2019年10月9日水曜日

【行政書士試験】契約総論のトレーニング問題

【行政書士試験】契約総論のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★契約の成立


(1)契約とは、相対する両当事者の意思表示によって成立する法律行為である。

〇…問題文の通り。


(2)申し込みに承諾機関が定められていれば、その期間内に承諾を到達させる必要がある。

〇…問題文の通り。


(3)契約とは、民法上、契約書など書面によって締結するものに限られる。

✕…例えば、コンビニでジュースを買うのも契約(売買契約)である。


(4)承諾機関を定めた申し込みが既に相手方に到達していた場合は、その期間が経過するまで、申し込みを撤回することはできない。

〇…問題文の通り。


(5)両当事者間の合意だけで成立する契約を、諾成契約という。また、両当事者間の合意だけで契約が成立し、目的物が引き渡されて初めて契約が成立する契約を要物契約という。

✕…
諾成契約
・・・両当事者間の合意だけで成立する契約

要物契約
・・・両当事者間の合意だけでは契約が成立せず、目的物が引き渡されて初めて契約が成立する契約


★契約存続中の関係


(6)同時履行の抗弁権は、当事者間の公平を図り、不必要な争いを未然に防ぐためのものであり、相手方の履行を確実にする機能もある。

〇…問題文の通り。


(7)双務契約とは、契約が成立すると、当事者双方が相互に対価的な関係にある責務を負うことになる契約のことである。

〇…問題文の通り。


★契約の解除


(8)契約の解除とは、契約の一方の当事者の意志により契約がなされなかったのとほぼ同じ状態に戻すことである。

〇…問題文の通り。


(9)契約の解除前に出現した第三者は、登記などの権利保護要件を備えれば、善意・悪意を問わず保護される。

〇…問題文の通り。



2019年10月8日火曜日

11. 契約総論・・・契約とは何かという基本から勉強していきましょう。

11. 契約総論



今回は、民法の分野の「契約総論」について説明していきます。




契約の成立


契約とは何か?


契約とは、相対する両当事者の意思表示(申し込みと承諾)の合致(合意)によって成立する法律行為です。契約は、法律行為の1つであり、その成立によって債権・債務という私法上の効果が発生するものです。

契約は、向かい合った関係にある2つの意思表示によって成り立っています。2つの意思表示のうち、先になされた意思表示を申し込みといい、これを受けて後からなされた意思表示を承諾といいます。



契約の成立要件


1. 諾成契約と要物契約


契約は、原則として両当事者の意思表示が合致すれば成立します。このように両当事者の合意だけで成立する契約を諾成契約といいます。

これに対して、両当事者の合意だけでは契約が成立せず、目的物が引き渡されて初めて契約が成立するものもあります。これを要物契約といいます。


2. 契約方法の自由


両当事者の合意は、口契約だけでよく、書面を作成する必要はないのが原則です。これを契約方式の自由といいます。


申し込みと承諾


1. 申込みの効力


契約が成立するためには、まず一方が申し込みをしなければなりません。隔地者間の申込みは、相手型が知ることのできる状態になった時(到達時)に効力を生じ、相手型が承諾をして、契約を成立させることのできる状態(承諾適格のある状態)になります。
申込者が承諾期間を定めていた場合には、その期間の経過により、申し込みは効力を失い、承諾適格を失います。また、申し込みが承諾期間を定めずになされた場合も、取引慣行等に従った相当な期間の経過によって、申込みの承諾適格は消滅します。


2. 申込みの撤回


申 し込みをしたものの、途中で気が変わった場合、申込みが相手方に到達する前であれば、申込みの効力が発生していませんから、当然撤回することができます。
申し込みが、既に相手方に到達しており、しかも、承諾期間を定めていた場合には、その期間が経過するまで、申込みを撤回することができません。これを申し込みの拘束力といいます。
そして、承諾期間を定めていない場合も、承諾通知を受けるのに相当な期間は、申込みの拘束力があり、その期間は、申込みを撤回できないことになっています。

民法524条 
承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。


3. 承諾


承諾は、申込みに対応する内容でなければなりません。条件をつけるなど、申込みに変更を加えて承諾をした場合には、その申込みを拒絶するとともに、新たな申し込みをしたものとみなされます。

民法528条 
承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

承諾は、申込みに承諾適格がある間にしなければなりません。申し込みに承諾期間が定められていた場合には、その期間の経過により、申し込みの承諾適格がなくなりますから、承諾期間内に承諾を到達させる必要があります。ただし、承諾が遅れ、承諾期間経過後に到達した場合には、申込者は、遅延した承諾を新たな申し込みとみなすことができます。

民法523条 
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。


そのため、申込者が、遅延した承諾を新たな申込みとみなし、承諾すると、契約が成立します。


契約の成立時期


1. 発信主義


契約の成立時期については、発信主義がとられており、隔地者間の契約も、承諾の発信時に成立します。

民法526条 
1項 
隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。 
2項 
申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

