例は、損害保険の代理店などが挙げられます。

2. 媒介代理商


媒介代理商とは、一定の商人のために、取引行為の媒介(手助け)を行うだけの代理商でです。例えば、一定の商人のために、たくさんの買い手を媒介することを自身の企業内容とする代理商です。媒介代理商には代理権がありません。


代理商の競業の禁止


代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業に属する取引を自己または第三者のために行うことはできません。また、代理商は、商人の許諾がない限り、商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役などになることはできません。
会社法28条1項


次は、商行為に関して紹介しています。
➡【リンク】商行為

2019年11月26日火曜日

【行政書士試験】地方自治法(行政法)の分野のトレーニング問題

【行政書士試験】地方自治法(行政法)の分野のトレーニング問題

最終更新日:2020年8月2日

テスト


●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★地方自治の本旨


(1)地方自治の本旨とは住民自治と団体自治である。

〇・・・問題文の通り


地方公共団体の種類


(2)市町村が普通地方公共団体であるのに対して、都道府県は広域連合である。

✖️・・・市町村も都道府県も普通地方公共団体である。

地方自治法1条の3 
2項 
普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。


(3)特別地方公共団体とは、特別な目的のために作られる団体であり、現在、特別区、財政区、広域連合、役場事務組合の4つがある。

✖️・・特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財政区、地方開発事業団の4つである。広域連合と役場事務組合は地方公共団体の組合の1つである。


(4)広域連合とは、隣り合った複数の市町村が同一の事務を持ち合って公立的に処理するための制度である。

✖️・・・広域連合は、市町村に限らず都道府県でもよく、また同一の事情に限らず異なる。


(4)地方開発事業団とは、複数の地方公共団体が、共同で開発事業を行うための組織である。

◯・・・道路、港湾、水道、下水道、公園などの造成や建設などの事業で設置される。

地方自治法298条


(5)都道府県は、その市町村を包括する広域的な組織であり、広域にわたる事務や市町村間の連絡調整などを行う。

◯・・・都道府県は、広域にわたる事務や市町村間の連絡調整などを行う。

地方自治法2条 
5項 
都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。

★地方自治体の事務


(6)国外に渡航する際に必要なパスポートの交付は、現在、第二号法定受託事務である。

✖️・・・国外に渡航する際に必要なパスポートの交付は、現在、第一号法定受託事務である。


(7)都道府県知事選挙は、現在、第一号法定受託事務である。

✖️・・・第二号法定受託事務である。


★地方行政に対する国の関与


(8)国地方係争処理委員会の委員は総務大臣が任命する。

◯・・・問題文の通り。

地方自治法250条の9 
委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。


(9)普通地方公共団体は、当該地方公共団体の議会の議決を得ることによって、国地方係争処理委員会に審査を申し出ることができる。


✖️・・・普通地方公共団体が国地方係争処理委員会に審査を申し出るために、当該普通地方公共団体の議会の議決を得ることは義務付けられていない。




【行政書士試験・行政法】11. 地方自治法

11. 地方自治法





今回は、行政書士試験の行政法の分野「地方自治法」について勉強していきましょう。


地方自治法って何?


地方自治法は、憲法92条が定める地方自治体を具体的に定めた法律です。


憲法92条 
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。


地方公共団体の組織と運営については法律で定めるとして、具体的な定めを法律に委任しています。これに基づいて制定された法律が地方自治法です


地方自治の本旨


地方自治体の本旨とは、次のことに基づいて政治を行うと考えられています。


①住民自治
・・住民が自らの意思および責任に基づいて地方の政治を行うこと。

②団体自治
・・地方が国から独立して、自らの意思および責任に基づいて政治を行うこと。



地方公共団体の種類


地方公共団体とは、一定の地域を基礎として、その地域に住む住民を構成員としつつ、その地域における事務をその住民の自治によって処理する権能を認められた団体のことです。

この地方公共団体は、大きく分けて、普通地方公共団体と特別地方公共団体に分かれます。

普通地方公共団体
→都道府県
→市町村
・・・指定都市 人工50万人以上
・・・市町村


特別地方公共団体
→特別区(東京23区)
→地方公共団体の組合
→財政区


地方公共団体が行う事務の種類


地方公共団体が行う事務には、法定受託事務と自治事務があります。

1法定受託事務

法定受託事務とは、国または他の地方公共団体の事務のうち、法令によりその処理を委託された事務をいいます。

地方自治法2条 
9項 
この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。 
一 
法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。) 
二 
法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)



自治事務とは、地方公共団体が処理すべき事務のうち、法定受託事務以外の事務のことをいいます。

地方自治法2条 
8項 
この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。




地方公共団体の権能


地方公共団体は、以下のそれぞれの機能を有しています。

①自治立法権
②自治組織権
③自治行政権
④自治財政権

それぞれの権能を細かく見てみましょう。

1. 自治立法権


自治立法権とは、地方公共団体が、その事務に関して自主法を定める権能をいいます。この地方公共団体の自主法のことを条例といいます。

地方自治法14条 
1項 
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。 
3項 
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。


2. 自治組織権


自治組織権とは、地方公共団体が、その自治権に基づいてその そしき・運営等を定め、組織を構成する公務員を任命する権能をいいます。


3. 自治行政権


自治行政権とは、地方公共団体が事務を処理する権能のこといいます。

地方自治法1条の2 
1項 
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。

地方自治法2条 
2項 
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。


4. 自治財政権


自治財政権とは、地方公共団体が、その事務に要する経費に充てるため、自ら必要な資金を調達し、および管理する権能のことをいいます。

必要な資金を調達するには、地方税で税金を徴収して、必要な資金を調達することになりますが、その地方税の徴収の根拠については、以下のように定められています。

地方自治法223条 
普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる。




➦【リンク】地方自治法のトレーニング問題まとめ