2019年8月29日木曜日

3. 紛争解決・・裁判で紛争を解決する方法・裁判以外で紛争を解決する方法

3. 紛争解決



裁判による紛争解決

裁判制度

裁判とは何か?

裁判とは、裁判所または裁判官が事実を認定し法を適用して具体的な事件を解決する判断行為のことを言います。法の適用の前提となる事実のある無いを確定できない場合でも、裁判所または裁判官は、裁判を拒否できません。国民に裁判を受ける権利が保障されているからです。

最高裁判所の裁判

最高裁判所の審理や裁判は、全裁判官による大法廷または3人以上の裁判官による小法廷で行います。法令等の憲法違反の判断や最高裁判所の判例を変更する場合には、大法廷で裁判をしなければなりません。

最高裁判所は、法令に違反するか否かを審査する法律審です。しかし、判決に重大な影響を及ぼす重大な事実の誤認などがあった場合など、事実認定が問題となることもあります。

高等裁判所の裁判

高等裁判所の裁判は、法に特別の定めがある場合を除いて、複数の裁判官による合議制で行われます。3名の裁判官による合議制が原則となりますが、5名の場合もあります。合議によって意見が一致しなくても、少数意見を付すことはできません。少数意見を付けられるのは最高裁判所だけです。

高等裁判所は、通常、第二審裁判所となります。しかし、高等裁判所が第一審裁判所になる場合もあります。

地方裁判所の裁判

地方裁判所の裁判は原則として1名の裁判官によって行われます。
ただし、事案の性質によっては、3名の裁判官の合議制で行われる場合もあります。
裁判所法26条

家庭裁判所の裁判

家庭裁判所は、家庭に関する事件と少年事件を扱います。その他にも簡易訴訟など、訴訟事件も扱います。家庭裁判所の裁判も、地方裁判所と同様に、原則として1名の裁判官によって行われますが、事案の性質によっては3名の裁判官の合議制で行われる場合もあります。

簡易裁判所の裁判

簡易裁判所は、軽微な事件の処理のために設けられた下級裁判所です。訴訟の目的の価値が一定額を超えない請求に関する民事事件の第一審および罰金以下の刑に当たる罪など一定の軽微な犯罪。


民事裁判

民事訴訟って何?

民事訴訟というのは、私人間の紛争を国の裁判権によって強制的に解決する手続きです。手続きの進め方など、民事訴訟のルールを定めているのが民事訴訟法です。

民事訴訟の進め方

民事訴訟は、当事者(原告)の訴えがあって初めて開始されます。民事訴訟を利用するか否か、審判の対象と範囲をどうするかは、当事者の意思に委ねられています。これを処分権主義といいます。

民事訴訟の終了

民事訴訟は、裁判所の最終的な判断である判決によって終了するのが原則です。しかし、当事者の意思によって訴訟を終了させることもできます。

判決によらず当事者の意思による訴訟の終わらせ方

①訴えの取り下げ
②請求の放棄・認諾
③訴訟上の和解
のいずれかにより、当事者は訴訟を終了させることができます。

刑事裁判

罪刑法定主義って何?

罪刑法定主義とは、「法律なくば刑罰なく、法律なくば犯罪なし」と定義される原則です。どのような行為が罪になり、それに対してどのような刑が科されるかは、国民の代表が制定した法律で(法律主義の原則)、予め定めておかなければならない(事後法禁止の原則)というのです。そのため、慣習や物事の筋道や道理(条理)を刑法の直接の法源とするのは禁止されています。
また、刑罰法規は、施工後の行為にのみ適用され、施行後の行為に遡って適用してはなりません。

和解を申し立てることもできます。

民事訴訟法 第二百六十五条  
裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。 
2 前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。 
3 第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。 
4 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。 
5 第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。


そして、当事者の合意内容を記載した、調書には、確定判決と同一の効力が認められています。

民事訴訟法 第二百六十七条 
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

調停

調停って何?

調停というのは、第三者が当事者を仲介して、その紛争の解決を図ることを言います。当事者が合意に達して初めて解決するのであって、第三者の案は、当事者を拘束しません。調停は、当事者の互いに譲り合うこと(互譲)によって、物事の筋道や道理(条理)にかない、実情に即した解決を図る方法です。


仲裁

仲裁って何?