2. 意思実現による契約の成立


申込者が返事は要らないと言った場合や、取引慣行上特に承諾の通知が必要でなかった場合には、承諾の意思表示と認められるような行為があれば、その時に契約が成立します。これを意思実現による契約の成立といいます。

3. 交叉申込み


両当事者がほぼ同時に申込みを行う(先になされた申込みが到達する前に、後の申し込みがなされる)という場合もあります。これを交叉申し込みといいます。

交叉申込みによっても、契約は成立します。ただし、いずれも申込みであり、承諾がないため、民法526条1校は適用されず、後の申し込みが到達した時に契約が成立します。


契約存続中の関係


双務契約の牽連性


1. 双務契約と片務契約


契約が成立すると、当事者双方か相互に対価的な関係にある債務を負うことになる契約を双務契約といいます。代表例は、売買契約です。
これに対して、双方の債務が対価的な関係にない契約や一方の当事者だけが債務を負うことになる契約を片務契約といいます。

例:贈与契約



2. 牽連性



双務契約によって生じる2つの債務は、相互に対価的関係にあります。


双務契約によって生じる2つの債務は、双方ともに有効に成立する場合にのみ成立し、一方の債務が何らかの理由で有効に成立しない場合には、他方も有効に成立しません(成立上の牽連性)。

そして、両債務は、一方が履行されない間は、他方も履行しなくて良いという関係にあります(履行上の牽連性)。

また、両債務は、一方が履行されずに消滅した場合には、他方も消滅するのが原則です(存続上の牽連性)。


同時履行の抗弁権


1. 同時履行の抗弁権とは何か?


同時履行の抗弁権とは、相手方が、自分の債務も弁済期にあるのに何もせず、こちらの債務の履行ばかり要求する場合に、同時に履行しろと言い返すことができることです。

民法533条 
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。


同時履行の抗弁権は、当事者間の公平を図り、不必要な争いを未然に防ぐためのものであり、相手方の履行を確実なものにするという機能もあります、

2. 同時履行の抗弁権の成立要件


同時履行の抗弁権は、同一の双務契約から発生した対価的関係にある2つの債務について認められるのが原則である。しかし、この要件は緩和されており、2つの債務が同一の契約から発生したものでなくても、両債務の履行を関連して行わせるのが公平である場合に、同時履行の抗弁権が認められることがあります。例えば、契約が解除され、双方が原状回復義務を負う場合、その義務は、同時履行の関係にあります。
民法546条

3. 同時履行の抗弁権の効果


同時履行の抗弁権があれば、弁済期がやってきても、債務を履行する必要はありません。相手方が履行の提供をするまでは、履行を拒むことができ、履行を拒んでも、債務不履行責任は発生しません。そのため、売買の目的物の引き渡しを求める訴えが提起され、それが認められたとしても、目的物の引き渡しと代金の支払いが、同時履行の関係にある場合には、代金の支払いと引き換えに、目的物を引き渡せという判決(引換給付判決)がなされるにすぎないです。

危険負担


1. 危険負担とは何か?


双務契約の成立後、いずれの債務も完全には履行されていないときに、一方の債務がその債務者の帰責事由によらずに履行不能になった場合、他方の債務はどうなるかという問題を危険負担の問題といいます。一方の債務の消滅という危険(リスク)をいずれかの当事者が負担するかという問題です。

2. 債務者主義


当事者に落ち度がないのに、一方の債務が履行不能になった場合、双務契約の存続条の牽連性により、他方の債務も消滅するのが原則です。これは、履行不能になった債務の債務者から見れば、自分の権利が消滅してしまうことを意味します。そのため、一方の債務の履行不能による危険を負担するのは、原則として債務者であり、債権者は権利も失います。これを債務者主義といいます。


3. 特定物売買の危険負担


これに対して、特定物売買など、特定物に所有権などの物権を設定または移転する双務契約については、債権者主義が採用されています。
民法534条1項

特定物が、売主(債権者)の帰責事由によらずに滅失または損傷した場合には、買主(債権者)がそのリスクを負い、飼い主の代金支払い債務は残るということです。そのため、飼い主は、目的物を、受け取ることができないのに、代金を支払わなければならないことになります。


契約の解除


契約の解除とは何か?


