2020年2月9日日曜日

宝塚市パチンコ条例事件って何?行政書士試験の重要判例・・地方公共団体が行政権の主体として、国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たるか?

【重要判例】宝塚市パチンコ条例事件/最判平14.7.9




今回は、地方公共団体が行政権の主体として、国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たるかが問われた「宝塚市パチンコ条例事件」について紹介したいと思います。


宝塚市パチンコ条例事件の内容


兵庫県の宝塚市長は、同市パチンコ店等の建築等を規制する条例(8条)に基づき、同市内においてパチンコ店を建築しようとするAさんに対して、建築工事の中止命令を発したが、Aさんがこれに従わなかったために、宝塚市BがAさんに対し、工事を続行してはならないことを求める民事訴訟を提起した事件です。


宝塚パチンコ条例事件の争点


地方公共団体が行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たるか?


判決のポイント


地方公共団体が行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の訴訟に当たる。

法律上の争訟として当てはまるものは
財産権の主体
行政権の主体(法律に特別な規定がある場合)

今回のケースは、財産権の主体とした訴えではなく。行政権を主体とした訴えでした。

地方公共団体が行政権の主体として、国民に行政上の義務の履行を求める対象は、法律上の争訟に限られ、国又は地方公共団体が、財産権の主体ではなく、もっぱら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律に特別の規定がない限り、裁判所の審判の対象とはならない。

高速増殖炉もんじゅ原発訴訟って何?行政書士試験の重要判例・・行政事件訴訟法36条にいう「法律の利益を有するもの」とは?

【重要判例】高速増殖炉もんじゅ原発訴訟/最判平4.9.22


国立研究開発法人
日本原子力研究開発機構 HPより抜粋



今回は、「高速増殖炉もんじゅ原発訴訟」について紹介したいと思います。


高速増殖炉もんじゅ原発訴訟の内容


内閣総理大臣が行った福井県敦賀市に設置予定の高速増殖炉「もんじゅ」に関する原子炉設置許可処分に対して、付近住民らが「もんじゅ」の設置稼働により、生命身体を損傷させる等の重大な被害を受けるとして、設置許可処分の無効確認を求めて出訴した。

行政事件訴訟法9条 
1項 
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。 
2項 
裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

行政事件訴訟法36条 
無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。


高速増殖炉もんじゅ原発訴訟の争点


取消訴訟における原告適格は、いかなる要素を考慮して判断すべきか?

設置許可申請に係る原子炉(高速増殖炉)から約29kmないし約58kmの範囲内の地域に居住している住民は、原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法36条にいう「法律の利益を有するもの」に該当するか?

判決のポイント


当該放棄の趣旨・目的のみならず、保護しようとする利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。

行政事件訴訟法9条にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害される恐れのあるものをいうのであり、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を公益としてだけでなく、個々人の個別的利益としても保護する主旨を含む場合には、かかる利益も右にいう法律業保護された利益にあたる。行政法規が右の主旨を含むかは、当該放棄の趣旨目的・当該放棄が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。原子炉設置許可基準の各規定は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般公益として保護しようとするにとどまらず、原子炉施設周辺に居住し、右事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個人的利益としても保護するものとする主旨をも含むと解する。




京都府立医大学生放学処分事件って何?行政書士試験の重要判例・・公立大学の学生に対する懲戒処分は、学長の覊束裁量行為と解するべきか?それとも自由裁量行為と解すべきか?

京都府立医大学生放学処分事件

(公立大学の学生に対する懲戒処分)

/最判昭和29.7.30




今回は、公立大学の学生に対する懲戒処分は、学長の覊束裁量行為と解するべきか?それとも自由裁量行為と解すべきか?が争われた「京都府立医大学生放学処分事件」について紹介したいと思います。


京都府立医大学生放学処分事件の内容


京都府立医科大学附属女子専門部の教授会は、同専門部に属するA教授の身体問題を審議するための会議を開こうとしたが、A教授の解雇反対を主張する学生たちによって会議室は混乱し、教授会は流会となった。このため、京都府立医科大学学長Yは、専門部教授会における学生たちの行為は学生の本文にもとり学内の秩序を乱すものであるとして、本科の学生5名(Xら)の懲戒処分を行った。
これに対して、Xさんらは、当該懲戒処分は学長としての裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとして、本件放学処分の取り消しを求めて出訴した。


京都府立医大学生放学処分事件の争点


公立大学の学生に対する懲戒処分は、学長の覊束裁量行為と解するべきか?それとも自由裁量行為と解すべきか?


京都府立医大学生放学処分事件の判決のポイント


公立大学の学生の行為に対して懲戒処分を発動するかどうか、および懲戒処分のうちいずれかの処分を選ぶかを決定することは、その決定が全く事実上の根拠に基づかないと認められる場合であるか、または社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、学長の裁量権に任される、つまり、学長の自由裁量行為である。


➡【リンク】最高裁判所HP・・    昭和28(オ)525

2020年2月8日土曜日

下関商業高校事件って何?行政書士試験の重要判例・・執拗な退職勧奨(たいしょくかんしょう)は、国家賠償法に基づく慰謝料請求の対象となるか?

下関商業高校事件

執拗な退職勧奨(たいしょくかんしょう)に対する

慰謝料請求/最判昭55.7.10


下関商業高校事件・執拗な退職勧奨(たいしょくかんしょう)に対する 慰謝料請求/最判昭55.7.10


下関商業高校事件の内容


下関市立商業高校に勤務するXら3人の教諭に対し、下関市教育委員会が退職勧奨の基準年齢である57歳になったことを理由に、2~3年にわたり退職勧奨を継続し、当該一連の行為により精神的苦痛を受けたとして、Xさん達が下関市に対して国家賠償法に基づく慰謝料の支払いを求めて出訴した。

※不当に退職を強要された例としては、勧奨に応じない旨を表明しているにもかかわらず、計10回以上、職務命令として市教育委員会への出頭を命じられたり、1名~4名の職員から20分から90分にわたって勧奨されたり、優遇措置もないまま退職するまで勧奨を続けると言われたり等のことが行われていたそうです。

下関商業高校事件の争点


執拗な退職勧奨は、国家賠償法に基づく慰謝料請求の対象となるか?


判決のポイント


対象となる

本来の目的である被勧奨者の自発的な退職意思の形成を促す限度を超える心理的圧力を加えた場合には、違法な権利侵害として不法行為を構成する。



➡【リンク】最高裁判所HP・・     昭和52(オ)405