仲裁というのは、当事者の合意に基づき、第三者の判断によってその当事者間の紛争を解決することです。調停と異なり第三者の判断が当事者を拘束します。


裁判外紛争解決手続(ADR)

裁判外紛争解決手続(ADR)というのは、裁判所の訴訟手続によらずに、民事上の紛争を解決しようとする当事者のために、公正な第三者が関与する手続のことです。同法制度改革の一環として、この手続が整備されています。

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2019年8月28日水曜日

無権代理人の本人単独相続(所有権移転登記抹消登記手続事件)とは?・・行政書士試験の重要判例

【重要判例】無権代理人の本人単独相続

 所有権移転登記抹消登記手続事件/最判昭40.6.18



どうもTakaです。今回は本人が死亡し、無権代理人が本人を単独相続した場合に、無理代理人は本人の地位に基づいて、当該無権代理行為を追認拒絶できるか?が争点となった所有権移転登記抹消登記手続事件(無権代理人の本人単独相続)について紹介したいと思います。


無権代理人の本人単独相続の内容

【重要判例】無権代理人の本人単独相続  所有権移転登記抹消登記手続事件/最判昭40.6.18
無権代理人の本人単独相続

Bさんは、Aさんから代理権を付与されていないにもかかわらず、Aさんの代理人として、Cさんに対し、Aさん所有の土地を売却し、所有権移転登記がなされた。その後、Aさんは死亡し、Bさんは単独でAを相続した。


無権代理人の本人単独相続の争点


本人が死亡し、無権代理人が本人を単独相続した場合に、無理代理人は本人の地位に基づいて、当該無権代理行為を追認拒絶できるか?


判決のポイント


追認拒絶できない。
無権代理人が本人を単独相続した場合には、無理代理行為は本人がした行為ということになり、無権代理人が追認拒絶することはできないことになる。つまり、当然有効ということである。


判決要旨(最高裁判所HP)


無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。

➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和39(オ)1267

無権代理人の本人共同相続(土地所有権移転請求権仮登記抹消登記等事件)とは?・・行政書士試験の重要判例

【重要判例】無権代理人の本人共同相続(土地所有権移転請求権仮登記抹消登記等事件)/最判平5.1.21



どうもTakaです。今回は、本人が追認しないまま死亡し、無理代理人が他の相続人と共に本人を共同相続した場合に、その相続分について無理代理行為が当然に有効となるかどうかが争われた「無理代理人の本人共同相続」(土地所有権移転請求権仮登記抹消登記等事件)について紹介したいと思います。

無理代理人の本人共同相続の内容


Aが負担する貸金債務について、代理権のないYがBを連帯保証人とする連帯保証契約を締結した。その後、Bは死亡し、Bの配偶者Cと子Yが共同でBを相続した。そこで、債権者XがYに対して貸金の支払いを請求した事件です。


無理代理人の本人共同相続の争点


本人が追認しないまま死亡し、無理代理人が他の相続人と共に本人を共同相続した場合に、その相続分について無理代理行為が当然に有効となるか?


判決のポイント


無理代理人が本人を共同相続した場合には、他の共同相続人の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分についても、当然に有効とはならない。単独相続の場合とは結論が異なることに、注意が必要である。


判決要旨(最高裁判所HPより抜粋)


無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。

➡最高裁判所HP・・ 平成4(オ)87

2019年8月27日火曜日

2. 法令用語と法の解釈

2. 法令用語と法の解釈


法令を読んでいく上で、さまざまな用語がでてきます。このページではそれらの用語で頻出の用語とその解釈についてまとめています。

法令によく出てくる言葉の意味

「又は」と「若しくは」について

「又は」と「若しくは」は複数の語句が選択の関係にあるときに連結する接続詞です。

「又は」・・・大きな意味での選択的連結
「若しくは」・・・小さな意味での選択的連結


「及び」と「並びに」について

「及び」と「並びに」は両方とも複数の語句を併合的に連結する接続詞です。
「及び」・・・大きな意味での併合的連結
「並びに」・・・小さな意味での併合的連結


「適用」と「準用」について

「適用」・・・その規定をそのまま当てはめること
「準用」・・・その規定の対象とは本質的には異なる事項に一定の補正を加えた上で当てはめること。


「科する」と「課する」について

「科する」・・・刑罰や民事罰等の制裁を加えること
「課する」・・・租税等の負担を命じること


「みなす」と「推定する」について

「みなす」
・・・一定の法律関係について二つの事実を同じく見て、一方の事実の法律効果を他方にも発生させること。反証によって崩すことができない。絶対同一視すること。