契約の解除とは、契約の一方当事者の意思により契約がなされなかったのとほぼ同じ状態に戻すことをいいます。契約を一方的に破棄し、白紙に戻すことを解除と言います。

解除は、相手方に大きな影響を与えるため、解除は両当事者が合意した要件を満たす場合(約定解除)と、法が定めた要件を満たす場合(法定解除)に限定されています。

債務不履行を理由とする解除


1. 解除の要件


債務不履行があり、それを正当化する事由(同時履行の抗弁権など)がなく、かつ、それが債務者の帰責事由に基づく場合、債権者は、一方的にその債権の発生原因である契約を解除することができます。

2. 催告


履行遅滞や追感可能な不完全履行を理由に、契約を解除する場合には、原則として最後通知たる催告を行い、相手肩に解除を免れる最後のチャンスを与えなければなりません。

民法541条 
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。



相手方が催告に応じない場合に初めて、解除権が発生します。

履行の催告には、相当の期間を定める必要があります。具体的状況のもとで、客観的に見て履行に必要と判断される期間を定めて、履行を催告しなければなりません。

これに対して、履行不能になった場合には、催告なしで解除することができます。

民法543条 
履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


債務の本旨に従った履行ができない状態になっている場合には、催告をしても無意味だからです。


解除の効果


契約が解除されると、各当事者は、原状回復ぎむを負います。各当事者は、法律関係を契約前の状態に戻さなければならないのです。そのため、契約が解除されると、未履行の債務を履行する必要はなくなりますが、すでに履行した債務を元に戻さなければなりません。
しかし、解除の前に利害関係を持つようになった第3者は、善意・悪意を問わず、保護されるためには、目的物が不動産なら登記を備え、それが動産なら引渡しを受け、自分の権利を他の人にも主張できるようにしておく必要があるといってます。



次は、民法の分野の「売買と贈与」に関して紹介していきます。
➡【リンク】12. 売買と贈与

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2019年10月7日月曜日

物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)って何?行政書士試験の重要判例

【重要判例】 物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)/最大判昭40.6.30


今回は、契約を解除した場合の 原状回復義務についても、保証人は責任を負うかが争われた「 物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)」について紹介したいと思います。

物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)の内容


物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)って何?行政書士試験の重要判例


AさんはBさんから、畳を買い、CさんはBさんの連帯保証人となりました。Aさんは代金を支払いましたが、Bさんがその畳や建具を引渡さないため、Aさんは、催告の後、契約を解除した。Aさんは、BさんとCさんに対して代金の返還請求をした事件です。


物件引渡等請求事件(売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任)の争点


契約を解除した場合の 原状回復義務についても、保証人は責任を負うか?

判決のポイント



保証人は原則として、売主の債務不履行による契約が解除された場合における現状回復義務についても責任を負う。


➡最高裁判HP・・・ 昭和38(オ)1294

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【行政書士試験】債務の履行確保のトレーニング問題

【行政書士試験】債務の履行確保のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★債務者の責任財産保全


(1)遺留分減殺請求権は行使上の一身専属権であり、権利行使の確定的意思を外部に表明したと認められる特段の事情がない限り、代位行使できない。 

○…問題文の通り。


(2)金銭の支払い請求権または物の引き渡し請求権を代位行使する場合、債権者は、直接自分に支払え、または引き渡すことを請求できる。

〇…問題文の通り。


(3)不動産の売却は、相当な対価であっても、債権者を害する可能性がある。

〇…問題文の通り。


★連帯債務


(4)連帯債務者の1人に対して履行を請求すると、他の連帯債務者にも請求したことになる。

〇…問題文の通り。


(5)連帯債務者の誰か一人が弁済をすれば、債務は全て消滅する。

〇…問題文の通り。


(6)連帯債務者の1人が事故の反対債権で相殺すると、他の連帯債務者の債権も消滅する。

〇…問題文の通り。


★保証債務


(7)保証債務は、債権者と保証人との書面での保証契約によって成立する。

〇…問題文の通り。


(8)保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権がある。だが、連帯保証人にはない。 

〇…問題文の通り。


(9)主たる債務者に対して債務者に対して時効中断の措置をとれば、保証人にも時効中断の効力が生じる。 

〇…問題文の通り。




【行政書士試験・民法】10. 債権の履行確保・・・ややこしい分野ですがそれぞれの債務のイメージを整理しよう!

10. 債権の履行確保

最終更新日:2020年1月9日



今回は民法の分野の「債権の履行確保」について紹介していきます。




債務者の責任財産保全


責任財産の保全


抵当権などの担保の目的となっておらず、債権回収の最後の拠り所となる財産を責任財産といいます。責任財産を国家権力が差し押さえ、売却した金銭から配当を受けるというのが、債権回収の最後の手段です。そのため、債務者の責任財産が減少しないようにしなければなりません。


債権者代位権


1. 債権者代位権とは何か?


債権者代位権
債権者代位権の例



債務者代位権とは、ある債権の債務者がその有する財産権を行使しない場合、債権者が自分の債権を保全するために、債務者に代わってその権利を行使できる権利を言います。

民法423条 
1項 
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。 
2項 
債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。



上の図を例にすると、
Aさんから借金しているBさんが、Cさんに対して金銭債権を持っているとして、BがCkaraその債権の弁済を受ければ、Aは自分の債権を弁済してもらえるのにBがその債権をそのままにしている場合、AがBに代わって、BのCに対する権利を行使してしまうという権利です。


2. 債券代位権の行使の要件


債権者代位行使の要件は以下の通りです。

①債権者の資力が十分でなく、代位権を行使しないと、債券を回収できなくなるおそれのあること(無資力要件)

②原則として債権者の債権(被保全債権)の履行期が到来しているとのこと。

③債務者の権利が、権利の性質上、債務者自身に行使させるべき権利(行使上の一身専属権)でないこと。

④債務者が権利を行使しないこと。


3. 行使上の一身専属権


債務者に属する権利であって、その行使が債権者の債券の実現に役立つものは、原則として債権者代位権の客体となります。しかし、権利の性質上、権利者自身に行使させるべき権利を代位行使させるわけにはいきません。このような権利を行使上の一身専属権といいます。

例としては、夫婦間の契約取消権や親族間の扶養請求権がこれに当たります。


4. 債権者代位権の行使方法


債権者代位権を行使する場合、債権者は自分の名で、債務者の権利を行使します。債務者の代理人として行使するものではありません。また、債権者代位権は、原則として裁判外でも自由に行使できます。

債権者代位権の行使は、被保全債権を保全するのに必要な範囲内に限定されています。例えば、債務者が1000万円の債権を持っていても、被保全債権が800万円であれば、債権者は、800万円しか請求できません。

債権者は、債務者の権利を代位行使しているにすぎません。そのため、例えば、債務者の権利が不動産の移転登記請求権であれば、債権者は、直接自分に登記を移転するように請求することはできず、債務者に登記を移転するように請求できるだけです。

しかし、債務者の権利が金銭の支払請求権や物の引き渡し請求権の場合には、債権者は、直接自分に支払え、あるいは引き渡せと請求できます。本来の権利者である債務者が金銭や物を受け取らないと、代位行使の目的を達成できなくなってしまうからです。


5. 債権者代位権の転用


債権者代位権は、金銭債権を保全するために、債権者が債務者の権利を代位行使するものです。しかし、債権者代位権を、金銭債権の保全とは全く異なる場面で用いることが認められています。これを債権者代位権の転用といいます。


債権者取消権


1. 債権者取消権とは何か


債権者取消権(詐害行為取消権)とは、債務者がその責任財産を減少させるような財産的処分行為(詐害行為)を行った場合に、債権者がその行為を取り消して流失した財産を取り戻すことを認め、債務者の責任財産を維持しようという制度です。


2. 債権者取消権の成立要件


次の3つの要件を満たすと債権者取消権が成立します。

①詐害行為時に保全すべき債権(被保全債権)が存在すること。

②債務者が債権者を害することを知りながら財産権を目的とする法律行為(詐害行為)を行うこと。

③詐害行為によって利益を受けた物(受益者)・転得者が債権者を害することを知っていること。


債権者取消権が成立するためには、被保全債権が詐害行為の前に成立し、詐害行為時にそれが存在していなければなりません。しかし、被保全債権は、成立していればよく、履行期が到来している必要はありません。


3. 詐害行為


債務者が債権者を害することを知りながら行う財産権を目的とする法律行為を詐害行為と呼んでいます。「債権者を害する」とは、債務超過という意味での無資力を意味します。債権者取消権を行使するためには、詐害行為時だけではなく、取消権行使時にも債務者が無資力でなければなりません。

弁済は、債務者の義務であり、原則として詐害行為に当たりませんが、債務者が、特定の債権者と共謀して他の債権者を害する意思で、その特定の債権者にのみ弁済した場合には、取消権が成立します。

詐害行為は、財産権を目的とする行為に限定されています。そのため、婚姻・養子縁組・相続の放棄などの家族法上の行為は、債権者取消権の対象にならないのが原則です。


4. 債権者取消権の行使方法


債権者取消権は、債権者代位権と異なり、裁判以外で行使することはできません。債権者取消権を行使しようと思えば、裁判所に取消訴訟を提起しなければなりません。債権者取消権の行使は、被保全債権の範囲に限定されています。そのため、詐害行為の目的物が金銭などの可分なものであれば、被保全債権の債権額に相当する部分だけを取り消すことができます。

債権者取消権の行使は、総債権者の利益のためであり、目的物が債務者に戻れば目的を達成することができます。しかし、目的物が金銭や物の場合には、債権者代位権の場合と同様に、債権者が直接自分に引き渡すように請求できます。そして、金銭については、受領した金銭を債務者に変換する債務と本来の債権とを相殺することによって、事実上優先弁済を受けることができます。