「推定する」
・・・一定の法律関係について二つの事実を同じく見て、一方の事実の法律効果を他方にも発生させること。ただし、推定するにすぎず、反証によって推定を崩すことができる。


「侵す」と「犯す」の違い

「侵す」・・・権利自由を侵害すること
「犯す」・・・犯罪行為を行うこと


「善意」と「悪意」の違い

「善意」・・・ある事実を知らないこと
「悪意」・・・ある事実を知っていると


「権原」と「権限」の違い

「権原」・・・ある行為を正当化する法律上の原因
「権限」・・・法律上認められている行為の限界、範囲


「直ちに」と「速やかに」と「遅滞なく」

「直ちに」・・・最も時間的に短い概念で、「すぐに」行うという意味。
「速やかに」・・・できるだけ早くという意味。
「遅滞なく」・・・「直ちに」や「速やかに」よりも余裕があり、少しの遅れは許される。


法(条文)の解釈

条文の解釈とは何か?

条文を読み、その意味を汲み取り解釈して問題となっている事実に当てはめて考えることが法律に携わる人の仕事のスタートとなります。解釈とは、もともと、意味を認識することをいいます。しかし、条文(法)の解釈は、法の適用の予備的作業であり、単なる意味の認識にとどまりません。

解釈の方法

文理解釈

条文の文言の意味から論理的に導く解釈のことを文理解釈といいます。

拡張(拡大)解釈と縮小解釈

拡大解釈・・・条文の文言の範囲内で通常よりも広く解釈すること
縮小解釈・・・条文の文言の範囲


次は、基礎法学の紛争解決について説明しています。
➡【リンク】3. 紛争解決

【重要判例】実印と正当理由

【重要判例】実印と正当理由/最判昭27.1.29


【重要判例】実印と正当理由/最判昭27.1.29


実印と正当理由の内容


Aさんが南方に赴任して不在中、妻Bが、保管を託されていたAさんの実印を使用して、Aさん所有の宅地・建物をCさんに売却した。

実印と正当理由の争点


実印を保管していることが、妻に土地売却の代理権があると信ずるべき正当な理由があるとはいえ、表見代理が成立するか?

判決のポイント


実印保管では、妻に土地売却の代理権があると信ずべき正当な理由がるとはいえず、表見代理は成立しない。


判決要旨


夫が陸軍司政官として南方に赴任して不在中、妻が無断で夫を代理し、夫所有の土地建物の売買契約をした場合、たとえ当時妻が夫の実印を保管していた事実があり、また妻および仲介者等が買主に対し、自ら代理権があると告げた事実があつたとしても、それだけでは、未だ買主は、右売買契約の締結につき、妻において夫を代理すべき権限をもつていたと信ずべき正当の理由があつたということはできない。


➡【リンク】最高裁判所HP・・ 昭和24(オ)153

2019年8月26日月曜日

【行政書士試験】代理制度のトレーニング問題

【行政書士試験】代理制度のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。


★代理とは


(1)代理とは、ある人のした意思表示の効果を直接他の人に帰属させる制度である

〇…問題文の通り。


★代理人の種類


(2)代理人は、任意代理、法定代理、復法定代理の3種類に区分される。

×…代理人は、任意代理、法定代理の2種類に区分される。


★任意代理


(3)任意代理とは、本人の意思に基づいて選任された代理人による代理行為である。

〇…問題文の通り。相手方との交渉を弁護士に依頼するようなこと。


(4)任意代理人がすることができる代理行為の範囲は、法律で定まっている。

×…任意代理人のできることは、本人の授権の範囲によって決まる。


★法定代理


(5)法定代理人は、現状、未成年者に対する親権者及び未成年者に親がいない場合の未成年後見人だけである。

×…法定代理人には、親権者、未成年後見人のほか、成年被後見人に対する後見人などがある。


★代理権の範囲


(6)Aさんは、留守中に財産の管理につき単に妻Bさんに任せるといって海外へ単身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。

×…代理権の範囲がはっきりしない場合、代理人にできるのは、保存行為と、現状を変更しない限度での利用・改良行為だけである。問題は現状を変更しない限度での利用行為に当たるので(例:利子付きでお金を貸すなどの収益を図る行為)その効果はAに帰属する。