5. 債務者取消権の行使期間


債務者取消権は、債権者が取り消しの原因を知った時から、2年間行使しないと、時効によって消滅します。また、詐害行為の時から20年を経過すると、債権者取消権は消滅します。

民法426条 
第424条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。


法律関係を早期に確定させるためです。



連帯債務


多数当事者の債権債務関係


1. 分割債務の原則


一方の当事者が複数人いる場合の債権債務関係を多数当事者の債権債務関係といいます。金銭債務のように分割して実現できる可分給付について複数の債務者がいる場合、原則として、債務者は、それぞれ頭数で分割した給付だけを行えばよいことになっています。

民法427条 
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。


このような債務を分割債務といいます。


2. 不可分債務


複数人が1個の不可分な給付を目的とする債務を負う場合もあります。これを不可分債務といいます。例えば、共同賃借人の賃料支払債務を性質上不可分の債務であるというのが判例です。

不可分債務の債権者は、債務者の1人に生じた事由は、弁済や代償弁済などの債権者を満足させるものを除いて、他の債務者に影響しません。そのため、不可分債務は、消滅しにくく、債権の回収が容易であると解されています。

連帯債務


1. 連帯債務とは何か


連帯債務とは、複数の債務者がそれぞれ独立して可分な同一内容の給付を全て行う義務を負うが、債務者の誰かが給付をすれば、他の債務者も債務を免れるというものです。連帯債務は、複数の債務者を一体的なものとして債権の回収を簡単にしようという制度です。例えば、A・B・Cさんの3人が、Dさんに対して6億円の連帯債務を負っていたとします。A・B・Cさん達は、いずれもDさんに対してを6億円を支払う義務を負っていますが、そのうちの誰かが6億円全額を支払うと、3人の債務は全て消滅します。

2. 連帯債務の性質


連帯債務は、1つの債務ではなく、債務者ごとに別途独立の債務が存在します。債務者の数だけ別途独立の債務があります。そのため、1つの債務について無効・取消原因があり、その債務が無効となったり、取り消されたりして存在しなくなっても、他の債務は、何ら影響を受けることなく、存続します。

3. 連帯債務の履行請求


連帯債務が成立した場合、債権者は、自己の債権の範囲内である限り、どのようにでも請求できます。1人にのみ全額の支払いを請求することもできるし、全員に対して同時に全額の支払いを請求することもできます。また、適当に振り分けて請求することもできます。連帯債務者は、それぞれ独立して債権全額を弁済する 義務があるからです。


連帯債務者の1人に生じた事由


1. 履行請求の絶対的効力


連帯債務を構成する複数の債務は、それぞれ別途独立の債務ですから、連帯債務者の1人に生じた事由は、他の債務者に影響しないのが原則です。

民法440条 
第434条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。


しかし、債権者が連帯債務者の1人に対して履行を請求した場合、その効力は、他の連帯債務者にも及び、他の連帯債務者にも請求したことになります。

民法434条 
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。


このように債務者の1人に生じた事由が他の債務者にも影響を与えることを絶対的効力といいます。



2. 弁済等の絶対的効力


弁済にも、絶対的効力があります。連帯債務者は、それぞれ別個独立の債務を負っていますが、それらは同一内容の債務です。そのため、連帯債務者の誰か1人が弁済をすれば、債務の内容は実現されたこととなり、債務は全て消滅します。
また、代物弁済・弁済供託・弁済の提供・混同・更改にも絶対的効力が認められています。


3. 相殺の絶対効力


例えば、Aさん・Bさん・Cさんの3人がいたとし、連帯債務を負っているとします。Aさんが相殺した場合、絶対効力が認められ、Bさん・Cさんの債務も消滅します。そして、Aさんが相殺をしない場合には、Aの負担部分について、B・Cが相殺を援用できます。
民法436条

B・CはAに相殺可能な債権があることを主張して、Aの負担部分だけを弁済額を減額することができるのです。


4. 免除の絶対的効力


債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合もその連帯債務者の負担部分について絶対的効力が認められています。

民法437条 
連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。


その連帯債務者の負担部分だけ他の連帯債務者の債務も減少するのです。

債務の一部についてのみ免除がなされた場合には、全額の免除を受けた場合に比例した割合で、他の債務者も債務をの免れるというのが判例です。


5. 消滅時効の絶対的効力


通教債務者の1人について、債権の消滅時効が完成した場合も、その連帯債務者の負担部分について絶対的効力が生じ、その負担部分だけ、他の債務者の債務は減少します。

民法439条 
連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。


保証債務


保証債務とは何か?