★自己契約と双方代理


(7)売買契約において、売主が買主の代理人になることを自己契約といい、そして、第三者が、売主の代理人になるとともに、買主の代理人にもなることを双方代理という。

〇…問題文の通り。


★復代理人


(8)復代理人とは代理人が選任した代理人である。

〇…問題文の通り。


★顕名主義


(9)顕名主義とは、代理人であることを明らかにして、代理行為を行わなければならないという主義のことである。


〇…代理人であることを示さないで行った行為は、代理人が自分のために行った行為とみなされる。

民法100条 
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。


★法定代理人


(10)法定代理人の場合は、原則として、復代理人を自由に選任できる。

〇…例:親(法定代理人)は未成年の子供(本人)の弁護人(復代理人)を選任することができる。


★無権代理


(11)無権代理人がした契約において、契約時に無権代理だと知らなかった相手方は、本人が追認する前なら自由に取り消すことができる。

○…無権代理人だと知らなく契約したので、取り消すことができる。ただし、本人追認後は正式な代理人と変わりがなく、自由に取り消すことはできなくなる。

民法 115条 
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

★表見代理


(12)本人Aさんが代理人Bさんの代理権を解いたが、Bさんが担当していた取引先のCさんに連絡をせず、CさんはBさんがまだ代理人であると信じて契約をしてしまった場合、Aさんは契約に対して責任がある。

○…Bさんの代理権が解かれたことを知らされていないCさんにとっては、Bさんは表見代理人であり、表見代理人の行為はCさんを保護するために有効である。

民法109条 
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

民法110条 
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

3. 代理制度・・自分の代わりに!?事例を条文にあてはめられるように繰り返し学習しましょう。

3. 代理制度

3. 代理制度・・自分の代わりに!?事例を条文にあてはめられるように繰り返し学習しましょう。

どうもTakaです。今回は代理制度について紹介したいと思います。




代理とは何か


代理の特徴


代理とは、ある人(代理人)のした意思表示の効果を直接他の人(本人)に帰属させる制度です。代理人が代理権の範囲内で有効な代理行為を行うと、その効果は、代理人ではなく、本人に帰属します。

任意代理と法定代理


代理には、任意代理と法定代理があります。
任意代理・・・本人の意思(信任)に基づく代理
法廷代理・・・本人の意思とは無関係に法律の規定を根拠として発生する代理


代理権


代理権の発生


代理権とは、代理人が自分の意思表示の効果を本人に帰属させるための権限(資格・地位)です。
任意代理の場合には、本人が代理権を授与します。これに対して、法定代理の場合には
本人の意思とは無関係に、法律の規定に基づき、一定の身分関係のあるものに当然代理権が発生したり、本人以外の者の指定や家庭裁判所の選任などによって代理権が発生したりします。


代理権の範囲


任意代理の場合、代理権によって何ができるのか(代理権の範囲)は、本人の意思によります。
これに対して、法廷代理における代理権の範囲は、法律で定められています。
代理権の範囲がはっきりしない場合、代理人にできるのは、財産の現状を維持するための行為(保存行為)と現状を変更しない限度での利用や価値を増加させる行為(改良行為)だけです。

民法 第103条 
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。 
一 保存行為 
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

自己契約・双方代理


1. 自己契約。双方代理とは何か?


売買契約において、売主が買主の代理人になることを自己契約といいます。そして、第三者が、売主の代理人になると共に、買主の代理人にもなることを双方代理と言います。

2. 自己契約と双方代理の禁止

(用語の整理)
債務の履行・・・契約などによって発生した義務を実行すること。

自己契約と双方代理は、いずれも禁止されています。
民法108条
これらは、当事者の一方が不当な不利益を被る恐れがあるからです。
ただし、債務の履行や本人があらかじめ許諾した行為については、一方が不当な不利益を被るおそれがなく、これらには、例外的に自己契約や双方代理が許されます。
民法108条
【重要判例】大判大12.5.24
【重要判例】最判昭43.3.8


代理権の濫用


代理人が本人のためではなく、自己または第三者の利益を図るために
代理行為を行った場合(代理権の濫用)について、判例は、民法93条を類推適用しています。このような代理行為も、原則として有効ですが、相手方が代理人の真意を知っていた場合、または知らないことに過失があった場合には、本人は無効を主張できるというのです。
【重要判例】代理権の濫用


代理権の消滅

代理権は、本人や代理人の死亡・破産手続開始の決定などによって消滅します。
民法111条、民法653条

また、代理人が後見開始の審判を受け、成年被後見人になっても、代理権は消滅しません。しかし、本人が後見開始の裁判を受け、成年被後見人になっても、代理権は消滅しません。

復代理人


復代理人って何?

復代理人とは、代理人が選任した本人の代理人です。復代理人は、代理人が選任したり、解任したりします。しかし、代理人の代理人ではなく、本人を直接代理する本人の代理人です。
民法107条1条

復代理人の選任


本人との特別な信頼関係に基づいて代理権を授与された任意代理人は、自ら代理権を行使することが強く求められます。そのため、復代理人を選任できるのは、本人の許諾を得た場合、またはやむを得ない事由のある場合だけです。

第104条 
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

これに対して、法定代理人は、本人との信頼関係に基づいて代理権を授与されたわけではないため、いつでも復代理人を選任することができます。
第106条 
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

代理人の責任

復代理人が選定されても、代理人の代理権が消滅するわけではなく、代理人は依然として代理人です。そして、代理人は、復代理人の行為について一定の責任を負います。
任意代理人は、復任権が限定されているため、復代理人の選任・監督についてのみ責任を負うのが原則です。

第105条 
1項 
代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。 
2項 
代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

これに対して、法定代理人は復代理人の行為について全責任を負うのが原則です。

第106条 
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

復代理人の権限

復代理人の権限は、代理人の代理権を基礎として成立しています。そのため、代理権が消滅してしまいます。また、復代理人の権限は、代理権の範囲内で代理人が代理人が授与した範囲に限定されます。
復代理権の授与は、代理人と復代理人との合意でなされ、本人が直接タッチするわけではありません。しかし、便宜を考え、復代理人は、本人に対して直接権利を持ち義務を負うとされています。
民法107条2項


顕名主義


顕名ってなに?

代理人が行う意思表示は、本人のためにすること(代理意思)を示して行う必要があります。
第99条 
1項 
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 
2項 
前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

この代理意思を表示することを顕名と言います。


顕名のない意思表示


顕名のない意思表示は、原則として代理人の意思表示とみなされます。

民法100条 
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

代理人であることを明らかにしないと、意思表示の効果は、代理人に帰属します。ただし、相手方が代理意思を知っていた場合、または過失があるために代理意思を知ることができなかった場合には、本人に効果が帰属します。


本人の名で行なった代理行為


代理人が自分の名前を出さず、直接本人の名前で代理行為を行なった場合も、原則として代理行為は有効であり、その効果は本人に帰属します。


代理行為の瑕疵


瑕疵の有無の判断


代理行為の効力に問題が生じた場合に、まず考慮すべきは、代理人の事情です。代理行為の瑕疵や善意・悪意などの判断は、代理人について行うのです。
民法101条1項

現実に意思表示を行うのは、代理人だからです。
しかし、代理人が委託された特定の法律行為を本人の指図に従って行なった場合には、本人の事情を考慮します。
民法101条2項

代理と詐欺


相手方が代理人に対して詐欺を行なった場合、代理人が騙された以上民法101条1項により、その代理行為は、取り消すことができます。ただし、代理行為の効果は本人に帰属しますから、取消権をもつのは、本人です。
また、判例では、代理人が相手方に対して詐欺を行なった場合にも、民法101条1項を適用し、本人の善意・悪意を問わず、相手方は取り消すことができるとしているようです。


代理人の能力


意思能力

代理人にも意思能力が必要です。代理人は、自ら意思を決定し、それを表示するのですから、意思能力は当然必要となります。

行為能力

しかし、代理人に行為能力は必要なく、未成年者や成年被後見人でも代理人になれます。
民法102条

代理行為の効果は本人に帰属し、代理人の保護を考える必要がないからです。

無権代理


無権代理とは何か?


無権代理とは、代理権がないのに代理行為をしたり、与えられた代理権の範囲外の行為をしたりすることをいいます。無権代理の効果は、本人に帰属しません。

民法 第113条 
1項 
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 
2項 
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

無権代理行為の追認


1. 追認とは何か?