保証人と債権者との間で、債務者が債務を弁済できない場合に、保証人が代わって弁済するという合意(保証契約)をすることを保証といいます。そして、この合意によって、保証人が債権者に対して負うことになる債務を保証債務といいます。

保証債務は、債務者が債権者に対して支払う債務(主たる債務)とは、別個の独立した債務です。しかし、保証が担保としての機能を果たすことから、保証債務は、債務者の債務(主たる債務)に従属する従たる債務とされています。そのため、保証人が、債権者の請求に応じて弁済などをした場合、保証人は最終的な債務の負担者である主たる債務者に対して求償できます。


保証債務の成立


1. 保証契約


保証債務は、債権者と保証人との保証契約によって成立します。保証契約は、書面でしないと効力を生じません。

民法446条 
1項 
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 
2項 
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 
3項 
保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。


2. 保証人の資格


一般的には、保証人になるために、特に資格は必要ありません。しかし、主たる債務者が法律上の規定または債権者との保証人を立てる義務を負う場合には、行為能力と弁済の資力のある者を保証人としなければなりません。
民法450条


保証債務の性質


1. 付従性


従たる債務である保証債務は、次のように、存在・内容面において主たる債務に付き従い、主たる債務と運命を共にします。これを付従性といいます。

①保証債務は、主たる債務がなければ成立しない

②保証債務の内容は、主たる債務より重くなることはない

③主たる債務が消滅すれば、保証債務も消滅する。

付従性により、主たる債務者に生じた事由は、原則として保証人にも効力が生じます。例えば、主たる債務者に対して時効中断の措置を取っておけば、保証人にも時効中段の効力が生じます。これに対して、保証人に生じた事由は、主たる債務者に影響しません。


2. 補充性


保証債務は、債権が譲渡されて、主たる債務者が履行しない場合に初めて履行する責任が生じる二次的な債務です。これを補充性といいます。
保証債務の補充性から、保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権という2つの抗弁権が認められています。

民法452条 
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない


民法453条 
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない


催告の抗弁権とは、債権者が保証人に履行を請求した場合に、先に主たる債務者に請求してくれと言える権利です。そして、検索の抗弁権とは、保証人が主たる債務者に弁済の資力があり、その執行が容易であることを証明して、主たる債務者の財産にまず執行するように求める権利です。


保証債務の内容


保証債務は、債務の目的または態様において主たる債務より軽いものであっても良いが、重くすることはできません。

民法448条 
保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。


例えば、主たる債務が1000万円であれば、保証債務は1000万円以内でなければならず、たとえ、1500万円と定めたとして、1000万円に減額されます。
しかし、保証債務は、あくまで主たる債務とは別個独立の債務であり、付従性に反しない限り、保証契約によって独自の内容を持たせることもできます。例えば、保証債務についてだけ、主たる債務にない違約金や損害賠償の額を約束することができます。



保証債務の範囲


保証債務は、主たる債務の利息、違約金、損害賠償などの主たる債務の全ての従属物に及びます。また、判例では、特定物売買の売主のためにする保証について、売主の債務不履行による損害賠償義務はもちろん、特に反対の意思表示のない限り、売主の債務不履行における原状回復義務についても、保証が及ぶといっています。


連帯保証


1. 連帯保証とは何か?


連帯保証とは、保証人が、主たる債務者と連帯して債務を負担することに合意した保証のことです。連帯保証債権は、主たる債務者が弁済しない場合にだけ責任を負う二次的な債務ではなく、補充性がありません。そのため、連帯保証人には、催告の抗弁権や検索の抗弁権がなく、債権者は、主たる債務の弁済期が到来しさえすれば、直ちに連帯保証人に対して債務全額の弁済を請求することができます。


2. 一方に生じた事由


連帯保証にも、付従性がありますから、主たる債務者に生じた事由は、連帯保証人にも効力が及びます。ただし、それが保証債務の内容を加重させるものは別であり、例えば、主たる債務者が事項の利益を放棄しても、その効果は、連帯保証人には及びません。
そして、通常の保証と異なり、連帯保証人について生じた事由が、主たる債務者に影響することもあります。

民法458条 
第434条から第440条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。


例えば、連帯保証人に対する請求の効力は、主たる債務者にも及び、連帯債務者に対して裁判上の請求を行えば、主たる債務の消滅時効も中断します。


共同保証


1. 共同保証とは何か?


複数の人が同一の主たる債務について保証債務を負うことを共同保証といいます。共同保証人は、原則として平等な割合で分割された額についてのみ保証債務を負います。

民法456条 
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。


これを分別の利益といいます。例えば、1000万円の主たる債務について、共同保証人が2人いた場合、分別の利益によって、各保証人には500万円の保証債務を負えばよいことになります。

しかし、次の場合は分別の利益がなく、共同保証人は債権者に対して全額の共済義務を負うと解されています。

①連帯保証人の場合

②債権者との間で、全額弁済するという特約のある場合(保証連帯)および主たる債務が不可分の場合


2. 共同保証人の求償権


共同保証人の1人が弁済した場合、共同保証人も、保証人であることに変わりありませんから、最終的な負担者である主たる債務者に求償することができます。それに加えて、共同保証人は、他の共同保証人に対しても求償することができます。

民法465条 
1項 
442条から第444条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。 
2項 
第462条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

次は、民法の分野の「契約総論」について紹介していきます。
➡【リンク】11. 契約総論

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2019年10月2日水曜日

【行政書士試験】債務不履行の分野のトレーニング問題

【行政書士試験】債務不履行の分野のトレーニング問題



●次の問のうち正しいものには○、誤っているものには×をつけなさい。

★債務不履行とは何か?


(1)債務不履行とは、債務者の故意または過失により違法に債務が履行されないことである。

○…問題文の通り。債務不履行により、債権者に損害が発生すれば、債務者は損害賠償の責任を請け負うことになる。

民法415条 
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。


(2)債務の履行について、支払期日が過ぎてしまった場合、履行遅滞となる。

〇…支払期日が過ぎて履行遅滞となった場合、債務者は、履行遅滞の責任を負う。


(3)不動産が二重に譲渡された場合、売主が一方の買主に対して所有権移転登記を完了すると、他方の買主に対する債務は、履行不能になる。

〇…問題文の通り。


★債務不履行の解消


(4)債務不履行を正当化する事由がないと、債権者は、直接強制・代替執行・間接強制により、債権を強制的に実現できる。

〇…問題文の通り。

★債務不履行に基づく損害賠償


(5)債務者の帰責事由に基づく正当化できない債務不履行によって損害が発生した場合、債権者は、債務者に対して損害賠償を請求できる。

〇…問題文の通り。


(6)債権者が損害の発生防止やその拡大防止に努める義務に違反すれば、必ず過失相殺が行われる。

〇…問題文の通り。


(7)金銭債務の履行が遅れた場合、債権者は、履行遅滞の事実を証明するだけで、債権額に一定の利率を掛けた額の賠償を請求できる。

〇…問題文の通り。



2019年10月1日火曜日

【行政書士試験・民法】9. 債務不履行・・・思ったとおりの履行がない場合・・・行政書士試験の勉強

9. 債務不履行


9. 債務不履行・・・思ったとおりの履行がない場合・・・行政書士試験の勉強

今回は民法の分野の「債務不履行」について紹介していきます。


債務不履行とは何か?


債務の本旨(本来の趣旨)に従った履行がなされないことを債務不履行といいます。債務を履行しない場合はもちろん、債務を履行しても、それが債務の本旨に従ったものでなければ、債務不履行になります。債務不履行には、履行遅滞・履行不能・不完全履行という3つの形態があります。


履行遅滞


1. 履行遅滞とは何か?


履行遅滞とは、債務の履行が可能であるのに、債務者が履行期までに債務の本誌に従った履行をしないことです。わかりやすく言うと、履行が遅れることです。

2. 履行期について


履行遅滞となるためには、履行期が到達している必要があります。履行期は次のようになります。


①具体的な日付等(例:5月5日まで)の確定期限がある場合は、その期限が到達した時

②「天気が秋に変わった時」のように、期限を定めているが、それがいつ到来するのかわからない不確定期限がある場合は、その期間の到来を債務者が知った時。

③期限の定めがない場合には、債務者が履行の請求を受けた時


履行不能


1. 履行不能とは何か


履行不能とは、債権発生後に、債務の本旨に従った履行ができない状態にあること(後発的不能)をいいます。物理的にできない場合(物理的不能)だけでなく、目的物の取引が法律上禁止された場合(法律的不能)も含みます。
不動産が二重に譲渡された場合、売主が一方の買主に対して所有権移転登記を完了すると、他方の買主に対する売主の債務は、履行不能になるというのが、判例です。


2. 履行不能と履行期


履行不能は、履行期とは関係がなく、履行期前であっても、履行できない状態になれば、直ちに履行不能になります。


不完全履行


不完全履行とは、履行遅滞にも、履行不能にも当たらない債務不履行のことです。形の上では、履行に相当する給付がなされたものの、それが債務の本旨に従った完全な履行ではない場合です。
不完全な給付がなされた場合、債権者は、債務者に対して不完全な給付を完全なものにするように求めることができます、(追完請求権)。追完として、瑕疵の修補だけでなく、代物の請求もできます。


債務不履行の解消


強制履行


債務不履行を正当化する事由がないと、債権者は、法の助けを借りて、債権を強制的に実現することができます。強制履行には、次の3種類のものがあります。

強制履行の種類

①直接強制
債務者の意思とは無関係に、国家機関が直接かつ強制的に債務の内容を実現することです。

②代替執行
第三者に給付内容を実現させて、その費用を国家機関が債務者から取り立てることです。

③間接強制
一種の罰金を貸すなどの方法によって、さいむしゃを心理的に圧迫して履行させることです。


損害賠償


債務不履行から債権者を保護する手段として、損害賠償という制度も活用されています、損害賠償とは、債務者の責めに帰すべき事由(帰責事由)による債務不履行によって債権者が損害を金銭で賠償させようというものです。