無理代理権の効果が、本人に帰属しないのは、本人の利益を考慮したものにすぎず
公序良俗違反のような絶対的無効ではありません。そのため、本人が追認すると、本人に効果が帰属します。ここでいう追認とは、無権代理行為を有効な代理行為と同じに扱うという本人の意思表示であり、効果帰属の承認を意味します。

2. 追認の方法


追認は、単独行為であり、、本人が一方的に行うことができます。追認は、相手方に対して行なっても良いし、代理人に対して行なってもよいです。ただし、相手方に対して行うか、相手方がそれらの事実を知るか、いずれかでないと、相手方に主張することができません。

民法 第113条 
1項 
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 
2項 
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

3. 追認の効果


追認には、原則として遡及効(法律や法律要件がその成立以前にさかのぼって効力をもつこと)があります。そのため、追認によって、無理代理行為は、その行為の時から本人に効果が帰属していたことになります。


本人と無権代理人の地位の同化


1. 無権代理人が本人を単独相続


判例では、無権代理人が本人を単独相続した場合には、無権代理人と本人との資格が一体となり、本人が自ら法律行為をしたものと同じになるから、無権代理行為は治癒され、法律行為の効果は、当然に本人を相続した無権代理人に帰属するといいます。
【重要判例】最判昭40.6.18
また、第三者が無権代理人を相続後に本人を相続した場合には、無権代理人が本人を相続したのと同様の状態になるので、当然に有効となると言っています。

2. 無権代理人が本人を共同相続


無権代理人が他の相続人とともに本人を共同相続した場合には、無権代理行為が当然に有効になるわけではないと、判例はいっています。

3. 本人が無権代理人を相続


本人が無権代理人を相続した場合は、判例では、本人の資格で追認を拒絶することもできるが、民法117条の責任を免れることはできないといっています。
【重要判例】無権代理人を相続した本人の責任/最判昭48.7.3

相手方の催告権

無権代理行為の相手方には、催告権があります。相手方は本人に対して相当の期間内に追認するか否かを確実に答えるように催告することができ、本人が答えない場合には、追認を拒絶したとみなされます。

民法 第114条 
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

善意の相手方の取消権


代理権のないことを知らない善意の相手方には、取消権もあります。本人が追認するまでの間であれば、代理権のないことを知らずにした契約を取り消すことができます。ただし、契約を取り消すと、その契約は初めから無かったことになるので、無権代理人の責任追求などの手段を取ることはできなくなります。また本人が契約を追認することもできなくなります。

無権代理人の責任追及


代理権のないことについて善意無過失の相手方は、無権代理人の責任を追及し、無権代理人に対して本来の履行・損害賠償のいずれかを選択して請求することができます。



表見代理


代理権授与の表示による表見代理


表見代理とは、無権代理行為がなされたことについて本人にも落ち度があり、相手方が代理人であると信じ、そう信じるのも無理がないという場合に、無権代理行為の効果を本人に帰属させようという制度です。
代理権などないのに、あるかのような外観を作り出した者は、その責任を負わなければなりません
次の要件を満たす場合には、表見代理が成立し、本人は、無権代理行為の効果帰属を拒めなくなります。
民法109条

①本人が代理権を与えたと表示したこと
②表示された代理権の範囲内で、無権代理人が代理行為をしたこと
③相手方が代理権のないことを知らず、かつそのことに過失のないこと(善意無過失)



権限外の行為による表見代理


一応代理権のある者がそれを超える行為をした場合、そのような代理人を選任した本人がリスクを負担し、代理人の行為について責任を負わなければなりません。次の要件を満たす場合には、表見代理が成立し、本人は、効果帰属を拒めなくなります。

民法110条 
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


①何らかの代理権(基本代理権)があること
②基本代理権を超えた行為がなされたこと
③相手方が権限ないと信じる正当な理由があること

【重要判例】最判昭39.4.2
【重要判例】最判昭46.6.3
【重要判例】最判昭44.12.18
【重要判例】最判昭44.12.19


代理権消滅後の表見代理


かつて代理権を持っていた者が、その代理権の範囲内で代理行為を行なった場合にも、善意無過失の相手方を保障するため、表見代理の成立が認められています。


表見代理と無理代理人の責任


表見代理が成立するといっても、それは無理代理の一種ですから、相手方は、表見代理を主張せず、あくまで民法117条の無理代理人の責任を追及することもできます。判例は、両者は独立した選択可能な手段であり、相手方はどちらでも好きな方を選択して良いといっています。
【重要判例】最判昭62.7.7

無理代理人は、表見代理人の成立を理由に自分の責任を免れることはできないのです。
また、表見代理が成立しても、善意の相手方は、取り消し権を行使することもできます。
民法115条
逆に、本人が追認することもできます。
民法113条

つぎは、民法の分野の時効ついて紹介しています。
➡【リンク】4. 時効制度