契約の解除


また、債務不履行から債権者を保護する手立てとして、契約の解除という制度もあります。契約の解除とは、一方的な意思表示によって、債権の発生原因である契約を白紙に戻し、それをなかったことにすることです。
債務不履行があり、それを正当化する事由がなく、かつ、それが債務者の帰責事由に基づく場合には、債権者は一方的にその債権の発生原因である契約を解除し、それを白紙に戻すことができます。


債務不履行に基づく損害賠償


損害賠償請求の要件


次の要件を満たす場合には、債権者は、債務者に対して損害賠償を請求できます。

民法415条 
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

債権者が、債務者に対して損害賠償を請求できる要件

①債務の本旨に従った履行がなされていないこと。

②同時履行の抗弁権などの不履行を正当化する事由がないこと

③不履行が債務者の責めに帰すべき事由(帰責事由)に基づくものであること。

④不履行によって(事実的因果関係)、財産的または精神的な損害が発生していること。


帰責事由とは、債務者の故意・過失または信義則上これと同視すべきじゆうであるというのが判例・通説です。そして、判例・通説は、信義則上、債務者の故意・過失と同視すべきものとして、債務者が自分の手足として使う履行補助者の故意・過失を挙げています。

なお、債務者の帰責事由に履行遅滞状態になっていた債務が、不可抗力によって履行不能になった場合には、履行不能についても、債務者の帰責事由に基づくものとすべきであると解されています。


遅延賠償と填補賠償


債務者が履行を遅滞した場合には、債権者は、本来の給付の請求に加えて、履行が遅れたことによる損害の賠償を請求することができます。この履行が遅れたことによる損害の賠償を遅延賠償といいます。
これに対して、本来の給付が債務者の帰責事由によって履行不能になった場合には、債権者は、填補賠償請求権を取得します。填補賠償とは、本来の給付に代わる価額の賠償です。本来の債権は、履行不能により填補賠償請求権に転化するのです。


損害賠償の方法


1. 損害賠償の対象


債務不履行による損害賠償の対象となるのは、その債務不履行によって通常生じる損害(通常損害)と、債務不履行時に債務者が予見可能であった特別の事情によって生じた損害(特別損害)です。


2. 金銭賠償の原則


損害賠償は、当事者間に特段の合意がない限り、金銭で行います。

民法417条 
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

債務者は原則として、損害を金銭に換算し、その金額を債権者に支払うのです。



3. 履行不能による損害賠償額の算定


履行不能による損害賠償額の算定について、判例では、原則として履行不能時を基準に賠償額を決定しますが、価格が上っているという特別の事情があり
それを債務不履行時に債務者が予見できた場合には、債権者は、騰貴した現在(口頭弁論終結時)の価格によって損害賠償を請求できるといいます。ただし、その価格に騰貴する前に処分したであろうという場合は、この限りではないと、判例はいっています。

また、判例では、価格が一旦上昇後、下降した場合において、中間時の最高価格を賠償額にするといっています。

4. 過失相殺


債権者が損害の発生防止やその拡大防止に努める義務に違反すれば、
必ず過失相殺が行われ、賠償額が減額されたり、債務者の損害賠償責任が否定されたりします。過失相殺とは、損害の発生やその拡大に関して、債権者にも落ち度があった場合には、その落ち度を賠償額などに反映させ、公平を図ることです。

5. 損害賠償額の予定


当事者間で、債務不履行があった場合には、一定額の損害賠償をするという合意が、あらかじめなされていることがあります。(損害賠償額の予定)

この合意があると、債権者は、債務不履行の事実さえ立証すれば、合意した賠償額を請求することができます。しかし、よう定額と実際の損害額が異なっても、当事者間で増減を求めることはできません。裁判所さえも、その額を増減することはできません。


金銭債務の特則


金銭債務の債務不履行は、通常、履行遅滞です。そして、金銭債務の場合、債権者は、損害を証明する必要がなく、履行遅滞の事実を証明するだけで、損害賠償を請求できます。

また、金銭債務の場合には、債務者は、不可抗力をもって抗弁することができません。そのため債務者は、帰責事由の有無を問わず、損害賠償責任を負うことになります。金銭債務の履行遅滞の損害賠償額は、債権額に一定の利率を掛けた額です。利率は、原則として、法定利率によりますが、それ以上の利率によることを合意していた場合には、その約定利率によります。

民法419条 
1項 
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。 
2項 
前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。 
3項 
第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。


次は民法の「債権の履行確保」について説明しています